◇◆◇ プロローグ ◇◆◇

GM
──翌日、出立の日──
ショチ
「もっとスピードを上げろーーーっ!」
GM
トンネルの中を猛スピードで駆け抜ける荷車。その荷台から身を乗り出し、ショチは叫んだ。
GM
ロバが走るその隣を、老婆が並走している。
すばやさの亡者
「キエエエエエエ!」
ヨロトル
「いやー、早い早い」
GM
とある世界には、焼けた靴で死ぬまで踊らされた悲劇の女王がいたという。
GM
今や彼女は、トンネル内の車に猛スピードで踊りながら並走してくる化け物──『すばやさの亡者』へと成り果ててしまった。
GM
すばやく、しかしリズミカルにステップを刻む。激しく腰を回しながらも顔の高さは一切ぶれる事もない。
陽向 レンジ
「呑気に言ってる場合か!」
すばやさの亡者
「キエエエエエエ!」
宮鳴 サヨ
「なんて非合理的な動きなのでしょう、ネガティブです」
ヨロトル
「参ったねこりゃ」
ショチ
「ダメだ、振りきれる気がしねえ!迎撃-ッ!」
宮鳴 サヨ
「やはり、破壊がすべてを解決する……!」
ヨロトル
「車があるならワンチャンイケるかと思ったんだけどな~……」
すばやさの亡者
亡者が荷台へと飛び移ろうとする。
陽向 レンジ
「うおおー!! 応援! 応援ーッ!!」
陽向 レンジ
「き、きたー!!」
ショチ
「ヨロトル止めろー!」
ヨロトル
「はいはいっと」
ヨロトル
ヨロトルが身を乗り出して指をさすと、
ヨロトル
細かな黒曜の礫が亡者へと降りかかる。
ヨロトル
自分の心臓を抉った黒曜の武器。
それを僅かながら操ることがかなうのが、救世主としてのヨロトルの権能だった。
陽向 レンジ
それに絡めるはサブボーカル。黒曜に華を添え、威力を格段に上げる。
すばやさの亡者
「キエエエエエエ!」
ヨロトル
一撃一撃は軽くとも、レンジの加護を受けてその殺傷力は底上げされる。
宮鳴 サヨ
ヨロトルの攻撃に続いてサヨが鋭い蹴りを叩き込む。
すばやさの亡者
まっすぐと向かう老婆の進行方向から現れた礫が、その身へと直撃する。
すばやさの亡者
蹴りを受けて吹き飛ばされ、地面へと落ちる。
ヨロトル
「速いぶん痛いよな~」
陽向 レンジ
「やったか!?」
ショチ
「なるべく離すぞ!今のうちに!」
宮鳴 サヨ
ただではすむまい……
宮鳴 サヨ
「ネガティブ……今のはBADな音楽でした」
ヨロトル
「手応え微妙か~」
すばやさの亡者
老婆が起き上がる。体を大きく抉られながらも、その足元の動きは淀みなく、まるで、燃える靴に操られるかのように。
すばやさの亡者
馬車が走り、離れ、小さくなってゆく亡者。
すばやさの亡者
「キエエエエエエ!」
陽向 レンジ
「うわー!またくる!くるぞ!」
すばやさの亡者
しかし、その老婆が大きく叫び、駆け出すと、瞬く間にその距離が縮まっていく。
ショチ
「ギャーーーーーーッ!」
宮鳴 サヨ
「やはりこの場で徹底的に破壊するべきでは」
宮鳴 サヨ
拳を握りしめる。
ヨロトル
「このままじゃいたちごっこって感じはするが……」
ヨロトル
脅威度的に……どうだ……?
陽向 レンジ
「そうしたいのはやまやまだけど、場所が悪すぎる……!」
宮鳴 サヨ
すべての敵シンボルを消滅させないと気がすまないタイプ。
すばやさの亡者
どんどんと近づいてくる亡者。やがて横にピタリと並ぶ。
陽向 レンジ
「せめて広い場所に……ひっ」
すばやさの亡者
そして荷車を追い抜いて、前へ。
ヨロトル
「あ」
ショチ
「……!ヤバい!」
ヨロトル
「構えた方がいいなこれ!」
ヨロトル
主に衝撃に対して。
すばやさの亡者
亡者が、勢いよく荷台にぶつかる。荷台が大きく揺れる。
ショチ
「うおああ!」
陽向 レンジ
「ああああ゛!!」
宮鳴 サヨ
わ~~~っ。
ヨロトル
なるよなー!
