結果フェイズ

GM
結果フェイズを始める前に、全体に対するアナウンスを行います。
GM
以降のセッションで安武陸の幸福『海野標』が破壊され、修復も叶わず失われた場合、
GM
PC全員は海野標に関する記憶を全て失います。
GM
以上です。

結果フェイズ:赤木叶恵

GM
夜が明ける。
GM
クリスマスシーズンを迎えた街は緑と赤とイルミネーションに彩られ、
GM
人々は寒風の中足早に道を行き交う。
GM
破壊されたはずの街はすっかり修復されていて、昨夜の虐殺も当然のようになかったことになっていて。
GM
放火されたこともなくなった迷ノ宮家で手当てを受けてから、
GM
あなたは街をゆく。家に帰る。
GM
これから準備して登校したら、まぁまぁ一応学校には間に合うんじゃないかな、みたいな時間。
迷ノ宮 光葉
おうち、無事なんだ…
敷村 修也
燃えたこともなかったことになりましたからね
GM
無事になりました。
赤木 叶恵
パイセンどうなった……?
GM
パイセンは搬送です。
赤木 叶恵
いきてるの!?
敷村 修也
搬送で済んだんだ!?
GM
概ね目覚める前と同じ状態です。
赤木 叶恵
へーっ ふーんふーん
敷村 修也
おお………
迷ノ宮 光葉
えううう
GM
精密検査されてもなにもわかんないです。
敷村 修也
いやもう……死んでしまったものとばかり……
迷ノ宮 光葉
わたしもしをかくごした
GM
ほぼそんなようなもんですけどね。
安武 陸
精密検査なんだ
GM
死体になってないだけです。
敷村 修也
よくはないが、よかったとしか言いようのないものもある
赤木 叶恵
また寝たきりか……
赤木 叶恵
お話できないのは捜査的な意味でもつらいな
赤木 叶恵
体を清めて、服を着る。
赤木 叶恵
もう死臭はない。死体など最初から無かったのだ。
赤木 叶恵
……わかっていても、確かめずには居られない。
赤木 叶恵
狩人の経験は決して少なくなかったが、あれほど酷い経験はなかった。
赤木 叶恵
桁の違う死傷者。師との離別、共闘していたハンターの死。かつてない窮地。死を覚悟して、それでもなぜだか今は生きている。
赤木 叶恵
……生きて帰るという約束を守れたのは、たまたまだ。
GM
物思いに耽るあなたの耳に、少し荒っぽいノックの音。
GM
「叶恵?」
赤木 叶恵
「なーに」
GM
母の声。どこか刺々しい。
GM
「なーにじゃないわよ」
GM
「あんた昨日またどっか行ってたんでしょ」
赤木 叶恵
「………………まあ」
安武 陸
親の理解がない……………
敷村 修也
あったらあったできつい
GM
「恵夢となんかコソコソしててもね、わかんのよこっちは」
GM
「っていうか、なんなの」
GM
「もうちょっとしおらしく――」
赤木恵夢
「まあまあ」
赤木恵夢
こちらもドア越し。姉の声。
赤木恵夢
「お母さん、今日お仕事外せないんでしょ?」
赤木恵夢
「もうそろそろ時間だよ」
赤木恵夢
「カナちゃんとは、私、色々話すから」
GM
「恵夢」
赤木 叶恵
「…………」
GM
「そんなこと言って、あんたも……」
GM
「ああもう」
GM
「叶恵!」
赤木 叶恵
「…………なに……」
GM
「あとでしっかり話聞かせてもらうからね!」
GM
一方的に放って、ばたばたと階段を降りていく音。
姉らしき足音もそれに続く。
赤木 叶恵
「…………」
赤木 叶恵
悔しい。
赤木 叶恵
ハンターの背負う孤独。
それを伝えれば、大切な人を戦いに巻き込むこととなる。
どれほどの苦労をしてこの日常を守ったか、それを伝えることは叶わない
赤木 叶恵
外出の報告は姉から母へと伝わる。
