#1 降りそそぐ愛 導入

GM
ではみなさまおそろいのようですので
GM
ブラッドムーンキャンペーン『R:クロニック・ラヴ』
GM
#1『降りそそぐ愛』、始めていきましょう。
GM
よろしくお願いします!
赤木 叶恵
よろしくおねがいします
迷ノ宮 光葉
よろしくおねがいします
安武 陸
よろしくおねがいします!
敷村 修也
よろしくお願いします

惨殺シーン

GM
2021年12月 六分儀市
GM
街は静まりかえっている。
GM
連日繰り返されている通り魔事件の犯人は、いまだ足どりさえ掴めず
GM
その死傷者数はすでに急に規模がでかい。百を超えていた
GM
にもかかわらず、人はいつも通りの生活を送り続ける。
GM
もたらされる静寂は、そうして夜の街に出た人たちが、
GM
ことごとく殺されていくからだ。
GM
死者は増え続ける。
GM
来る満月の夜――12月19日
GM
狩人達はモンスターを退治すべく、動き出していた。
赤木 叶恵
ついに来るのか本物の惨殺シーンが
安武 陸
本物の惨殺シーンだ!
敷村 修也
すでにめちゃくちゃになっとる
迷ノ宮 光葉
100人多い
GM
高層ビルの屋上で、
GM
何かが砕かれて光を散らし、刀剣が突き立つ。
海野標
「……あー」
海野標
「数が多い」
海野標
「偽装が面倒!」
海野標
「あいつ、マジでやる気だな」
海野標
現代伝奇ものではなんとしてもやりたい描写。ビルの下から吹き付ける風が、海野標の戦闘衣のマントを翻す
海野標
「この調子じゃあ、間に合うも何も――」
海野標
「って」
海野標
途中、慌てた様子でビルの端に駆け寄り、下を覗き込む。
海野標
「……おいおい」
海野標
「やる気どころじゃねえ」
海野標
「気が早すぎるだろ、クロニック・ラヴ」
海野標
言い捨てて、
海野標
床を蹴る。
海野標
「――ったく」
海野標
「主役を置いて、勝手に始めてんじゃねえよ!」
海野標
一筋の光となって、
海野標
天より空へ、落ちていく。
GM
『あの時』に止まったままの秒針を
GM
進めることを / 戻すことを
GM
選んでしまえば引き返せない
GM
だからこそ
GM
その愛を / しるしを胸に刻みこめ

 
GM
ブラッドムーン;R:クロニック・ラヴ
GM
――#1 降りそそぐ愛
GM
というわけで、導入をやっていきましょう。
GM
来る12月19日の満月の夜、狩人たちはすでに動き出しています。
GM
めちゃめちゃヤバいことになっており、吸血鬼をどうにかしないと大変なことになるため、頑張って止めてください。
安武 陸
しるしを胸に刻みこめ、今標なんだなってなって気が付いた
安武 陸
たいへんらしい
敷村 修也
見るからに大変
迷ノ宮 光葉
たいへんそう
GM
導入なんですが、えーと
GM
なので、幕間から19日に至るまでの好きな時間軸をやっていただくのがいいですね。
GM
一人ずつご指名でやっちゃうか。
GM
開幕でりっくんを呼ぶので、みんな出るか。
GM
夜のパトロールでもしましょう。仲良く。
GM
各位OK?
安武 陸
は~い
迷ノ宮 光葉
OKです
敷村 修也
はい!
GM
よいお返事だ
赤木 叶恵
はーい

導入:安武陸

GM
花金にしちゃお。
GM
12/19(金) 深夜
GM
六分儀市、某所。
GM
血染めのコートが地面に転がっている。
GM
勿論、中身が詰まっている。サラリーマンらしき遺体。
GM
大量の血がアスファルトを流れいで、
GM
冬の寒さにその血はすっかり冷えている。
GM
あなたがたは夜間のパトロール中にその遺体を発見する。
海野標
「……3人目」
GM
この夜に見つけただけで、既に。
赤木 叶恵
「居すぎ」
海野標
隣に膝をつく。
海野標
慣れた手付きで遺体の肩に手を添え、身体を返し、傷跡を確認する。
GM
心臓をひとつき。
GM
鋭利な刃物か何かで貫かれたようだった。
GM
人間を一撃で死に至らしめるだけの、鮮やかな手際。
敷村 修也
「うっ……」
安武 陸
ため息を吐いて、形だけでもと手を合わせる。
赤木 叶恵
KAO!!!!
敷村 修也
あっ
安武 陸
ちょっと髪が伸びた
GM
やすたけ~~~~~
迷ノ宮 光葉
りっくんイケメン
GM
同じ手口。
GM
今夜、否、
GM
この一連の殺人事件で伝えられている犠牲者の全員が、同じやり方で殺されている。
安武 陸
「……やっぱ同じやつの仕業っすかね」
迷ノ宮 光葉
「ひどいものですね……」今日もここにショッキングな武器が入っているんですか?大きなトランクを傍らに置いて、顔をしかめる。
海野標
「……鮮やかなもんだよ」
海野標
顔をしかめたまま、その遺体を天に上向ける。
海野標
見開かれた瞼に手を添えて、目を閉じさせた。
GM
横たわる身体から、夥しい血が流されている。
敷村 修也
「もう3桁いったんだよな」
海野標
「昨日な」
GM
しかし、吸血鬼にやられたにしては、
GM
その身体から溢れた血の量が、多すぎる。
GM
血は啜られていない。それらしい痕跡もない。
GM
ただ殺すために殺されたかのような、
GM
打ち捨てられただけの遺体。
安武 陸
アスファルトに広がる血液に視線を巡らせる。
GM
流された血は酸化し色褪せ、べったりと地面にこびりついている。
安武 陸
被害者が多すぎることと関係しているのだろうか、なんて思う。
GM
犠牲者の数は鰻登りに、一方で、狩人たちには違和感がある。
GM
これだけの死人が出ているにも関わらず、街はあまりにも静かすぎる。
安武 陸
さすがに、これほど連続して死体を見たことはない。
GM
最近人死にが多い、物騒だ、そのように言及するもののいる一方で、
GM
これが明らかな異常事態であることには、多くの人が気付かぬままである。
GM
特に一般人は、その異常を見過ごしている。
GM
まるで、魔女に認識を改変されているかのように。
赤木 叶恵
「とりあえず、人間業っぽくはないよね」
安武 陸
「はぁ……」
安武 陸
ため息を吐く。少なくとも下手人が人間でないのなら、自分も同じ殺され方をするかもしれない、ということだ。
海野標
「手際が良すぎるし手口も同じ。人間が一人で追いつく数でもないからな」
赤木 叶恵
「何より街のこの雰囲気」
敷村 修也
「騒ぎになってなさすぎますよね?」
海野標
「…………」
海野標
海野標はこのところ口数が減っている。
海野標
もとより喋る方ではないが、いつにもまして愛想がない。
海野標
狩人たちが囁き交わすのを聞いている。

口々に感想を述べたり考えたりする狩人たちのそばに座る。時折現場の空気を嗅ぎ、じっと宙を見つめる。
安武 陸
「……師匠? どうかしました?」
海野標
「いや」
海野標
陸には頭を振って、
海野標
「迷ノ宮の、……」
海野標
「……光葉さん、呼び方をいまいち迷っている。でいいか。どう思う」
迷ノ宮 光葉
「……そう、ですね。わたくしの見立てがあっているかはともかく、吸血鬼にしては獲物を狩っているというよりか無闇に死体を増やしている、という感じが、します」
海野標
光葉の話を聞きながら、街を歩く。
迷ノ宮 光葉
「魔女ならば、もう少し醜悪な……かわいらしい演出をされるでしょうし、ただの怪物にしては知性があるように思います」心臓をひとつき、は手練の手腕だ。
安武 陸
光葉ちゃんの見識 有識者ってかんじでたすかる
海野標
助かるので振りました
敷村 修也
助かる
海野標
繁華街より闇の深まる方をゆけば、また人の死体に行き当たる。
海野標
同じように血を流している。
赤木 叶恵
もはや驚きもない。溜息を吐く。
海野標
「…………」
海野標
「……まあ」
海野標
「作業のそれだよな」
安武 陸
ゴミのポイ捨てと同じテンションで死体がポイ捨てされている街。こんなに死体がゴロゴロ転がっている街は嫌だ。とても嫌だ。
海野標
切れかけの街灯の光が明滅して、倒れた死体の影を揺らしている。
海野標
「…………」
海野標
叶恵のことは迷わず呼び捨てにした。叶恵は?
