#1 降りそそぐ愛 導入 2

遭遇フェイズ

GM
日没は16:30。
GM
冬の性として、17時を過ぎれば夜の帳が空へと降ろされ、
GM
街はクリスマスのイルミネーションに輝く。
GM
これほど人死にが出ている状況でも、街はいつもの日常を保っている。
GM
ただ少しばかり静かなだけ。
GM
行き交う人の数が少しは減ったかな、というくらいで、
GM
変わらず夕方の駅前には人々が行き交う。
GM
帰宅ラッシュの最中。
GM
狩人たちはモンスターを待ち受けるべく、駅前の広場に集う。
GM
その夜、海野標は不在でいた。早朝より単独行動を取っており、陸への返信すらまばら。
安武 陸
スマホを見ながら、眉間にしわを寄せている。
迷ノ宮 光葉
集合5分前にはきっちり到着している。横に福と大きなトランク。
敷村 修也
時間までにちゃんと集合場所に集まる。
バットケースを肩にかけている。
赤木 叶恵
時間内ではあるが、最後に到着する。
赤木 叶恵
「ういー……あれ、海野さんは?」
安武 陸
「来ないって……」見るからに不満そうな顔。
赤木 叶恵
「何やってんのあの人」
敷村 修也
「ええっ、なにか言ってました?」
GM
捨てられた犬か?
安武 陸
なんか言ってますかね?言ってないかな
GM
やることあるとか言ってます
GM
忙しいからいい感じにやっといてくれって感じ
安武 陸
「忙しいって……」
迷ノ宮 光葉
「……海野様にも何かお考えがあるのかもしれません。この場はわたくしたちで対処しましょう」
安武 陸
「忙しいなら俺連れていけばいいのに……。いや役に立たないってんなら仕方ないけど……」
安武 陸
陸にしては珍しくぐちぐち言ってます。
赤木 叶恵
秘密主義なのか。なんも言わないなあいつ
安武 陸
「言わないな~」
安武 陸
「ちゃんと報告連絡相談して欲しい」
安武 陸
「いや……目下の相手にはしないもんなのか……?」
安武 陸
社会人経験がないからわからない……
赤木 叶恵
「信用できね~……いや逆か?あたしらが信用されてないのかコレ?」
安武 陸
「ま~、叶恵ちゃんはともかく、ルーキー集団だしなぁ」
敷村 修也
「海野くらいじゃないと対応できないことなんだと思っておきましょう」
迷ノ宮 光葉
「わたくしたちがいることで足手まといになる可能性も、ありますわね」
安武 陸
むむむ……
安武 陸
「ま、仕方ない。ルーキー集団にできることをしましょうか」
敷村 修也
「そうしましょう。といっても、どこからあたるか……」
GM
ではそういう感じでみんながだべってるとですね。
GM
道行く通行人の中から、二人の人影が近づいてきます。
GM
若い男女ですね。高校生か中学生か? くらいの。男のが年上かな。
GM
男は長い髪を低い位置でくくり、少女は活発的なポニーテールです。
GM
少女は顔を隠すように青いマフラーを口元に引き上げています。
安武 陸
近付いてくる二人組を、きょとんと見る。
『ひなたの恋人』萩原稜介
「やあ」
『ひなたの恋人』萩原稜介
男が馴れ馴れしそうに話しかけてくる。
安武 陸
「はぁ……、ども」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「直接会うのははじめましてかな」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「敷村修也くん」
敷村 修也
「………」
安武 陸
知り合い?という顔で修也の方を見る。
『ひなたの恋人』萩原稜介
男は高校生くらいに見えますが、修也よりも年下に見える。まだあどけなさの残る顔立ち。
『ひなたの恋人』萩原稜介
そうですね、だいたい高一くらいに見えます。
赤木 叶恵
「誰?」
敷村 修也
「……こんにちは。こんばんはの方がいいですか?」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「どちらでもいいよ」
迷ノ宮 光葉
ちらりと修也と相手のやり取りを見守る。
『ひなたの恋人』萩原稜介
「いっそ、おはようの方がいいかもしれないね」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「夜は俺達の時間だ」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「……やっと」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「やっと、始まるんだ」