赤木 叶恵
一時期はそれを恨んだこともあったが、姉が間に立って庇ってくれていたことに気付いたのはつい最近のこと。
赤木 叶恵
母は心配してくれている。一般人の親としては当然の反応なのだろう。
GM
姉は、何がしか、少しばかりの理解を示してくれている。ような気がする。
GM
けれど、それもどうしても一般人の範疇。
GM
あなたの戦いのことなど、わからない。わかるはずもない。
GM
あなたのことを理解し、認め、評価してくれていたのは――
GM
迷ノ宮御影。
GM
あなたの師匠は、再び昏睡状態に陥り、病院へと搬送された。
GM
*赤木叶恵の幸福『背徳:迷ノ宮御影』の修復判定と参りましょう。
GM
地位ですね。判定をどうぞ。
赤木 叶恵
2D6>=7 (判定:叫ぶ) (2D6>=7) > 6[3,3] > 6 > 失敗
赤木 叶恵
*激情を使用 3→6 9で成功
GM
いいでしょう。
[ 赤木 叶恵 ] 激情 : 1 → 0
GM
あなたの幸福『背徳:迷ノ宮御影』は修復されました。
赤木 叶恵
師は、再び長い眠りへとついた。
赤木 叶恵
次に目覚めるのはいつか分からない。
赤木 叶恵
……以前は、師の復帰を待ち望み、師の影を追って生きてきた。
赤木 叶恵
だが、今度は違う。
赤木 叶恵
自分はハンターだ。次は自分が他の狩人を引っ張っていく番だ。
赤木 叶恵
もう甘えてはいられない。
赤木 叶恵
次に彼と立ち会うとき、どのような関係になっているかはわからない。
赤木 叶恵
会いたい、という気持ちまでは覆い隠すことはできないが──
赤木 叶恵
その時は、一人前の狩人として。顔を見上げることなく、恐れず真っすぐと。
赤木 叶恵
あなたがどのような立ち位置に立とうとも、次は目を逸らさずに。
赤木 叶恵
この両の妖精眼を曇らせず、あなたを見定めます。
赤木 叶恵
だから──死なないでくださいね、御影さん。
GM
かっこいい~~~~
迷ノ宮 光葉
ああー先輩から、御影さんに…。
敷村 修也
かっこよすぎる
GM
こんこん、と、今度は控えめなノック音。
赤木 叶恵
その音だけで誰だか分かる。
赤木 叶恵
「……ん」
赤木恵夢
「カナちゃん?」
赤木恵夢
「えと、開けてもい?」
赤木恵夢
「入ってだいじょぶ?」
赤木 叶恵
「大丈夫」
赤木恵夢
扉が開く。
赤木恵夢
能天気な姉の笑顔が覗く。
赤木恵夢
「……おかえり、カナちゃん」
赤木 叶恵
「……」
赤木 叶恵
「うん、ただいま」
赤木恵夢
「あ」
赤木恵夢
「怪我……」
赤木 叶恵
「あ」
赤木恵夢
目ざとく見つけたはいいものの、
赤木恵夢
既に手当てをされているのも見て取ってか、ぽつりと呟くような声は途切れ。
赤木恵夢
「…………」
赤木恵夢
「……いたく、ない?」
赤木 叶恵
厚手のタイツを履いて足の怪我を誤魔化したはいいものの、袖の下から包帯が見えていたことにようやく気付く。
赤木恵夢
代わりに、どうにか絞り出したような声。
赤木 叶恵
「……ん、だいじょぶ……」
赤木恵夢
「……うん」
赤木恵夢
「うん……」
赤木恵夢
明らかに何か言いたげではあるが、依然言葉を見つけられぬまま。
赤木恵夢
「…………」
赤木恵夢
「気をつけて」
赤木恵夢
「ね」
赤木 叶恵
腕の傷は派手な割に、奥までは達しておらず比較的軽傷だった。
赤木 叶恵
まだわずかな痛みはあるが、それでもあの惨劇の夜のせいで麻痺してしまっている。
赤木恵夢
それでも、一般人にとっては大怪我の部類だ。
赤木恵夢
包帯を巻くような怪我なんて。
赤木 叶恵
軽傷、と思っていたものを予想よりもたくさん心配されてしまって困惑する。