赤木 叶恵
「吸血鬼にしろ魔女にしろ何にしろ、“っぽくないな”って感じだよね」
赤木 叶恵
「こいつが特別に変な奴なんだ。せめて死体から目的がわかればいいんだけど」
赤木 叶恵
「とりあえず、食事目的じゃないよね。味見すらしてないんだもん」
海野標
「…………」
海野標
まるで生きているかのように、光に照らされた影が出たり消えたりと。
赤木 叶恵
「殺す事自体が目的?にしては、うーん……どっちかっていうと」
赤木 叶恵
「手段……? この後に何かまだ続きそうというか。わかんないけど」
海野標
誰の目にも明らかに、その肉塊は、生命活動を止めて久しい。
海野標
その有様を見下ろして、息を吐いた。
海野標
「……『クロニック・ラヴ』」
海野標
ぽつりと、
海野標
なぞるようにその名を紡ぐ。
安武 陸
「……?」
赤木 叶恵
「え……」
安武 陸
「なんすかそれ」
赤木 叶恵
「それって……」光葉の方を見る。
敷村 修也
「……?」
迷ノ宮 光葉
「……兄が阻止しようとしていた、血戒の名前……ですが」
海野標
頷いた。
海野標
「運命変転血戒『クロニック・ラヴ』」
海野標
「……血戒でもって魔法を成立させよう、とかいう」
海野標
「まあまあデタラメな試みの話だ」
敷村 修也
「そんな……」
敷村 修也
そもそもモンスターの存在が既に漫画みたいなもん。漫画みたいな、と言いかけて口を噤んだ。
赤木 叶恵
「なんで急に」
海野標
「その血戒の成立には、夥しい血の犠牲を要する」
海野標
「血を吸って糧にするのではなく」
海野標
「積み重ねた犠牲の数で、運命の在り方に手を伸ばす」
海野標
また、人が死んでいる。
海野標
これで五人目。風俗業に従事しているらしき若い女だった。
赤木 叶恵
「……………………」
赤木 叶恵
「めちゃくちゃ怪しいじゃん」
安武 陸
倒れた死体から、地面に広がる血液。夥しい血。
海野標
「……まあ」
海野標
「十中八九それだろうよ」
赤木 叶恵
「どっから知るの、そういうの」
海野標
「ツテがあってね」
海野標
「このところ、ずっと世界各所を回ってたって話だが」
海野標
「ついにご来日なされたってワケだ」
安武 陸
「迷惑な世界ツアーだなぁ……」
敷村 修也
「世界各地でって、そんな大規模な血戒なのか?」
海野標
どっちも魔法みたいなもんではあるが、魔法の方が超絶デタラメがサクっと叶う。
それを扱う魔女が根本的に悪意の薄い存在だからギリイーブン、みたいな感じ。
血戒と魔法
ってのは、外から見たら似たようなもんに見えて」
海野標
「その実、根本的に違うからな」
海野標
「本来」
海野標
「吸血鬼には魔女のような大規模な現実改変能力はない」
海野標
「その垣根を飛び越えるってんだから、相応の代価は要るだろうよ」
海野標
代価として支払われた人間の亡骸を見ている。
海野標
血の匂いが濃く立ち込めている。
海野標
ただそこにある死。
赤木 叶恵
「めんどくさ……。もしかしなくても大捕り物になるじゃん」
海野標
「まあ、楽にはいかねえだろうな」
海野標
あいつもサバト連発して背徳破壊して回るわ6ラウンド元気に暴れ回るわ最悪だったが……。この前の魔女よりは面倒な相手だ」
安武 陸
「俺も波長合ってないほうがよかったな……」
海野標
「…………」
安武 陸
あれ、という顔で標を見る。普段ならツッコミが入ってもよさそうなものだ。
敷村 修也
「俺は自分の暮らしてる街でよくわからないままこれに巻き込まれる方が嫌ですよ……」
海野標
「まあ、結局人が死んでることに変わりはないからな」
海野標
代わりに突っ込んだ修也へと、相槌をうつような言い方をする。
海野標
「波長が合ってようがなかろうが、そこは同じだ」
安武 陸
最近の標はいつもと違う。陸からは、元気がないように見える。
敷村 修也
いつも通りのようで、いつも以上に愛想がないように思える。
安武 陸
冗談や弱音を言っても怒られたいの?怒らないので、調子が狂う。
迷ノ宮 光葉
「……どちらにせよ、兄が止めようとしたものならば、わたくしが代わりに止めなければならないものです。これ以上血を流させることも、運命を変えることも許されないと、考えます」
赤木 叶恵
「まあ、襲われるのを待つよりは襲いに行く選択肢ある方が楽か」
海野標
「結局やることは変わんねえんだよな……」
海野標
溜め息。
海野標
「そのあたりはわかってっだろ」
海野標
陸と修也を見ます。
敷村 修也
少し緊張した面持ちで頷く。
安武 陸
「……そっすね」
軽く返事をする。いつもならもう少し駄々をこねたい所だが、今の標相手にはそうする気にならない。
海野標
「…………」
海野標
少しの沈黙ののちに、
海野標
それでいいとばかりに頷いた。
GM
夜の街は静謐に。
GM
積み重なる死体の数を知ってか知らずか、
GM
変わらぬ日常の素振りを見せている。
海野標
「……あ」
海野標
街をめぐるさなか、何か思い出したように、
海野標
「敷村」
海野標
修也を呼ぶ。小さく手招き。
敷村 修也
「え、うん」
海野標
「…………」
海野標
寄ってきた修也の顔を暫し見ていたが、
海野標
不意に懐から何かを取り出して、渡す。
海野標
そっけないメールのアイコンにされるような横長のやつ。洋形封筒だった。
敷村 修也
よくわからないままに受け取る。
敷村 修也
「……これは?」
海野標
「一枚しか持ってこれなかったから」
海野標
「大事にしろよ。なくすな」
海野標
「追加はきかねえからな」
海野標
それだけ言って、また足を進める。
敷村 修也
それだけで中身がなんなのかわかった。
敷村 修也
「…………ありがとう」
海野標
「ん」
海野標
愛想のない返事がくる。
敷村 修也
上着の内ポケットにそっとしまう。
GM
それ以上標からの言及はなく、
GM
