GM
*導入が終わり、お茶会へと突入します。
 このタイミングで今回使用されるMODを改めて提示します。
GM
心の疵MOD「逆棘」
裁判開始直前に、すべての○の心の疵を●にします。
すべての舐めが、決定的なタイミングにより抉りへと変わるMODです。
GM
お茶会MOD「セルフ横槍」
自分自身に対する行動についても横槍ができるようになります。
1対1だと横槍が入れられないため、入れられるようにするMODです。
GM
お茶会1R目、炉から動いていきましょう。
GM
◆お茶会1R
 行動:炉
GM
「救世主様!」
GM
白い兎の耳を生やした獣人があなたたちを迎える。
GM
見張りの者であるようだった。
手に粗末な槍のようなものを持っている。
GM
「よくぞご無事で……」
その白兎は炉にそのように声をかけてから、
GM
探るような視線をダザックへと向けた。
三ノ宮 炉
「ご安心を」
三ノ宮 炉
「彼もまた、救世主です」
三ノ宮 炉
「……私たち、村の外で”裁判”を一度ばかり、済ませてまいりましたの」
GM
炉の言葉と、ダザックを見て、目の前の末裔の表情が和らぐ。
GM
「ああ、それは――すばらしいこと」
GM
「救世主さまがた、お疲れでしょう。
 休める場所をご用意しておりますので、どうか、こちらへ」
GM
そのように言って、白兎の末裔は恭しく頭を垂れた。
GM
その背には荒れ果てた村が広がっている。
GM
人の姿もまばら。どの村人にも白い兎の耳が生えている。
GM
そして、誰もが、疲れ果てた目をしている。
ダザック
首を垂れる末裔越しに、村の様子を無言で見渡す。
ダザック
(ずいぶんと寂れて、活気もない。まるで死人の村だな)
ダザック
「……俺は救世主なんてものになったつもりはないがな」
そうぽつりと毒ついて、きょろきょろと村を見渡している
GM
「ご、ご謙遜を……」
GM
案内をしながら、白兎の末裔が強張った笑いを浮かべる。
GM
「我々のような取るに足らない末裔からしてみれば」
GM
「あなたがたは本当に、救世主と呼ぶに相応しいのです」
三ノ宮 炉
「…………」
三ノ宮 炉
否定もせず、肯定もせず。
案内されるに任せている。
GM
やがてあばら家の前で末裔は足を止める。
村全体を見渡せば、それでもこの家が相当にましな方であることが理解できるだろう。
GM
「……ごゆっくり、お寛ぎください」
GM
頭を下げて、去っていく。
脱兎を思わせる気配があった。
ダザック
「……あれが末裔ってやつか」
三ノ宮 炉
「はい。この世界の原住民。
 力なき者たちです」
三ノ宮 炉
「……休みましょうか。彼らのご厚意に甘えて」
三ノ宮 炉
あばら家の扉に手をかける。
ダザック
「碌なもんじゃなさそうだが、この風がしのげるだけましか」
GM
古く狭い襤褸小屋ではあったが、思いの外手入れは行き届いていた。
GM
寝台が一つ。足の不揃いな椅子がいくつか。
眠るための襤褸布がせめて綺麗に畳まれている。
三ノ宮 炉
勝手知ったる様子で椅子を引いて、それに腰掛けて。
三ノ宮 炉
「優しくして差し上げてね」
三ノ宮 炉
「彼ら、私たちが恐ろしいのですよ」
ダザック
同じく椅子に腰かける。
「ああいう手合いは何でも恐ろしいだろうさ」
三ノ宮 炉
「いいえ、いいえ」首を振る。
三ノ宮 炉
「彼らは特別、私たちを恐れておりましょう」
三ノ宮 炉
「だって、私たち」
三ノ宮 炉
「その気にさえなれば」
三ノ宮 炉
「この村のみなを、いつでも殺し尽くしてしまえるのですよ」
三ノ宮 炉
「一人残らず」
三ノ宮 炉
「いともたやすく」
ダザック
炉の目を見据える。冗談で言っているわけではないことはよくわかった。
不意に目をそらし、沈黙で答えを返す。
ダザック
「……村はひどい有様だが、どこもこうなのか」
三ノ宮 炉
「私も伝聞でしか存じ上げませんが……」
三ノ宮 炉
「栄えている街などは、ここよりは相当ましだと聞きます」
三ノ宮 炉
「けれど」
三ノ宮 炉
「この世界の標準は、どうやらこんなものであるようで」
三ノ宮 炉
歪み、汚れた窓から外を見る。
三ノ宮 炉
そうすれば裏寂れた村のさまが目に入る。
GM
その中で懸命に営みを送る末裔たちの姿も。
GM
痩せた畑の面倒を見たり。
濁った水で襤褸布の服の洗濯をしたり。
一頭だけいる馬の世話をしたりだとか。
GM
荒野に吹きすさぶ風にたやすく吹き飛ばされてしまいそうな、
ささやかな営みのさまが。
ダザック
「ずいぶんなことだ」
ダザック
自分も辺境の出であるため、寒村の辛さは身に染みているが、どうにもその非ではないように思えた。
ダザック
「これを何とかできるってのかね、救世主ってのは」
三ノ宮 炉
「コインの数が増えれば、或いは、とされているようですが」
三ノ宮 炉
「今の私達では、とてもとても」
三ノ宮 炉
「……けれど」
三ノ宮 炉
「少しばかり、力になることなら」
ダザック
ポケットに忍ばせた六ペンスに軽く触れる。こんなものがどうなるというのか、想像もつかなかった。
ダザック
「力になる、って具体的には?」
三ノ宮 炉
「それは――」
三ノ宮 炉
炉が答えかけた、その矢先。
GM
「亡者だ!!」
GM
「亡者が出たぞ!!!」
GM
家の外から声がする。
三ノ宮 炉
「!」
ダザック
「なんだ、騒がしいな」
三ノ宮 炉
それを聞いて、炉は椅子から立ち上がり。
三ノ宮 炉
「どうやら」
三ノ宮 炉
「具体例をお見せできそうですね」
三ノ宮 炉
「私は先に参りましょう。
 ……ダザック様も、なるべく早く」
三ノ宮 炉
一方的に言い放つと、
三ノ宮 炉
全身を紅い蝶と化し、姿を消す。
ダザック
「あ?おい………!チッ、説明しろよ」