赤木恵夢
「……お母さん、も」
赤木恵夢
「心配してるからね」
赤木恵夢
「言い方、ちょっときついけど……」
赤木恵夢
「それは、ほんとに、ほんとだから」
赤木 叶恵
そうか、これが一般人の感覚だ。こうして常識を修正していかなければ、どんどんと世の感覚と離れていってしまう。
赤木 叶恵
「……うん、ごめん」
赤木 叶恵
「なんか……」
赤木恵夢
「うん」
赤木 叶恵
「うん。お母さんとお姉ちゃんの声聞いたら」
赤木 叶恵
「帰ってきたんだな……って、感じ、した……」
赤木恵夢
「そう」
赤木恵夢
「よかった!」
赤木恵夢
ぱっと笑う。
敷村 修也
うーーんかわいい
迷ノ宮 光葉
よかった…
赤木恵夢
「あ、そうだ」
赤木恵夢
「あのね、昨日礼子ちゃんからクッキーもらってね」
赤木恵夢
「ジンジャーブレッドクッキー。もうすぐクリスマスでしょ?」
赤木恵夢
「冷蔵庫にあるから」
赤木 叶恵
その名前は。
赤木恵夢
「カナちゃん、よかったら食べていいよ」
赤木 叶恵
「……そっか」
赤木恵夢
数日前に死んでしまったと、恵夢が涙を流していたはずの友人の名前。
赤木恵夢
それを朗らかに口にして、笑う。
赤木 叶恵
「(そうなった、かあ……)」
GM
守られたもの。
GM
あるいは。
GM
取り戻されたもの。
GM
それは、果たして、誰の手で?
GM
問うまでもない。
敷村 修也
そうなったんだなぁ
安武 陸
礼子ちゃんよかった……
安武 陸
ううっ
赤木 叶恵
「どーりで、お姉ちゃんが能天気な顔してると思った」
赤木 叶恵
もちろん、友達からクッキーを貰った事を言っている。
赤木恵夢
「なにそれ~~」
赤木 叶恵
「ん-ん」
赤木 叶恵
「クリスマス前にお姉ちゃんが元気になってよかった」
赤木恵夢
「…………」
赤木恵夢
「ん」
赤木恵夢
「カナちゃんも、怪我なおして」
赤木恵夢
「もっと元気になってね」
赤木 叶恵
「おおげさだよ。もうほとんど治ってる」
赤木 叶恵
それは嘘ではない。傷は鋭利な刃に斬られたもので、治りは早かった。
赤木 叶恵
一番治りが遅かったのは、あの蒼い炎に炙られた足。けれどそれもやがて元通りになってしまうのだろう。
赤木 叶恵
「……あとで貰うね、クッキー。おいしかったら感想言うから、その礼子さんに伝えといて」
赤木恵夢
「うん!」
赤木恵夢
「お姉ちゃん、学校行く支度するね」
赤木恵夢
「カナちゃんも、えーと……」
赤木恵夢
「気をつけてね!」
赤木恵夢
何をだかなんだか分からない言葉を残して、恵夢が自室に戻る。
赤木 叶恵
「ん……」
赤木 叶恵
姉を見送り、一息つく。
赤木 叶恵
窓から眺める景色はいつも通り。
赤木 叶恵
血にまみれ、炎に包まれた赤と青の景色は、もう影も形もない。
赤木 叶恵
それでもあの時、確かに見えてしまった。
赤木 叶恵
狩人がいなければ、この町はどうなるのか。
赤木 叶恵
あれは存在しなかった過去であり、避けなければならない未来だ。
赤木 叶恵
だから、狩人は止められない。
赤木 叶恵
脅威は、恐ろしく身近にいる。きっと今も、これからも。
赤木 叶恵
誰にも褒められなくとも、怖くても辛くても。
赤木 叶恵
こうある以外にない。
赤木 叶恵
それはとても不幸なことだ。狩人など最低の貧乏くじだ。
赤木 叶恵
けれど、だからといって何も知らずに仮初の平和を謳歌することが幸せとは思えなかった。少なくとも自分は。
赤木 叶恵
……あるいは、狩人でない者よりは、
赤木 叶恵
自分の死に方を選べる狩人のほうが、まだましなのかもしれない。