『ひなたの恋人』萩原稜介
男は待ちかねたように声を震わせる。
安武 陸
僅かに身構える。
安武 陸
ハンターの集団に話しかけて、夜は俺達の時間、なんて言う手合だ。
赤木 叶恵
コートの内ポケットに手を入れる。中の注射器をいつでも取れる状態に。
敷村 修也
「わざわざそんなことを言いに?」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「確認しに来たんだよ」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「修也くん」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「君は、灰葉陽と再び会うために」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「その槍を振るう覚悟はできたかい?」
敷村 修也
「馬鹿にしてるんですか?」
敷村 修也
「こんなみえみえの誘いに乗るわけないでしょう」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「そっか」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「まあ、そうだよな」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「残念だ。俺なりに真摯に話したつもりなんだけど」
敷村 修也
「最初から話すに値しませんよ」
『ひなたの恋人』萩原稜介
稜介は肩をすくめる。
『ひなたの恋人』萩原稜介
ちら、と背後を振り返り、
『彼女とともに』高地結凪
隣の少女もそれに倣った。
GM
そこに。
クロニック・ラヴ
銀髪を翻して、少女が一人、立っている。
クロニック・ラヴ
少女は天へと掌を翳す。
クロニック・ラヴ
次の瞬間、
クロニック・ラヴ
駅前をゆきかう、フォロワーらしき二人を除いた全ての人間を目掛けて。
クロニック・ラヴ
光の針が降りそそいだ。
安武 陸
「は?」
敷村 修也
「はぁっ!?」
安武 陸
一瞬、状況に頭が追いつかない。
安武 陸
しかし本能は痛いくらいに危険を察知する。
安武 陸
その場から飛び退き、人がいない方向へ。
針は人間を狙っている。
敷村 修也
自分の胸にめがけて飛んできた針を体ごとひねって躱す。
トレーニングで教わった通りの動き。
赤木 叶恵
横へと飛ぶ。針がコートをかすめた。
迷ノ宮 光葉
とっさのことに退避する場所もなく、置いてあった大ぶりのトランクを頭上にかざして盾にし、福を胸の内側に抱き込む。トランクに針が突き刺さる。
クロニック・ラヴ
辛うじて攻撃をやり過ごしたハンターたちの周囲では、
クロニック・ラヴ
血が噴き出でる。
クロニック・ラヴ
人という人が、倒れ伏す。
クロニック・ラヴ
道路が血に染まる。ガードレールが、信号機が、車が血の色に染まりゆく。
クロニック・ラヴ
街が血に浸される。
クロニック・ラヴ
あなたたちを除いて、その場に立つものは誰もいない。
クロニック・ラヴ
みな。
クロニック・ラヴ
死屍累々。一撃でその命を絶たれている
クロニック・ラヴ
その中心に立つ少女が一人。
赤木 叶恵
「……こうやって、やったの?」
安武 陸
惨状を見渡す。
クロニック・ラヴ
叶恵の言葉には応えず、視線を巡らすと、
クロニック・ラヴ
安武陸に目を留めて、息をついた。
クロニック・ラヴ
「あら」
クロニック・ラヴ
「健気なことですね」
安武 陸
顔を上げる。
クロニック・ラヴ
「随分と濃いマーキングですこと」
クロニック・ラヴ
「それとも、首輪と言うのが適切でしょうか」
クロニック・ラヴ
掌を翳す。
クロニック・ラヴ
そこには死がある。
クロニック・ラヴ
そこに立つ少女の形をした何かは、
クロニック・ラヴ
今まで陸が見てきたどの吸血よりも色濃くどす黒い、死の気配を纏っている。
安武 陸
無意識に、後ずさる。
クロニック・ラヴ
ひと瞬きののちには、
クロニック・ラヴ
陸の心臓が貫かれていた。
クロニック・ラヴ
光の針が。
クロニック・ラヴ
陸の心臓へと突き立っている。
安武 陸
えっえっ
敷村 修也
はっ?