陽向 レンジ
「みんな掴まれっ!!」
ショチ
「ヤバイ……!」
ヨロトル
荷馬車に捕まりながら、仲間のほうを窺いますが……
すばやさの亡者
しかし、次の衝撃は来ない。亡者が離れてゆく気配がする。
陽向 レンジ
「……!?」
ヨロトル
「んあ?」
ショチ
「……ッ!ロバだ!」
宮鳴 サヨ
ガタガタ……
ショチ
荷台を飛び出し、ロバへと飛び乗る。
ヨロトル
「あ、ショチ!」
ヨロトル
遅れて荷台を飛び出します。
すばやさの亡者
荷車を引く動力を狙う一撃。
ショチ
「うっ、ぐ……!」
ショチ
それをショチが受け止める。
ショチ
血が滴る。
陽向 レンジ
「……!ショチ!!」
宮鳴 サヨ
「ネガティブ……」
ヨロトル
老婆に蹴りを入れる。
すばやさの亡者
「キエエエエエエ!」
ヨロトル
とはいえサヨのような破壊力のない一撃。
すばやさの亡者
再びロバの方へと飛び、追撃を加えようとした横から衝撃を受ける。
すばやさの亡者
バランスを崩し、そのまま荷台の中へと飛び込んだ。
陽向 レンジ
「く……!サヨ、振りかぶって!」
宮鳴 サヨ
「了解しました!」
陽向 レンジ
青いサイリウムが浮遊する。
宮鳴 サヨ
翼のパーツを唸らせながら右腕を振りかぶり、引き絞る。
陽向 レンジ
流れを変える。救世主たちのターン。処刑用BGM!
すばやさの亡者
「キエエエエエエ!」
すばやさの亡者
頭を地に着けて、腰を高く上げて。
すばやさの亡者
両足をぐるりと回し、迎撃しようとするが。
陽向 レンジ
(処刑、というには余裕がなさすぎるが……届け!)
宮鳴 サヨ
溢れるエネルギーがコードからの放電という形となって現れる。
宮鳴 サヨ
破城槌のような拳が、亡者に叩き込まれる!
宮鳴 サヨ
一発!
宮鳴 サヨ
さらにもう一発!
陽向 レンジ
アンコール!
すばやさの亡者
「キエエエエエエ!」
すばやさの亡者
靴が砕ける。
すばやさの亡者
足が砕ける。
すばやさの亡者
そのまま立ち上がることもできず、地へと伏す。
宮鳴 サヨ
「フィナーレです」
宮鳴 サヨ
ギロチンのように振り下ろされる踵。
すばやさの亡者
「キエッ」
すばやさの亡者
頭が砕け、
すばやさの亡者
荷車から振り落とされる。
すばやさの亡者
しかし、その事切れる直前。
ヨロトル
ショチを助け起こそうとしていたところで。
すばやさの亡者
指が荷車を指していた。
すばやさの亡者
正確には、荷車を引く、ロバを。
ヨロトル
「あ」
すばやさの亡者
反応をする間もなく、亡者の指が輝く。
GM
掌から放たれた光線━━否、光線状に圧縮された高密度のすばやさが、荷車を引くロバへと直撃する!
ヨロトル
慌てて指を差し向けようとしたが、遅い。
ロバ
「ヒン」
陽向 レンジ
ロバーーー!!!!
ヨロトル
ロバーーーーー!?
GM
ロバが加速する!長い嘶きを0.1秒にも満たぬすばやさで終えた馬は、猛烈な速度で走り出す!
ショチ
「ううううう、おおおおおおおわわわわわわ!?」
GM
車両へと急激に負荷が掛かる。板のへし折れる音が鳴り、車は前後に二分された。
宮鳴 サヨ
「……!」
ショチ
「あーッ!」
ヨロトル
「うわ」
陽向 レンジ
「あああああヤバいヤバいヤバい!!!」
GM
ロバを引いていた行商人が吹き飛ばされる。
宮鳴 サヨ
トドメの一撃を加えたままの姿勢で、サヨは動かない。あるいは動けない。
GM
ロバはなおも加速をする。救世主たちが分断される。
ヨロトル
その加速を留められるほどの力はない。
GM
サヨとショチを車内に取り残し。車輪を失った荷台が地面に引きずられてガタガタと揺れる。
GM
レンジとヨロトルは車両から放り出され。
ヨロトル
「っ……!」
陽向 レンジ
叩きつけられる。
GM
サヨとショチだけが、猛加速をする車両の中へと残された。
陽向 レンジ
「サヨ!!ショチ!!!」
GM
車は豆粒のように小さくなって、そして消える。もはや声も届かない。
陽向 レンジ
追いつけない……けど!