結果フェイズ:迷ノ宮光葉

GM
では、叶恵さんがお見舞いに来てくれるそうなので。
GM
あれから数日後、そういうシーンでいいでしょうか?
迷ノ宮 光葉
はい、大丈夫です
GM
一緒にお見舞いにという感じかな?
赤木 叶恵
いきます!
GM
かわいい うれしい
迷ノ宮 光葉
そうですね、福も一緒に
GM
うれし!
GM
ではそうしましょう。よろしくお願いします。
GM
迷ノ宮御影は病院へと搬送された。
GM
一命をとりとめた、という表現は正しくない。そも何故倒れたかも、何故意識を取り戻さないかも。
GM
遡ればハロウィンのあの夜に、何故目覚めたかすらもわからないままなのだ。
GM
巻き戻ったように、遡ったように、同じように病院の個室にて。
迷ノ宮御影
物言わぬ姿であなたたちを迎える。
迷ノ宮 光葉
兄の見舞いには、なるべく花を持っていく。もはや、当人が意識を取り戻さず、見ることが無かったとしても。
迷ノ宮 光葉
目覚めたときに、色が見えたほうがいいと思うから。それから……自分の心を支える意味でも、必要だったから。
迷ノ宮御影
兄が目覚める気配はない。精密検査でも何も見つけられない。
迷ノ宮御影
そも彼が目覚めぬ理由を、あなたは知っている。悟らされている。
GM
炎の中に、彼に迫られたあの時に。
迷ノ宮 光葉
兄は、復讐者でありながら憎むべき相手の側についた。その代償、なのだろうと理解している。
赤木 叶恵
弟子は、眠る師の姿を見つめている。
赤木 叶恵
案じているようでもあり、怒っているようでもあった。
赤木 叶恵
師を焼く炎に気付いたのは、あの日全てが決してからのこと。
赤木 叶恵
「そもそもさ」
赤木 叶恵
「別に退院してたわけでもないんでしょ?」
赤木 叶恵
「まだ検査とかリハビリとか色々あってさ。体力だって万全じゃないくせに……」
赤木 叶恵
「……万全じゃないくせに、具体的にはノーコストで4D6ダメージ+重傷をバラ撒けるくらい。あんなに強いんだから……やんなるよ」
安武 陸
強かった
GM
やんなってる
敷村 修也
その状態であそこにいたの心底怖いよ
GM
まあ吸血鬼バフはありますよ
GM
ゆうたら他のフォロワーにもあるので、差は出ているが……
迷ノ宮 光葉
「…………」花瓶に温かみのある黄色の花をいけながら、叶恵の言葉を黙って聞く。それから、椅子を彼女に勧めた。
赤木 叶恵
促されるままに座る。
赤木 叶恵
「……妹の立場から見てさ」
赤木 叶恵
「どんな人だった?」
迷ノ宮 光葉
「そう、ですね。……私も兄とは離れて暮らしていましたから、そう語れることはありませんが……」
迷ノ宮 光葉
「寡黙で、不器用で、語らずに自分で決めたことを守ってしまう…………、いやになるほど、強いひとでした」
赤木 叶恵
「家でもそんな感じなんだ」
迷ノ宮 光葉
「……叶恵様にとっては、どういった師でしたか……?」
赤木 叶恵
「厳しい人」
赤木 叶恵
「自分で考えさせて、最低限しか教えてくれなくて」
赤木 叶恵
「口数は少ないし、吐くまでトレーニングさせるし、持たせる武器は……あんなだし」
赤木 叶恵
「でも、あとから気付くんだよね」
赤木 叶恵
「そういうのが全部、あたしを死なせないために最良の道筋だったって」
赤木 叶恵
「あたし、未熟な癖とか迂闊なところとかさ、色々あって」
赤木 叶恵
「そういうのはほったらかしにしないで、ちゃんと咎めてくれた」
赤木 叶恵
「ちゃんとやれたときは、ちゃんと褒めてくれたな……」
迷ノ宮 光葉
「……そう。叶恵様には、そのように接していたのですね……。兄らしいです」
赤木 叶恵
「でも、わかんないんだ、この人のこと」
赤木 叶恵
「趣味とか、あったのかな。どんな時に幸せを感じてるんだろう。プライベートの時間、何してるのかな。仲いい人とか好きな人とかいるのかな」
迷ノ宮 光葉
自分もほとんど答えることができないものばかりだ。狩人として生きていた兄の人生の、ほとんどを知ることがなかった。