狩人たちは街を巡り、モンスターの重ねた戦果を思い知らされる。
GM
五人と一匹が見つけた遺体の数は、十七にも及んだ。
安武 陸
多い
敷村 修也
多い多い
GM
めちゃ死に太郎だぞ
敷村 修也
めちゃくちゃだよ~
安武 陸
海野標はこのところ口数が減っている。もとより喋る方ではないが、いつにもまして愛想がない。
安武 陸
陸からは、元気がないように見える。冗談や弱音を言っても怒らないので、調子が狂う。
安武 陸
くだらないことを話すのは、自分が日常にいると認識できる行為であり、自分を騙す行為である。
安武 陸
自分がそう考えていることを、標は知っていたはずだ。

 
安武 陸
普段の標なら、無視する場合、わざとらしいくらい明確に無視する。律儀だと思うほどに。
安武 陸
それをしない今の標は、どこか余裕がないように見えてしまう。
安武 陸
何か言ってやりたいとは思うが、何も言えない。
安武 陸
ふざけたことを言って、怒られないことに突っ込んで、煽ったりして、余裕がないことを指摘して。調子に乗るなよ、と怒られてめでたしめでたし。
安武 陸
と、行くようには思えない。
安武 陸
他人にできることには限界がある。今の自分の立場で、標との距離感で、届きそうな言葉は見当たらない。
安武 陸
時間が解決することは多い。今は何もできなくても、1週間後の自分は、明日の自分は、1時間後の自分は、何かができるかもしれない。
安武 陸
人は成長するものだから。
安武 陸
そもそも標のことだ。自分が何もしなくても自己解決してしまうかもしれない。
安武 陸
でも、今度話を聞くくらいしてもいいかもな、と思いつつ
安武 陸
その思いは、大量の死体の、大量の血に流されていってしまう。
安武 陸
うまく日常を掴めない。死がそこにある。
安武 陸
夥しく。大量に。
GM
PC番号順でやってしまおう。叶恵ちゃんいいかな。
赤木恵夢
おはなししませんか~。
赤木 叶恵
する~~~っ
赤木恵夢
しましょ~

導入:赤木叶恵

GM
お話だし、やっぱり帰宅後かな。
先程のシーンの少し前に時間軸を取りましょう。
GM
さて、恵夢ですが、ハロウィンの一件以来、バイトに出ることがかなり減りました。
GM
辞めたわけではないけど、シフトが減った。その分家のことを色々やっている感じがします。
GM
なんとなく、塞ぎ込みがちな気配もあった。強姦未遂。あれだけのことがあったから当たり前ですが……
安武 陸
そりゃあそう……
安武 陸
むしろ辞めてないのえらいよ
安武 陸
辞めな!!!!!!
敷村 修也
トラウマになってるそりゃそう
赤木 叶恵
ゆっくり休もう
安武 陸
あたりまえすぎる
迷ノ宮 光葉
おねいちゃんえらいな…
GM
といった感じに11月を終え、12月に入り、
GM
クリスマスやら忘年会シーズンの繁忙期に、街が浮き足立つようになってきたのですが……
GM
その日、叶恵が学校から帰宅すると。
赤木恵夢
キッチンの食卓に、恵夢が顔を伏せている。
赤木恵夢
背を丸め、腕に顔を埋め。
赤木恵夢
コンロには大きな鍋がひとつと、食卓の準備は済んでいるけれど、
赤木恵夢
その肩は小さく震えていた。
赤木 叶恵
「…… ……」
赤木 叶恵
玄関のドアを静かに閉めて、姉の近くへ。
赤木 叶恵
「……ただいま」
赤木恵夢
「ぁ」
赤木恵夢
「あ、叶恵ちゃ」
赤木恵夢
「ん」
赤木恵夢
顔を上げた恵夢の頬には涙が伝っていて、
赤木恵夢
遅れてそれを思い出したように、指先で目元を拭う。
赤木恵夢
「ご」
赤木恵夢
「ごめんね」
赤木恵夢
「気付かなくて」
安武 陸
ああ~~~っ
安武 陸
あ~~~あ~~~~
敷村 修也
あ~~
安武 陸
あ~あ~あ~~~
迷ノ宮 光葉
おねいちゃんかわいい
赤木恵夢
「え、と、ポトフ」
赤木恵夢
「できてるよ」
赤木恵夢
「夕飯……」
赤木 叶恵
「……ん」
赤木恵夢
「お姉ちゃん、今」
赤木恵夢
「いま」
赤木恵夢
「…………」
赤木恵夢
作った笑顔と裏腹に、目の端から涙がまた溢れ落ちる。
赤木 叶恵
「……」
赤木 叶恵
口を開こうとして一度閉じる。洗面所で手を洗ってから再び戻り、食卓へ。
赤木 叶恵
「おいしそう」
赤木恵夢
「う」
赤木恵夢
「うん、ポトフ」
赤木恵夢
「お姉ちゃん、得意だから……」
赤木恵夢
ポトフは冬になると恵夢のよく作る料理で、
赤木恵夢
一番大きな鍋を使って量を作って、途中で味変とかします。
赤木恵夢
トマト缶入れたり。牛乳入れたり。
赤木恵夢
「よ」
赤木恵夢
「よそうから、ね」
赤木恵夢
「カナちゃん、いっぱいたべて、ね」
赤木 叶恵
「うん、お願い。お姉ちゃんは?」
赤木恵夢
わたわたと椅子を立ちあがる。
赤木恵夢
「お姉ちゃん、は」
赤木恵夢
「…………」
赤木恵夢
「たべる」
赤木恵夢
「よ」
赤木恵夢
笑って、深皿にポトフをよそう。
赤木恵夢
叶恵のぶん。恵夢のぶん。
赤木恵夢
恵夢のぶんと思われるほうは、かなり少なめに。
赤木恵夢
スプーンは木製のもの。温かみがあるからと、好んでよくこれを使う。
赤木恵夢
夕食の支度をしているうちに、いつものルーティンワークに少しずつ落ち着きを取り戻してきたのか。
赤木恵夢
恵夢もなんとか泣き止んで、二人で食卓につく。
赤木 叶恵
深皿と木のスプーン。湯気を立てるポトフ。
赤木 叶恵
いつも通りを頑張りつつ、いつもよりも頑張って口数を増やしている感じがする。……これが出ると、冬になったなって感じがする
赤木恵夢
「寒くなったもんねえ」
赤木恵夢
「カナちゃんも、風邪、気をつけて」
赤木 叶恵
「いただきます」スプーンを手に取って一口。
赤木恵夢
「……ん」
赤木恵夢
「めしあがれ」
赤木恵夢
「……いただきます」
赤木恵夢
叶恵に遅れて手を合わせて、恵夢も食べ始める。
赤木 叶恵
