結果フェイズ

GM
決戦フェイズが終わり、結果フェイズですね。
GM
誰からやりましょう。行きたい方います?
GM
特に無いならGMがふんわり指名していきます。
安武 陸
指名してもらえると助かります
GM
行くか指名式で……
GM
では光葉さんからどうでしょう。
迷ノ宮 光葉
はい、大丈夫です
GM
やったあ。よろしくお願いします。
GM
やりたいこととかあります?
GM
順当に行くならまぁお見舞いかなという感じですが……
GM
お兄様とお話を……
迷ノ宮 光葉
はい、皆の、特に修也様のお見舞いとお兄様のお見舞い、ですね
GM
両方やると大変そうなんだよな
迷ノ宮 光葉
ではお兄様のほうをおねがいします
GM
はーい。なんか幕間とかでできたらよろしくおねがいします>修也くんと
敷村 修也
幕間で光葉さんがお見舞いくるのなんか照れちゃうな
GM
でも見たいよ GMは
安武 陸
私も見たい
GM
結果フェイズであんまり複数シーンやりすぎると間延びするから絞っていただきましたが……
敷村 修也
幕間でばりばりやってこう

結果フェイズ:迷ノ宮光葉

GM
戦いの終わった後、とりあえずの自分の手当てを済ませて身支度をして?
GM
もう少し時間を置きますか? でも一刻も早く会いたいですよね。
迷ノ宮 光葉
はい、そうですね……そう時間をかけないとおもいます
GM
ですよね。翌日でそのまま。
GM
病院の受付はずいぶんとごった返していた。ハロウィン・ナイトの影響だ。
GM
それでも、火事や爆発、暴れ回ったと思われる暴徒の数の割には、被害は驚くほど軽微に済ませられているらしい。
GM
と、そういった中でなんとか受付を済ませ……
GM
会いに行きますか。あなたの兄上に。
迷ノ宮 光葉
はい。被害の軽微さに海野様に感謝しつつ、会いに行く間際にちょっと前髪を整えたりしつつ。
GM
スカートが破れてたりとかもありますから着替えないといけませんしね……
GM
このタイミングで結果フェイズでは破壊された幸福の修復ができる。修復判定といたしましょう。
GM
迷ノ宮光葉の幸福『背徳:迷ノ宮御影』の修復判定と参りましょう。
GM
幸福リンク部位は《退路》。こちらを目標とした判定をお願いいたします。
GM
退路9か……
GM
まあ激情あるし……………
迷ノ宮 光葉
2D6>=9 (判定:耐える) (2D6>=9) > 3[1,2] > 3 > 失敗
GM
ウワッ!!!!!!!!!!!!!1
GM
ああーーーーーーーーーーーー!!!!!
GM
足りないーーーーーーーーー!!!!!
赤木 叶恵
んっ あっ
敷村 修也
ああ………
安武 陸
あの……
赤木 叶恵
ちょっ
迷ノ宮 光葉
あっ
赤木 叶恵
せっ 先輩がっ
GM
ギャハハハハ
安武 陸
3かぁ………
赤木 叶恵
あああ~あああ~~~
敷村 修也
GMの分裂がすごい
GM
……激情を使っても足りませんね。
GM
迷ノ宮光葉の幸福『背徳:迷ノ宮御影』は失われます。
GM
あなたにとって、それは背徳ではなくなる。
GM
或いは、抑えることが叶わなくなる。
GM
ロールプランへの相談があったらあの……
GM
お気軽にどうぞ……
安武 陸
3かぁ…………
GM
3がねぇ
GM
出目に1コでも3以上がね
GM
あればよかったんだけどね……
迷ノ宮 光葉
ど、どうしましょうね……?!
GM
2プランあるかな……
GM
「恋心を抑えられなくなる」方面か
GM
「魔女の助けを借りたことを恥じることを失う」方向か
迷ノ宮 光葉
まぁあの、死の間際まで行ってしまったので、そりゃあ抑えが効かなくなる…ですよね
GM
まあ……
GM
まあ……
GM
抑え、きかなくなっちまうんじゃねえすか…………?
赤木 叶恵
先輩が~~~~~~っ
迷ノ宮 光葉
そうですね、恋心を隠しようもなく抑えきれない、感じにします……わぁ…軽蔑されてしまいそう
赤木 叶恵
先輩が……先輩が……
安武 陸
たいへんだ~~~
敷村 修也
は~~~~~~
敷村 修也
正直嬉しい~~~~~~~
敷村 修也
恋心を抑えきれなくなる光葉ちゃんめちゃくちゃ嬉しい
つらい
GM
移し替えられたらしき病室の名札。
GM
『迷ノ宮御影』
GM
あなたの兄の名前。
GM
2日ぶりの昼は明るくて、
GM
あなたの心の奥底までをも照らすようで。
迷ノ宮 光葉
なんだか、いつもよりもその名前が、眩しく、そして同時に息苦しく感じる。
迷ノ宮 光葉
ノックをしてから「……失礼します、光葉です」そう、呼びかけて許可されてから入りましょう。あるいは兄は眠っているやも…。
GM
あなたの畏れ、或いは期待に反して。
迷ノ宮御影
御影は目を覚ましていた。
安武 陸
えっ お兄様どうなんの?
迷ノ宮 光葉
これもドラマですね…
安武 陸
ドラマだなぁーっ
安武 陸
まぁ光葉ちゃんの心境考えたら、そりゃそうよ……とはなる
敷村 修也
ドラマとしてはとても嬉しいんだけどめちゃくちゃに辛い
GM
GMからは光葉ちゃん次第としか申し上げがたいが……
迷ノ宮御影
開かれたカーテン、窓の外は明るく、空は青く澄み渡り。
迷ノ宮御影
狩人の守った街を見下ろしていた。
迷ノ宮御影
それが、
迷ノ宮御影
「光葉」
迷ノ宮御影
来訪したあなたに顔を向ける。
迷ノ宮 光葉
「お兄様、……良かった、起きていらっしゃったのですね……」
迷ノ宮御影
「…………」
迷ノ宮御影
「俺の病室でも、面倒があったようだな」
迷ノ宮御影
「起きたら部屋を変えられていた」
迷ノ宮 光葉
「ええ……お察しのとおりです。危ういところを、叶恵様に助けていただきました……」
迷ノ宮御影
「そうか。……感謝せねばならんな」
迷ノ宮御影
「叶恵にも、他のハンターにも」
迷ノ宮御影
「……光葉」
迷ノ宮御影
「お前にも」
迷ノ宮御影
「……よく、頑張った」
迷ノ宮御影
兄が。
迷ノ宮御影
迷ノ宮御影が、あなたを見ている。
迷ノ宮御影
あなたを見て、あなたの名を呼び、あなたを労る言葉を吐く。
迷ノ宮御影
意識がある。病院のベッドに横たわったまま、顔をあなたに向けている。
迷ノ宮 光葉
「わ、たくしは……光葉は……」真っ直ぐにこちらを見るであろう兄の顔を、まともに見れない。うつむきがちにそばの椅子に座った。
迷ノ宮御影
兄の視線を感じる。
迷ノ宮御影
迷いなくぶれずに注がれる、あなたを見守る兄の視線がある。
迷ノ宮 光葉
いつもなら嬉しく思う視線が、今はとても痛い。射抜かれているような、そんな心地になる。
迷ノ宮 光葉
いや、聡い兄ならもしかしたら……もしかしたら、でも……。
迷ノ宮御影
兄は饒舌な方ではない。
迷ノ宮御影
だから、言い淀むあなたに特別の指摘はない。沈黙を気まずく思うこともないのかもしれない。
迷ノ宮御影
その穏やかなはずの視線を痛いほどに感じるのは、自分の心に疚しいところがあるからか。
迷ノ宮 光葉
兄にならって、沈黙は心地よいと思う。いつもなら、でも、今日は違う。
迷ノ宮御影
久方ぶりにゆったりと過ごせている兄妹の時間を沈黙が支配する。
迷ノ宮御影