頭を掻きむしって装備に触れると立ち上がり、扉を開けて外に向かう。
GM
騒ぎは村の入口で起こっているようだった。
ダザック
「向こうか」
声のする方に向かう。
人食い三月
三メートルを超える屈強な肉体を持った化け物が暴れている。
人食い三月
縦に裂けた大きな口に生え揃った牙が、赤い血に濡れている。
その足元に白兎の少年が深手を負って倒れていた。
ダザック
「なんだ、この化け物……!」
人食い三月
化け物が少年へと向け、その長い爪を振り下ろす。
人食い三月
少年の身体が切り裂かれる寸前に、
三ノ宮 炉
紅い蝶が割り込んで、その軌道を弾いた。
三ノ宮 炉
半ばに実体を取り戻し、少年の矮躯を引きずり抱え上げながら距離を取る。
三ノ宮 炉
「これが”亡者”です!」
三ノ宮 炉
そしてダザックに叫んだ。
ダザック
「これが…!?もっとこう、アンデッドのようなやつじゃねえのかよ!」
三ノ宮 炉
「いるんですよ! 色々が!」
GM
姿を表した二人に、末裔たちが色めき立つ。
GM
「救世主さま!」
GM
「ああ、救世主さまだ!」
GM
「救世主さまが、来てくださった……!」
ダザック
「なるほどな、分かりやすい具体例だな……!」
GM
薄汚れ、痩せ細った無力な白兎たちの視線が二人の救世主へと突き刺さる。
GM
怯え、惑い、縋り、救いを求める無力な者たちの視線が。
三ノ宮 炉
手負いの少年を末裔の一人に預けながら、再び化け物に向き直る。
三ノ宮 炉
「やれますね? ダザック様」
ダザック
「ちと面食らったが、問題ない」
息を吐いて剣を正面に構える。
三ノ宮 炉
「頼もしいこと」
三ノ宮 炉
指先に紅い蝶を遊ばせながら。
ダザック
腰を落として足に力を籠める。刹那、駆け抜けて化け物に肉薄する
人食い三月
末裔相手には野放図に暴れ回っていた化け物だったが、
人食い三月
救世主の速さに対しては、一瞬、対応が遅れる。
人食い三月
迎撃に振るわれた爪は空を切り。
ダザック
爪を躱した勢いのまま、足首のあたりを斬りつける。片腕のため、切断には至らない。
人食い三月
「ギッ……!」
人食い三月
悲鳴と共に、赤い血が――
ダザック
(くそ、やはり片手じゃうまく力がはいらん)
人食い三月
血の代わりのぶどう酒が溢れて、あたりに甘い香りを撒き散らす。
人食い三月
傾いだ姿勢を、大きな腕を振り回しながら立て直そうとし、
三ノ宮 炉
そこを燃え盛る蝶に掬われる。
人食い三月
バランスを崩し、
人食い三月
地面へとどうと倒れた巨体は、
人食い三月
爪牙を剥き出しにのたうちまわる。
ダザック
倒れたのを機会と捉え、素早く首元へ近づく。剣を喉元へ突き立てようとする
人食い三月
迎え撃とうとした爪を、腕を、赤い蝶に啄まれている。
人食い三月
抵抗は成らず。
ダザック
「……フッ!」
気合いとともに剣を突き立てる。
ダザック
手首を捻り、肉をえぐりさらに突き刺す
人食い三月
「ガ――……」
人食い三月
濁った断末魔が、途中で途切れ。
人食い三月
傷口から溢れるのはやはり赤いワイン。
人食い三月
その濃い酒精の匂いを立ち上らせながら化け物は何度も痙攣し、
人食い三月
やがて、ぐったりと力尽き、絶命した。
ダザック
動かなくなったことを確認して、ゆっくりと剣を化け物の喉元から抜き去る。
GM
わあ、と歓声。
GM
「やってくれたぞ!」「救世主さまが、やってくださった!」
GM
「ああ、ああ、ありがとうございます――」
GM
「人食い三月の肉とワインだ!」
GM
「これでしばらく暮らしていけるぞ!」
ダザック
深く息を吐いて、頬についたワインを拭い、化け物の上から退く
GM
わいわいやんややんやと末裔たちがダザックを取り囲み、頭を下げ、感涙し、例を述べ。
ついでに何人かが協力して人食い三月の遺体を運んでいく。
ダザック
「怪我したガキは」
三ノ宮 炉
視線を巡らせれば、少し離れた場所で炉が少年の様子を見ている。
隣に母親らしき女性が一人と、少女が一人。
ダザック
その様子をみると、わずかに安堵したように見える
白兎の少年
ふとその視線に気付いたか、少年がダザックの方を見る。
白兎の少年
視線が合えば、ぱっと目を輝かせた。
白兎の少年
「救世主様だ!」
白兎の少年
……その瞳の輝きは、他の末裔たちとは少し、違う。
白兎の少年
縋り、求め、助けられることをのみ望むものではなく。
白兎の少年
無邪気な憧れが、その赤い瞳には宿っているように思われた。
ダザック
少年と目が合うと、バツが悪そうに目をそらす。
白兎の少年
目をそらされたことも気にせず、ぶんぶんと手を振る。
白兎の少年
「救世主様、ありがとう!」
白兎の少年
「俺、でっかくなったら、救世主様みたいに強くなって」
白兎の少年
「亡者だって、俺がぶっ倒すんだ!」
白兎の少女
「ちょ、ちょっと」
白兎の少女
「できないよ、そんな……」
白兎の少年
「なんで? やってみないとわかんないだろ!」
白兎の少年
「強い末裔だって、どっかにいるって話、あるぜ!」
三ノ宮 炉
「……それだけ元気なら」
三ノ宮 炉
「心配なさそうですね」
三ノ宮 炉
「……けれど、安静にね。傷が開いたら、大変なんだから」
白兎の少年
「うん!」
ダザック
威勢のいい声に背を向け、その場を立ち去ろうとする。その口元は僅かに口角があがっていたようだった
三ノ宮 炉
その隣にひらりと舞い降りて。
三ノ宮 炉
「どうでしょう」
三ノ宮 炉
「ダザック様」
三ノ宮 炉
「……やっていかれそうですか?」
三ノ宮 炉
「”救世主”」
三ノ宮 炉
*ここで手番の行動をしますか。
三ノ宮 炉
*ダザックの心の疵「勇者願望」を才覚で舐めます。
 横槍はされますか?