口の中でごろりと転がる野菜はまだ熱い。熱のこもった息を吐く。
赤木 叶恵
「……ポトフ、好き」
赤木恵夢
きょと、と目を瞬いて、
赤木恵夢
すぐに破顔した。
赤木恵夢
「……うん」
赤木恵夢
「よかった」
赤木恵夢
「うれしい……」
安武 陸
料理の感想を頑張って言っている
赤木恵夢
こころあたたまる
敷村 修也
ポトフのような空間であることよ
赤木恵夢
以前だったら、こういう叶恵の感想にももっとあれやこれやと言葉を重ねてきたものだが。
赤木恵夢
あの一件以来、
赤木恵夢
違う、今日は特別に。
赤木恵夢
うまく言葉を見つけられないでいる。
赤木 叶恵
近頃は、学校から帰る時間が早くなった。
赤木 叶恵
姉を放ってはおきたくなかったし、自分自身、外は居心地が悪かった。
赤木 叶恵
あの叶恵が!放課後、どこにも寄らずにまっすぐ帰る事も増えた
赤木 叶恵
それでも、帰りの遅い日は少ないわけではない。
赤木恵夢
浮かべていた笑顔も少しずつ忘れてしまって、
赤木恵夢
塞ぎがちな表情を滲ませている。
赤木恵夢
バイトの減った恵夢は、叶恵を出迎えることが増えた。
赤木恵夢
恵夢はいつでも叶恵の帰宅を喜んで笑って、明るく振る舞ってみせては、
赤木恵夢
それが最後までうまくいくこともあれば、そうでないこともある。
赤木恵夢
今日は。
赤木恵夢
特別に、それが難しそうにしている。
安武 陸
え~ん師匠の様子が変だしお姉ちゃんの様子もいつもと違うよ~
赤木恵夢
「…………」
赤木 叶恵
気を回すのは得意ではないが、この状況で違和感に気付かないはずもない。
赤木 叶恵
少しあれこれと考えて、結局。
赤木 叶恵
「………なんかあった?」
赤木 叶恵
直球勝負に定評あり。こういう言葉が出てくる
赤木恵夢
「え」
赤木恵夢
また目を瞬いて、
赤木恵夢
「…………」
赤木恵夢
ぼんやりと野菜を割っていた手が止まった。
赤木恵夢
背を丸める。視線を落とす。
赤木恵夢
「……え、っと」
赤木恵夢
「えと……」
赤木恵夢
でも、今、とか、こんな話、とか、しばらくぼそぼそと悩み込んでいたが、
赤木恵夢
そのうちぽろりと、
赤木恵夢
また、涙が落ちる。
赤木恵夢
「……カナちゃん」
赤木恵夢
「カナちゃん……」
赤木恵夢
首を縮めて、流した涙をまた端から指で拭おうとしながら、叶恵の名を呼ぶ。
赤木 叶恵
「……ん……」
赤木 叶恵
「どうした」
赤木恵夢
「れ、っ」
赤木恵夢
「礼子、ちゃん」
赤木恵夢
「しんじゃった……」
赤木恵夢
時折話題にあげる、仲のよいクラスメイトの名を口にする。
赤木 叶恵
「……!」
敷村 修也
うわ
安武 陸
そっかぁ
赤木 叶恵
だよね~~~~っ
安武 陸
人がいっぱい死んでるもんなぁ
赤木恵夢
「き、のう」
赤木恵夢
「予備校、って」
赤木恵夢
「いつもどおり」
赤木恵夢
「いつもどおり、別れたのに……」
赤木恵夢
あなたの姉は肩を震わせながら泣いている。
赤木 叶恵
確かに。
赤木 叶恵
近頃、人が死ぬ話をよく聞くとは思っていた。
赤木 叶恵
だが、何件かそういう話が重なるなと感じた程度。
赤木 叶恵
ニュースになるわけでもなく、組織がどうこう言うわけでもなく。特に問題に上ったりなどという話も聞いていない。
赤木恵夢
「……最近」
赤木恵夢
「物騒、だから、って」
赤木恵夢
「気をつけて、って」
赤木恵夢
「言ってたけど、……でも、まさか」
赤木恵夢
「まさか……」
赤木 叶恵
自分で調べたわけでもない。こうして勝手に耳に届く話だけでも、もう10件近くを耳にした気がする。あまりにも死に過ぎではないだろうか?
赤木 叶恵
「……そっ、か」
赤木恵夢
最早虚勢を張る気力もないのか。
赤木恵夢
俯きがちに、叶恵に頷く。
赤木 叶恵
「……外、危ないから出ちゃだめだよ。特に夜は」
赤木恵夢
「うん……」
赤木恵夢
そういった叶恵の忠告も素直に聞くようになった。
赤木恵夢
「……これ」
赤木恵夢
「いつまで、続くのかな」
赤木恵夢
ぼそぼそと、弱音のような言葉を漏らす。
赤木恵夢
「……あのひと、が」
赤木恵夢
「なんとか」
赤木恵夢
「してくれてたりとか」
赤木恵夢
「あるのかな……」
安武 陸
お?
迷ノ宮 光葉
お?
敷村 修也
わ?
赤木 叶恵
「あのひとって誰」
赤木恵夢
「…………」
赤木恵夢
少し視線を彷徨わせてから、
赤木恵夢
「……カナちゃん、知ってたりとか」
赤木恵夢
「ない?」
赤木恵夢
「……あのね」
赤木恵夢
「ハロウィンの夜に、ね」
赤木恵夢
「きらきらって、街にね……」
赤木恵夢
「何してるか、とか、は」
赤木恵夢
「お姉ちゃん、わかんなかったけど……」
赤木恵夢
「でも、なんか」
赤木恵夢
がんばってくれてるみたいだった、って、ぼそぼそと口の中で不明瞭に。
赤木 叶恵
「? …………あ」
赤木恵夢
「知ってる?」
赤木 叶恵
「(光る男。これ海野か!?)」
敷村 修也
あーはん
敷村 修也
ふふふふ
安武 陸
ふふっ
敷村 修也
ひらひらマントの
赤木 叶恵
声がちょっとひっくり返っている。しっ、知らない
赤木恵夢
「…………」
赤木恵夢
じ、と叶恵の顔を見ている。
赤木恵夢
しばしの沈黙。の、のちに、
赤木恵夢
「……そっか」
赤木 叶恵
「……………………」
赤木恵夢
と、深追いはせずに、しかし少し落胆したように。
赤木 叶恵
「(ご、誤魔化せた…………?)」
赤木恵夢
「……カナちゃん」
赤木 叶恵
「な、なに」
赤木恵夢
「……もし」
赤木恵夢
「もし、ね」
赤木恵夢
「その人に、会うようなこと、あったら……」
赤木恵夢
「伝えてくれる?」
赤木恵夢
「あの時はありがとう、って」
赤木 叶恵
「……」
赤木 叶恵
「…………………………わかった」
安武 陸
どうかな~ 会うことなんてあるのかな?