そも、迷ノ宮御影はずっと忙しくしていた。こうして腰を据えてあなたと話せる機会すら珍しかったのだ。
迷ノ宮御影
それが、一年の眠りを経て、やっとのことで。
迷ノ宮御影
こうしてお互いに顔を突き合わせている。
迷ノ宮 光葉
「お兄様……お許しください。光葉は、あろうことか憎き魔女の甘言に乗ってしまいました……。」
迷ノ宮御影
「…………」
迷ノ宮御影
光葉の言葉に、口元を引き締める。
迷ノ宮 光葉
「いえ、それどころか……その甘言にそそのかされた部分を……抑えきれないのです……」観念したようにぽつぽつと、吐き出し、膝に握りしめてた手を置いて。
迷ノ宮御影
「光葉」
迷ノ宮御影
名を呼ぶ。
迷ノ宮御影
低い声。そこに込められた感情が、今は読み取れない。
迷ノ宮 光葉
「はい……」顔を、上げることが出来ない。恐ろしい。
迷ノ宮御影
「…………」
迷ノ宮御影
「………………」
迷ノ宮御影
沈黙が長い。
迷ノ宮御影
どこまで伝わったか。どこまで察せられたか。
迷ノ宮御影
果たして、兄は何を考えているのか。
迷ノ宮御影
畏れと高揚に弾む少女の心からは、あまりにもその答えが遠い。
迷ノ宮 光葉
己の浅ましい気持ちを、背徳を、見透かされたのだろうか。兄と妹という関係にありながら、それ以上に慕っている、この気持を。
迷ノ宮 光葉
ただただ、兄の次の言葉も沈黙も、重く苦しい。けれど、もはやそれを隠すことも難しい。
赤木 叶恵
先輩……先輩っ……!
GM
てぇへんだなぁ
敷村 修也
あ~師匠とられちゃうね
安武 陸
あっあっ
安武 陸
いやまだわからんぞ 光葉ちゃん具体的なことなんも言ってないから
GM
師匠取られちゃうもなにも
GM
師匠はもとから光葉の兄ですが……
安武 陸
そうだね
安武 陸
圧倒的真実
赤木 叶恵
師匠は気高くて根っからのハンターだから……色恋みたいなのにはうつつを抜かしたりしない……
安武 陸
まぁ妹だしね
安武 陸
大丈夫大丈夫!!
赤木 叶恵
師匠はもちろんあたしなんかにも振り向かないし……
赤木 叶恵
かっこよくて最強で……
安武 陸
この女めんどくさいな
迷ノ宮御影
「……光葉」
迷ノ宮御影
沈黙を破ったのは、再び、名を呼ぶ声。
迷ノ宮 光葉
「はい…………」
迷ノ宮御影
「お前が五体満足で戻ってこられて、良かった」
迷ノ宮御影
「その様子では、他の狩人も命を落としてはいないのだろう」
迷ノ宮御影
「化生どもとの戦いで仲間に死者を出さずに済むのは、僥倖なことだ」
迷ノ宮 光葉
「…………お兄様……」
赤木 叶恵
ねええーーーーーそれどういう感情を込めた名前の呼び方ーーーーーー
赤木 叶恵
もおおーーーーーーー
敷村 修也
わぁ
安武 陸
名前くらい呼ぶよ 大丈夫大丈夫
敷村 修也
ほら、お兄ちゃんしてるだけですから……
安武 陸
ほらほらっ 兄妹の普通の会話だよっ
赤木 叶恵
ここで呼ぶのは……だって……ここで呼ぶやつじゃん!!!!!!
安武 陸
そうだね
赤木 叶恵
ここで呼ぶやつだよーーー どういうタイプのここで呼ぶやつなんだーーーー
敷村 修也
だめだすべてが”そう”に見えてる
GM
大変だな…………
迷ノ宮御影
「俺は」
迷ノ宮御影
「俺にとっては」
迷ノ宮御影
「お前が壮健であることが、何よりの望みだ」
迷ノ宮御影
「……正直、気が気でなかったからな」
迷ノ宮御影
あなたを案じる兄の言葉。
迷ノ宮御影
それが心からのものであると理解できる。
迷ノ宮御影
だがしかし同時に、その言葉は、光葉の訴えには応えていない。
迷ノ宮 光葉
「あ…………っ……」震える。兄の心配の気持ちがとても嬉しい。嬉しいけれど、同時に。
迷ノ宮御影
その訴えへの、答えではない。
迷ノ宮御影
その真意がどこにあるかは、
迷ノ宮御影
影に、隠されている。
迷ノ宮 光葉
「………………」自分の求めているものでは、ない。そこに安堵と、そして狂おしいほどの気持ちがある。
迷ノ宮御影
その狂想に触れられることはなく。
迷ノ宮 光葉
「お兄様……、光葉は、みつはは……、」
迷ノ宮御影
「まだ、ハンターを続けるつもりか」
迷ノ宮 光葉
「……はい……」
迷ノ宮御影
「…………」
迷ノ宮御影
「……止められは、しないな」
迷ノ宮 光葉
「……光葉は、お兄様さえいてくだされば……
 それで、よいのです」
迷ノ宮 光葉
「お兄様をお守りするためなら修羅にでもなりましょう」
迷ノ宮 光葉
「……お慕いしています。お兄様」
迷ノ宮御影
「……ああ」
迷ノ宮御影
「俺も、お前の幸いを一番に願っている」
迷ノ宮御影
「そのためなら手段を選ぶつもりはない」
迷ノ宮御影
「……とは」
迷ノ宮御影
身体をベッドに沈める。
迷ノ宮御影
「このざまでは、あまり決まらないがな」
迷ノ宮 光葉
「っ…………」
赤木 叶恵
あ……あ……
安武 陸
話がそらされてないですか?逃がすな!!!!
赤木 叶恵
大事な妹でしょおおおおお!休ませてあげようよおおおおお!!!
赤木 叶恵
ああって何!?
安武 陸
幸い!?!?!?!?!?!?!?!?
安武 陸
幸いって……………なに!?!?!?!?!?!?
赤木 叶恵
なに!?どういうこと!?ねえ!
安武 陸
幸い!?!?!?!?!?!?!?
敷村 修也
自分の口から言ってもらわねばなるまいて
赤木 叶恵
決めないで!!!!!!!!!!待って
安武 陸
ああ~~~~~~~~~っっ
赤木 叶恵
時よ 時よ止まれ
迷ノ宮 光葉
やっぱり、望んだ答えではないけれど。でも、今は、これでいいのかもしれない。自分の浅ましい気持ちを、否定されなかった、だけでも。
迷ノ宮御影
窓から差し込む陽はあたたかく。
迷ノ宮御影
ひなたを作り、影を作り、あなたの身体をあたためる。
迷ノ宮御影
日々の活力を与えるように。
迷ノ宮 光葉
「…………今は、英気を養うときです。ゆっくりお休みください」
迷ノ宮御影
「……ああ」
迷ノ宮御影
頷く。
迷ノ宮御影
「光葉」
迷ノ宮御影
「お前も怪我があるだろう」
迷ノ宮御影
「ゆっくり休め。福ともどもな」
迷ノ宮 光葉
「はい、お兄様」
GM
窓の外では緩やかに風が吹く。
GM
木々が葉が、日の光を受けて揺れていた。
GM
いやーいきなり大変だったな
敷村 修也
いきなり大変だった
安武 陸
大変だよ~~~
迷ノ宮 光葉
波乱ですね……
安武 陸
もうお兄様に告白した子ってことになっちゃうんだなぁ
敷村 修也
カワイカッタヨ……
敷村 修也
まぁお兄様からしたらまだこう……
GM
いや~
GM
背徳、改めて御影取り直してもまあいいです
GM
””””意味合い””””は……深めていただきますが……………
敷村 修也
わぁ………
安武 陸
深まる可能性があるんだなぁ
GM
ふかまんないとダメだからね。
安武 陸
いや~ 深まった上でどう破壊されるんだろうな~っ
安武 陸
絶対に阻止するぞっ
安武 陸
(でもそれはそれとして破壊されてほしい)
GM
順番に行くのがいいな。
GM
修也くん、いけますか?
敷村 修也
はーい
GM
ではよろしくお願いします。