赤木 叶恵
「なんかさ」
赤木 叶恵
「たぶん、完璧な人だと思ってたんだよ」
赤木 叶恵
「どんな無理難題も淡々とこなせる人。間違いなんか、するはずない人……」
迷ノ宮 光葉
「はい……」
迷ノ宮 光葉
「わたくしも、きっとそれに近しい気持ちでいました」
赤木 叶恵
「御影さんのこと、どう思ってる?」
迷ノ宮 光葉
「え…………」
赤木 叶恵
「え?」
赤木 叶恵
変な質問をしただろうか?という顔。
迷ノ宮 光葉
「…………」
迷ノ宮 光葉
「……兄として、いえ、それ以上にお慕いしています。あの蒼い炎に焼かれ、敵対しても……この気持は、変わりませんでした」
赤木 叶恵
「(ん?)」
赤木 叶恵
「(…………)」
赤木 叶恵
「(?)」
赤木 叶恵
「? ……うん、そうだよね。 ショックだったけど、だからってすぐに嫌いにはなれないよね」
迷ノ宮 光葉
微妙な意思疎通ができてない雰囲気を感じつつも、恥じらいと罪悪感からあまり自分から話を広げられず。
GM
(それ以上の意味叶恵ちゃんわかるのかな……)
安武 陸
この言い方で叶恵ちゃんわかるかn 念レス
GM
ギャハハ
安武 陸
あ~
GM
かわいいね
敷村 修也
んひひひひ
赤木 叶恵
「家を燃やされる前にさ。二人でいたじゃん」
赤木 叶恵
「どんな話してたの? あの時」
迷ノ宮 光葉
「それは…………」
迷ノ宮 光葉
「っ…………ないしょ、です」
赤木 叶恵
「えー? まあいいけどさ」
赤木 叶恵
深くは突っ込めない。狩りで分断された時の出来事など、自分にとってもあまり広げたくない話題だ。
迷ノ宮 光葉
「そういう叶恵様こそ、兄を、どう、………」どう思っていたのか、聞きたいような、聞きたくないような。
迷ノ宮 光葉
「…………」
赤木 叶恵
「んー……信頼してた大人……かなあ……」
赤木 叶恵
「何かあった時に頼りたくなる目上の人、その人の指示なら疑問を持たず従えるような人……だったよ」
迷ノ宮 光葉
「……」叶恵の素朴で、純粋で、自分とは比べるべくもない、憧れのような兄への感情に、
迷ノ宮 光葉
彼女がとてもうらやましく思えた。
迷ノ宮 光葉
「今は、……少しちがいますか?」”だった”とする、彼女に尋ねる。
赤木 叶恵
「疑問を持たずに従いはしなかったでしょ?」
迷ノ宮 光葉
「……はい」
赤木 叶恵
「……だからって、もう信じないってわけじゃない」
赤木 叶恵
「今度はちゃんと知ろうと思うよ、御影さんのこと」
赤木 叶恵
「どんな事考えて、何をしてきた人なのか」
迷ノ宮 光葉
「…………叶恵様」
赤木 叶恵
「そうして、ちゃんとこの人の事がわかれば、また信じる事ができるかも」
迷ノ宮 光葉
「……はい、わたくしも、そう思います。
 そして、そうしたいと思います」
赤木 叶恵
「……先帰る。御影さんによろしく」
赤木 叶恵
荷物をまとめて立ち上がる。
迷ノ宮 光葉
「送らなくて、大丈夫ですか?」
赤木 叶恵
「いい。兄妹二人だけの時間も要るでしょ」
赤木 叶恵
返事を待たず、部屋を後にする。去り際に一言。
赤木 叶恵
察しが良いんだか悪いんだか、余計なことを言う。……ベッド付近に居たよね、二人とも……
赤木 叶恵
病室を去る。
迷ノ宮 光葉
「っ…………」なにか声をかけることもできず、叶恵は病室を去った。
迷ノ宮 光葉
その背を消えた後も見つめていたが、それから椅子に座り直し、兄の眠る顔に視線を移す。
迷ノ宮御影
眠っている。
迷ノ宮御影
静かに。元通りに。
迷ノ宮 光葉
それからしばらくして、福を待たせすぎないうちに自分も兄へまた来ることを告げ、病室を去った。
GM
あとには花だけが残される。
GM
誰も見ることのない花が、乾いた風に揺れていた。
GM
それでは修也くんは……ちょっと遡って、やはりあの夜の直後かな。
GM
迷ノ宮邸で手当てを受けてから帰宅して頂きましょうか。
GM
よろしくお願いします。
敷村 修也
はぁい