敷村 修也
あちこちから感謝される標
赤木恵夢
なぞのそんざいですからね
迷ノ宮 光葉
なぞのそんざい
安武 陸
そんな人と妹が顔見知りなわけないしな~~っ
GM
誰だかもわからん相手に感謝を伝えようがないよなあ~っ
赤木 叶恵
「きっとすぐに収まるよ。年末年始は外に出れる」
赤木恵夢
「……ん」
赤木恵夢
「うん」
赤木恵夢
「そうだと、いいな」
赤木恵夢
「……カナちゃん」
赤木恵夢
「カナちゃんも、気をつけて」
赤木恵夢
「ね」
赤木 叶恵
「気を付ける」
赤木恵夢
「……うん」
赤木恵夢
「カナちゃん」
赤木恵夢
「死んだら、やだよ……」
赤木 叶恵
「またお姉ちゃん泣いちゃうもんね」
赤木 叶恵
「大丈夫、わかってる」
赤木恵夢
「……うん」
赤木恵夢
「泣いちゃう……」
赤木恵夢
虚勢もなく、ただ頷いた。
赤木 叶恵
これは異常事態だ。狩人たちに連絡を取ってみよう。
赤木 叶恵
何が起こっているかはわからない。敵がいるかもわからないし、もしかしたら狩人の管轄ですらないかもしれない。
赤木 叶恵
それでも、姉が脅かされている。自分は動く理由はそれだけで十分だ。
GM
叶恵ちゃん・・・・・・・・・
GM
えーんえーん
安武 陸
いい子だ
GM
やさしいいもうと
赤木 叶恵
0話で集まった狩人たちのグループチャットができている。グループへと、メッセージを打ち込む。
赤木 叶恵
調査したいことがある。力を貸して欲しい。だから送信ボタンを押した。
チャットへとメッセージが表示される。
赤木 叶恵
『おい海野!!!!!!』
GM
叶恵の勢いに反して。
海野標からの返信が来るまでには、暫くの間があった。
赤木 叶恵
そんな……
安武 陸
え~ん師匠の元気がないよ~
GM
既読スルーはされてません
GM
未読スルーです
赤木 叶恵
いそがしいもんね
GM
忙しいです
安武 陸
師匠……忙しそう……ちゃんと寝てるかな……
敷村 修也
ふふっ
GM
それでは修也くんですがいけますか?
敷村 修也
はーい

導入:敷村修也

灰葉陽
前触れなく振られる故人のRP。おっ
灰葉陽
「しゅーくんじゃん! おはよ~!」
灰葉陽
「聞いたよー、この前の中間順位よかったんだって?」
灰葉陽
「相変わらず無敵ですな~」
敷村 修也
「おはよう。まぁね。結構頑張ったから」
灰葉陽
「うお~」
灰葉陽
「相変わらず澄ましよる」
灰葉陽
「当たり前です、ってカオだ~」
安武 陸
ああっ
安武 陸
しゅーくん中1の頃からこんな感じなの
迷ノ宮 光葉
思い出の中はきらきらしているかんじだ…
赤木 叶恵
綺麗な言葉を使って育ってきた
敷村 修也
ちょっとばたついてふわっとしちゃったので調整しています
灰葉陽
ふふ
灰葉陽
通学路を歩く。二人。
灰葉陽
修也の通う中学校と、ひなたの通う高校へは、通学路が途中まで被っていた。
敷村 修也
「もう中学生になったんだしいつまでも子供じゃねーもん」
灰葉陽
急ぐような時間でもない。のんびりと、この時間を楽しむように言葉を交わしながら。
灰葉陽
「たのもし~」
灰葉陽
「私けっこう苦労したよ? 中学上がった時さぁ」
灰葉陽
「急に勉強難しくない!? って」
敷村 修也
「中1の中間なんて別に難しくないって。英語とか超簡単だったし」
灰葉陽
「マジでめっちゃ言いよるやんけ……」
灰葉陽
「今ここで難しくなったって言ってる人いるんですけど……」
灰葉陽
いやまあ確かに英語はけっこう楽だったけど……とか
灰葉陽
ぼそぼそと言い訳めいたことを言っている。
敷村 修也
「中学の時のひなちゃんより俺が賢いってことじゃん」
灰葉陽
「なんてことない事実みたいに言うなぁ~!」
灰葉陽
「としうえをー、うやまいなさーい!」
敷村 修也
「ひなちゃんがちゃんと勉強しておけって言ったくせに」
灰葉陽
「それとこれとは別~!」
灰葉陽
手を伸ばしてきます。
灰葉陽
うりうりと修也の髪をごちゃぐちゃにする。
敷村 修也
「ああっ!もう、やめろよー」
灰葉陽
「わははは」
灰葉陽
「効いてる効いてる~」
敷村 修也
「誰かに見られたら恥ずいだろ!」
安武 陸
恥じらってる
安武 陸
中1男子、年上の女子とイチャイチャしてるの見られたくないよね
灰葉陽
「壁に耳あり障子に目ありって言うもんね~」
灰葉陽
「もう見られちゃってるかも?」
敷村 修也
「ええ~~っ!やだなぁ……」
灰葉陽
「……あ」
灰葉陽
ほら、と
灰葉陽
途中、何かに気付いたように、ひなたが通学路を振り返る。
敷村 修也
つられて後ろを振り返る。
灰葉陽
振り返った先、認めたその姿に、
灰葉陽
「遅いよ――」
GM
当然そう。夢が覚める
GM
朝。
GM
まだ見慣れぬ天井が、あなたの視界に広がっている。
敷村 修也
「………」
GM
繰り返し。
GM
眠るたびにあの頃の夢を見るようになって、そろそろ一週間が経つ。
GM
夢の中で、あなたは灰葉陽と話をしている。
GM
他愛もない、なんてこともない話をして、
GM
そしていつも、同じところでそれが切れる。
敷村 修也
流石に毎晩のようにみる夢にも慣れ、目を覚ましてもため息も出ない。
敷村 修也
記憶の中にしかないと思うとどうしても思い出してしまう。
敷村 修也
体を起こし、しばしぼうっと過ごす。
敷村 修也
枕元のベッドテーブルに置いた洋封筒には海野からもらった写真が入っていた。
敷村 修也
封筒から写真を取り出しながめる。
灰葉陽
夢で見たものと同じ笑顔がそこにある。
灰葉陽
記憶に思い描いていたものが、確かに存在していた事実を、再確認できる。
灰葉陽
高校に入った後、若葉の時節の、制服姿の灰葉陽の写真。
灰葉陽
こちらを振り向いて笑っている。
敷村 修也
ちょうど自分は中学に上がったころのひなちゃんの写真。
敷村 修也
ほんの少しあった写真やらなにやらは、0話の幸福破壊で家を燃やされている。すべて家と一緒に燃えてしまった
敷村 修也
海野からもらったたった一枚の写真を大切に封筒にしまいなおすと、ベッドから降りて服を着替える。
GM
やっぱ炎は駄目だな
GM
炎、原始破壊
安武 陸
家が燃えるのたいへんだな
GM
家が燃えることは一般的にたいへんなんじゃ
安武 陸
そうかも そうだな
敷村 修也
何もかもが無くなるんじゃ。
GM
生家が火事の被害に遭った修也は、そのあと両親と話し合って進学予定の大学近くに独居することが決まった。
GM
見つけた両親の仮住まいも遠く、どうせ大学に行くのにそうする予定だったし丁度いい機会だ、という結論。
GM
だから今は、朝に修也を起こす者はない。
GM
その代わりのように、こうして毎朝夢を見て、灰葉陽のことを思い返している。