結果フェイズ:敷村修也

GM
では、修也はあのあと病院に運び込まれ、そのまま入院。
GM
暴徒が暴走しまくっていましたし、この怪我なら闇病院に回す必要もありません。
GM
まっとうな病院に入院して治療を受けていました。
GM
両親も入院していましたが、こうなってはあなたの方が重傷なほど。
GM
先に歩き回れるようになった両親が見舞いに来て、家が焼けたことや、これからについての話をして……
GM
なんて、そんな、非日常的なあれやこれやすら。
GM
今のあなたにとっては、霞む話題。
安武 陸
ブラムン名物病院エピローグだ!!
GM
2連病院しちゃった
敷村 修也
しばらくは両親との今後の話や、先生と進学についての話や、クラスメイトのお見舞いやらと忙しかった。
敷村 修也
しかしそんな日常の、今まで変化もなくただ惰性のように過ごしていた幸せな日々が遠いものに思えるほどの経験をした。
敷村 修也
都合のいい物語ならここでエンディングでも流れて元の幸せな日常に戻れるのだろうが。
敷村 修也
「はぁ……」
敷村 修也
何度目かため息をつく。来訪者のためにいつも通り振舞うのもなかなか流石に疲れてきた。
GM
終わったはずの日常が、最早なじめもしない日常が、まさに惰性のように続いている。
GM
それが幸福であることを知った上で、どうしても違和は拭えない。
GM
何故なら。
GM
もはや、戻れはしないから。
GM
病室の扉がノックされる。
敷村 修也
「………」
敷村 修也
「どうぞ」
海野標
「……どうも」
海野標
陸PL「師匠!!」入ってきたのは海野標だった
敷村 修也
「……!」
海野標
非日常の象徴が、いかにも日常的なビニール袋を提げて入ってきたが、
海野標
「あー」
海野標
「やっぱまあまあ溜まってるよな」
海野標
既に色々と集められた見舞い品の数々を見て、
海野標
まあいいか、リクにやれば、とか言いながら椅子を出してきている。
敷村 修也
「まぁ、どんどんたまってく一方だよ」
海野標
「人徳あんな~」
安武 陸
性欲の話かと思って焦ったぜ
海野標
いきなり性欲の話始めたらセクハラどころじゃねんだわ
安武 陸
溜まってるかなってドンキでオナホを買ってきた可能性だってある訳じゃないですか
海野標
リクにやるの? これ?
海野標
それを?
安武 陸
いや……
安武 陸
お菓子とかですよね
海野標
りんご。
安武 陸
わ~いりんごだ~
海野標
眼鏡はかけていない。学校での姿ではない。
海野標
これは、だから、そういうことだ。
海野標
椅子に腰を下ろす。
敷村 修也
「………。“灰葉”と違って、学校行けてたから」
敷村 修也
そういうことだとわかっているから、今とは違う名字で呼ぶ。
海野標
「………………」
海野標
見舞いに来たくせに黙り込んでいる。
海野標
「……どっから」
海野標
「話したもんかね」
敷村 修也
「来るのを待ってたんだよ。聞きたいことがたくさんあるからさ」
海野標
「待たせて悪かったな」
海野標
「ヒマなかったんだよな。来ても人いるとダメだし」
敷村 修也
「まじめだなぁ。冗談だよ。人がいない時じゃないと出来ない話を聞きたかったし」
海野標
「…………」
海野標
ため息。
敷村 修也
「聞きたいことが多すぎるな……。あ、そうだ」
海野標
「何」
敷村 修也
ベッドの上で姿勢を正す。
敷村 修也
「助けに来てくれてありがとう」
海野標
眉を上げる。
敷村 修也
「ほら、ほとんど見えなかったけど最後にさ……」
敷村 修也
「ちゃんとお礼言っとかないと、落ち着かなくて」
海野標
「…………」
海野標
修也を見ている。
敷村 修也
「……じゃあとりあえず、その名字ってどうしたんだ?」
海野標
「あ」
海野標
「いや」
海野標
「じゃなくて、まあそれはそうだけど」
海野標
「俺よりも、迷ノ宮んとこの嬢さん」
海野標
「あっちにメチャクチャ礼言ったほうがいいぞ」
海野標
「お前の手当てとかしてくれたし、……」
海野標
「……お前のご両親も、あの人来なかったらわかんなかったからな」
敷村 修也
「もちろん。この前お見舞いに来てくれた時にちゃんと言っておいたよ。……本当に、言葉だけじゃ言い尽くせないほどだけど」
海野標
「……そ」
敷村 修也
燃え尽き崩れ落ち何もかもが無くなった家のことを少し思い出す。
敷村 修也
今まで生きてきた思い出も記録もほとんどが燃え尽きて亡くなってしまった。
敷村 修也
残されたのは僅かな電子データだけ。
安武 陸
ローン残ってたのかな……今後マンション暮らしとかになるのかな……
GM
残ってるだろうなぁ
安武 陸
祖父母と同居とかの可能性もあるか
迷ノ宮 光葉
つらい……たいへんだ…
敷村 修也
「………」
敷村 修也
「なぁ、灰葉。……先に何か話したいことがあるのか?」
海野標
「別に、ねぇよ」
海野標
「ただてっきり狩人の世界の話とか聞かれると思ってたから」
海野標
「俺のことから入られて意外だっただけ」
敷村 修也
「………」
海野標
「名字変わってんのだって、大した理由じゃねえしな」
海野標
「これ、母方の旧姓」
敷村 修也
「そうだったのか。流石に知らなかったな」
敷村 修也
「………まだちょっと受け止めきれてないんだよ」
海野標
「…………」
敷村 修也
「化物どものことも、狩人のことも。あの日のことも」
海野標
「……そっか」
海野標
「まあ、無理もねえ」
敷村 修也
「……あとは。………」
海野標
「…………」
敷村 修也
「なぁ、ひなちゃん……に何がったか、本当のことを聞いたら、答えてくれるか?」
海野標
「本当のこと?」
海野標
修也の顔を見る。
敷村 修也
「5年前のこと。あの魔女が言ってたこと」
海野標
「…………」
海野標
髪を耳にかけ直して、俯く。
海野標
「つっても」
海野標
「姉貴があいつに殺されたってのは、俺も初耳だ」
海野標
「……まあ、納得はしたけどよ……」
敷村 修也
「………」
海野標
「……あいつ、別に狩人とかじゃなかったし」
海野標
「半吸血鬼ってのもまあ、俺だけだし」
海野標
隔世遺伝とかあんだよ、一部に出るやつ、とかってごにゃごにゃ言い添えて、
海野標
「…………」
海野標
しばし、考え込んでから。
海野標
「……でも、まあ、想像するに」
海野標
「狩人じゃなくて、魔女が見えなくても」
海野標
「例えば、魔女に連れられていく人間のことなんかは、普通に見えるだろ?」
敷村 修也
「……そうか、ひなちゃんはそれを見て……」
敷村 修也
魔女の言葉を思い出す。
敷村 修也
『でも、あの時の、私が誘ったあの娘が――』
海野標
「それだけでもまぁ、ああいうのの気には障らあな」
敷村 修也
「……そうだな」
敷村 修也
相槌をうちながら魔女の言葉の意味を考える。
海野標
考え込む修也の前で、同じように考え込む素振り。
海野標
黙り込んでいる。
敷村 修也
「なぁ」
海野標
「なに」
敷村 修也
「魔女が言ってた、『でも、あの時の、私が誘ったあの娘が――』って、なんだと思う」
海野標
「…………」
海野標
「知らね」
海野標
「もっと喋らせとくべきだったな、思えば」
海野標
迂闊だったとため息を付いて、自分の膝に頬杖をつく。
敷村 修也
「………」
海野標
「…………」
海野標
重々しく、沈黙。
海野標
修也が海野標と同じクラスになったのは二年生になったからで、
海野標
その上で、あの日に至るまでろくに会話をする機会がなかった。
海野標
「……お前」
海野標
「これからどうする」
海野標