赤木 叶恵
アッ
迷ノ宮 光葉
えええ~
クロニック・ラヴ
狙いを過たぬ鮮やかな一撃。
赤木 叶恵
「ッ、安武ッ!?」
安武 陸
胸に深く埋まる針を見下ろす。
クロニック・ラヴ
見下ろす視界が揺らぐ。
クロニック・ラヴ
針がもう一本、
安武 陸
地面に膝を付く。
クロニック・ラヴ
陸の脚を吹き飛ばしていた。
迷ノ宮 光葉
「陸様っ……?!」
安武 陸
そのまま倒れる。
クロニック・ラヴ
次は伸べかけた手が半ばで断たれる。
敷村 修也
「やっ、安武さん!?」
安武 陸
血が失われてゆく。
クロニック・ラヴ
ひとつひとつ、その動作を遮るように、
クロニック・ラヴ
命を絶つための針が正確に打ち込まれる。
安武 陸
もがくように、溺れるように四肢を伸ばそうとするが。
クロニック・ラヴ
見下ろしている。
安武 陸
それすらできない。
クロニック・ラヴ
少女が。表情もなく。
安武 陸
まってそれならそうと言ってくれればそういうアイコンを用意したのに
クロニック・ラヴ
言えるわけないだろ
安武 陸
いや用意してないほうが悪い 何らかのなにかは予想できたはずだ
クロニック・ラヴ
そうだぞ
クロニック・ラヴ
0話でチュートリアルしただろ
安武 陸
血の中にただ、沈んでゆくことしかできない。
クロニック・ラヴ
死が迫る。
クロニック・ラヴ
否。
クロニック・ラヴ
ただ中にある。
安武 陸
「い、や……だ」
安武 陸
地を這うことすらできない。
クロニック・ラヴ
漏らした声を厭うたか、肺腑を貫かれる。
赤木 叶恵
「……、…………!」
安武 陸
ごぼり、と血を吐く。
クロニック・ラヴ
一方的で執拗な虐殺の風景。
赤木 叶恵
パニックになりかけた頭を落ち着ける。集中。集中を切らせない。動けない。喋れない。いつ来るかもわからないあの攻撃に備える以外に割ける余裕がない。
安武 陸
もし死神がいるのなら、という妄想をよくした。
そいつは自分から遠い位置にいたり、近い位置にいたりする。
クロニック・ラヴ
今は目の前に。
クロニック・ラヴ
あなたの姿を見下ろしている。
安武 陸
それが自分を見下ろしている。
安武 陸
すぐそこで。
安武 陸
息ができない。
迷ノ宮 光葉
今すぐ動かなければならない状況で、動けないでいる。下手に動けば次に狙われるのは自分かもしれないし、仲間かもしれない。助けたいのに、助けられない。足がすくむ。
敷村 修也
トレーニングをした。槍の扱い方も、心構えも教わった。
ハロウィンの時も、この前も、人が死ぬところは見てきた。
そうなっても動けるように準備してきた。
安武 陸
穿たれた傷の全ては、不思議と痛まない。それが返っておそろしく感じられる。
敷村 修也
それでも目の前で死んでいく安武陸を前に、動くこともできなかった。
安武 陸
脳内麻薬が、痛みを麻痺させている。
安武 陸
助けを求めることもできずに、目玉だけをぎょろぎょろと動かす。
安武 陸
どうしてこんな時に。
海野標
「――ったく」
海野標
惨殺シーンで何を見ていたかの答え。主役を置いて、勝手に始めてんじゃねえよ!
海野標
海野標の声がした、
海野標
次の瞬間。
GM
安武陸は、その場に両足で立っていた。
安武 陸
「!」
GM
傷はない。痛みもない。
GM
ただ血溜まりの駅前広場の中に、
安武 陸
「あ、あれ? あ、声出る……」
安武 陸
ぺたぺたと体を触る。
安武 陸
ズタズタにされたはずなのに。出血はない、傷もないし、四肢も存在している
海野標
一筋の光が落ちて、
海野標
海野標がそこに立つ。
海野標
「――クロニック・ラヴ!」
安武 陸
「師匠!」
クロニック・ラヴ
「――海野標」
海野標
陸の呼びかけに構わず、標はクロニック・ラヴへと斬り掛かる。
海野標
刀剣が閃く。
クロニック・ラヴ
クロニック・ラヴはそれを光の針で受け止めて、
クロニック・ラヴ
広場には凄まじい衝撃波が広がった。
クロニック・ラヴ
車が横倒しになる。人々の遺体が吹き飛ぶ。
クロニック・ラヴ
狩人たちの身体も例に漏れず、強い風に晒される。
クロニック・ラヴ
吹き飛ばされた遺体がぶつかってくる。
赤木 叶恵
「……ぐっ!」
赤木 叶恵
何だ。何が起こっている?