ヨロトル
「うわー……」
ヨロトル
「マジか」
陽向 レンジ
「は、走るぞ!」
ヨロトル
「どっかで止まってくれることを祈るしかないよな~」
ヨロトル
レンジに応えて、走ります。
陽向 レンジ
「あいつらを置いていけないっていうか置いてかれてるのはオレたち!」
ヨロトル
「分断の形がこうなのはマシだったな」
ヨロトル
「レンジとショチだけとかヤバすぎる」
GM
一方、車内では。
ショチ
「うわ、うわ、うわうわうわ!」
宮鳴 サヨ
ガタガタ……
GM
もはやロバの出せる速度ではない!あっという間にトンネルを抜ける。
GM
地面が凄まじい勢いで後ろへと流れてゆくのが見える。荷車はさらに加速する。すぐに降りなければ。
宮鳴 サヨ
……しかし、どうやって?
GM
強引ではあるが。
GM
今ならまだ、そのまま飛び降りてしまえば、救世主ならば大きなダメージを負う事なく切り抜けることができるだろう。
GM
仲間たちと離れたとはいえ、まだ道を見失ってはいない。逆走をすれば、すぐに合流もできる。
GM
だが。
ショチ
「ちょ、待て、足が引っ掛かって……!」
GM
壊れた荷台の足場に、ショチの足が挟まっている。
ショチ
「ヤバイ……このままじゃ……!」
ショチ
自力では引き抜けない。
ショチ
ちらりとサヨの方を見る。
ショチ
助けてもらうとして。
宮鳴 サヨ
「……」
ショチ
その間に経過する時間は?
ショチ
二人とも、無事でここから脱出できるのか?
ショチ
これは自分の不始末だ。そして、サヨだけならば、今なら確実に助かることができる。
宮鳴 サヨ
挟まり方を観察している。そして計算している。ショチにダメージを与えずに救出できる可能性。それにかかる時間。二人で脱出することのリスク。
宮鳴 サヨ
あまり猶予はない。
ショチ
「何を……してやがる、ウスノロが」
ショチ
時間が経過していく。
ショチ
「早く」
宮鳴 サヨ
揺れる荷台。バランスを取れずにたたらを踏む。
ショチ
「オレを」
ショチ
置いて。
ショチ
皆と合流して、それでももし自分が運よく生き残っていたならば。
ショチ
「助けやがれ!サッサと動け!ボケが!」
宮鳴 サヨ
「…………」
宮鳴 サヨ
荷台の底を踏みしめる。
宮鳴 サヨ
「ネガティブに思います」
宮鳴 サヨ
そして疾走する荷台から、高く跳躍した。
宮鳴 サヨ
ショチを置いて。
ショチ
それを見たショチは、一瞬だけ、小さく笑み。
ショチ
「なーッ!?テメーッ!?」
ショチ
「オレを見捨てる気か!」
ショチ
車は、足を挟まれたショチだけを乗せて。
宮鳴 サヨ
ええ。
宮鳴 サヨ
肯定します。
宮鳴 サヨ
その返事も届いたかどうか。
ショチ
「うおおおおお!!覚えてやがれーーーーッ!!!!」
GM
さらに加速していく車。もはや追いつく術もなく。
宮鳴 サヨ
荷台から弾かれるように跳躍し、迫ってくる岩山に、逆に拳を叩きつける。
宮鳴 サヨ
衝撃を相殺しながら、荒れ野に転がる。
GM
もはやショチの姿は見えない。声も聴こえない。水平線に見えるのは、ぽつんと小さな影だけ。
GM
それはどこへと向かうのか。乗客は生きて終着点へと辿り着くことができるのか。
GM
4人組の救世主一行。
GM
1人減って、3人組。その旅は続く。
GM
***
GM
──それから3ヶ月後──
GM
ヨロトルが得た情報を元に、一行は荒野を歩いていた。
GM
最近、集落の付近で「ゴーストペッパー」という亡者が現れるようになった。
GM
彼らの武器は致死性の辛味だが、死後その辛味は抜け、有用な食材になるという。
GM
「ゴーストペッパー」は踊りに誘われる性質を持つため、誘き出すには踊りが必要となる。
GM
……この先にある集落に、救世主にそれらの情報を与え、討伐の依頼をしてくる女がいるらしい。
GM
その人物の外見的特徴が、ショチと一致するというのだ。
ヨロトル
他人に取り入るのはまあまあ得意なので、割と情報収集を請け負います。
ヨロトル
