プロローグ

GM
請け負った亡者退治は、それほどむずかしい仕事ではありませんでした。
GM
難なく依頼を成し遂げたあなたたちは、それを頼んできた村へと戻ります。
GM
しかし、あなたたちが再び訪れた村の様子は、なにやらおかしいものでした。
GM
村人たちはやたらといちゃいちゃしていたり、一方的に泣きついたり、物陰でひとり沈んでいたり。
こぞってみんな情緒がどうかしているようなのです。
GM
前は、こんなおかしな感じではありませんでした。
GM
この国基準では、普通の村です。貧しいけどのどかな感じで、みんな真面目に働いていました。
GM
「ひどい有様でしょう?」
GM
1人の青年があなたたちに話しかけます。3人の男女にまとわりつかれながら。
宮城ユウキ
「なんかすごいことになってるね」
シェリ
「わあ~」
藤花
「なんやのん、これ」
宮城ユウキ
「大丈夫?」
宮城ユウキ
剥がした方がいい? と指さします。
GM
「お気遣いありがとうございます……でも多分すぐにまたこうなるので……」
宮城ユウキ
「そっか……」
シェリ
なんだかちょっぴり楽しそうだねえ。
GM
耳をしゃぶられながら答えます。
宮城ユウキ
それは……痛ましい話だな……
GM
「これは全部……亡者『ラビング・ラビット』の毒のせいなんです……」
宮城ユウキ
「らびんぐらびっと」
シェリ
「らびんぐらびっと?」
藤花
「なんやのん、神経毒いうこと?」
GM
「神経毒……? かどうかは、わかりませんが……」
宮城ユウキ
亡者毒っていまいち科学的に分析できなさそうだもんな。
GM
「やつが現れて、毒を振りまいてから……」
GM
「みんな……こんな感じに……」
宮城ユウキ
「こんな……」
藤花
毒には詳しいはずだが……知らない……この国の毒がどこまで自分の知るものかはさておき……
宮城ユウキ
視線を巡らします。
宮城ユウキ
こんな感じか……。
GM
所構わずいちゃついてたり、物思いにふけっていたり、悲しんでいたりします。
シェリ
お祭りみたいだねえ
宮城ユウキ
知ってるような……知らないような……
藤花
「見たとこは気分の高揚、興奮状態、情緒の乱れ」
宮城ユウキ
あるあるような……あってたまるかのような……
GM
「こうしている間にも、いつまたやつが……」
GM
青年の声に被さるように。
GM
……ズシン
GM
……ズシン
GM
地面が揺れます。
宮城ユウキ
「!」
シェリ
「わわっ」
藤花
症状の分析をやめて見上げる。
ラビング・ラビット
大きな足音。
ラビング・ラビット
それに見合う巨大な身体。
ラビング・ラビット
胸には大きな空洞。
ラビング・ラビット
そこから繋がった心臓を差し出すように掲げている。
ラビング・ラビット
大きな一つの目で亡者があなたたちを捉える。
宮城ユウキ
その巨体よりかは異様な風体に目を瞬き。
シェリ
「おっきいねえ………」
GM
「出たっ亡者だ……!」
宮城ユウキ
「藤花さん!」
自分より速い藤花には声をかけ、速度に劣るシェリの腕を取って逃げようとしますが。
ラビング・ラビット
それよりも早く、亡者があなたたちに桃色の霧を振りかける。
藤花
「あかん!あんたら息止め!!」
シェリ
「わぷっ」
宮城ユウキ
自分も藤花も、当然シェリも遅かった。
ラビング・ラビット
毒による不意打ち。そのまま畳み掛けるように、あなた達に襲いかかりますが……
藤花
意味があるのか!?経皮かもしれない 粘膜からかも
GM
「救世主様ッ!!」
宮城ユウキ
このテのやつのって理屈じゃねえんだよな!
GM
先程の青年が身を挺して盾になる。3人の男女を引きずりながら。
宮城ユウキ
「っ…………」
GM
「救世主様――好きだッ!」
藤花
「っ アホ!」
宮城ユウキ
「…………」
シェリ
「!?」
宮城ユウキ
なんか……あんま深刻じゃない空気感になっちゃったな……
GM
亡者による攻撃に深く傷つきながら、青年は……
GM
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
宮城ユウキ
ギャハハハハ
GM
藤花さんへの恋を叫びます。
シェリ
あらまあ~
藤花
は?
GM
しっっかり見ています。藤花さんの方を。
GM
「叱ってくれた……優しい……」
宮城ユウキ
「…………」
GM
血を流しながら、なんか満足そうにしています。
シェリ
「…そうだったの?」
藤花
自分たちを庇おうとした男に手を伸ばそうとして その手をピタッと静止させている
宮城ユウキ
「……ええと」
宮城ユウキ
「彼の尊い犠牲は、ひとまず忘れないことにして……」
宮城ユウキ
改めて、亡者を見上げます。
ラビング・ラビット
一方亡者の方。
ラビング・ラビット
あなたたちに毒が効いていないとみるや、巨体をくるりと反転させます。
ラビング・ラビット
そのままズシンズシンと地面を響かせて……
宮城ユウキ
「……急いで逃げた方が良さそうだ!」
宮城ユウキ
改めてシェリの手を取り、駆け出します。
ラビング・ラビット
どこかへ去っていくのでした。
シェリ
「わかった~!」
シェリ
「……あれっ?」
宮城ユウキ
駆け出しかけたところでこちらも止まります。
宮城ユウキ
あれ。
ラビング・ラビット
地響きが遠くなっていきます。
シェリ
ユウキの手をつんつんと引きました。行っちゃったよ?