結果フェイズ:敷村修也

GM
結果フェイズに伴い、修也の狂気が1点減少します。
[ 敷村 修也 ] 狂気 : 3 → 2
GM
あなたの帰る家は変わった。
GM
かつての生家、灰葉陽の暮らしていたマンションからは遠く。
GM
進学の決まった大学に近い学生アパート。
GM
怪我で痛む身体を引きずって、あなたは今の自宅に戻る。
GM
家族はいない。一人きり。
GM
だから幸い朝帰りを咎められることも、怪我で心配をかけることもない。
敷村 修也
鍵を開け扉を開く。
日が昇る街に比べ部屋の中は静かで暗い。
敷村 修也
「……ただいま」
GM
返事はない。
GM
当然のことだ。
敷村 修也
家を出るときにそうしたように誰もいない部屋に帰宅を告げる。
敷村 修也
そうでもしないとここが自分の家であることをまだ受け入れられないような気がした。
GM
何もかもがめちゃくちゃになったはずの夜が終わり。
GM
平穏の街に、自宅へ戻る。
GM
家族も、きっと無事なのだろう。自分たち四人を除いて、誰もあの惨劇を覚えていない。それはなかったことになってしまった。
GM
だからこそ思い出される。
GM
戦いの中に繰り返し挙げられた、灰葉陽のことが、改めて。
敷村 修也
携帯をとりだそうとしてそんな必要がないことに思い至る。
敷村 修也
退院の時にとった両親との写真を入れた写真たて。
その隣に伏せていた写真たてを起こす。
GM
しかし。
GM
その写真立てに、中身はない。
敷村 修也
眉を顰め首をかしげる。
敷村 修也
ない。
GM
消え失せている。
GM
海野標からもらったはずの、灰葉陽の写真が。
GM
どこにもない。
GM
どこかに落ちているということもない。そこにあったはずのものが。
GM
違う。
GM
そこにあるはずがないものだ。
GM
それは。
GM
敷村修也が灰葉陽の写真を渡されることはない。
GM
敷村修也に灰葉陽の写真を渡す人物は存在しない。
GM
生家を焼かれ、灰葉陽との写真や思い出の品を失った敷村修也に、
GM
それを渡そうと思って、実行できる人物は、どこにもいない。
安武 陸
あっ
迷ノ宮 光葉
あっ
敷村 修也
そっ、そこからかぁ~~~~~~~~
安武 陸
そうだね…………………………
安武 陸
渡す人がいないね…………………
赤木 叶恵
なるほどなあ
安武 陸
じゃあハロウィンナイトに助けてくれたのは誰だったんだよ!!!!!!
GM
残されたのは。
GM
やはり、思い出の中の笑顔だけ。
灰葉陽
『しゅーくん!』
灰葉陽
『聞いたよ~、体育祭リレーアンカーなんだって?』
灰葉陽
『すっごいじゃん』
灰葉陽
『相変わらず無敵だね~』
灰葉陽
『あ、しゅーくんおはよ~』
灰葉陽