レンジも下手じゃあないはずなんだが、おおむね1/2で危険だからな……
陽向 レンジ
1/2で叫んじゃうからな……
宮鳴 サヨ
交渉はバツ技能です。
ヨロトル
適材適所役割分担。
ヨロトル
「しっかし」
ヨロトル
「堕落の国の風ってのはいつも乾いて仕方ねえなあ」
陽向 レンジ
「丸一日歩けば干乾びそうだ」
陽向 レンジ
「今回はある程度水分の補充ができたからいいものの……」
宮鳴 サヨ
「砂が身体に入り込んで来ます。ネガティブです」
ヨロトル
「荒野じゃ砂礫もひでえもんだからな」
ヨロトル
「こういう時はサヨのがキツいよな~」
宮鳴 サヨ
そのあたりで拾ったボロ布を身にまとってしのいでいる。
陽向 レンジ
精密機械はな~
ヨロトル
防ぐもの、俺らも欲しくはあるが、さすがにサヨが最優先。
ヨロトル
もうちょっと別の格好できたらいいんだけど、なんか知らんが疵がこの格好を選ばせるんだよなあ。
陽向 レンジ
不思議と左胸を強調するかんじに……
陽向 レンジ
「ショチ……本人だといいな」
ヨロトル
「こればっかりは会ってみないとだが」
陽向 レンジ
荒野の向こうにいるはずの女を想う。
ヨロトル
こちらは割と、なんというか、さらっとしてます。少なくとも見た目上は。
宮鳴 サヨ
「どうでしょうね」
宮鳴 サヨ
「本人かもしれませんが……」
ヨロトル
今はショチ不在の三人PTであることをすっかり受け入れている振る舞い。
宮鳴 サヨ
「文学的な表現をすれば、三ヶ月の間に、ボクたちの知らないショチになっている可能性もあります」
ヨロトル
それはそれとして、熱心な情報収集を行い、ショチらしき人物の手がかりを持ち帰ってきたのもこの男なのだが。
ヨロトル
「三ヶ月経ってるからなあ」
陽向 レンジ
「それは、そうかもしれない。あるいは別人か、なりすましとか」
ヨロトル
「生き延びてるってことは……つーのは、ある」
陽向 レンジ
よくない可能性のほうがずっと多い。
ヨロトル
「ショチ本人に何らかの変化があるか」
ヨロトル
「もしくは他に取り入る先を見つけているか」
GM
ショチの暴力アレルギーは皆の知るところだ。
GM
虫を殺すこともできない。軽いスキンシップで仲間を小突くことすらできない。
ヨロトル
「今もショチが生きてるなら、この二択だからな」
GM
堕落の国に来た彼女が、自ら手を下したことは、一度もない。
陽向 レンジ
それでも今日までずっと、四人揃うことを望んで旅をしていた。
陽向 レンジ
誰かに取り入っていてもいい。
彼女が彼女のまま、生きていてくれることを願う。
宮鳴 サヨ
「いずれにせよ、見知った顔だからと言って、気を緩めることにはネガティブな意見を持ちます」
ヨロトル
「いっそなりすましの可能性も疑っていこう」
ヨロトル
「それなら比較的心が痛まない」
陽向 レンジ
「大丈夫、気を抜いてはいないさ」
陽向 レンジ
「実際になりすましだったら最悪だけど……やるしかない」
ヨロトル
「なりすましのがある意味じゃマシとも思うぜ?」
ヨロトル
「本人で、ガラッと変わってて、やり合うしかない」
ヨロトル
「そういうのも全然あるからな」
陽向 レンジ
「うう、どんどんネガティブになっていくが……?」
ヨロトル
「ショチが元気だといいな!」
陽向 レンジ
「くそっ、現実を突きつけた上で励ますのが上手い」
宮鳴 サヨ
「ボクとしては、遭いにいくこと自体ネガティブと考えていますが……」
宮鳴 サヨ
道中でも何度か同じことを主張しただろう。
陽向 レンジ
「ただ、会わずして可能性をきりすてることだけはしないでいたい」
ヨロトル
「他にやることあるんならそっち優先するけどなあ」
陽向 レンジ
「誰がそうなっても同じだよ。オレは探しだす」
ヨロトル
「いやあ」
ヨロトル
「レンジだな~」
宮鳴 サヨ
結局のところ、二人の弁に反対するだけの理由がないため、こうして共にやってきたのだった。
ヨロトル
「俺もショチのこと心配なのはマジだし」
陽向 レンジ
「まあ、情報収集は完全に頼りっぱなしだったけどね」