ダザック
*横槍入れます
GM
*了解です。
 ではダザックはChoiceで猟奇か才覚か愛かを決定してください。
ダザック
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
GM
*では猟奇での判定をどうぞ。
ダザック
2d6+0=>7 判定(+猟奇) (2D6+0>=7) > 4[2,2]+0 > 4 > 失敗
GM
*失敗ですね。HP-1は入ります

[ ダザック ] HP : 15 → 14

三ノ宮 炉
*ティーセットを使用します
三ノ宮 炉
2d6+3+2=>7 判定(+才覚)(+ティーセット) (2D6+3+2>=7) > 7[6,1]+3+2 > 12 > 成功
GM
*成功。
 ダザックの心の疵「勇者願望」が舐められます。

[ ダザック ] 勇者願望 : 0 → 1

ダザック
「さあ。どうかな」
やっていけそうかと問われ、そう嘯く。
ダザック
「上手くできるとは思えないが、ここにいる間はフリぐらいはしてやるさ」
三ノ宮 炉
「まあ、素敵」
三ノ宮 炉
「……でも」
三ノ宮 炉
「そうですね」
三ノ宮 炉
ふと、末裔たちを振り返り。
三ノ宮 炉
「期待に応えることって」
三ノ宮 炉
「存外、悪くないことだって」
三ノ宮 炉
「私、久しぶりに思い出しました」
ダザック
同じように末裔たちを見る。未だ大騒ぎは続いているようだった。その様子にふっと息を漏らす。
ダザック
「……そうだな」
ダザック
視線を落とし、肘から先がなく包帯に覆われた左腕を見て、それをマントで隠すようにすると、元のあばら屋に戻る道に進む。
三ノ宮 炉
紅い蝶を纏わせながら、その背を追った。
ダザック
「……しかし、あんたがいないときはここはどうやって生き残ってたんだろうな」
三ノ宮 炉
「かつては他の救世主がいたと聞きました」
三ノ宮 炉
「それが去って、村が荒廃して、人もどんどん減っていって……」
三ノ宮 炉
「滅びを迎える寸前のところを、私と」
三ノ宮 炉
「そして、あなたが」
ダザック
「なるほどな……あんたはまさに救世主だったというわけか」
ダザック
「俺がくるまでは一人だったわけだろ」
三ノ宮 炉
「まあ、ひと月ほどでしたけれど」
三ノ宮 炉
「本当にわけもわからずのところを大歓迎されて……」
三ノ宮 炉
「相当に戸惑いました。あの時は」
ダザック
「はは、困った顔が容易に想像できるわ」
三ノ宮 炉
「まあ」
三ノ宮 炉
「そんなに分かりやすいですか?」
三ノ宮 炉
頬に手を当てて。
ダザック
「なんとなくな」
ダザック
「断り切れず、って感じだったんだろう」
ダザック
「……まあそれはともかく、こうなると救世主を30日以内に殺さなければならないというのは」
ダザック
「まったく悪趣味な話だ」
三ノ宮 炉
頬に手を当てて考え込んでいたが、話題が切り替わればそれに頷き。
三ノ宮 炉
「たまったものではありませんよ。本当に」
三ノ宮 炉
「……私たちは」
三ノ宮 炉
「幸いにして本日、裁判をやり遂げて」
三ノ宮 炉
「30日の猶予を得られました」
三ノ宮 炉
「けれど、次の30日が来るより前に……」
三ノ宮 炉
「またもう一度、どこかで”裁判”をする必要がある」
三ノ宮 炉
「…………」
三ノ宮 炉
「……実のところ」
三ノ宮 炉
「私が荒野に出ていたのも、裁判の相手を探し求めてのことでありました」
三ノ宮 炉
「そこで、あなたと」
三ノ宮 炉
「あの少女と出会った」
ダザック
「俺でもよかったわけだ」
三ノ宮 炉
「ええ。……ですが」
三ノ宮 炉
「今は、あなたと協力できたらと思って……ああ、いえ」
三ノ宮 炉
「……助力を」
三ノ宮 炉
「お願いすることは、できますか?」
三ノ宮 炉
「この世界に、生きていく上で」
三ノ宮 炉
「背を預けられる相手が」
三ノ宮 炉
「仮初めにでも、私には心強く思えます」
ダザック
足を止め、炉の目を見る。
一瞬の逡巡の後に、右手を差し出すと
ダザック
「引き受けよう」
ダザック
と、はっきりと伝えた。
三ノ宮 炉
「ふふ」
三ノ宮 炉
笑い返して、手を握る。
三ノ宮 炉
女の白く細い指だった。
三ノ宮 炉
「好きですよ。素直な方が」
ダザック
握り返した炉の手は、思ったよりも冷たかったが不思議と心地よかった。このどうしようもなさそうな世界にあって信頼を得、信用を受けたことに、心は静かに高揚していた。
ダザック
「さあ、戻るか」
ダザック
「……あのあばら屋、もうちょっとなんとかできるといいんだが……」
三ノ宮 炉
「検討してみましょうか」
三ノ宮 炉
「力仕事も、救世主さまのお役目ですよ!」
ダザック
「お前もやるんだよ…たく……」
今明らかに力仕事を押し付けられたことに、軽く口をとがらせる。
やがて、あばら屋につくと、扉に手をかけるのだった。
GM
村には冷たい風が吹いている。
GM
今は救世主の訪れた村。
亡者から末裔を救い給うた。
GM
希望なき残酷なこの世界に、
GM
けれど、繋がれた手が、確かにあった。
GM
GM
◆お茶会 ラウンド1
 行動:ダザック
GM
ダザックが堕落の国を、
そしてこの寂れた村を訪れてより、一週間ほどが経過した。
ダザック