「進学、決まってんだっけ。地方?」
敷村 修也
「指定校の私立。うちで一番いいとこ」
海野標
「場所を訊いてんだよこっちは」
迷ノ宮 光葉
さすがだ……指定校
安武 陸
自慢かぁ!?
海野標
流石に思って突っ込んだ
海野標
「……どうせなら、どっか引っ越したほうがいいんじゃねぇの」
敷村 修也
「……引っ越したところで、狩人をやめられたり狙われなくなるわけじゃないんだろ?」
海野標
「…………」
海野標
沈黙は肯定。
敷村 修也
「それに灰葉が言ってたよな。一人になるなって。地方に狩人はそんなたくさんいるのか?」
海野標
「回ってる以上は、いるだろ」
海野標
「都会ほどじゃなくてもな」
海野標
「割と現地民で協力してなんとかしてんだよ」
敷村 修也
「かなりギリギリってイメージになったな」
海野標
「前回もギリギリだったろうが!」
海野標
軽く怒鳴ってしまってから、舌打ち。
敷村 修也
「………そうだな」
安武 陸
吸血鬼とか魔女が多い地域とか少ない地域とかあるのかな
海野標
多分都会のが多いけど都会のが人が多いから狩人も多い
安武 陸
一長一短だなぁ
安武 陸
限界集落とかに行ったらさすがに平和かもしれませんよ なんか老人をたぶらかしてゲートボール殺人事件とか起こす魔女いるかもしれんけど
GM
ゲートボール殺人事件起こす魔女は見てえな……
GM
あと限界集落になると逆にそこ一帯が吸血鬼に支配されてたりとかもあり得るね
迷ノ宮 光葉
屍鬼みたいですね……
GM
ちっちゃめの国が吸血鬼に支配されてるやつとかあるから……
海野標
「……別に」
海野標
「狩人を引退する人だって、いるにはいる」
海野標
「この前は魔女で、魔女ってのはちっとばかし面倒で……」
海野標
「まあ、だから、ああいう感じになった、けど」
海野標
「無理に戦う必要はねえんだよ」
海野標
「戦い続けることを、選ぶ必要は」
海野標
「…………」
敷村 修也
「ああいうことにならない保証はないんだろ。俺が狙われるだけじゃなくて、父さんや母さんが襲われることも、赤木……叶恵も赤木。クラスの赤木みたいなことも起きるんだろ?」
敷村 修也
「……ひなちゃんみたいな目に遭う人が出るんだろ」
海野標
「………………」
海野標
「そうだな」
敷村 修也
「じゃあ続ける以外にないだろ」
海野標
「…………」
海野標
修也の顔を見る。その表情を検める。
敷村 修也
思考を放棄しているわけでも使命感に燃えているわけでもない。
敷村 修也
自分と周囲のことを考えて、悩んで、決めたことだ。
海野標
「……俺は」
海野標
「お前が、狩人をやりたがっているように見える」
敷村 修也
「…………」
海野標
「それは危険だ」
海野標
「うちの弟子みてえに、怖がって嫌がってるくらいがなんならむしろ丁度いい」
安武 陸
そうだぞ
迷ノ宮 光葉
ふふふ
赤木 叶恵
もっとビビっていいんだぞ
安武 陸
怖がって嫌がってます
GM
かなちゃんも怖がって……
迷ノ宮 光葉
修也くんも叶恵ちゃんも光葉も覚悟決まっている側で、陸くんがすごく一般人感覚なんだなぁ…おもしろい
GM
修也くんは脳を壊されちゃったから……
敷村 修也
安武 陸のことを思い出す。
敷村 修也
「……俺だって、そりゃあ怖いよ」
敷村 修也
「安武さんを見てる灰葉からすれば、俺が狩人をやりたがってるように見えるのは、わかる。……でも」
敷村 修也
「俺は、一方的に、むざむざと奪われたり、壊されたくないんだよ。失いたくないんだ」
海野標
「リクがっつかそういう話じゃなくてだな……」
海野標
俺が何人狩人見てきたと思って、とか、分かってるつもりの一般人がどれだけ、とか、
海野標
そういうような話が出ては半ばで立ち消えて、
海野標
最終的に、大きな溜め息。
海野標
「……やるってんなら」
海野標
「ハンパはなしだぞ」
敷村 修也
「もちろん」
迷ノ宮 光葉
修也くんが第二の弟子に…
安武 陸
そんな……修也くん、あこがれの人の弟でもいいやってなっちゃうのか……?
敷村 修也
どうしました?
安武 陸
師匠に女装させて……ひなちゃんって呼んだりするのか……!?
迷ノ宮 光葉
標くんと修也くんの修行回とかみたいな…
安武 陸
見たいな
迷ノ宮 光葉
女装……?????
安武 陸
ひなちゃんの面影がある……ってなる幻覚を見ました
GM
まあ姉弟踏まえたキャラデザですね
安武 陸
ほら!!!!!女装待ったなし!!!!!!!!!!
海野標
「…………」
海野標
また溜め息……
海野標
「じゃ、後でクラブでも曙光騎士団でも滅土でもD7でも……」
海野標
「適当に橋渡ししてやるから」
海野標
「そこでまあ、なんとかしろ」
敷村 修也
「………」
海野標
「狩人の組織な。今言ったの。他にもあるけど」
海野標
「まあやる気あるヤツなら受け入れてくれるだろ」
敷村 修也
「急に何を言いだすのかと思った」
海野標
「俺のお勧めはクラブかね。警察だし一番まともだし」
海野標
「あーでも未成年だと多少口うるさいのが……」
海野標
「まあ適当に決めろ。それくらいの相談には乗ってやる」
敷村 修也
「また一通り詳しく教えてくれよ。次までに何から聞くか決めておくから」
海野標
「ん」
海野標
「俺はあんま面倒見れねえから諦めてくれ」
海野標
「多頭飼育崩壊はゴメンだ」
敷村 修也
「多頭飼育は大変だってきくからなぁ」
海野標
「飼われんのお前って話だぞ」
海野標
突っ込みつつ、話がついたと見て腰を上げる。
敷村 修也
「ああ、じゃあな。………」
敷村 修也
標を見つめる。
海野標
立ち上がる。りんごの入ったビニール袋を腕に引っ掛けたまま。
海野標
そのまま病室を出る寸前に、足を止めた。
海野標
「そうだ」
海野標
「その、灰葉っての」
海野標
「もうやめろ」
敷村 修也
「………」
海野標
「俺はもう、”海野標”だ」
海野標
言い残して、病室の扉を開ける。
敷村 修也
「……わかった、海野」
海野標
「…………」
海野標
「ああ」
海野標
扉が閉まった。
GM
こうして二人で長く話したところで、
GM
やはり、彼とは疎遠だったことを再確認する。
GM
”灰葉標”との思い出はない。想起される過去は彼の姉、
灰葉陽
『お』
灰葉陽
『しゅーくんじゃん。おかえり~』
灰葉陽
灰葉陽とのことばかりだ。
敷村 修也
灰葉陽との思い出はもはや記憶の中の美しい思い出だけになってしまった。
特別親しかったわけでも頻繁に連絡を取っていたわけでもない。
敷村 修也
ただの親しい学年の離れたお姉さん。よく世話をしてくれた上級生。
敷村 修也
近いようで遠い存在。
敷村 修也
思い出の中にだけいるからこそ強く惹かれているのだろうか?
敷村 修也
あの頃の、形にも言葉にもなっていない想いを整理することができないままでいる。
敷村 修也
それを届ける先はどこにもないのに、ずっと手に持ったまま。
GM
どこからか吹く、乾いた風が素肌を撫でる。
GM
空の色ばかりが晴れやかに、その想いを見守っていた。
安武 陸
なんもしてないけどりんごがもらえる事になりました
GM
なにもしてなくはないし……
安武 陸
せっかく貰ったからこれを持って修也くんのお見舞いに行くかぁ~っ(持って帰ることになる)
GM
りんごがかわいそうだろ
敷村 修也
りんご使いまわされるんだわ
GM
その場で剥くかも 給餌
安武 陸
給餌だ
敷村 修也
安武さんって飼われてるんですね
安武 陸
飼われてないですけど……飼われてないよな?
GM
訊いちゃった