敷村 修也
「うわっ!」
敷村 修也
突然の出来事が続いて対応できない。
クロニック・ラヴ
狩人たちの目に留まらぬ高次元の戦闘が、
クロニック・ラヴ
広場を街を破壊していく。
迷ノ宮 光葉
衝撃波の影響で二人がどうなっているのかすら、わからない。
クロニック・ラヴ
その中心には常にクロニック・ラヴと、
海野標
海野標の姿がある。
『ひなたの恋人』萩原稜介
「修也くん」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「改めて訊くよ」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「君の答えは?」
GM
混沌に満ちた戦場の中。
GM
青い炎が地を舐めるように奔る。
GM
光葉に向けて放たれたその炎は、
GM
その傍におり光葉を庇い押し退けた、福の後ろ足を片方、焼き焦がした。

ぎゃんっという獣の悲鳴。福が怯え、へたり込む。
迷ノ宮 光葉
「福っ!!」
敷村 修也
ふ、福さん!!
赤木 叶恵
あっ 犬にも容赦ないタイプの映画だ!
安武 陸
吹き飛ばされてきた成人男性の遺体を受け止めきれず、そのまま後ろに放る。
安武 陸
「福さん!」
『彼女とともに』高地結凪
「……そっか」
『彼女とともに』高地結凪
青い炎を目の当たりに、少女が声を漏らす。
『彼女とともに』高地結凪
「来てくれたんだ」
GM
炎が街を焼いている。
GM
青い炎が。
『埋み火』迷ノ宮御影
その炎を掻き分けて、
『埋み火』迷ノ宮御影
バインダーを扱うのにも苦労していたのに。迷ノ宮御影が広場に現れる
『埋み火』迷ノ宮御影
全身にウィッカーマンの青い炎を纏わせて。
『埋み火』迷ノ宮御影
迷いのない視線で、狩人たちを見据えている。
安武 陸
ああ!?
敷村 修也
うわっ
迷ノ宮 光葉
ぎょえ
赤木 叶恵
師匠~~~~ッ!!!
赤木 叶恵
「……え」
迷ノ宮 光葉
「…………お、兄様……?」
敷村 修也
「……っ!」
安武 陸
「あれは……」
『埋み火』迷ノ宮御影
腕を伸べる。
『埋み火』迷ノ宮御影
再び、炎が伸びる。
『埋み火』迷ノ宮御影
迷わない。例外はない。
『埋み火』迷ノ宮御影
その炎は、紛れもなく狩人たちへの殺意を以て放たれた。
迷ノ宮 光葉
まさか、兄の操る炎が、自分を狙うなどと疑ってもいない。先程福がかばってくれたのに。うごけない。ただ、困惑のままに、炎が迫る。
赤木 叶恵
呆然としていた。
赤木 叶恵
人を信じるのは苦手だ。何を信じればいいか、自分で正しい判断をできる自信がないからだ。
赤木 叶恵
だから、心から頼るものは一握りだけにして。
赤木 叶恵
それだけは絶対に信じ抜こうと決めていた。
赤木 叶恵
だから、
赤木 叶恵
「いっ……!」
赤木 叶恵
炎から殺意を読み取ることができない。燃え上がり足を焼く。
安武 陸
いやっ そうですよね
安武 陸
2人にダメージが入る
GM
そうだぞ
GM
二人じゃない方ががんばらないと全滅するぞ
GM
広場には炎と、破壊を齎す剣戟の衝撃が満ちる。
安武 陸
炎を、殺意を認識して身を躱そうとして。
安武 陸
気が付く。叶恵の足を這おうとする炎に。
敷村 修也
青い炎に身がすくむ。
敷村 修也
炎にすべてを焼き尽くされて、平和な暮らしの多くを失った。
安武 陸
「くそっ!」
安武 陸
腕の下に手を回して、投げるように強引に炎から遠ざける。
敷村 修也
その炎が迷ノ宮さんに向かっていく。
何かを恐れるより先に前へと飛び出す。
敷村 修也
「迷ノ宮さん!!」
敷村 修也
呆然と立ち尽くす彼女を横から攫うように炎を避ける。
赤木 叶恵
「……あ」
安武 陸
「しっかりしろ、叶恵!」
赤木 叶恵
何かに体を持ち上げられて、炎から離れる。
赤木 叶恵