敷村 修也
1人暮らしは問題ない。
両親がいなくてもちゃんと生活できる。
敷村 修也
むしろ自分の近くにいればいるほど、両親が巻き込まれる可能性も上がるだろう。
敷村 修也
だから、1人でもちゃんと生活できると示したかった。
敷村 修也
着替え終えて簡単な朝食を摂る。
敷村 修也
パンを焼いてハムをのせて、野菜ジュースで流し込むだけ。
敷村 修也
1人分の洗い物を済ませると、誰もいない部屋を後にする。
敷村 修也
「いってきます」
敷村 修也
そう言って扉を閉めた。
GM
いや……ちゃんとしてる
GM
野菜ジュースだけはどうかと思うけど……
安武 陸
高校生男子の朝食にしては上々
GM
朝なんてこんなもんだしなって感じよな
GM
まあ初期だからちゃんとしてるというのもあるだろうが
安武 陸
ファミチキとかアイスクリームとかで済ませない分偉い
GM
カロリーとったからいいしょのやつ
安武 陸
洗い物までしてる
赤木 叶恵
修也くんは丁寧な暮らしができる子
松井正幸
「しっかし海野の坊、こんなダチがいたとはなァ」
GM
曙光騎士団のオフィスに併設されたトレーニングルーム。
GM
そこであなたを鍛える男――曙光騎士団所属のハンターは、
GM
トレーニングが終わって息をつく修也を見下ろしながら、愉快げに肩をすくめた。
GM
名前は松井正幸。槍使い。バツイチ子持ち、らしい。
GM
彼とは海野標の紹介で知り合った。面倒見てくれとか言われてる、とか、そういう風な話。
敷村 修也
「あー……まぁ、海野は友達たくさん作れるようなタイプじゃないですからね」
松井正幸
「だっはは」
松井正幸
「クラスメイトからそう言われるか~」
松井正幸
缶コーヒーを飲みながら笑っています。
敷村 修也
「俺と違って愛想悪いですし。学校にもあんまり来てないですから」
安武 陸
言いよる~
安武 陸
言いよる言いよる~~~
安武 陸
師匠ちゃんとお友達いるかな……しんぱい……
松井正幸
「まあアレはなァ」
松井正幸
陸PL「一応ってなんすか! 実力がめちゃめちゃめちゃめちゃあるし精力的なハンターっすよ!!」いちおうま、実力あって精力的なハンターではあるからな」
松井正幸
「むしろなんで学校行ってんだろな。いや、行ったほうがいいとは思っけどよ」
敷村 修也
「……そのあたりは、海野にしかわからないですからね」
松井正幸
「無所属でも十分食えっだろうになァ」
松井正幸
「俺はあれだぜ」
松井正幸
「ブイブイ言わしてた無所属の頃より、隠居して曙光に飼われてる今のが安定してっからな」
松井正幸
がはは、と笑う。
敷村 修也
もしかすると、と心当たりがないでもないが、あまりにも突拍子もないことだと口にはしなかった。
敷村 修也
「ええ~、松井さん無所属の頃そんなにワルいことしてたんですか?やんちゃ自慢ですか?」
松井正幸
昔はもっと尖ってたらしいですが、足に大きな怪我を負って前線を退いた今はこうして新人の面倒を見るのを主な生業にしているらしいです。
松井正幸
「酒もタバコも女も全部やったやった」
松井正幸
「養育費滞納とかもあったな」
松井正幸
「いや、後からはちゃんと帳尻合わせたけどな?」
安武 陸
がはは笑いをするおじさんだ いいな
迷ノ宮 光葉
おじさんいいな
安武 陸
膝に矢を受けたタイプだ
安武 陸
養育費払ったげて~~~~
安武 陸
女が子供を引き取った場合に男は養育費滞納しがち
安武 陸
避妊しなよ!!と思ったけど、そう考えるとハンターは優秀な血統の人以外は子供作らないほうがいいな 去勢しよう
松井正幸
決断が早い
松井正幸
結婚して子をこさえた後にハンターになることもあるんだぞ
安武 陸
つらすぎる
安武 陸
家のローンもあるのにハンターになんてなれないよ~
松井正幸
でも……しないと死ぬ!
安武 陸
地位も信頼も得た会社をモンスターとの戦いに赴くために無断欠勤しないといけないの嫌すぎる
赤木 叶恵
ハンターをやることそのものが不幸だよ
安武 陸
それはそう
安武 陸
陸やっぱ就活しないほうがいいと思うよ
敷村 修也
「うわ、典型的な不良どころか社会的にもまずいじゃないですか」
松井正幸
「吸血鬼ハンターってのは収入が不安定なんだよ。仕方ねえだろ」
松井正幸
「帳尻合わせてるだけ偉いだろ」
敷村 修也
「それはそうですけどぉ~」
松井正幸
「モノビースト狩ってる奴らとかはなんなんだかね~。吸血鬼ハンターとモノビーストハンターは割と仲が悪い。
曙光騎士団は吸血鬼ハンターの組織。
あれ変態だろ
松井正幸
あれは全然金にならねえ、とか切って捨ててる。
敷村 修也
「吸血鬼が一番お金になりやすいんでしたっけ」
松井正幸
「溜め込んでる奴を当てて、いい感じに配分もぎ取れりゃな」
松井正幸
「ハズレ引いたらお疲れ様です~だ」
松井正幸
「お粗末さまでした~」
敷村 修也
「まぁ生活不安定になりますよね、それだと。海野はなんか結構稼いでるみたいですけど」
松井正幸
「数狩りゃそのぶんアタリも引けるからな」
松井正幸
「ここ最近はずっと街にいっけど、前は海外飛び回ってたって話だし」
松井正幸
「あいつはあいつで溜め込んでんじゃねェか?」
敷村 修也
「その辺は俺にもわかりませんね。少なくとも金に困ってはなさそうですけど、どういう生活してるかまでは聞いたことないですから」
松井正幸
「ウッスい縁だな~」
松井正幸
煙草を取り出しかけて壁に張られた禁煙のポスターを思い出しています。
安武 陸
海外にいたんだ
安武 陸
英語……喋れるのか……?
松井正幸
実はペラペラかも
安武 陸
そんな……
安武 陸
英語喋れても喋れなくてもそんな……ってなる
松井正幸
「の割にゃわざわざ俺様を紹介してもらえるたぁ、修也お前ツイてんなァ」
松井正幸
「感謝しろよー!」
松井正幸
どっちへの感謝だかわかんないようなことを言いながら、修也の背中をばっしんばっしん叩きます。
敷村 修也
「ははは、そうですね。ありがとうございます」
敷村 修也
ばっしんばっしんたたかられながら松井への感謝を口にする。
松井正幸
「よーしよしよし」
松井正幸
「素直な子供はよく育つ」
松井正幸
「まあその子供を人殺しに仕立て上げてんのが俺の仕事だけどな」
敷村 修也
「………」
松井正幸
「生き残るためだ。しゃあねえわな」
松井正幸
「命あっての物種だぜ。覚えとけ、修也」
敷村 修也
「そうですね。よっく覚えておきます」
松井正幸
「うむ」
安武 陸
松井さんほどよくダメないいおじさんでいいな
安武 陸
修也くん、結構こんな弟子が欲しい!みたいな理想の弟子に近くない?