結果フェイズ:赤木叶恵

GM
とりあえず修復判定してから決めましょうか。
赤木 叶恵
はい……
GM
叶恵さんの幸福『背徳:自己顕示欲』が破壊されています。
GM
リンク部位は地位。地位を目標とした判定をどうぞ。アイテム使ってもいいですよ。
GM
あ、あと
GM
軽度狂気【お守り中毒】を発症しているため、判定には-1の修正がつきます。
赤木 叶恵
最悪狂気だよ
GM
最悪の引いたね
安武 陸
はわわ~っ
迷ノ宮 光葉
わわわ~
赤木 叶恵
興奮剤1があるんですが
安武 陸
はわわわ~っ
赤木 叶恵
安武くんの背徳と目標値が同じなんですよね
GM
りっくん激情あるからなんとかなるんと違うか
赤木 叶恵
でもそのまえに幸福判定するし……
GM
5は出してもらえ……
安武 陸
渡したいというのなら受け取りますが……
GM
いいよ 温存して譲渡しても……
安武 陸
欲しいか欲しくないかで言うなら自分で使った方が……と思います
赤木 叶恵
じゃあ……使うか……
GM
がんばぇ……
敷村 修也
ハラハラ
赤木 叶恵
*興奮剤を使用
GM
いいでしょう。さらに+2の修正をつけて判定をどうぞ。
赤木 叶恵
2D6+2-1>=7 (判定:叫ぶ) (2D6+2-1>=7) > 7[2,5]+2-1 > 8 > 成功
GM
通った!
安武 陸
はーーーーーっ
敷村 修也
はわわ通った
安武 陸
よかったよかった……
赤木 叶恵
通ったな……
敷村 修也
よかった!!!
GM
通ったが……
赤木 叶恵
通った……な……
迷ノ宮 光葉
よかったよかった…
安武 陸
とりあえずパパ活ENDは避けられたようだな……
GM
では、赤木叶恵の幸福『背徳:自己顕示欲』は修復されました。
GM
改めて、あなたはその欲望を押し込めることができるようになる。
GM
狩人として。ハンターとして。闇の世界で戦う自分を。
GM
或いはそうでない自分すらを。
GM
他人に顕示したい、褒められたい、称賛されたい、などという、肥大した欲望を、抑え込むことができる。
GM
――しかし。
GM
時計の針は戻らない。
GM
過去は変えられない。
GM
一度インターネットに上げられたあなたの動画が消えることも、ない。
赤木 叶恵
ううっ
安武 陸
過去は変えられないねぇ
赤木 叶恵
恥辱だよ
安武 陸
恥辱だねぇ
GM
高校からの帰り道。
GM
教室に足を踏み入れた瞬間に、クラスメイトから突き刺さった視線を思い出す。
GM
取っつきづらい、愛想のない、欠席しがちな目立たない生徒であったあなたが、
GM
こんな風に注目されるのは、珍しいことだった。
GM
けれど。
GM
それで声をかけてくれるような友人は、あなたにはいない。
GM
代わりに皆があなたを覗き見盗み見て、なにがしか噂をしているようだった。
GM
『あの動画の……』
GM
『ハロウィンで浮かれるタイプだったんだね』
GM
『意外~』
敷村 修也
あ~~~~~
迷ノ宮 光葉
せつない…
安武 陸
学校を休みがちで孤立してる愛想の悪い子が、ハロウィンにコスプレして悪と戦うハンターとかゆってた………
安武 陸
クラスラインで共有されちゃう……
GM
されてんじゃない……?
安武 陸
影であだ名がハンターになっちゃう……
赤木 叶恵
気にしていない。気にならない。人の目なんて、どうでもいいことだ……
赤木 叶恵
……虚勢を頭の中で叫んでみても、自分すらも騙せない。
赤木 叶恵
動画は見ていない。見たくなかった。
赤木 叶恵
あの記憶は、屈辱の記憶として刻まれた。
赤木 叶恵
ハンターとして、覚悟を決めていたつもりだった。
赤木 叶恵
しかし、あの魔女は自分の中に残った欲を浮き彫りにしてきた。
赤木 叶恵
褒められたい。認められたい。ちやほやされたい。目立ちたい。愛されたい。
赤木 叶恵
人の世を切り離したつもりの心の中に残った、人を求める気持ち。
赤木 叶恵
それは叶恵自身が軽蔑してきた感情でもある。
赤木 叶恵
未熟だと。甘いと。覚悟が決まっていないのだと。
赤木 叶恵
自分に残ったものがそれだと突きつけられて、強烈な心の傷とともにそれを自覚させられた。
赤木 叶恵
少なくとも……あんな形での叶い方は、望んではいなかった。
赤木 叶恵
家族に見られたくない。師匠に見られたくない。
赤木 叶恵
あんな無様な自分など、見られたくない。
安武 陸
カナちゃん……
GM
魔女……許せねえぜ!
安武 陸
あの動画お兄様も見た可能性があるんだなぁ
敷村 修也
叶恵ちゃん……
迷ノ宮 光葉
せつないかなしい…叶恵ちゃん…
GM
帰り道。
GM
すれ違う誰も彼もが、あなたを注視しているような気がする。
GM
囁きかわされる言葉の全てが、あなたを噂しているものに思える。
赤木 叶恵
人の目が怖い。人の声が怖い。
赤木 叶恵
こんな事なら、ずっと影に籠っていればよかったのだ。
GM
あなたの在るべき場所。
GM
ひなたの当たる場所ではなく、ハンターだけの影の世界にこそ。
GM
懐から、着信音が響いた。
赤木 叶恵
飛び跳ねる。
GM
それでまた人の目があなたに向けられる。
GM
ピョイン
安武 陸
ピョイン
敷村 修也
そりゃまぁびっくりするよね
GM
ホッピングカナチャン
敷村 修也
ツインテがピョインする
赤木 叶恵
心がもやもやとする。今は人と話したくない、という気持ち。真逆の気持ち……人に慰めて欲しいという気持ちもあるような気もする。
赤木 叶恵
ひどく緩慢な操作で懐へと手を伸ばし、画面を見た。
GM
『迷ノ宮御影』
GM
一年ぶりの着信。
赤木 叶恵
「え…………!」
赤木 叶恵
慌てて出る。
迷ノ宮御影
『叶恵か』
迷ノ宮御影
落ち着いた低い声。
赤木 叶恵
「はい先輩!」
迷ノ宮御影
『今は大丈夫か』
迷ノ宮御影
寡黙で無愛想ながらも、電話先を案じる仕草。
赤木 叶恵
「だいっ……全然大丈夫です!先輩こそ……!」
迷ノ宮御影
『こちらは入院患者の身だ』
迷ノ宮御影
『忙しいことなど、ありはしない』
赤木 叶恵
「……だって……」
赤木 叶恵
「一年ですよ。一年も先輩は電話もできない状態で……」
迷ノ宮御影
『……悪かったな』
迷ノ宮御影
『余計な心配をかけたろう』
赤木 叶恵
「……大、丈夫、です」鼻の通りの悪い声。目元はわずかに滲んだ。
迷ノ宮御影
『…………』
迷ノ宮御影
『一年か』
赤木 叶恵
「はい」
迷ノ宮御影
『お前のことだから、変わらず前線に在り続けてきたのだろう』
迷ノ宮御影
『……よくぞ』
迷ノ宮御影
『生き延びてきた』
赤木 叶恵
「……先……輩……」
安武 陸
あ~~~~~
迷ノ宮 光葉
叶恵ちゃんのよりどころなんだなぁ…かわいい
敷村 修也
かわいい
赤木 叶恵
この声だ。
赤木 叶恵
先輩の声。
赤木 叶恵
愛想がいいわけでもない。それでも、案じる気持ちが伝わってくる声。
迷ノ宮御影
取り繕うものなどなにもない、ただ真意をのみ伝えてくる声。
赤木 叶恵
2年前は、まだ何もわからない頃だった。今よりもずっと、不安をコントロールできない頃。
赤木 叶恵
いろんな不安に押しつぶされていた頃、その不安を吹き飛ばしてくれたのが、この人の声だったんだ。
迷ノ宮御影
媚びもしない。機嫌を取るような振る舞いもない。
迷ノ宮御影
ただ、淡々とそこにある。
赤木 叶恵
懐かしさがこみ上げる。
迷ノ宮御影
絶対的なものとして、あなたの心を支えてきた。
迷ノ宮御影
一年間の仰臥にやせ衰えた身体であっても、
迷ノ宮御影
その在り方は変わらない。
赤木 叶恵
歪んだ欲望が溶かされていく。
赤木 叶恵
褒められたいという気持ちがあった。それは醜く膨らんでいった。
赤木 叶恵
それを、先輩はあっさりと……満たしてくれた。
迷ノ宮御影
愛想のないその一言だけで。
迷ノ宮御影
叶恵の心を、十二分なまでに。
赤木 叶恵
「……まだです。まだ先輩には程通い」
赤木 叶恵
顔を引き締める。これは満足をするべきものだ。これ以上を求めるものではない。
赤木 叶恵
「それでも……」
赤木 叶恵
「……この一年は大変でした。今の先輩の声で、救われた気がします……」
迷ノ宮御影
『そうか』
迷ノ宮御影
『……そうだろうな』
迷ノ宮御影
彼の納得はどの言葉にかかったものか。
迷ノ宮御影
通話越しの限られた言葉では、どうにも。
迷ノ宮御影
『…………』
迷ノ宮御影
『叶恵』
赤木 叶恵
「……はい」
迷ノ宮御影
『ひとつ、頼みがある』
迷ノ宮御影
『聞いてくれるか』
赤木 叶恵
「はい、なんでしょう先輩」
迷ノ宮御影
『光葉の友達に、なってやってはくれないか』
赤木 叶恵
「へ?」
敷村 修也
は~~~~
敷村 修也
助かる
敷村 修也
助かるが…………その……
敷村 修也
助かるんですけどぉ……
GM
そのになってる