宮城ユウキ
行っちゃったなあ。
シェリ
行っちゃったねえ。
宮城ユウキ
「……ううん」
宮城ユウキ
「セオリーが通用しない」
藤花
若干冷静になりました。亡者が去っていったのを確認してから、倒れている男の方に寄ります。
宮城ユウキ
俺に身についてるのは亡者相手のセオリーじゃないから仕方ないんだけど……
宮城ユウキ
シェリの手を離します。
宮城ユウキ
「ごめん、空振った」
藤花
もう なんやのもう ほんまに
シェリ
藤花に倣って駆け寄ります。
GM
青年は近くに来た藤花さんを嬉しそうに見て、
GM
「救世主様、どうか、口づけを……」
GM
「いや、あの亡者を倒してください」
宮城ユウキ
あっ正気だ。
宮城ユウキ
頑張ってる。えらいな。
GM
息も絶え絶えに、青年はあなたたちに伝えます。
シェリ
「…治さない方が、いい…?」
宮城ユウキ
「というか……」
GM
一応まとわりついていた末裔たちが、せっせと傷の手当をしています。
宮城ユウキ
「一人ひとり治して回るより、元を絶った方が良さそうだな……」
宮城ユウキ
村の惨状を見回しながら、そのように嘆息します。
GM
「はい……おそらくこの毒は、あの亡者を倒せばどうにかなるはず……」
GM
「救世主様は残念ながら、いや、幸い……あの毒に支配されきってはいないご様子」
宮城ユウキ
「残念ながらって言った」
GM
確かにあなたがたは、目の前で末裔が繰り広げているような状態にまでは陥っていません。
藤花
「……アホちゃうのん」
シェリ
このひと、意外と元気かも?
藤花
めちゃくちゃ小声で呟いています。
GM
しかし何か胸に高まるような感覚、あるいは心をきゅっと締め付けるような感覚、特に理由なくため息をついてしまうような感覚――そう、恋の予感がしてなりません。
シェリ
「 … …… ……… ???」
GM
「このままでは村が壊滅してしまいます。
救世主様、どうか、強く抱擁してもらえ……いや、あの亡者を倒してくださいませんか」
宮城ユウキ
「…………」
GM
青年は熱く藤花さんを見つめています。
宮城ユウキ
ちらと藤花の方を窺いますが……
シェリ
この目、懐かしいなあ~と眺めています。
藤花
「さっさと倒した方が良さそやね。こんなん続くとかなわんわ」
宮城ユウキ
俺たちはまあまだ無事だからこの村を出ていけば済む話では一応あるのだけれども。
GM
もしかしたら、今はそれで大丈夫かもしれませんね。
宮城ユウキ
まあ、この人がこの調子なら、素直に乗っていいだろう。
宮城ユウキ
「シェリもそれでいい?」
GM
あなたたちは一度確かに毒を浴びていますので、このまま放っておいたらどうなるかはわかりません。
藤花
自分は毒に強い。その自分ですら、身を灼かれるような感覚が微かにある。
シェリ
「うん、いいよ」
藤花
そして、それはひどく不快。
宮城ユウキ
「そう」
宮城ユウキ
「じゃあ、さっさと殺そうか」
シェリ
「トーカとユーキもこの…もやもやってやつ、あるだろうし」
シェリ
「なんか…なんかやだなあ、これ」
宮城ユウキ
「…………」
宮城ユウキ
「シェリは嫌なんだな」
シェリ
「んん…なんか…ヘン。濁ってるう…」
シェリ
誤魔化すように、くるくると宙を旋回しています。
藤花
「毒に強いうちでさえちょっとばかし不快なんや。あんたはんらは尚更なんとちゃう?あんまし放っておくのがいいとも思えんのよ。」
宮城ユウキ
「俺は基本化け物殺しには賛成の立場だから」
宮城ユウキ
「二人がいいなら、やるよ」
宮城ユウキ
だからこそ慎重でいたいのだが。
シェリ
「ぼくは大丈夫。ふたりとも、ぼくが守るね」
宮城ユウキ
自分の私情に二人を巻き込むのは本意ではない。
この国において、化け物を殺すことは人を殺すことよりも”益にならない”行動だ。
藤花
「……あとまあ、うちの都合で悪いんやけど。」
宮城ユウキ
「うん」
シェリ
「?」
藤花
「そろそろ新しいの、調達しときたいんよね」
宮城ユウキ
「…………」
シェリ
「あたらしいの」
宮城ユウキ
「あれでいいの……?」
宮城ユウキ
率直な疑問が口をついて出てしまった。
藤花
煙管をひらひらと振る。毒を喰らっていることは2人に特に隠していない。
シェリ
ナントカとハサミも使いようだって言うし…?
藤花
「うちとしては、未知の強いやつは大歓迎」
宮城ユウキ
「好事家」
シェリ
「トーカの趣味、おもしろいねえ」
藤花
「刺激のあるもんほど美味しいかもしれんやろ?あと、未知のやつに耐性つけとって損ないしな」
宮城ユウキ
「まあ」
宮城ユウキ
「益になるんなら、よかった」
宮城ユウキ
「がんばって殺そう」
シェリ
「うんっ」
藤花
「悪いけど、付き合うてなあ」
宮城ユウキ
「こちらこそ」
GM
そんな感じで、あなたたちは亡者ラビング・ラビットを倒すことにしました。