安武 陸
人により好みはあるだろうが……
松井正幸
素直だしな
赤木 叶恵
ありがたい
赤木 叶恵
味わい深い師弟だ
松井正幸
今更威厳ありげに重々しく頷いてから、時計を確認する。
松井正幸
「お、終わりだな」微妙な勤務残り時間を雑談で潰してました。
松井正幸
「俺帰っから、戸締まりとか鍵とか頼むわ」
松井正幸
全体的に雑用とかもう容赦なくポンポン投げてきます。
敷村 修也
「わかりました。松井さんもお気をつけて」
松井正幸
「へいよ~」
敷村 修也
そういうことは気にならない。慣れたもんだ。
松井正幸
へらへらと手を振って、トレーニングルームを出ていく。
松井正幸
いつもの通り時間通りに。
GM
修也は残され、また一人。
GM
松井がいなくなって改めて、あの人煙草臭いよな、とか、そういうことが再確認されたりする。
敷村 修也
トレーニングルームを片付け鍵をかける。
GM
曙光騎士団のオフィスは、トレーニングルームなんてものがあるくらいなので、それなりに広いビルにある。
GM
廊下は明るくきれいな感じに。場末感薄い。
GM
そういう廊下を歩いている最中、
GM
不意に修也のスマートフォンの着信音が響く。
敷村 修也
「ん」
GM
非通知の表示。
GM
ですが、ハンターを始めてからは、それなりにこういう連絡も増えた。
GM
結構みんな胡乱だし、知らない電話番号からかかってきたと思ったら松井だったとか、そういうこともあった。
敷村 修也
画面を見ながら少し待つ。切れる様子はない。
敷村 修也
片手で操作すると通話を繋いだ。
GM
『もしもし』
GM
知らない男の声だった。
GM
『敷村修也くんだね?』
GM
まだ若々しいと言える男の声だった。
安武 陸
誰だ
敷村 修也
眉をひそめる。
敷村 修也
「もしもし?どなたですか」
GM
『ハロウィンの件は災難だったね』
GM
『お疲れ様だ』
GM
質問には答えない。
GM
代わりに馴れ馴れしく話しかけてくる。
敷村 修也
ハロウィンのことを知っている。そして自分の電話番号を知っていて、なおかつ非通知で掛けてくる。
それだけならまだどういう相手なのか絞り込むことは難しかった。
GM
『なあ』
GM
『灰葉陽に、また会いたいとは思わないか?』
敷村 修也
「……は?何を言ってるんですか?」
安武 陸
わ~
迷ノ宮 光葉
わ~~
敷村 修也
電話口の向こうから出てきた言葉はあの悪趣味な魔女と同列のよくないものだということがすぐにわかる。
GM
『言葉のとおりだよ』
GM
『君がそれを望み、そのために行動するのなら』
GM
『再び、彼女に会えるかもしれない』
GM
訝しまれているのは分かっているのだろう。
GM
その上でずかずかと踏み込むように言葉を重ねる。
GM
『彼女との再会を願うなら、君が戦うべき相手はモンスターではない』
GM
水平線。ホライゾン
GM
『ああ、いや、これでは通じないな』
GM
『海野標だ。君の敵になるのは』
安武 陸
ほらいぞん
安武 陸
海野標だなぁ……
敷村 修也
あのハロウィンの日のような、土足で踏みあがられるような不愉快な感覚。
あの時に教わったように、言葉を深くとらえず聞き流すよう努力する。
敷村 修也
「ああ、そうですか。すいませんが今忙しいんで……」
GM
『彼の態度に何か違和感を感じたことは?』
GM
『君には、彼から奪われたものがある』
GM
『それを取り戻す権利もまた、君にはあるはずだよ』
敷村 修也
まともに取り合おうとしなくとも、電話口の男の言葉は心の奥底の言葉にもできないような部分をざわつかせる。
不快で、感覚的に避けたく、そしてだからこそ触れたくなるようなもの。
安武 陸
は~~~~~~???そんなものないが~~~~~~??????
安武 陸
聞くな修也くん!!!!!!!!!
迷ノ宮 光葉
ぱくちさん面白いな
GM
りっくんいつも聞くなって言ってる
安武 陸
聞くな!!!!!!!!!
GM
見ざる聞かざる言わざる
安武 陸
師匠がなんかそういうことするわけないだろ!!!!!聞くな!!!!!!!!
GM
でも……りっくんだって血を吸われたし……
安武 陸
吸われたけど……
安武 陸
やっぱ何かしたのかもしれん……
安武 陸
でも聞くな!!!!修也くん!!!!!!
迷ノ宮 光葉
ふふw
GM
『まあ、最後は君が決断することだ』
GM
『俺は君が知らないことを教えてやろうと思った』
GM
『選択肢を提示してやろうとね』
GM
『それだけさ』
敷村 修也
「なんのことだかさっぱりですね。もういいですか?」
GM
『いいよ』
GM
あっさりと答える。
GM
『ああ、でも』
GM
『君の質問に答えてなかったな』
GM
『俺は萩原稜介』
GM
『灰葉陽の、恋人だ』
GM
言い残して、通話が切れる。
安武 陸
えっ
迷ノ宮 光葉
えええええええええ~~~~~
安武 陸
かれぴいたんだ………
安武 陸
いやまだ恋人と信用するのは早い ストーカーとかかもしれん
GM
他人を恋人と思い込んでいる人とかいますからね
安武 陸
いるいる
敷村 修也
「………」
敷村 修也
何もかも怪しい上にめちゃくちゃすぎる話。ひなちゃんの恋人を名乗る男から、電話でひなちゃんに再び会うために、海野からなにかをとりもどせって?
敷村 修也
明らかに”そっち”側の話で、今すぐにでも報告して話の内容にはまじめに取り合わない方がいいとわかっていた。
敷村 修也
それでも、通話ボタンを自分から切ることはできなかった。
敷村 修也
再び静かになった廊下で通話の切れたスマホをじっと見つめていた。
GM
ぶっ続けだけどぶっ続けなのはGMだけだからやっちゃおう。
GM
光葉ちゃんいけます?
迷ノ宮 光葉
はい
GM
やっぱり……お見舞いに行きますか!?
迷ノ宮 光葉
お見舞いですね、足繁く通います
GM
熱心でえらいね

導入:迷ノ宮光葉

GM
御影の意識は戻ったものの、入院はまだ長引いています。
GM
一年間で衰えた身体のリハビリテーションだとか、そもそも眠っていた理由が分からないための精密検査だとか、八角宗家に頼るよりは病院にいた方がマシだとか、
GM
それ以外にも諸々の理由がある感じですが。
GM
その日は珍しく、光葉より先の見舞客があった。
GM
光葉が御影の個室の扉前に立つと、
GM
中から男の話し声が聞こえてくる。
赤木 叶恵
誰だァ~海野ォかァ~!?
GM
全てを標のせいにしないで
安武 陸
そうだぞ なんでも師匠のせいにするな!!
敷村 修也
標の可能性あるからな……
安武 陸
まぁお見舞いくらいは行くかも……
GM
聞き耳を立てたりとか……しますか?