ヨロトル
「1/2で最悪倒れる相手のフォローするほうが大変だからな」
陽向 レンジ
その節はどうも……という場面が多くあった。
ヨロトル
ショチやサヨなんかは距離感分かってるからいいんだけど……
ヨロトル
相手が末裔だとな~
陽向 レンジ
求めてくるからな、かなり。
ヨロトル
救世主さまに縋ってきちゃうこと かなり ある
ヨロトル
特にレンジはビジュアルが良くて……しかもそのビジュアルのよさがなんか親しみやすさの方向に向いてて……
宮鳴 サヨ
性別に振り回される人間って大変ですねえ。
陽向 レンジ
救世主と末裔、アイドルとファン、男と女、そういった境目が崩れ出す瞬間に恐怖してしまう。
ヨロトル
一方で二人の知らんとこでショチと男と女としての境を超えていたこの男ですが……
陽向 レンジ
しらんうちになってたよね。びっくりしたよね。
ヨロトル
なんか流れで。
陽向 レンジ
羨ましい気持ちがないわけではないけど、よいと思います。
ヨロトル
よくてよかった~。
ヨロトル
「まあ、ショチの無事を祈りつつ、警戒は怠らないってことで」
ヨロトル
「ここまで来て引き返すのも馬鹿らしいしな!」
陽向 レンジ
「改めてありがと、その、一緒にきてくれてさ」
宮鳴 サヨ
「感謝する必要はありません。非合理的です」
ヨロトル
「今更だろ」
ヨロトル
「ショチが抜けたのに、レンジにまで抜けられたら困る」
陽向 レンジ
「これ以上の脱退はな」
陽向 レンジ
リーダー脱退はしゃれにならない。
ヨロトル
ならんなあ。
ヨロトル
「なんだかんだショチの働きってデカかったんだな~とは思ったしな」
ヨロトル
「殴れないとはいえな~」
陽向 レンジ
「ショチとオレの二人いればかなり丈夫になれたからな」
ヨロトル
「ショチが抜けたぶん、サヨが壊されることが増えた」
陽向 レンジ
庇いきれないことが多くなった。
陽向 レンジ
ヨロトルに対してもそう。守れるのは大方ひとりだけ。
宮鳴 サヨ
自分が破壊される音はそうそう聴きたいものではないですね。自己保存の目的に反しているので。
ヨロトル
俺はまあサヨほどは狙われないけど……
ヨロトル
逆に言うとサヨを守るほうを優先するから、って場面は増えた。
陽向 レンジ
この旅の終わりにショチと合流して、また同じようにやっていく……
陽向 レンジ
なんてことができたらいいな。
陽向 レンジ
と言ったら、また窘められそうだ。
ヨロトル
希望的観測を持つこと自体は悪くないが、それに縋るようになってはならない。
陽向 レンジ
両頬をぱんと叩いて、気を引き締める。
ヨロトル
ヨロトルの言動は概ねそういった事実を示唆する。
陽向 レンジ
「さ! 休憩はまだまだ先だ!気合い入れて行くぞ!」
ヨロトル
「おー!」
GM
なだらかな坂を上り、小さな山のてっぺんへ。そこから下を見下ろせば、目的地が見える。
末裔A
小さな集落に、柵を補修している三月兎の末裔たちの姿が見える。
末裔A
見下ろす救世主たちの影に気付いて顔を上げた。手を振っている。
ヨロトル
「おや」
陽向 レンジ
「末裔だ……」 手を振り返す。
宮鳴 サヨ
キュイ……(首を傾ける)
ヨロトル
切迫した様子ではないな~
末裔B
そのうちの何人かが、嬉しそうに駆け寄ってくる。
ヨロトル
おやおや。
末裔B
「救世主さま! 救世主さまね!」
末裔B
互いの声が届く距離まで近づくと、懐こい声で。
ヨロトル
「おう、救世主御一行だ」
ヨロトル
こういう時の対応役にもなりがち。
陽向 レンジ
笑顔を維持したまま一歩退く。
末裔A
「うれしい! 本当に救世主さま!」
末裔B
「いまパーティーの準備をしているの! ぜひ救世主さまも参加なさって!」
ヨロトル
「パーティ?」
陽向 レンジ
この世界の末裔は、現代のファンより遥かに距離が近い。
末裔A
「ええ、そう! 今日はすてきなすてきなお祝いの日」
ヨロトル
「何を祝うんだ?」
宮鳴 サヨ
「音楽はありますか?」
末裔B
「おいしい食材つかまえて」
末裔A