『最近夜ふかし多くない?』
灰葉陽
『話し込んでるでしょ。わかるぞ~』
灰葉陽
『しゅーくん聞いてよ!』
灰葉陽
『保育士さんってね、ピアノ弾けないとなれないらしいんだよ』
灰葉陽
『それに私びっくりしたらね、あいつ知らなかったのかって馬鹿にして――』
灰葉標
『――修也!』
GM
想起される思い出の中に。
GM
あなたの名を呼ぶ声が、混ざり込む。
GM
灰葉陽はあなたのことをよく知っていた。あなたのことを、誰かからよく聞いているようだった。
GM
では、果たして、誰から。
GM
その答えに達するより先に、
GM
あなたの名を呼ぶ声が、遠ざかる。
GM
消えていく。
GM
失われていく。
GM
あったはずなのに。覚えていたはずなのに。
GM
あなたはそれを、知らないものとされる。
『埋み火』迷ノ宮御影
『では』
『埋み火』迷ノ宮御影
『敷村修也に槍を向けられたことも』
『埋み火』迷ノ宮御影
『あれには、さぞかし堪えたろうよ』
『ひなたの恋人』萩原稜介
『彼の態度に何か違和感を感じたことは?』
『ひなたの恋人』萩原稜介
『君には、彼から奪われたものがある』
『ひなたの恋人』萩原稜介
『それを取り戻す権利もまた、君にはあるはずだよ』
クロニック・ラヴ
『結局、遠ざけることも』
クロニック・ラヴ
『守り切ることも叶いはせず』
クロニック・ラヴ
『哀れなことです』
GM
そんな、他の人の声は思い出せるのに。
GM
かけられた言葉は思い出せるのに。
GM
あなたの名を呼ぶ声だけが、蘇らない。
敷村 修也
1人だけの部屋で空になった写真たてを片手に立ち尽くす。
この夜の出来事はどれも忘れるなんてできないようなことのはずなのに。
敷村 修也
ぽっかりとあいた穴がある。
敷村 修也
何かしっくりとこない記憶があったはずなのに。
何か聞かなければならないことを見たはずなのに。
敷村 修也
自分が覚えている限り失われることはないと思っていたはずの
敷村 修也
思い出すらも失われる。
GM
ただひとつ。
灰葉陽
灰葉陽との思い出だけが、あなたには確かに残される。
敷村 修也
この暖かで確かな思い出すらも、いつか失われてしまう時がくるのだろうか。
敷村 修也
疲れた頭はとりとめもなく悪いことばかりを考える。
敷村 修也
空っぽの写真たてを元の位置に伏せ、ベッドに倒れ込む。
敷村 修也
この部屋には1人。
やらなければならないことはたくさんある。
敷村 修也
何もする気になれない。
敷村 修也
ただぼんやりと思い出に浸っていたかった。
敷村 修也
そのままゆっくりと意識を手放す。
敷村 修也
ーーーー。
GM
くり抜かれた胸の喪失感だけが、
GM
そこに何かがあったことを示す、しるしだった。