迷ノ宮 光葉
お兄様……えええええ
安武 陸
おともだちかぁ
敷村 修也
はわわ……
迷ノ宮御影
『…………』
迷ノ宮御影
『難しいか』
赤木 叶恵
「い、いえ。先輩の頼みならなんでも」
赤木 叶恵
「ですけど先輩。私、私はその。釣り合わないといいますか」
安武 陸
釣り合わないと思っているんだねぇ
敷村 修也
釣りあわない!?
迷ノ宮 光葉
釣り合わなくないよ……!!!!!!!!!!
迷ノ宮御影
『いいや』
迷ノ宮御影
『お前がいい』
赤木 叶恵
「……」
赤木 叶恵
「どうして……?」
迷ノ宮御影
『……お前は、光葉とは見てきた世界が違う』
迷ノ宮御影
『光葉があまり交流してこなかったタイプでもあるだろう』
迷ノ宮御影
『それがいい』
迷ノ宮御影
『何より』
迷ノ宮御影
『お前なら、俺も安心できる』
赤木 叶恵
「…………はい」
赤木 叶恵
先輩は、ずっと──光葉さんの身を案じてきたのだ。
迷ノ宮御影
『助かる』
赤木 叶恵
「いえ」
迷ノ宮御影
だから、叶恵の答えに、どこか安堵したような声が返る。
迷ノ宮御影
感情の薄い声の中に滲む確かな気配が。
赤木 叶恵
あの光葉さんの性格なら、きっと自分を拒む事はしないだろう。
赤木 叶恵
信用できるハンター仲間との交流を得られるのは、全員にとって良い話だ。
迷ノ宮 光葉
こ、こじれる予感まったなし……
GM
こじれてしまうんですか?
迷ノ宮 光葉
こじれたくないっこじれたくないけど……どうなっちゃうの~~~
敷村 修也
こじれるんですか……?
赤木 叶恵
「……先輩は」
迷ノ宮御影
『なんだ』
赤木 叶恵
「光葉さんの事が大切なんですね」
赤木 叶恵
言ってからしまったと思う。嫉妬に聞こえただろうか。
迷ノ宮御影
『…………』
迷ノ宮御影
『妹だからな』
迷ノ宮御影
『お前も、姉のことが大切だろう』
赤木 叶恵
「……はい」
赤木 叶恵
自分も姉が大切で、姉のことが心配だ。
迷ノ宮御影
『同じだ』
赤木 叶恵
だから、気持ちはわかる。
迷ノ宮御影
『急な頼み事で悪かったな』
赤木 叶恵
わかるが。
赤木 叶恵
それは、私を案じてくれる気持ちとどちらが強いんですか、先輩。
敷村 修也
あーっしまわれた本音っ
迷ノ宮 光葉
叶恵ちゃん……よじれちゃううううう
赤木 叶恵
「いえ」
赤木 叶恵
「光葉さんは私にとっても憧れの人なので」
迷ノ宮御影
『そうか』
迷ノ宮御影
『なら、良かった』
迷ノ宮御影
『……何かあったら連絡しろ。すぐには出られないことが多いかもしれんが』
迷ノ宮御影
『なるべくは返そう』
赤木 叶恵
「はい」
赤木 叶恵
何かあったら連絡をしよう。何かあったら。
赤木 叶恵
先輩頼りのヒヨコの時代はとうに終わった。一人前だと行動で示すためにも、無駄な連絡は控えたい。あくまで師匠と弟子なのだ。
赤木 叶恵
だから、本当に何かあったときは……
赤木 叶恵
「ありがとうございます」
赤木 叶恵
頼らせて下さい、先輩。
迷ノ宮御影
『俺の台詞だ』
迷ノ宮御影
返されて、
迷ノ宮御影
通話が切られる。
赤木 叶恵
画面を暫く見つめていた。
GM
迷ノ宮御影の名前。
赤木 叶恵
腹立たしいほどに未熟だ。体も心も。
赤木 叶恵
だが、気持ちは整理できた。
赤木 叶恵
未だ暫く、あの出来事への精算は続くのだろう。噂は明日からも続くし、家族の顔色を見るのは怖い。
GM
カナちゃん……
GM
えらいね
GM
いっとうちんまりしてるのに……
敷村 修也
えらいね……
安武 陸
叶恵ちゃんこの中で一番ベテランなんだよなぁ……
GM
一番のベテランなのよ
迷ノ宮 光葉
叶恵ちゃんえらすぎる……
GM
それでも叶恵には帰るべき家がある。
GM
帰り道を進みゆけば、当然、そこに辿り着く。
GM
母と姉、家族三人で暮らすアパートへ。
赤木 叶恵
アパートの扉に手をかける。
赤木 叶恵
怖い気持ちも、逃げてしまいたい気持ちもあるけれど。
赤木 叶恵
「ただいま」
赤木 叶恵
それでもここが、帰りたい家なのだ。
赤木恵夢
「あ」
赤木恵夢
「カナちゃんおかえり~!」
赤木恵夢
ぱたぱたと。
赤木恵夢
エプロン姿の姉が、玄関にまで迎えに来る。
赤木恵夢
これはいつもの仕草ではない。
赤木恵夢
あのハロウィン・ナイト以降から始まったことだ。
赤木恵夢
「時間ちょうどよかったねぇ」
赤木 叶恵
「……わざわざ玄関まで来なくていいのに」
赤木恵夢
「もうすぐご飯できるからね」
赤木 叶恵
「ん」
赤木恵夢
「……ん」
赤木恵夢
頷き返して、
赤木恵夢
ぎゅっと叶恵を抱きしめた。
赤木恵夢
これも同じ。あれ以来の。
敷村 修也
あ~~
安武 陸
ああ~~~~~~~~~~~
赤木 叶恵
「ちょ、何……」
赤木恵夢
「……んーん」
赤木恵夢
事あるごとに密着したがる癖ができた。
赤木恵夢
「なんでも」
赤木恵夢
でも、叶恵が困るのも恐らく分かっているのだろう、
赤木恵夢
ぱっと腕を離す。
赤木恵夢
「手、洗って」
赤木恵夢
「カナちゃんのぶんもよそっとくね」
赤木 叶恵
「ったく……騒がしいお出迎えなんだから……」
赤木恵夢
「おさわがせしました~」
赤木 叶恵
口先だけだ。抱き着かれても抵抗したことはなかった。
赤木恵夢
姉はおどけた調子で返して、台所へと戻る。
安武 陸
これもうお風呂とか布団とかも一緒でいいんじゃないですか?
迷ノ宮 光葉
かわいい姉妹だ
赤木恵夢
姉から叶恵への態度の変化は、こんな方向。
赤木恵夢
奇異の目を向けられたりだとか、動画にまつわる何かを訊かれたりだとか、そういうことは一切ない。
赤木 叶恵
こんな出迎えも、悪い心地ではない。
赤木 叶恵
悪い心地ではないが、だからといって素直に甘えるような性格でもない。
GM
母の方は忙しいのか、やはり態度は変わらずに、
GM
叶恵だけが気まずさを抱えている現状だが、
GM
やはり、この家には自分が必要なのだとは、思わされる。
GM
少なくとも、姉には。
赤木 叶恵
以前よりもなるべく、帰宅時間の連絡などをこまめに取るようになった。
赤木恵夢
そのたび嬉しそうに返事が来る。
赤木 叶恵
共に食卓を囲む事も増えた。
赤木恵夢
にこにこと箸を手にしている。
赤木 叶恵
自分の前では、変わらず笑顔ばかり見せている幸せそうな姉。
赤木 叶恵
けれど、傷つかないわけではない。恐れを知らないわけでもない。
赤木恵夢
今日の夕飯は野菜入り湯豆腐。ぽん酢とごまだれを添えて。
赤木恵夢
木綿豆腐に蒸したブロッコリーやしめじでいっぱいかさ増ししてる。
赤木 叶恵
美味しい食卓。これは守るべき日常の景色。
赤木 叶恵
姉をあのような脅威から守るためにも……自分はまだしっかりとハンターでいなければならない。
赤木恵夢
ああっ
赤木恵夢
叶恵ちゃん……………
敷村 修也
ああ~…
安武 陸
そうだね……
安武 陸
なかよし姉妹だねぇ……
迷ノ宮 光葉
うつくしい…
赤木 叶恵
思えば、ハロウィンの思い出が悪いものとして刻まれたのは、ある意味ではよい事だ。
赤木 叶恵
もう、あんな歪んだ願望を抱く事もないだろう。またハンターとして戻って来られる。
赤木恵夢
「カナちゃん」
赤木恵夢
「夕ごはん、どう?」
赤木恵夢
「おいし?」
赤木恵夢
この幸福を守るためにも。
赤木 叶恵
「……うん」
赤木恵夢
「ん」
赤木恵夢
「よかった!」
赤木恵夢
あなたは、強いハンターで在り続けなければならない。
赤木 叶恵
未熟だ。もっと強くなりたい。
赤木 叶恵
自分から食事を褒めることはあまりないが、姉に問われれば素直に美味しいとは返せるようになった。
赤木 叶恵
帰りの連絡についてもそう。こうして自分が少し何かの所作を改善するたび、姉はわかりやすく喜んで、この家の居心地はまた少し良くなるのだ。
赤木 叶恵
お互いのことを分かり合えているとは言えないだろう。けれど、どこか気持ちが通じているのは感じる。
赤木恵夢
この家庭を、幸福を守りたい。
赤木 叶恵
ハンターとは何か、まで知られなくても。まだしばらくはただの非行少女のような振る舞いのままでも。
赤木恵夢
一度崩れてしまったものであるからこそに、大切に。
赤木恵夢
ハンターの世界のことを何も知らぬ姉であっても、その気持ちはきっと同じだ。
赤木 叶恵
この姉は、自分が何かを頑張っているということを、ぼんやりと理解してくれているような気がする。
赤木 叶恵
「おかわり」
赤木 叶恵
頑張ろう。もっと。
赤木恵夢
「はーい!」
赤木恵夢
その決意を力づけるように、姉は弾んだ声を返した。
GM
ありがたいシーンだった。カナちゃんはえらいね…………
敷村 修也
あ~~~いいシーンだった
安武 陸
いいシーンだった……
安武 陸
叶恵ちゃんいい子だねぇ
敷村 修也
りっくんがんば!
迷ノ宮 光葉
がんばれがんばれ