「お皿の上にはすてきなサラダとサルサがいっぱい!」
末裔B
「踊りあかして、お食事にありつくの! とってもおいしいんだから!」
陽向 レンジ
「おいしい食材……ああ、情報通りだ」
ヨロトル
「情報自体は合ってたみたいだな」
ヨロトル
「食材捕まえたって話だけど」末裔に話しかけます。
ヨロトル
「俺らの他にも救世主、いんのか?」
末裔A
「ええ、もちろん! このパーティーの主催もその人!」
末裔B
「ショチさまっていうの! ぜひ、救世主さまたちにも紹介したいわ!」
ヨロトル
おー。
陽向 レンジ
表情が明るくなる。
陽向 レンジ
「ショチ……やっぱり」
ヨロトル
ドンピシャ引いたなあ。
ヨロトル
「救世主、そのショチさま一人か?」
末裔A
「ええ、ええ! たまに救世主さまはいらっしゃるけれど、みんなパーティーが終わったらどこかへと向かわれるわ」
末裔A
「今、ここに残っているのはショチさまひとり!」
陽向 レンジ
「たまにいらっしゃる……ってことは、何度かうまくやり過ごせたのかな」
責務。
ヨロトル
「そういうことになるが……」
ヨロトル
同行することは選ばないんだな。
陽向 レンジ
「とにかく、そのショチさまに会いたいんだけどいい?」
宮鳴 サヨ
「一箇所にとどまっているのですか。非合理ですね」
ヨロトル
「まあ、会わせてもらえるなら会ったほうが早いな」
GM
ここは僻地だ。定期的な救世主の来訪はあまり期待できないだろう。パーティーを終えた救世主たちが別の場所へと渡り歩くのは自然なことだ。
陽向 レンジ
「ああ、話してみたら分かるさ」
GM
サヨの言う通り、この街に滞在するショチの方が不自然ともいえる。だが、救世主を積極的に狩りに行くような性格でもない。
末裔A
「ではお連れしましょう! そうしましょう!」
宮鳴 サヨ
「そうですね。それが一番早い」
ヨロトル
「よろしくなー」
末裔B
「ぜひ、中へ入っておくつろぎになって!」
GM
坂を下りて柵を抜けて、集落の中へ。
GM
末裔たちがショチを探して集落へと入っていき、中からその人を連れてくる。
ショチ
「なんだ~、客だって~?」
ヨロトル
「おっ」
GM
そうして、ショチが姿を現し、3人の顔を見て。
ヨロトル
「マジでショチじゃん」
ショチ
「……!」
ショチ
驚愕に目を見開く。
陽向 レンジ
「ショチ!久しぶりだな!」
宮鳴 サヨ
「外見も振る舞いも、あまり変わっていないように見えますね」
ショチ
「お、オメーら!? 無事だったのか!」
ヨロトル
「割とこっちのセリフだろ、それ~」
陽向 レンジ
「そうだぞ!ずっと探してたんだからな!」
ショチ
「そうか?あ、そうか。いや、そうだな!ハハハ!」
ヨロトル
「こっちはお前一人でどう生き延びてることやら心配だったんだぜ」
ショチ
「見ての通りピンピンしてらあ!なんだ、ショチさまが居なくて寂しかったか?」
陽向 レンジ
「寂しかったよ、そりゃあ」
ヨロトル
「レンジ、めっちゃ寂しがってたよな~」
ヨロトル
「あんまりだからサヨが窘めてた」
陽向 レンジ
「いきなりあんな形でメンバーが脱退するなんて思わなかったし」
ショチ
「おいおい。可愛いところあるじゃねえかレンジぃ~」
陽向 レンジ
「からかうなよ、本気で心配してたんだからな!?」
ヨロトル
爆速で走るロバに連れられて消えていくなんて形で……
陽向 レンジ
あんなん一面記事どころじゃない……
宮鳴 サヨ
「思ったより元気にしていて、何よりです」
ショチ
「いやあ。オレもどうなる事かと思ったんだけどよ」
ショチ
「運がよかったんだ。ここに流れ着く形で止まってくれたからな」
ショチ
「でもすげー光景だったぞ。ロバが目の前で萎びてどんどん細くなっていくんだ。最後にはヨボヨボに老化して死んで……」
宮鳴 サヨ
こわ~
陽向 レンジ
「ロ、ロバ……」
ヨロトル
「なんかかわいそうになる話だな……」
陽向 レンジ
すばやさの亡者にやられた末路か……
ヨロトル
生命そのものを加速されたのか……