その間村の中を見てまわる。とにかく亡者から身を守るにはこの村は貧弱すぎるのだ。
住人に、今にも崩れそうな土壁の補修などを指示したり、見張り台を使えるようにするため資材を調達したり
ダザック
(村の入り口に罠の一つでもはれれば、我々がいない間に襲われても多少の時間は稼げそうだが…)
GM
例の化け物の暴れぶりを思うと、その罠を作るのも一苦労に思えた。
なにせこの村には余裕がない。
人が少なく、男手が少なく、資材も少ない。
GM
その中で村人たちは精一杯に救世主をもてなしていた。
GM
それでも専ら出てくるものは、
干し肉のかけらと野草の浮いた水のようなスープと、硬いパンが一欠片、といった具合だったが。
GM
ダザックが初めて訪れた夜だけは大振りの肉が出されていた。
それはあの化け物の肉で、えぐみのひどいものではあったが、
後から思えばそれもご馳走だったのだろう。
ダザック
荒野に出れば、何か使えそうなものが見つかるかもしれない、と村を炉にまかせて出歩いても、空振りを続けるばかり。
全体的にこうなのだなぁと半ば諦めが漂う。
ダザック
「使ってない家を解体して……いや…うーん」
ダザック
そんな感じであまり進展がないまま時間が過ぎていく。その間に、先日の亡者襲来でけがをした少年をたびたび見かけていた。
ダザック
手慰み程度に剣の振り方などを教えると嬉しそうにしていたが、あまりいいことのようには思えなかった
ジョン
親しくしていくうちに、彼の名前を知った。
チェルシー
彼を心配してついて回る少女と、名前を呼び合うさまをよく見かけた。
ジョン
「救世主さま」
少年は欠けた歯を見せて笑う。
ジョン
「俺、昨日救世主さまと別れた後、素振り百回した!」
ダザック
「あんまり無理するなとイロリからも言われてただろ、ほどほどにしとけよ」
チェルシー
「そ、そうだよ、ジョン」
チェルシー
「家の手伝いだって、あるんだし……」
ジョン
「え~」
ジョン
「でも、俺が強くなったら、みんなもっと助かるだろ?」
ダザック
「気が早ぇよ、調子に乗るな」
ダザック
「いいか、まずは身の程を知って、体に肉をつけてから……」
ダザック
そういってから、村から提供される粗食のことを思い浮かべ
「うん、まあ気長にやっていくのが大事だ」
ジョン
「うん!」
ジョン
ジョンとチェルシーの腕は、枯れ木のように細い。
ジョン
いかにも食いでがなさそうなこの少年を、亡者が襲ったのは食らうためでさえないのだろう。
ジョン
食物連鎖が理由ではない。
ただ、そういう化け物がいる。
ジョン
そんな過酷な世界で、
けれどこの少年は、救世主を志して目を輝かせている。
ダザック
「じゃあな、ジョン。まずは怪我が治ってからだ。チェルシー、ちゃんと見張っておいてやれ。無茶したら俺かイロリに言え」
ダザック
そういってジョンにひらひらと手を振って見せる。
チェルシー
「わ、わかりました、救世主さま!」
ジョン
「ちぇー」
ジョン
すっかりダザックに懐いた白兎の少年は不満そうに口を尖らせてみせたが。
ジョン
「またな、救世主さま!」
と、精一杯に手を振ってダザックの背を見送った。
三ノ宮 炉
――炉と言えば。
三ノ宮 炉
これは、ダザックにとってはいくらか意外だったかもしれないが。
村を立て直し、末裔たちの生活を支えることについては、存外役に立っていなかった。
三ノ宮 炉
土に塗れた暮らしの在り方を知らない。
三ノ宮 炉
そういう世界から来た女だろうことが察せられた。
三ノ宮 炉
代わりに化け物の襲来には人一倍敏感だった。
故に荒野の周辺を哨戒し、化け物を追い払う任をよく引き受けていた。
三ノ宮 炉
末裔たちとはまた違った細さのその身体で、
三ノ宮 炉
化け物に怯む様子を見せることは、一度もなかった。
三ノ宮 炉
今は冷たい風に吹かれながら、見張り台に佇んでいる。
三ノ宮 炉
日毎に厳しさを増す凍えた風にも、堪えた顔は見せずにいた。
ダザック
「イロリ」
不意に見張り台の下から声がかかる
ダザック
「変わった様子は?」
三ノ宮 炉
見下ろす。
三ノ宮 炉
手元から蝶を飛ばし、
三ノ宮 炉
それから全身も紅い蝶となって掻き消えて、
三ノ宮 炉
ダザックの隣に再び現れる。
三ノ宮 炉
「亡者の姿は見えません」
三ノ宮 炉
「ただ……そうですね」
三ノ宮 炉
遠い空に向けて、指をさす。
三ノ宮 炉
一面灰色の雲に覆われた空の中で。
特別、暗い色をした一帯があった。
三ノ宮 炉
「嵐が来るかもしれません」
ダザック
蝶になって急に隣に現れるのはこれまでも何度かあったが、毎度驚く。どういう魔法なのだろう。
ダザック
「普通に降りて来いよ、少しは体動かせ。驚くんだよ、それ」
三ノ宮 炉
「あら」胸元に手を当てて。
三ノ宮 炉
「これも私の力ですよ」
ダザック
「そりゃそうだけどな…まあいいや。 どれ…たしかにずいぶん暗くなってきてるな」
三ノ宮 炉
「はい」改めて、視線を空に向ける。
三ノ宮 炉
「備えが必要だろう……ということは」
三ノ宮 炉
「分かるのですが」
ダザック
顎に触れつつ、うーん、と唸る。
ダザック
「とりあえず、村の連中に家に入るよう伝えてくる。お前も戻って、窓に板でも打ち付けてくれ」
ダザック
「……いや、うん、俺がやるか」
三ノ宮 炉