焼けこげた痕。すり減った靴。幸いにも火は体を昇ってはこなかったが。
敷村 修也
「迷ノ宮さん!しっかりしてください!!」
赤木 叶恵
熱。痛み。それでようやくそれが攻撃であることを──少なくとも体は理解した。
赤木 叶恵
「い、今、先輩、が」
敷村 修也
そう言いながらすぐに立ち上がり次に備える。
迷ノ宮 光葉
気づけば修也に攫われるように炎からかばわれる。はっとする。でも事態に頭がついていかない。揺れる視線が、兄に釘付けになる。
『ひなたの恋人』萩原稜介
「……残念だな」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「どうやらそりゃあそうと言うほかない。それどころじゃないみたいだ」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「まあ、でも」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「同じだよな。起こることは」
『ひなたの恋人』萩原稜介
男が空を見上げる。
『埋み火』迷ノ宮御影
迷ノ宮御影の背には炎がある。
『埋み火』迷ノ宮御影
その炎は彼に灯る。
『埋み火』迷ノ宮御影
彼自身を焼き尽くす苛烈さで青い火の粉を噴き上げていた。
GM
その上空で。
GM
月が、赤く染まりゆく。
GM
冴え冴えとした月光は赤く、血の赤を上塗りして街を照らし、
GM
そうして、悲鳴が響いた。
GM
悲鳴は近くから。
GM
遠くから。
GM
紅に染まった街の尽く、四方から!
『彼女とともに』高地結凪
「運命の夜が来た」
『彼女とともに』高地結凪
「……やっと、この時が」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「幾千流れた血の魔力が、運命を塗り替える」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「――運命変転血戒『クロニック・ラヴ』は、起動段階に入った」
『ひなたの恋人』萩原稜介
狂騒と悲鳴の中で、狩人たちは誰も聞いてくれていなさそうだが、それはそれとして語る。フォロワーたちが朗々と語る
安武 陸
抱えたままの叶恵を下ろすが、かける言葉は見つからない。
安武 陸
誰にも、何も言えない。
『ひなたの恋人』萩原稜介
「半径10kmの領域が収束するとき、すべての運命は覆される」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「まあ――君たちには、どうでもいい話か」
赤木 叶恵
「あ……」
『ひなたの恋人』萩原稜介
「どうやら、それどころじゃないようだからね」
赤木 叶恵
集中の糸が切れる。先ほどまでは針に備えることだけを考えていた。今になって一気に、一連の出来事がのしかかってくる。
赤木 叶恵
混乱。頭の中は絡まって、どうすればいいかさえわからなくなる。
赤木 叶恵
立ちあがることすらできず。
『埋み火』迷ノ宮御影
迷ノ宮御影が指を向ける。
赤木 叶恵
「ど、どうっ、どうしようっ……どうす、れば……」
安武 陸
「……ああ、もう」
『埋み火』迷ノ宮御影
炎は三度地を舐める。そこに横たわる遺骸を焼き尽くしながら、狩人たちへの殺意とともに。
安武 陸
叶恵をもう一度抱えて、炎を躱す。
赤木 叶恵
「あっ……」
安武 陸
「ああ、もう!」
敷村 修也
バットケースから槍を取り出すと覆いを外し穂先を露わにする。
もう一方の手で光葉の手をひき炎を躱す。
迷ノ宮 光葉
ふらふらと修也に手を引かれるまま、すんでのところで炎を躱す。
赤木 叶恵
また体が持ち上がる。
赤木 叶恵
そこでようやく、先ほど自分を助けてくれたのが誰だか気付いた。
安武 陸
多分逃げたほうがいい。 逃げられるのか?この手練達から?