陽向 レンジ
「一歩間違えればショチもそうなるかもしれなかったんだな……」
ショチ
「おかげで放り出されずに無事に降りられたってワケよ。マジこれどう止まるんだよって感じだったからな」
陽向 レンジ
「なんていうか、いろんな面で幸運引いたな」
ヨロトル
「サヨもギリギリだったって話だもんな!」
ショチ
「へえ~?そうなんだ?」
宮鳴 サヨ
「ええ。ギリギリの判断でした」
宮鳴 サヨ
「あの時、ショチを助けられなかったことはネガティブに感じています」
宮鳴 サヨ
ごく当然のように言う。
ショチ
「ふう~ん……」
陽向 レンジ
「あのあと、うまくサヨを拾えたはいいんだけど、馬車だけは見つからなくて……」
陽向 レンジ
「でも、探し続けた甲斐があったな!」
ヨロトル
「あの時はサヨを見つけられただけまだ、って感じだったからな」
ヨロトル
「いや~、探した探した」
ヨロトル
「噂になるくらい派手なことしてくれてて助かった」
ヨロトル
「狙ったのか? ショチ」
ショチ
「え?何?噂になってんの?」
ヨロトル
「なってるなってる」
ショチ
「知らなかった……」
ヨロトル
「ゴーストペッパーがどうとか、武器がメシになるとか」
宮鳴 サヨ
「それなら合理的に説明がつくと思ったのですが……」
ヨロトル
「んで、その亡者の情報をバラまいてるのが」
ヨロトル
「ショチ」
ヨロトル
「お前だって話を聞いててな」
陽向 レンジ
「……そうそう、救世主に討伐の依頼をって……」
ショチ
「あ~……」
ショチ
「なるほど、そういう流れになるわけだ」
ヨロトル
「責務はやっぱりそれで?」
ショチ
「確かにな。ここにたまに救世主が訪れるモンで、パーティーに誘うみたいな事をしててな」
ヨロトル
「ついでに裁判でも起こしてたのか?」
ショチ
「……責務は、まあ、なりゆきでトラブルがあってな。そこに立ち会ったから、達成した形になった」
陽向 レンジ
ごっつぁん責務だ。
ヨロトル
「それで三ヶ月とは、運が良かったなあ」
ショチ
「ホントだよ。そこから生き残った救世主が他の町でその噂をバラまいたんだろな」
陽向 レンジ
「へえ~」
宮鳴 サヨ
「塞翁が馬ですね」
ヨロトル
「どこで何が繋がるか分からんもんだ」
ショチ
「ま、いいや。そこまで知ってるなら話は早え」
ショチ
「お前らもパーティーに参加してけ。久しぶりにうめえモンが食えるぞ」
ヨロトル
「漁夫の利だな~」
陽向 レンジ
「ゴーストペッパーとやらか」
ショチ
「そうだ。ついてきな」
ヨロトル
「…………」
GM
ショチが先導して、集落の中を案内する。
GM
集落にはマリーゴールドの造花が並び、パペルピカド(※色紙の切り絵のガーランド)が吊るされた色鮮やかな雰囲気だ。
ヨロトル
こんな辺境なのに随分とまあ。
ヨロトル
やっぱり定期的な食の恵みがあると違うんだなあ。
宮鳴 サヨ
「活気がありますね。ポジティブです」
ショチ
「ゴーストペッパーの亡者肉は絶品だ。唐辛子の亡者だが、辛味は全くない」
陽向 レンジ
「花は作り物で……へえ、なるほど、よくできてるじゃん」
ヨロトル
「定期的に絶品料理がいただけるってワケか」
ショチ
「果肉が分厚くてジューシーでほんのり甘くて……なんつうか、苦くないピーマンみてえな感じっつうのかな」
陽向 レンジ
「その亡者をオレたちで討伐するの?」
陽向 レンジ
なんか踊りで、っていうのも噂にあったな……
ヨロトル
「パーティってことは、もう討伐されてんのかと思ったが」
宮鳴 サヨ
何度も現れるのでしょうか。
ショチ
「たくさん居るんだよ。だから味が知れ渡ってる」
ショチ
「んでもって、攻略法も知れ渡ってるってわけだな。奴らは踊りに惹かれて来る」
ヨロトル
「踊りに」
ショチ
「そうだ。懐かしいな。オレたちが分かれる前夜、踊りをやって盛り上がったもんだが……」
ショチ
「今日はその続きをやれるってわけだ!」
陽向 レンジ
「へえ……」
陽向 レンジ
「ああいうのでもいいの? 踊りって」