「では、伝える方は私が」
ダザック
「頼む。できるだけ窓に補強するようにもつたえてくれ」
三ノ宮 炉
「畏まりました」
三ノ宮 炉
言ったそばから蝶となって掻き消えた。
三ノ宮 炉
そうなれば伝達は早い。
三ノ宮 炉
戻ったダザックが家の窓の補強を始めた矢先に、炉は再びその姿をあらわした。
三ノ宮 炉
「……皆さま、不安そうでしたけれど」
三ノ宮 炉
「やはり――」
三ノ宮 炉
「”救世主”の存在というものは、大きいようですね」
ダザック
「ご苦労さん。まあ、雨風ぐらいならどうとでもなるだろうさ」
ダザック
「…家が飛ぶような竜巻が起こらない限りは」
三ノ宮 炉
「そこまででないことを祈りましょうか」
三ノ宮 炉
打ち付ける板を支えつつ。
三ノ宮 炉
「……こと、ダザック様のお言葉と聞くと」
三ノ宮 炉
「皆さま、安堵と信頼を以てお聞きになりますよ」
三ノ宮 炉
「慕われていらっしゃいますね」
ダザック
「買い被りってもんだ。特別変わったことはしてねえからな」
ダザック
トントンと板を手際よく打ち付けていく。
ダザック
「ただ少しあんたらより年食って、経験もあるだけだ」
三ノ宮 炉
「私がもう少し年嵩だったとて……」
三ノ宮 炉
「こういった暮らしを支える手段は、身についていなかったと思いますよ」
三ノ宮 炉
「剣も振られませんし。……ふふ」
三ノ宮 炉
「ジョンとチェルシーは、元気でしたか?」
ダザック
「あぁ。ジョンの奴は素振りを100回したとか言ってたぞ。軽く注意したが、まああいつも男だな」
ダザック
「チェルシーは不満そうにしてた」
三ノ宮 炉
「心配なのでしょう」
三ノ宮 炉
「……あの二人、いわゆる幼馴染みというやつらしいですから」
三ノ宮 炉
「ジョンの奔放さを、チェルシーはよくよく知っているんでしょうね」
三ノ宮 炉
新しい板を取り上げて、再び窓に添える。
白魚のような手が無骨な木の板を押さえている。
三ノ宮 炉
肉体労働に不満げな顔をしてみせることはあるが、
実際に役目を与えられたとなれば素直によく働く娘であった。
ダザック
「あのくらいの男は多少無茶するもんだ」
片手で器用に釘を打ち込みながら、そう答える。
ダザック
「二人一緒にでかくなってもらいたいもんだが……」とこの地のことを考えると、それ以上は言わない。
ダザック
「もういいぞ、離しても」
三ノ宮 炉
手を離して、次を取る。
三ノ宮 炉
「……そうですね」
三ノ宮 炉
「できっこないのに、背伸びをして」
三ノ宮 炉
「敵いっこないのに、怯まないで」
三ノ宮 炉
「痩せ我慢とでも言いますでしょうか」
三ノ宮 炉
「そういう我の通し方」
三ノ宮 炉
「殿方は好みますものね」
ダザック
板を打ち付けながら、ちらりと炉を見やる。
「なんか含みのある言い方だが、あんたもそういう奴に覚えがあるのか?」
ダザック
「まあ男は大体そうなのはそう」
三ノ宮 炉
笑った。
三ノ宮 炉
「……人を導くのは、少しばかり得意でして」
三ノ宮 炉
「それと、ええ」
三ノ宮 炉
「戦うことが」
三ノ宮 炉
「暮らしのことは知りませんけれども、亡者のような化け物の相手ならば」
三ノ宮 炉
「この世界に落ちる前から、していたのですよ」
ダザック
「……あんたのその服と似たようなものを着た人間を知ってるんだが、そいつとはだいぶ違うようだ」
ダザック
「そいつは、争いごとなんて何も知らない、みたいな風だった」
三ノ宮 炉
「あら」意外そうに目を瞬いて、自分の服に目を落とす。
三ノ宮 炉
「不思議な話ですわね。……まあ、でも」
三ノ宮 炉
「この服は本来、戦装束ではございませんもの」
三ノ宮 炉
「私の世界においては、
 そもそも亡者のような化け物の実在すら知らぬものが大半」
三ノ宮 炉
「その方も恐らくは、そうですね」
三ノ宮 炉
「”一般人”」
三ノ宮 炉
「であったのでしょう」
ダザック
「そうなんだろうな。ゴブリン1匹殺してみせたら吐いてたよ」
遠くを見るような目をして、ぽつりと呟く。手は動かしつつ。補修ももうすぐ終わりそうだ。
ダザック
「雨には間に合いそうだな……あまり強くならないといいが」
三ノ宮 炉
「こればかりは、祈るしかありませんね」
三ノ宮 炉
隙間越しに曇天の空を見上げて。
三ノ宮 炉
「……私、ですから」
三ノ宮 炉
「一般人のような――末裔のような」
三ノ宮 炉
「守るべき方々を背に戦うのは、性に合っていますの」
三ノ宮 炉
「その中に」
三ノ宮 炉
「ジョンのような、”彼”のような」
三ノ宮 炉
「無茶をする方が現れることを」
三ノ宮 炉
「本来、望ましく思うべきではないのですが」
ダザック
「それでも、俺はジョンが成長して、俺らの代わりにここを守れるならそれに越したことはないと思うがね」
三ノ宮 炉
「…………」
ダザック
「ここは彼らの村だからな」
三ノ宮 炉
「……そうですね」
三ノ宮 炉
「私たち、よそ者ですから」
三ノ宮 炉
「もう少し経ったら、遠出をしてもいいかもしれません。
 栄えた街なら、他の救世主を見つけることも容易でしょう」
三ノ宮 炉
「もちろん、栄えた街には、それ相応の力をつけた救世主もいるのでしょうが……」
ダザック
「そうだな…猶予もあることだし……」