結果フェイズ:安武陸

GM
2個もあるし最初に修復判定しちゃった方が良さそう。
安武 陸
最初にしちゃいますか
GM
しましょう。その方がやりやすかろう。
GM
では先に……
GM
安武陸の幸福『海野標』の修復判定からいきましょう。
GM
リンク部位は《日常》
GM
なにかアイテムを使いますか?
安武 陸
ニムロデの矢を使用します。
GM
いいでしょう。陸の全特技が使用可能になります。
安武 陸
わーい
GM
では改めて、まずは《日常》を目標とした判定をどうぞ。
安武 陸
2D6>=5 (判定:日常) (2D6>=5) > 8[2,6] > 8 > 成功
GM
成功!
GM
幸福『海野標』は修復されました。
赤木 叶恵
ッシ ッシ
迷ノ宮 光葉
よしよし
敷村 修也
ふぅ~~~~
GM
ほんま怖いよこの時間
GM
このままもう一つの判定をしましょう。
安武 陸
よかった~
GM
安武陸の幸福『背徳:身の保証』の修復判定を。今度は《退路》です。
GM
どうぞ。
安武 陸
2D6>=8 (判定:這う) (2D6>=8) > 8[3,5] > 8 > 成功
GM
素で成功した……
赤木 叶恵
素でいきよった
GM
たけえ~
敷村 修也
よし!!!!
迷ノ宮 光葉
いいかんじ!
GM
では、幸福『背徳:身の保証』の修復も成功。
安武 陸
こいつ、修復判定は成功するなってちょっと思ってたよ……
GM
もしかしなくても死の恐怖から解き放たれて出目が上向いてるんですか?
安武 陸
そうかも
GM
そうなんだろうな……
GM
光葉ちゃんだけが壊れっぱなしだったという結果に……
迷ノ宮 光葉
んふふ……まぁそれっぽいといえばそれっぽい
GM
では、陸くんも帰り道でしょうか。あのハロウィン・ナイトから一週間とちょっと。
安武 陸
はい なんか導入手酌でやっていきますので、いい感じにアレしてください
GM
はーい。お願いします。
安武 陸
空が夕暮れに染まる時間。
安武 陸
学生向けの安アパートが並ぶ住宅街を、スーツ姿の男がとぼとぼ歩いている。
安武 陸
怪我はすっかり、という程ではないが、おおむね治った。自分も、それ以外も、日常が戻りつつある。
安武 陸
今日は合同企業説明会の帰りだ。
安武 陸
広く様々な業種を知ることで、ハンター業をやりながらでも正社員として働ける企業はないか、と思ったのだが。
安武 陸
「やっぱキツいな……」
安武 陸
不定期に休んで、定期的に入院するような人間が商談とかある仕事は絶対無理。まともな仕事に就くのは難しい。休みの取りやすい企業と言っても限度がある。
安武 陸
自然と足取りは重くなる。夕焼けに影が伸びる。
安武 陸
自宅に到着し、鍵を回す。
上京してから3年とちょっとを過ごした自宅。
この六分儀市での、日常の象徴。
安武 陸
自宅が燃えた修也を、気の毒に思う。
安武 陸
家は休むための巣、そして自己を守る殻。
非日常は、いつだって外から来る。
安武 陸
ドアを開く。
GM
そのまま扉を開けようとして、開かない。
GM
鍵は最初から開いていた。
敷村 修也
わぁ
敷村 修也
恐怖体験だぞ
安武 陸
「……あれ」
安武 陸
鍵を開け直し、改めてドアを開く。
GM
こういうときは得てしてそうであるように、
海野標
「ん」
海野標
「おかえり」
安武 陸
「ワァ~~~」
海野標
狭い部屋のベッドに、海野標が腰掛けていた。
安武 陸
「不法侵入されてる~~~」
海野標
なにがしかビニール袋を提げている。
敷村 修也
わ~
赤木 叶恵
リアクションがかわいい
海野標
「鍵渡しといて不法侵入もクソもないだろ」
海野標
キーホルダーのついた鍵をくるりと指で回す。
安武 陸
「帰ってきて家に人がいたら、不法侵入って思うもんじゃないです~?」
海野標
ビニール袋を陸に差し出した。
海野標
「はい、これ。見舞い品」
海野標
「のお下がり」
安武 陸
突き出されたビニール袋を見る。
安武 陸
「お下がり」
安武 陸
がさがさ……
海野標
りんごです。
安武 陸
りんごだ。
海野標
つやつやのりんごが3個ほど。
海野標
「敷村んとこ持ってったけど、場所なかった」
海野標
渡しておいてビニール袋に手を突っ込んで勝手に取り出す。
海野標
「剥いてやる。喜べ」
安武 陸
「ええ……」
安武 陸
「別に剥けますけど……?」
海野標
「かわいくねえな~」
敷村 修也
はわわ
迷ノ宮 光葉
可愛い師弟だな…
敷村 修也
こう……いちゃついている……
敷村 修也
いやこれも違うんですけどぉ……
安武 陸
そのへんにカバンを投げ出して、ジャケットを脱いでネクタイを緩める。
海野標
台所に持っていってじゃばじゃば洗ってます。
海野標
狭いクソキッチンが……
安武 陸
台所使っていいって言ってないんだけどな……
海野標
包丁も勝手に出してくるくる剥く。
海野標
皮がばっちり繋がってる。
安武 陸
さすが刃物の扱いが上手い。
海野標
刀剣使いなもんで。
海野標
「就活」
海野標
「どんな?」
安武 陸
「……まぁ、想像通りですよ」
海野標
「だよなぁ……」
安武 陸
狭いベッドの上に腰掛ける。
海野標
ハンターが一般企業に就職することの難しさはあまりにも語られ尽くしている。
安武 陸
そもそも面接会場までたどり着けないこともあるし……。
海野標
なんなら真面目に大学生を続けている陸はガッツがあるまである。
海野標
皮を剥き終わる。最後まで途中で千切れることなく。
安武 陸
闇医者に足を縫われながらレポートを書いたこともあった。
迷ノ宮 光葉
りっくんえらすぎない…?
赤木 叶恵
かなりえらい
敷村 修也
りっくんスペック高いんだよな
海野標
まな板を出して水に流し、シンクの上に渡してりんごを切る。
海野標
ざくざく八等分。これまた正確に。
安武 陸
刃物の扱いに慣れている……。
海野標
皿とフォークも勝手に出して盛った。
海野標
「はい」
海野標
テーブルに置く。
安武 陸
「ども」
海野標
まな板の方はささっと洗って改めて立てかける。
安武 陸
普段はりんごなんて手づかみで食べるのだが、せっかくなのでフォークで刺して食べる。しゃくしゃく。
海野標
こっちもフォークで食べている。
海野標
しゃくしゃく……
海野標
そのまま向かいに腰掛けた。
安武 陸
非日常は、いつだって外から来る。
安武 陸
ただし、知らない間に家の中にいることもある。
安武 陸
いや、鍵を渡したのは自分だ。
海野標
非日常の象徴が、日常のような顔をしてそこにいる。
安武 陸
自分の日常と非日常は、随分と境界が曖昧になってきている。
安武 陸
「……そういえば、聞きそびれてたんすけど」
海野標
「ん?」
海野標
二切れ目のりんごをフォークに刺していた。
安武 陸
「血」
安武 陸
「って」
海野標
「…………」
海野標
手が止まった。
安武 陸
少し口ごもり、視線がさまよう。
海野標
「……怪我」
海野標
「大事、なかったか」
海野標
「歯とか口とか怖ぇんだよ、細菌とか」
安武 陸
「まぁ、入院するほどでは」
海野標
「そっか……」
海野標
「そこは良かったな」
安武 陸
生々しい話に、この男から吸血されたという実感が込み上げる。
安武 陸
「あの」
海野標
「……ん」
海野標
普通の人間のように、今はりんごを齧っている。
安武 陸
「普段はそんな……、吸いたくなったりはしないんですよね?」
海野標
頷いた。
海野標
「半吸血鬼ってのは、別に人の血啜らないといけない生き物じゃないからな」
海野標
「吸血鬼どもとは根本的に違う」
安武 陸
「……でも、吸うときもある」
海野標
「…………」
海野標
また、頷く。
安武 陸
「それが、我慢できない時もある、んですよね」
海野標
「……まあ」
海野標
「珍しいとは、言っておく」
海野標
「あれは完全に俺の手落ちだ。クソダッセェ」
安武 陸
フォークで刺した2個目のりんごを、持ち上げる気が起きないまま眺めている。
敷村 修也
両方復元できてるからできる会話だな………
敷村 修也
そりゃそうなんだけど噛み締めてしまう
迷ノ宮 光葉
噛み締めちゃうな…
海野標
「……あんまり」
海野標
「謝られても、困るだろ」
安武 陸
「困りますけど」
安武 陸
「師匠もミスとかするんすね」
海野標
「人をなんだと思ってんだ……」
海野標
しゃくしゃく……
安武 陸
「師匠には完璧超人でいてもらわないと困るんで……」