宮鳴 サヨ
「再会にはふさわしい催しと言えそうですね」
ヨロトル
「また勝負するか?」
ショチ
「もちろん。ジャンルは不問、盛り上げたもん勝ちだ」
陽向 レンジ
「いいねいいねぇ~」
ヨロトル
「うわ、俺一番不利なやつか」
ヨロトル
盛り上げ本職どもだぞ、そこ三人。
ショチ
「そう、不利。今ヨロトルはいい事を言ったぞ」
陽向 レンジ
盛り上げ本職で~す
ヨロトル
「なんだなんだ、なんかあるのか?」
宮鳴 サヨ
ボクも盛り上げそのものは得意ではありませんが……
ショチ
「ただ踊るだけじゃつまらねえ!この中で!誰が一番この集落を盛り上げられるかを競う!」
陽向 レンジ
「本格的に勝負だな」
ヨロトル
「前は勝負に負けて踊りだったけど」
ヨロトル
「今度は踊りそのものが勝負か~」
陽向 レンジ
「今度は負けたら何するの?」
ショチ
「あ~?」
ショチ
「競うんだから、当然目指すべきはテッペンだろ」
ショチ
「景品をくれてやる!こいつを巡って醜く争え!」
ヨロトル
「景品?」
宮鳴 サヨ
ほほう

貢献度について

お茶会パートでは、ダンスで活躍することによって「貢献度」を増やすことができます。
裁判フェイズ前に最も貢献度が高いPCには、価値10以下の宝物をプレゼント! レッツ、ダンスバトル!
※お茶会パート終了時点でPC同士の貢献度が並んだ場合は1d100を振り、数字の大きい方を貢献度の高いPCとします。
※プレゼントの宝物は譲渡できません
陽向 レンジ
「ほほ~、罰ゲームじゃなくて賞品か」
ヨロトル
「今度は負けじゃなくて勝ちを決めるってワケだ」
宮鳴 サヨ
「ポジティブです」
ショチ
「それはそれとして、ドベは恥ずかしいぞ。村じゅうにドベとして認定されるわけだからな」
ヨロトル
「それこそ恥だな~」
陽向 レンジ
「流石に負けてられないな……」
陽向 レンジ
「マジで食ってきたからな、それで……」
ヨロトル
「レンジからのプロデュースは期待できそうにないか~」
ショチ
「ここで負けたらアイドルの看板ぶら下げてられねえなあ!」
陽向 レンジ
「ぜったい負けな~い……それはそれとして必要な分は教えるよ。亡者退治が第一だろ」
宮鳴 サヨ
「ポジティブ。やってみる価値はありそうです」
ヨロトル
「お、助かる。さすが~」
ショチ
「そうだな。あんまり一方的な勝負ってのもつまらねえ。大会的の勝敗な意味でも、いい感じに盛り上げてくれよ」
ショチ
「オレが有利なレギュレーションだからなあ。頑張ってたくさん踊ってもらうしかねえな!」
ヨロトル
「前の敗北に懲りて自分有利なレギュレーションを敷いてきた」
陽向 レンジ
「ジャンル不問ならオレはやるぞ、アイドルを……」
ショチ
「うるせー!今度こそギャフンと言わせてやる!でも戦いの前にスタミナは使い切るなよ!」
ショチ
「おーおー好きにやりやがれ。そっちの方が負けたときに言い訳できねえからよ」
ヨロトル
「レンジの本気のステージが見られるのは楽しみだな!」
宮鳴 サヨ
「ボクの歌唱も、この集落でどこまで通用するか……」

ショチについて

ショチは協力傾向の救世主です。手番を持ち、PC同様に行動の処理を行います。クエストへの挑戦も可能です。
亡者のHP計算などでPC人数を参照する場合や、PCのみに関わる処理(逆転、切り札、クリティカルとファンブルなど)、その他MODなどにおいても、すべてPCとして扱います。
ショチ
「それじゃあ……」
ショチ
「いくぜ!パーティーの始まりだ~!」

クエストNo.1 六ペンスコインの力を駆使して、情熱的なダンスを魅せつけろ!

概要:踊って場を盛り上げる。1人で踊ってもいいし、仲間を誘うのもいいかもしれない。
目標値:6
消滅条件:お茶会2ラウンド目終了と同時に消滅。
成功:自身のHPを1点回復(HPの上限を超える)し、達成値と同値の「貢献度」を得る。さらに共に踊ったキャラクターのうち任意の1名にも同値の「貢献度」を与えてもよい(対象はこれを拒否できる)。
失敗/放置:なし