意識していないとあっという間に過ぎてしまいそうだ
ダザック
「それまでにできることはしておこう。 さて、補修はできたから、とりあえず一旦落ち着こうか」
ダザック
「手伝い感謝する。一人ではもっと時間かかった」
三ノ宮 炉
「どういたしまして」
三ノ宮 炉
「……礼を言うのは私の方です」
三ノ宮 炉
余った木板や釘を片付けながら。
三ノ宮 炉
「一人では、嵐への備えもままならないなんて」
三ノ宮 炉
「元いた場所では、考えたこともありませんでした」
ダザック
「あんたの元居た場所ってのは、なんだったか…ニホン?ってところか?」
ダザック
「さっき話した奴はそこから来たといってたが、同じ場所なのかと思ってな」
三ノ宮 炉
「この服を着ていたなら或いは、と思っていましたが」スカーフをつまみながら。
三ノ宮 炉
「不思議な偶然もあるものですね」
三ノ宮 炉
「ええ。日本という国から参りました。
 とっても豊かで、とっても平和で、戦いなんてどこにも起こらない国」
三ノ宮 炉
「そこで、私、化け物を殺すために育てられましたのよ」
ダザック
「そうか。顔の感じや名前の響きが似ていたからそうじゃないかと思ってな。まあ俺はそれ以外ほとんどしらないが…」
ダザック
「…よかったらここに来る前の事を聞かせてくれるか」
ダザック
「嵐になれば、外にも出れないし。嫌ならいいが」
三ノ宮 炉
片付けを終え、椅子を引いた。
膝を揃えてお行儀よく座る。
三ノ宮 炉
外には風が轟と吹き荒れ、あばら家を揺らしている。
三ノ宮 炉
「構いませんよ。
 随分とお世話になっておりますもの」
三ノ宮 炉
「けれど、難しいですね……」
三ノ宮 炉
「ここに来る前とは、どこからどこまでを話したものでしょうか」
頬に手を添え、首を傾いだ。
ダザック
それもそうだ、と肘をつく。
「あぁ、すまん。漠然とし過ぎたな……なんでもいいんだ。あんたのことに興味がある」
ダザック
「ん…?それも語弊があるか…。その、なんだ、そうだ。その化け物を殺すために育てられたってのはどういうことだ?」
三ノ宮 炉
くすくすと笑う。
三ノ宮 炉
「大丈夫ですよ、ダザック様。
 勘違いなんていたしません」
三ノ宮 炉
あなたのお人柄に関してはよくよく承知しておりますから、と口添えて。
三ノ宮 炉
「先程も申し上げました通り、私の故郷は平和な地でした。
 豊かで争いのない、民を脅かすものの限りなく少ない国。
 それが日本です」
三ノ宮 炉
「けれど、それはほんとうの真ではないのです。
 闇の裏に民を襲う、亡者のような化け物――
 ――妖魔なる者の存在が、一般人に対しては伏せられているだけ」
三ノ宮 炉
「そして、私は」胸元に手を当ててみせ。
三ノ宮 炉
「妖魔殺しを使命とする家に、生まれました」
ダザック
「妖魔殺し……」
ダザック
「なるほど、裏から世間を守るために、そういう目的をもって育てられたってことか」
三ノ宮 炉
「血が重視されるのですよ」
三ノ宮 炉
指先に蝶を踊らせる。
三ノ宮 炉
「この力もまた、血脈を通じて受け継いだもの」
三ノ宮 炉
「化け物と相対するためには、相応の力がなくてはなりません」
ダザック
蝶に目を向ける。ひらひらと舞うそれは美しく思えた。
「……となると、向こうの世界はあんたがいないと困るんじゃないか」
ダザック
「いや、あんた一人だけではないだろうが……」
三ノ宮 炉
す、と真顔になって。
三ノ宮 炉
それから遠くを見るような目をする。
三ノ宮 炉
「……そうですね」
三ノ宮 炉
「でも」
三ノ宮 炉
「申しましたでしょう?」
三ノ宮 炉
「人を導くのは、少しばかり得意でして」
三ノ宮 炉
「私が鍛え上げた、一般人だったはずの殿方」
三ノ宮 炉
「彼」
三ノ宮 炉
「とっても強くなったんです」
三ノ宮 炉
「それと、そうですね、彼をずっと心配していた女の子」
三ノ宮 炉
「……それこそ、ジョンとチェルシーみたいな……」
三ノ宮 炉
「戦いに巻き込まれる中で、彼女も」
三ノ宮 炉
「随分と頼もしくなって」
三ノ宮 炉
「私をも」
三ノ宮 炉
「打ち倒せてしまいそうなくらい」
三ノ宮 炉
「……だから」
三ノ宮 炉
「心配はしていません」
三ノ宮 炉
「……心配は、させてしまっているかもしれないとは」
三ノ宮 炉
「思いますけれど」
ダザック
そう語る炉の顔は、どこか寂しそうに見えた。
黙ってそれを聞き、沈黙に風が打ち付ける音が騒々しい。
ダザック
「……じゃあすぐに戻れなくてもとりあえずは問題ないわけだ。それはまぁ、良かった、のか?」
ダザック
「あー、いや。何て言うべきなんだろうな。すまない。俺は見ての通り粗忽者だから」
ダザック
「戻っても必要とされないかもしれないとなると、なかなか苦しいものは、あるな、うん」
三ノ宮 炉
少しだけ、困ったように笑った。
ダザック
「……いっそこのまま一緒に俺とこっちで生きるってのもいいのかもな」とぽつりとこぼす
ダザック
*「選ばれたくない」を舐めます
三ノ宮 炉
*横槍に入ります
三ノ宮 炉
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
三ノ宮 炉
2d6+0=>7 判定(+猟奇) (2D6+0>=7) > 8[6,2]+0 > 8 > 成功