海野標
「まあ俺は無敵だけど」
海野標
そういうことは普通に言う。
安武 陸
「無敵だけどミスはすると」
海野標
「ミスしても無敵なんで」
海野標
実際最後まで怪我ひとつなかった。
安武 陸
「無敵だけど……うっかり俺の血は吸うと!!」
安武 陸
「怖かったんですけどー!!」
安武 陸
「死ぬかと思ったんですけどーーーー!!!」
海野標
「悪かったな!!」
海野標
「これから気をつけるってのマジで!!」
安武 陸
「もー!信じらんなーい!男子サイテー!!」
安武 陸
ぶらぶらさせていたりんごを、八つ当たりのようにしゃくしゃく食べる。
海野標
「あ~~~~~」
海野標
髪を掻く。
敷村 修也
年下の師匠に求めていくね……まぁこう返すのね……
迷ノ宮 光葉
可愛い師弟だなぁ~~~~
敷村 修也
ふっふっふっふ
安武 陸
「まぁでも、勉強になりました」
海野標
「…………」
安武 陸
「次は今回ほどビビらないですよ」
海野標
「次はねぇよ……」
安武 陸
「………いや、どうかな」
安武 陸
「ビビるかも……」
安武 陸
「次はないようにお願いします……」
海野標
「ねぇってんだろ」
安武 陸
「マジでお願いしますよ~~」
海野標
「……ったく」
海野標
修也PL「無茶を言わんでくれ」敷村もそれくらいのノリができたらいいんだが
海野標
「まあ、難しいわな」
安武 陸
「ああ……、修也くん」
海野標
座り直す。
安武 陸
「なんか、大丈夫ですかね」
海野標
「…………」
安武 陸
「結構ヤバそうな感じだったけど」
海野標
「なるようにはなる」
海野標
「なるようにしかならない」
海野標
「……まあ、多分」
海野標
「これからも顔合わせることはあるだろうな」
海野標
「お前、大丈夫か」
安武 陸
「だろうなぁ」
安武 陸
「……大丈夫って」
海野標
陸を見ている。
安武 陸
「……大丈夫ですよ」
安武 陸
「俺は魔女に拐かされて、修也くんを刺しました」
海野標
「……ああ」
海野標
経緯は見て取っていたのだろう。頷く。
安武 陸
「多分、正直に言えば修也くんは許してくれる。でも、それで終わり、って訳にはいかないじゃないですか」
海野標
「…………」
GM
りっくんの気の回し方がな~大人なんだよな~
GM
ちゃんと最年長してる
GM
えらい
敷村 修也
あ~~~助かる
敷村 修也
めちゃくちゃ見たかった
赤木 叶恵
この顔ぶれでちゃんと大人なの本当にいい 養分がいっぱい出る
赤木 叶恵
普段あんな……あんな扱いされてるのに……
敷村 修也
だって普段あんなこと言うから……
迷ノ宮 光葉
りっくんえらすぎる……ギャップ萌えというのですね…
安武 陸
「増田だってそうだ」
安武 陸
「俺は増田の親友を殺したようなもんです」
海野標
「あれは逆恨みだけどな」
海野標
「自分に原因がある、っていうのと」
海野標
「自分がそうした、自分のせいだ、ってのは」
海野標
「切り分けていかなきゃなんねぇ」
海野標
「……背負い込めばいいってもんでもねぇんだ」
安武 陸
「……同じですよ」
海野標
「違う」
海野標
「それだけは、断じて違う」
海野標
迷いなく、きっぱりと言い切る。
安武 陸
「どうしてそう、断言できるんですか?」
海野標
「俺がそう生きてきたからだ」
海野標
「断言できる、ってよりは」
海野標
「……するんだよ。俺は」
海野標
「だから、俺の弟子であるお前にもそのように語る」
海野標
「お前が俺の言葉を肯定するも否定するも、それは勝手だけどな」
海野標
「まあ――」
海野標
「こう考えた方が、長生きはできるぞ?」
海野標
りんごを取った。3切れ目。
安武 陸
「そう言われると、ぜひとも真似したい所なんですけど」
安武 陸
ベッドの上に仰向けに倒れる。
海野標
「まあ敷村を刺したのがお前なのは事実だけどなー」
海野標
もぐもぐしゃくしゃく
海野標
「偉かったよ。黙ってて」
安武 陸
「事実なんですよぉ」
海野標
「あのメンツはまあ若すぎた」
海野標
「飲み込めても切り分けられない可能性のほうが高い」
安武 陸
「…………」
安武 陸
「言っても俺が許されて、俺だけ気持ちよくなるだけじゃないですか」
安武 陸
「叶恵ちゃんも光葉ちゃんも、多分責めないだろうし」
海野標
「そうだな」
安武 陸
「いや、叶恵ちゃんは責めるかな……」
迷ノ宮 光葉
りっくん……
赤木 叶恵
せめるぞ
敷村 修也
りっくんは気遣いができる男
海野標
「どっちにしろ、最後は許すポーズが要る」
海野標
「そうだろ」
安武 陸
「そーなんすよねー」
海野標
「一緒に戦うのなら」
海野標
「命を預けるのなら」
海野標
「結局は、許すように振る舞わなければならない」
安武 陸
「刺したことは許さないけど一旦置いておく、みたいなのはちょっと、大変ですしね」
海野標
「萎縮されても困るしな」
安武 陸
「困る~」
海野標
「……まあ、だから」
海野標
「黙ってたのは正しい。魔女も倒せたしな」
海野標
「よくやった」
安武 陸
「わーい褒められたッピ~」
ベッドに仰向けのまま、イェーイとダブルピースを掲げる。
海野標
「そういうとこもなぁ……」
海野標
もぐもぐしゃくしゃく……
安武 陸
「皆が俺を責めてくれればいいんですけどね」
安武 陸
「日常はそんなに厳しくないんですよね~」
安武 陸
「師匠にも褒められるし」
海野標
「責めてもいいけど」
海野標
「一応ごくごく薄い顔なじみだし、代わりに責めようか?」
安武 陸
「え~? ヤダ~」
海野標
「よくも俺のクラスメイトをーって」
安武 陸
「本気で思ってないなら責めないで下さいよ~」
海野標
「…………」
海野標
「一般人を狙うなんて最低~」
海野標
「とか?」
安武 陸
「そんな~」
安武 陸
「まぁ、でも、本当に責めてもらいたくなったら頼むかもしれません」
安武 陸
「今は、日常に甘やかしてもらいたい気分なので、いいですけど」
海野標
「ま、一応師匠だしな」
海野標
フォークを置いて立ち上がる。
海野標
「そんくらいの面倒は見てやらぁ」
安武 陸
「ありがた~い」
安武 陸
日常と、非日常の境界は曖昧になってきている。
安武 陸
ここにいる、自分の師匠で、まだ高校生で、半吸血鬼の男は、
安武 陸
日常の住民だろうか。非日常の住民だろうか。
安武 陸
境界は曖昧だけれど
安武 陸
彼は自分の味方だと思える。
安武 陸
無敵の男が自分の味方でいる。
安武 陸
それだけ分かっているなら十分だ。
敷村 修也
いいシーンだな
迷ノ宮 光葉
いい……
赤木 叶恵
やすたけ……
海野標
「ま、せいぜい就活頑張れ」
安武 陸
「がんばりま~す」
安武 陸
もう一度ダブルピース。
海野標
「真顔でやると気味悪ィな……」
海野標
顔をしかめて、そのまま玄関へ。
海野標
扉に手をかける。
海野標
ドアを開けて、挨拶もなく部屋を出る。
海野標
外から鍵の閉まる音がした。
海野標
テーブルにはりんごが残されている。
安武 陸
ふう、とため息をついて、体を起こす。
海野標
標が食べたりんごは4切れ。
海野標
八等分した半分。
GM
残りのりんごは、時関経過で赤茶けてきている。
安武 陸
半分も残っていると見るか、半分も無くなっていると見るか。
安武 陸
その判断は、自分にしかできない。

マスターシーン

海野標
道を歩く。
海野標
ハロウィン・ナイトの狂騒による被害が街に残した爪痕は大きかったが、
海野標
確かな復興に、人々は変わらず街を行き交う。
GM
駅前で、人探しのビラを配っている少女がいた。中学生ほどか。
GM
受け取られ損ねたその一枚が風に吹き飛び、
海野標
標の足元へと落ちる。
海野標
「…………」
海野標
行方不明になったらしき、二人の少女の顔写真と名前が並んでいた。
海野標
それを手に取る。
海野標
丁寧に折り畳んで、ポケットに入れる。
海野標
そうして再び道を行った。
noname
「――待たせてごめんね、ひなちゃん」
noname
「いっぱい時間がかかっちゃった」
noname
「でも、大丈夫」
noname
「もうすぐだよ」
noname
「もうすぐ、また」
noname
「また、一緒に、笑えるようになるから――」

ブラッドムーンキャンペーン『R:クロニック・ラヴ』

#0『きざはしに星』

おしまい

 

――#1『降りそそぐ愛』に、つづく