クロニック・ラヴ
その一方で、剣戟の高い音。
クロニック・ラヴ
放たれた針が海野標の胸元に向かい、
海野標
標は辛うじてそれを躱す。
海野標
しかし代わりに彼の胸元から、
海野標
何か煌めくものが弾かれて、狩人たちの方へと飛ばされた。
海野標
「――っはあ!?」
海野標
海野標は驚いた様子でそちらに身を向けかけて、
海野標
放たれた針にそれを阻害されて、舌打ちをする。
安武 陸
視線が自然と、弾かれたものへ。
GM
転がった何かは血溜まりへと落ち、赤い光に鈍く輝いている。
GM
銀色のペンダントのようだった。
クロニック・ラヴ
「それ」
クロニック・ラヴ
「そんなに大事なものでしたか?」
海野標
「おま、え」
海野標
「今」
海野標
「わざと――」
クロニック・ラヴ
「あなたが」
クロニック・ラヴ
「自分で捨てたものだったように、思いますけれど!」
クロニック・ラヴ
再び、衝撃波。
クロニック・ラヴ
二人の剣戟は高度を増して、
クロニック・ラヴ
嵐のような破壊は駅前を離れていく。
『埋み火』迷ノ宮御影
それを見送って、
『埋み火』迷ノ宮御影
「行くぞ」
『埋み火』迷ノ宮御影
御影がフォロワーの二人に声をかける。
『埋み火』迷ノ宮御影
妹にではなく。弟子にでもなく。
『埋み火』迷ノ宮御影
モンスターに与した人間へこそ、今の彼の言葉は投げかけられた。
『埋み火』迷ノ宮御影
「俺たちは、行かなければならない」
『埋み火』迷ノ宮御影
「積み上げる必要がある」
『埋み火』迷ノ宮御影
「――犠牲を」
迷ノ宮 光葉
「お…………、にい」さま、と声を振り絞ろうとして、失敗した。兄を振り返らせるすべはもうない。
『ひなたの恋人』萩原稜介
フォロワーたちは御影に頷く。
『彼女とともに』高地結凪
彼の炎に伴われて、
GM
青い炎に包まれるように、姿を消す。
安武 陸
衝撃波から叶恵を庇って、御影の方に視線を向ける。
GM
後には血染めの街と、
GM
赤い月が残された。
GM
遠くからは悲鳴と、騒々しい破壊音が響き渡っていた。
赤木 叶恵
「せん、ぱい……」
赤木 叶恵
先輩の教えに従って狩人をしていた。
赤木 叶恵
迷ったときは、先輩を頼りにしていた。
赤木 叶恵
先輩が倒れていたときは、先輩だったらどうするかを考えてきた。
赤木 叶恵
じゃあ今は?
赤木 叶恵
先輩。先輩。あたしは、どうしたらいいですか。
迷ノ宮 光葉
去りゆく兄たちをただ見送るだけ、その場に残された自分は血まみれの地面にへたり込む。そばに兄から贈られた愛犬が、悲しそうに鼻を鳴らした。
安武 陸
叶恵を下ろして、血溜まりに落ちた銀色のペンダントに向かう。
安武 陸
少し迷って、拾い上げる。
GM
銀色のロケットペンダントだった。
GM
長方形。中に何か、写真を仕込める形になっている。
安武 陸
見ないほうがいいか、と思ったが、手なりで開けてしまう。
敷村 修也
うわっ
安武 陸
ああ!?!?!?!?
敷村 修也
うわ
敷村 修也
うわうわうわ
安武 陸
小学校の文化祭だ
敷村 修也
ひっ、拾わなくてよかった~~~~!!!!