三ノ宮 炉
1d6 横槍 (1D6) > 1
三ノ宮 炉
*ヤリイカを使用し、効果量+2
GM
*ではダザックは-3をつけて判定をお願いします。
 判定に使う能力値は任意のもので構いません(まあ才覚がセオリーです)。
 ティーセットを使うことも可能です。

[ 三ノ宮 炉 ] ティーセット : 2 → 1

[ 三ノ宮 炉 ] ヤリイカ : 1 → 0

ダザック
*ティーセット使用します
ダザック
2d6+3+2-3=>7 判定(+才覚) (2D6+3+2-3>=7) > 6[3,3]+3+2-3 > 8 > 成功
GM
*成功ですね。

[ 三ノ宮 炉 ] 選ばれたくない : 0 → 1

三ノ宮 炉
またくすりと笑みを深めて。
三ノ宮 炉
「それはさすがに、ダザック様」
三ノ宮 炉
指先を唇に触れながら。
三ノ宮 炉
「いくらなんでも、誤解を招くというものですよ」
ダザック
「…すまん、失言だった」
三ノ宮 炉
「ふふ」
ダザック
「うーん、その。あんたは頼りになるからな」
ダザック
「今後どうなるにせよ、いてくれたら助かるというか」
ダザック
「そういうことでな」
三ノ宮 炉
「ええ、ええ、分かっています」
三ノ宮 炉
「でも、ふふふ」
三ノ宮 炉
「あんまり情熱的なものですから、私」
三ノ宮 炉
「驚いてしまって」
三ノ宮 炉
鬼の首を取ったように笑ってみせる。
笑って見せる。
三ノ宮 炉
笑う姿を見せている。
ダザック
「……あんたは、笑ってた方がいいな」
ダザック
と、これもまたぽつりと
三ノ宮 炉
「……そう」
三ノ宮 炉
「ですか?」
三ノ宮 炉
頬に手を当てる。
ダザック
しまったという表情を一瞬見せ、バツがわるそうに視線を泳がす。
ダザック
「あぁ」
観念したように短い肯定を返す。
ダザック
「笑っていた方がいい」
三ノ宮 炉
「…………」白魚の指先に頬をなぞり。
三ノ宮 炉
「では」
三ノ宮 炉
「そのように」
三ノ宮 炉
「共に在る方が快い方が」
三ノ宮 炉
「私も嬉しく、思いますから」
ダザック
その顔を見て、頬が緩み
「ああ、そうしてくれ」と返す。
三ノ宮 炉
笑って返す。
三ノ宮 炉
笑い返す。
三ノ宮 炉
笑って見せるのではなく、今は。
三ノ宮 炉
目の前のあなたに笑い返す。
ダザック
その笑顔を見て、自然と炉の頬に手が伸びる
三ノ宮 炉
ぱち、と目を瞬いて
三ノ宮 炉
開かれた赤い瞳が、あなたの顔を映し込む。
ダザック
赤い目をじっと見据える。
ダザック
「嫌なら、振りほどいてくれ」そういって頬に触れる
三ノ宮 炉
「ダザック様」
三ノ宮 炉
振り解く手は出ないが、
三ノ宮 炉
けれど寸前に、硬い声があなたの名を呼んだ。
三ノ宮 炉
「……あまり」
三ノ宮 炉
「触れるものではありませんよ」
三ノ宮 炉
「私、実のところ」
三ノ宮 炉
「化け物みたいなものですから」
三ノ宮 炉
「あまり、きれいなものではないんです」
ダザック
声を聞いて、一瞬躊躇する。しかし
ダザック
「構わんさ」と短く答え、顔を近づけていく。
三ノ宮 炉
少女の顔が近づく。
三ノ宮 炉
見開いた目に映り込むあなたの顔を、
三ノ宮 炉
あなた自身が認識した、その矢先。
GM
あばら家の外から、何重にも重なる悲鳴が響いた。
GM
会話に夢中になるばかりに気付かなかった、
GM
いつしか曇天より白い雪が降り落ちている。
三ノ宮 炉
緊張に身を強張らせていた少女が、別の驚きに目を見開き。
三ノ宮 炉
「……っ」
三ノ宮 炉
「失礼します!」
三ノ宮 炉
蝶となって、あなたの鼻先に掻き消える。
GM
あばら家の外からは今も悲鳴が響く。
GM
吹き付ける強い風が、補強したはずの窓を揺らし
GM
飛来した氷の礫がそれを砕き割った。
GM
冷たい風が吹き込んで、
GM
開けた窓から、村の様子が見渡せるようになる。
GM
曇天より降り落ちる白い雪が。
GM
氷漬けにされた家屋の上へと、積もりつつある。
GM
悲鳴を聞いて飛び出したらしい末裔。
GM
彼らも同じく氷像となって、
GM
恐怖と苦悶の表情を刻みつけてそこに立つ。
GM
そして、その中心に。
亡者
雪をまとう亡者の姿がある。
亡者
光という光を吸い込むような、深淵の闇をまとう剣を腕に提げ。
亡者
一歩、
亡者
進むごとに、
亡者
凍えた風を吹きつけて、周囲のものを氷漬けにしていく。
三ノ宮 炉
炉は紅い蝶をまとうて、その亡者へと相対していた。
三ノ宮 炉
けれど。
三ノ宮 炉
あなたの目にも明らかだ。
亡者
この亡者は、格が違う。
亡者
あなたたちのような駆け出しの救世主が太刀打ちできる存在ではない。
亡者
この村に襲い来た亡者とは性質が違う。根本的な在り方が違う。
亡者
ただ一瞥しただけで、何もかもを凍りつかせる災害の権化。
亡者
冬という概念の凶悪性を結晶化したようなそれが、
亡者
村の全てを凍てつかせながら、悠然と行進する。
三ノ宮 炉
そのゆく先に、今は。
三ノ宮 炉
紅い蝶をまとうた少女が立っている。
ダザック
炉が消えた後すぐに、あばら屋を飛び出すと、周囲の一変ぶりに狼狽する。
ダザック
「なんだこれは……!」
とこぼしながら、明らかに様子のおかしい方へ駆けていく。途中に転がる末裔たちの姿が痛々しい