結果フェイズ:安武陸

GM
手当てを受けているうちに、太陽はすっかり空を昇る。
GM
山の木々が凩に揺らされ、葉のささめく音がする。
GM
迷ノ宮邸は街の高台にあり、
GM
陽光に照らされた街の様相が、改めて確認される。
GM
平穏。無事。
GM
あなたの求める光景。
安武 陸
玄関を出て、高台から見える街の風景に、小さく息を吐いた。
安武 陸
自分でも、安堵とも、嘆息ともつかない。
安武 陸
普段よりも、ずっとゆっくり歩く。
GM
吹き付ける風が冷たい。
安武 陸
街は朝日を受けて、きらきらと輝いている。
安武 陸
皆今日を始めている。 いつもと変わらない1日が始まる。
安武 陸
クロニック・ラヴや、そのフォロワーを思う。
安武 陸
灰葉陽が亡くなったのは、どのくらい前だったか。
安武 陸
どのくらいの間、彼女たちは。
安武 陸
失ったものを取り戻そうとしていたのか。
安武 陸
彼女達の気持ちが分からないわけではない。
安武 陸
というより、理解できてしまう。
安武 陸
どうでもいい人間が何人死のうが、大事な人が生き返るなら安いものだ。
安武 陸
でも、自分は同じことをしようと思わない。
安武 陸
「どうしてかなぁ」
安武 陸
誰にともなく、呟く。
安武 陸
自分を救ってくれた人は、自分を守ってくれた人は。
安武 陸
きっとそれを喜ばない。
安武 陸
喜ばないどころか、多分、怒るだろう。
安武 陸
怒られてもいい。 そう思うけれど。
安武 陸
あの人はああ見えてお人好しだから。
安武 陸
きっと、ずっと気にしてしまう。
安武 陸
あの後に、他のハンターと連絡を取った。
GM
誰も彼のことを覚えていなかった。
安武 陸
海野標のことを覚えている人間は、いなかった。
GM
海野標があなたに紹介してくれたはずの、数々のハンターたち。
GM
その誰もが、
GM
『え?』
GM
『いまなんて言った?』
GM
『よく聞こえねえんだけど』
GM
『もう一回言ってくれねえ?』
GM
『いや、だから聞こえねえよ。はっきり言え』
GM
『今、お前、なんて言った?』
GM
その名前を問い返すことすら、できなかった。
敷村 修也
松井さんに会うのめちゃくちゃ憂鬱
安武 陸
え~~~~ん
GM
名前を言っても伝わりません。
GM
え? 聞こえないんだけど……
GM
って反応です。
敷村 修也
終わりすぎる
GM
勿論松井もですね。
迷ノ宮 光葉
おえーーーん…
赤木 叶恵
宇宙語に聞こえる
安武 陸
ふざけた話だ。
安武 陸
標がいなければ、彼らに出会うこともなかったのに。
安武 陸
標がいなければ、自分が生きていることもなかったのに。
安武 陸
俺がここにいるのは、あの人がいたからなのに。
GM
*安武陸の幸福『海野標』の修復判定といたしましょう。
GM
日常での判定を。
安武 陸
12月の冷たい空気を、肺いっぱいに吸い込む。
安武 陸
ほう、と吐くと、白く色づいた。
安武 陸
2D6>=8 (判定:呼吸器) (2D6>=8) > 6[2,4] > 6 > 失敗
安武 陸
* 激情 この2は6
GM
成功ですね。
[ 安武 陸 ] 激情 : 2 → 1
GM
安武陸の幸福『海野標』は修復されました。
GM
そのしるしが刻み込まれている。あなたの胸にはその存在が、しっかりと刻まれている
安武 陸
息ができる。
安武 陸
溺れた俺が掴んだ手は、確かに存在していた。
GM
寒さ故にポケットに突っ込んだ指先に、
GM
何か、硬いものが触れる。
安武 陸
取り出す。
GM
血溜まりから拾い上げたロケットペンダントが、そこには残っていた。
GM
しかし。
GM
ひどく劣化している。
安武 陸
そういえば、ポケットに入れたままにしていた。
安武 陸
蓋を開く。
GM
その写真から。
安武 陸
予想はしていたものの。
GM
映っていたはずの人物の姿が、消えている。
GM
写真そのものもペンダントと同じで、ひどく劣化しているようだった。
安武 陸
目の当たりにすると、堪えるものがある。
GM
楽しそうな少女がいる。
GM
はにかむ女の子がいる。
GM
その間に、奇妙な空間。
GM
本当ならそこにいたはずの誰かに。
GM
二人、寄り添うように笑っている。
安武 陸
雑なやり口だ、と思う。
安武 陸
標がいなかったのなら、こんな変な写真は撮らないはずだ。
安武 陸
自分はハンターの知り合いもいないはずだし。
安武 陸
ここに生きていないはずだ。
安武 陸
1人の人間が周囲に与える影響というのは、案外に大きい。
安武 陸
それこそ誰かがいなくなれば、世界が変わってしまうくらい。
安武 陸
世界が捻じ曲げられている。
安武 陸
標がいないことのほうが、間違っている。
安武 陸
だからといって、何をするわけでもなく。
安武 陸
朝日に煌めく街を眺めながら、ぶらぶらと帰路につく。
安武 陸
いなくならなかった何人もの人間の、息吹を感じながら。

 
海野標
「向かねえことさせちまうのは、悪いけど」
海野標
「リク」
海野標
「お前なら大丈夫だ」
海野標
「戦える。やり遂げられる」
海野標
「だって、俺の一番弟子だろ?」
赤木恵夢
「――おかしい」
赤木恵夢
「おかしいよ」
赤木恵夢
「どうして、みんな気付かないの」
赤木恵夢
「どうして」
赤木恵夢
「なんで、わたし……」

ブラッドムーンキャンペーン『R:クロニック・ラヴ』

#1『降りそそぐ愛』

おしまい

 

――#2『彼女の見る夢』に、つづく