迷ノ宮 光葉
聞き耳を立てるのははしたないので立てないのですが、誰か居るなら一瞬扉を開けるのをためらいます。
GM
えらい。
GM
話し込んでいるなー、という気配です。
GM
では、そのまま光葉が扉の前で立っていると、
GM
ようやく話が終わる。室内から足音がして、
GM
先客が個室を出てきて、扉の前に立つ光葉を見下ろす。
GM
「んや?」
GM
「光葉さんやん」
迷ノ宮 光葉
「あの、えっと……」突然のことでしばし固まる。
GM
レザージャケットを着込んだ軽薄そうな男です。
GM
光葉はその男に見覚えがある。
楠瀬新
楠瀬新。かつて御影と組んでいた、ハンターの組織。SNSフォーラムで、まあまあ胡乱。バベルネット所属のハンターです。
楠瀬新
御影が倒れたことを光葉に伝えてくれたのもこの男でした。
敷村 修也
あ、楠瀬さんか
楠瀬新
陸の幕間で軽く触れられていた。例の楠瀬です
安武 陸
俺もお世話になってます
楠瀬新
御影とは組んでたけど、叶恵ちゃんとはあんまり関わりがないです。
赤木 叶恵
面識は一応あるのかな
迷ノ宮御影
面識は一応ありますが、連絡先は交換していないくらい。
叶恵がハンターになったあたりくらいで御影との縁が少し薄くなっていたようです。
楠瀬新
「わーるいなぁ、待たせてもうてたん?」
迷ノ宮 光葉
「いえ、いま来たところです。お世話になっています、楠瀬さま」ぺこりと会釈する。
楠瀬新
「光葉さんは礼儀正しね~」
楠瀬新
けらけら笑います。
楠瀬新
「御影さん待っとるで、はよカオ見せてやり」
楠瀬新
そんじゃ、と挨拶を残し、楠瀬は去っていく。
迷ノ宮 光葉
彼が去っていくのを見送って、入れ替わりに病室へ入り、兄に挨拶をして様子を見ます。
迷ノ宮御影
「光葉」
迷ノ宮御影
ベッドに背を預けた御影の手元に、今日は青いレバーファイルがある。
迷ノ宮御影
光葉はそのファイルを見たことがある。楠瀬の手引で入ることがあった、御影の部屋に置かれていたものだ。
迷ノ宮御影
運命変転血戒『クロニック・ラヴ』についての資料をまとめたものに、相違ない。
迷ノ宮 光葉
「はい、お兄様」持ってきた花など飾りながら、兄の横に座る。見覚えのあるファイルをそれとなく見てしまう。
迷ノ宮御影
恐らく御影の要請を受けてか、楠瀬がそれを持ってきていたのだろう。
迷ノ宮御影
「毎日悪いな。お前も暇ではなかろうに」
迷ノ宮 光葉
「いえ、光葉さんの背徳壊れちゃった……お兄様よりも優先することはありませんから」
GM
言い切るやん……
敷村 修也
言い切るねえ……
赤木 叶恵
はっきりといった
安武 陸
隠さなくなってきてる
迷ノ宮御影
「……光葉の断言を斜めに受け流す。あってもいいとは思うがな
迷ノ宮御影
ファイルに書類を綴じ直しながら、
迷ノ宮御影
「……あの時のハンターとは、まだ連絡を保っているか」
迷ノ宮 光葉
「はい、皆様とは連絡がつくようにはしております」
迷ノ宮御影
「そうか」
迷ノ宮御影
「……何よりだ」
迷ノ宮御影
筋肉の衰えからか、ファイルを綴じ直すのにも苦労する。資料の数が多いためになおさらだ。
迷ノ宮 光葉
横から失礼しますと断ってから、ファイルを閉じ直すのを手伝いましょう。
迷ノ宮御影
では、
迷ノ宮御影
光葉の助けに、戸惑ったように指が滑る。
迷ノ宮御影
ばさりと。
迷ノ宮御影
まとめられていた書類が散らばって、病室の床に広がってしまう。
迷ノ宮 光葉
あら、と慌てず騒がず拾いましょう。
GM
それらの資料には運命変転血戒『クロニック・ラヴ』についてまとめられている。
GM
光葉は書類を拾いながら、どうしてもその資料の断片を垣間見てしまう。
GM
それは魔法を血戒で成立させるものであること。
GM
吸血鬼、クロニック・ラヴが所有していること。
GM
大量の血が必要であること。
GM
数年前から唐突に現れて、すでに各国で猛威を振るっており、
GM
ワールドワイド。ロンドン、ニューヨーク、モスクワ、北京など、
GM
各国で戦闘があったが止められず、それらの地で儀式は済み、
GM
血戒が魔法として定着する準備が整っているということ。
GM
既に光葉が一度資料を確認して、知っていることだ。
GM
しかし、その中に一つだけ、真新しい資料がある。
迷ノ宮 光葉
兄が立ち向かおうとしていた事態はかなり大きな物事だったのを感じ取って、真新しい資料に目を向けます。
GM
それは運命変転血戒とは関係のないはずの、一人の少女についてまとめられたもの。
GM
五年前に殺された少女、灰葉陽のこと。
灰葉陽
写真とともに、
GM
五年前に殺された一人の少女と、その家族のことが書かれている。
GM
ハロウィンに殺された灰葉陽の両親は、
GM
その一ヶ月ほど後に、揃って吸血鬼に殺されている。
GM
灰葉家には、とある事実との矛盾。ひなたの他に子供はなかった
GM
僅か二ヶ月足らずで、ひとつの家族が皆殺しにされたことになる。
迷ノ宮 光葉
「…………」
GM
そのような記述に、黄色い蛍光マーカーで線が引かれていた。
敷村 修也
うぇ
安武 陸
あらあら
敷村 修也
????
敷村 修也
いや?ではないが
赤木 叶恵
ほう
敷村 修也
???
敷村 修也
へぇー……
迷ノ宮御影
「悪い」
迷ノ宮御影
資料を拾う光葉に声をかける。
迷ノ宮 光葉
「あ、いえ……」すぐに資料から顔を上げて、まとめ直したものを兄の代わりにファイルに挟む。
迷ノ宮御影
まとめ直してもらったファイルを受け取ります。
迷ノ宮御影
「……お前は、まだ」
迷ノ宮御影
「狩人として戦うつもりがあるのだろう」
迷ノ宮御影
受け取りながら、何か。
迷ノ宮御影
確認するような問いをかける。
迷ノ宮 光葉
「それは……勿論です。迷ノ宮家の娘として……、お兄様が守ろうとしたものはわたくしが代わりに務めるつもりでありました」
迷ノ宮御影
「…………」
迷ノ宮御影
「そうか」
迷ノ宮御影
「だろうな」
迷ノ宮御影
息をつく。ファイルを脇に置いて、ベッドに背を沈めた。
迷ノ宮御影
「光葉」
迷ノ宮御影
名を呼ぶ。妹の名を。
迷ノ宮 光葉
「はい、お兄様」
迷ノ宮御影
「………………」
迷ノ宮御影
再びの沈黙は長かった。
迷ノ宮御影
吐き出すように、やっと絞り出す。
迷ノ宮御影
「死ぬなよ」
迷ノ宮 光葉
「…………はい」
迷ノ宮 光葉
死の際に接する機会は狩人であり続けるならばずっと多い。決して死なないとは言えないし、死せずして大怪我をすることもあるだろう。
迷ノ宮 光葉
けれど、兄が死ぬなと案じてくれるのなら、自分は死ぬつもりは毛頭ない。
迷ノ宮 光葉
兄の気持ちに自身を奮い立たせる。死なないし、死なせない。覚悟をきめて。
迷ノ宮御影
光葉の返事に、そこに込められた覚悟の重みを間違いなく汲み取って、
迷ノ宮御影
兄は、あなたを見つめていた。