ダザック
「イロリ!!」
ダザック
その姿を見つけると、対峙するものに背筋がぞくりとする
三ノ宮 炉
彼女の纏う蝶が、
三ノ宮 炉
凍える風に片端から散っていく。
亡者
漆黒の剣を提げた亡者は紅い蝶を振り払う素振りすら見せない。
亡者
ただ、進む。
亡者
それだけで蝶が掻き消える。
三ノ宮 炉
それを認めながら、一歩も退こうとしない。
ダザック
「イロリ!!退け!そいつは明らかに俺たちの手におえない!」
ダザック
駆けながら叫ぶ。
三ノ宮 炉
「……っ」
三ノ宮 炉
「でも!」
三ノ宮 炉
口答えしかけて、
三ノ宮 炉
吹き付けた風の冷たさにか、首を竦める。
ダザック
腰に差したスローイングダガーを引き抜き、亡者に向かって投げる。当然のように途中で叩き落されるが、少しでもこちらに注意を引けたのなら…
ダザック
「いいから、退け!生き残っている末裔をまとめてここから逃げろ、出来るだけ遠くに。お前の能力のほうが早い!」
三ノ宮 炉
「わ、っ」
三ノ宮 炉
「私、よりも」
三ノ宮 炉
「ダザック様の方が、人を、生かすほうに」
ジョン
「――何してるんだよ、救世主さま!」
ジョン
あなたがたの背後、亡者の立つ反対側から、少年の声。
ジョン
振り返れば、
ジョン
この村に一頭きりの馬の手綱を握り、少年が立っている。
ダザック
「……ジョン!?馬鹿野郎、何しに来た!」
ダザック
「早くここから逃げろ!」
ジョン
「……バカだな」
ジョン
「救世主さま」
ジョン
「俺一人逃げたって仕方ないだろ」
ジョン
「村も」
ジョン
「……チェルシーも」
ジョン
「こんなんなっちゃったらさ」
ジョン
「生きていけるのは、救世主さまくらいだって」
三ノ宮 炉
「…………」
ダザック
「そんな、まさか…みんな…?」
三ノ宮 炉
風に黒い髪を乱されながら、呆然と立ち尽くしている。
亡者
その間も亡者は進む。
亡者
身を裂くような凍気が全身を蝕んで。
亡者
何もかもを凍りつかせていく。
亡者
見張りがあなたを迎えた村の入口。
亡者
白兎たちが必死に育んでいた、痩せ細った畑。
亡者
人食い三月の肉が運び込まれた貯蔵庫。
亡者
何もかもへと雪が降り積もり、氷の中に封じ込められていく。
ダザック
「……イロリ、聞いたな。もうここで踏ん張る必要はない。さっさとここから離れるぞ。ジョンお前もだ!やり返そうなんて考えるなよ」
言うが早く、炉の手を引いて駆けだそうとする。
三ノ宮 炉
「あ、っ――」
三ノ宮 炉
引かれた手は冷え切っていて、
三ノ宮 炉
あなたの手を振り解く力もない。
ジョン
ジョンは薄く微笑んで、頷いた。
いつもあなたを見上げていて、あの無邪気で活力に満ちた笑顔とは違う。
ジョン
「……分かってるよ。
 ちゃんと、言いつけ、守るって」
ジョン
「母ちゃんにも、チェルシーにも」
ジョン
「心配かけちゃいけないもんな」
ダザック
二人の様子を伺いつつ、逃げる算段を考える。
亡者
亡者の足取りは悠然と。
しかし吹き付ける風はそれより早い。
亡者
この馬の体格では、乗られて二人といったところだろう。
それでもこの風からは逃れられるか怪しい。
ジョン
「ヒューゴ」馬の名を呼んで、ジョンがそのたてがみを撫ぜる。
ジョン
「救世主さまがたのこと」
ジョン
「よろしく頼んだぞ」
ダザック
「ジョンお前……」
ジョン
「ほら、急いで、救世主さま」
ジョン
「俺は俺で逃げるって」
ジョン
「土地勘は、俺の方があるからさ」
三ノ宮 炉
「……で、も」
ダザック
ジョンの言葉を聞いて、その顔を見て、ダザックは固く拳を握り、すぐ解くと、炉を抱え上げて馬に乗せ、自分もその後ろに飛び乗った
三ノ宮 炉
抱え上げられる。
三ノ宮 炉
反射的にもがいたが、手足に力が入らない。
ジョン
馬の上のダザックを見上げ、眉を下げて笑う。
ダザック
馬の上からジョンを見下ろし、強く目をつむると手綱を引いて馬を操る。
三ノ宮 炉
振り返る。
三ノ宮 炉
正しくは、
三ノ宮 炉
振り返ろうとする。
三ノ宮 炉
それが叶わなかった。
三ノ宮 炉
腕は、気付けば、無意識に。
三ノ宮 炉
ダザックの腹へと回っていた。
GM
ジョンの声は聞こえなかった。
GM
凍える風がそれを掻き消したのか。
GM
或いは。
ダザック
振り返らず、前だけを向いて馬を走らせる。奥歯を噛みしめ、ぎりりと音が聞こえるくらいだ。
三ノ宮 炉
その背に熱を感じている。
GM
それに相反して、吹きつける風はひどく冷たい。
ダザック
早く早く、あの『冬』から逃れなければ。馬の吐く白い息と蹄の音だけが聞こえ、一心不乱に逃げている。
GM
いくら救世主と囃し立てられようと。
GM
いくばくかの6ペンスと、奇跡の力を得ようと。
GM
今は逃げることしかできずにいる。
GM
ここは堕落の国。
GM
猟奇と才覚、愛によって救われるこの世界においては、
GM
――『それはよくあること』。
GM
GM
お茶会1R目が終了しました。
このままお茶会2R目へと突入します。
GM
*炉の横槍によるHPと、
 ダザックが使ったティーセットを減らしていないので、
 ここでいじっておきましょうか。

[ 三ノ宮 炉 ] HP : 15 → 14

[ ダザック ] ティーセット : 1 → 0