いや、拾いたいけれども~~~~
敷村 修也
上の空になるの三人目になるところだった
GM
そこに収まった写真には、一人の少年を挟む形で二人の少女が立っている。
GM
ひだまりのような笑顔を浮かべる高校生の少女と、
GM
どこかはにかんだ笑みを浮かべる、小学生の女の子と。
GM
その中心に、釈然としない顔で挟まれている、中学生の頃らしき標と。
GM
少し褪せた三人の写真が、そのペンダントには収められていた。
安武 陸
えっ いや~~~
安武 陸
なんか師匠おこられていたな……
安武 陸
ほわんほわん
赤木 叶恵
かわいいぞ かわいいね
迷ノ宮 光葉
かわいいね
安武 陸
みんなかわいいね
赤木 叶恵
六分ぎ小学校の文化祭だ
敷村 修也
かわいいんだけども~~~
安武 陸
これずっと首から下げてたの?
敷村 修也
かわいいんだけどもさぁ~~~~~
GM
ありおりコミッションです。感謝!
敷村 修也
えぐい
敷村 修也
率直な感想が出てしまった
迷ノ宮 光葉
まだ1話なんですよね…????いまこの時点で…1話なのになんか…すごくないですか?えっ
GM
#1です
GM
私も1話の導入で壊れました 保証OK
迷ノ宮 光葉
この先もっとすごいことが待っているとかやばいな……えええー?おかしくない?
安武 陸
ペンダントの中の写真を覗いて、見覚えのある顔を見る。
安武 陸
少し、迷って。
安武 陸
「……修也くん」
敷村 修也
「……なんですか?」
安武 陸
手の中の、蓋の開いたペンダントを見せる。
GM
三人の写真が修也の目に映る。
敷村 修也
「……安武さん、これ……」
GM
そのうち、修也の記憶に明確に残っているのは、一人だけ。
GM
灰葉陽の姿だけが、修也の思い出の中にある。
敷村 修也
見覚えがない。
見覚えがない人間が2人写っている。
敷村 修也
ひなちゃんだけが自分の記憶と一致する。
その隣に立つ中学生は、当然海野のはずなのに見覚えがない。
そのとなりの小学生の子も、まるで家族のように映っている。
敷村 修也
ひなちゃんの服装は六分儀高校のものだ。
じゃあなぜ、男子中学生に見覚えがない?
敷村 修也
疑問と混乱を押し殺す。
今、この破壊と殺戮が広がった場で動きを止めるのは良くない。
敷村 修也
松井さんにも教わったことだ。
敷村 修也
「……やす、武さん。ひとまず今はここをはなれて体勢を立て直しましょう。赤木さんと迷ノ宮さんが、せめて自分で動けるくらいには……」
安武 陸
「そうだな、それがいい。 ちょっと……、色々ありすぎたしな」
赤木 叶恵
「…………」
GM
二人が話す間にも、街の遠くでは激しい閃光と破壊音が。
GM
絶え間なく響いては、アスファルトの地面を揺らしている。
GM
その圧倒的な暴力の応酬を前に、狩人たちは無力なようでいて、そうではない。
GM
正しくは、そうではないと思い込むように、狩人たちは教わってきている。
GM
だから。
GM
本当のハンターズ・ムーンは、まだまだこれからだ。
GM
モンスターのデータを開示します。
◆吸血鬼:クロニック・ラヴ
耐久力12 余裕12 血量12
初期テンション20 激情2
◆支配力
・運命変転血戒『クロニック・ラヴ』《日常》強度3
その血戒は運命に干渉する。
原動力には、郷愁、憧憬を要求する。吸血鬼の持つ過去の断片が、街の至る所に結晶として残っている。
・虐殺結界《退路》強度3
発動準備に入った運命変転血戒『クロニック・ラヴ』は、半径10kmの結界を形成。触れれば確実な死をもたらすその結界は、じわじわとその半径を縮めている。
結界を形成するリソースは、領域随所にある血のため池だ。
◆フォロワー
・『埋み火』迷ノ宮御影
・『ひなたの恋人』萩原稜介
・『彼女とともに』高地結凪
GM
『埋み火』迷ノ宮御影は、前哨戦で目標にとることが出来ません。