お茶会 ラウンド2

GM
2R目の行動順をせっかくだからランダムで決めましょう。
GM
1D99で大きな方からです。
楠瀬新
1d99 (1D99) > 99
伊月鮮己
1d99 (1D99) > 68
GM
はい。
GM
楠瀬>鮮己です。おめえまじか?
伊月鮮己
ガハハハ

行動:楠瀬新

楠瀬新
1d12 荒野シーン表 (1D12) > 8
楠瀬新
8 瓦礫の山。積み上がった夥しい量の建物の残骸。一昔前は、大きな街だったのかもしれない。
GM
凍える荒野をゆく。
GM
木々も瓦礫も何もかもが凍りつき、雪が降り積もっている。
GM
ここ数日に感じていた冬の訪れは、気候の変化によるものではなかった。
GM
あの亡者。
GM
冬と雪と氷を纏うあの亡者によってもたらされたものであった。
GM
その証左を示すように、ゆく先の何もかもが凍りついている。
GM
枯木すらも白い霜をまとい。
GM
二人でかかるには危ないと避けた亡者も、容易く氷の中に閉じ込められていた。
GM
――この寒風の中の行軍は、救世主の足であっても過酷だった。
GM
どころか何の庇護もないただの馬では。
楠瀬新
「――っ」
楠瀬新
凍えた足に馬がつんのめって、
楠瀬新
二人、荒野の中空へと投げ出される。
楠瀬新
身体の浮き上がる感覚、
楠瀬新
僅かな対空期間のはざまに、
楠瀬新
腕が伸びた。
楠瀬新
あなたの腕を中空に掴み、
楠瀬新
下敷きになるような形で荒野へと叩きつけられる。
楠瀬新
息を詰めるような悲鳴の音。
伊月鮮己
「っ あ」
楠瀬新
あなたと同じく、寒風に晒され続けたその身体はひどく冷たい。
楠瀬新
「…………」
楠瀬新
「……あー」
楠瀬新
なんとか起き上がって、あなたの身体を押し退ける。
伊月鮮己
「ごめ ん なさい」
楠瀬新
「や」
楠瀬新
「俺こそ堪忍な」
楠瀬新
「しくってもうたわ」
伊月鮮己
「だいじょうぶ です ごめん ごめんね」
楠瀬新
半身を起こして倒れた馬を見る。
伊月鮮己
うまく動けない 体も口も
伊月鮮己
震えている。寒さか、はたまた。
GM
強行軍に限界が来たのだろう。馬は起き上がることができないでいる。
楠瀬新
「…………」
楠瀬新
「できれば捌いてやりたいとこやけどなあ……」
楠瀬新
貴重な資源だ。この状況下では。
楠瀬新
薄汚れた上着を脱ぎ、あなたの肩へとかけながら、
楠瀬新
「流石に余裕ないな。置いてこ」
楠瀬新
「……立てるか?」
伊月鮮己
「はい うん だいじょうぶ 大丈夫、です」
楠瀬新
冷たい風が吹いている。
楠瀬新
村の方を見れば、そちらはもはや荒野ではなく雪原といった有り様。
伊月鮮己
「ごめん ごめんなさい まってね 違うの 待たなくていい」
楠瀬新
「待つてえ」
楠瀬新
「暴力担当おらんと困るけん」
楠瀬新
あなたのぶんの手弁当は取り上げて背負いましょうか。
伊月鮮己
足手まといにならないようにしなければ。動かなければ。機嫌を損ねないようにしなくては。守らなくては。
楠瀬新
馬に投げ出された時に散らばった物資も。
楠瀬新
手早く集めて、背負っています。
楠瀬新
才覚型とはいえ成人男性並の腕力は普通にある。
伊月鮮己
だめ、自分の役割を、こなさなければ。そうじゃなきゃ、生きていたって仕方がないのでしょう?
伊月鮮己
「ごめん、もう大丈夫。ありがとう。」
伊月鮮己
立ち上がって笑う。
楠瀬新
「……ん」
伊月鮮己
「荷物も、ごめん。持ちます。あたし、暴力担当だもん。」
楠瀬新
「はは」
伊月鮮己
「楠瀬さんよりも、パワーあるし。」
楠瀬新
「運ぶのに暴力はちゃうやろ~」
楠瀬新
とは言いつつ、半分は渡します。
楠瀬新
「壊されたらしゃあないて」
楠瀬新
「大切にな?」
伊月鮮己
「うん。気をつけます、ね。ごめんね。」
伊月鮮己
荷物を受け取ります。
楠瀬新
「ん」
楠瀬新
渡して。
楠瀬新
「偉いで、アザミちゃん」
伊月鮮己
「…」
伊月鮮己
「……」
伊月鮮己
「えらい、のかな。」
楠瀬新
「…………」
伊月鮮己
「…………ごめん、違うね。ありがとう。楠瀬さんに言われると、変な感じだね。」
楠瀬新
「なんでや」
楠瀬新
「そこは逆やろ~普通」
楠瀬新
「こんな25にもなる男捕まえといてJKが」
伊月鮮己
「そう?楠瀬さんって、なんか弟みたいだもん。褒められると変な感じ、するよ。」
楠瀬新
「弟っぽかったら褒めたらあかんのか?」
楠瀬新
ちょっとは前向きになってる雰囲気を感じてきたので、とりあえず足を進めます。
楠瀬新
多分身体を動かした方がいくらかマシだろう。
楠瀬新
そもそもが立ち呆けている場合ではない状況だったのだが。
伊月鮮己
少しは余裕が出てきたので、追従しつつ自分でも状況を確認する。
楠瀬新
歩きやすさ重視で選んだブーツの靴底が、冷えた砂を踏みしめる。
伊月鮮己
「そうじゃないけど。褒めるのって、基本お姉ちゃんの役目でしょう?」
伊月鮮己
「だからなんか、不思議な感じだったの。」
伊月鮮己
遠くに見えるものがないか探しながら。
楠瀬新
こちらは地図を出しています。
吐く息も白い。
楠瀬新
この状況では長い行軍はキツいので、近場にある他の辺鄙な村へと向かっています。
一応方角的には街とも一致してるので。
楠瀬新
「強固な姉論やなあ」
楠瀬新
「独自の哲学をお持ちでいらっしゃる」
楠瀬新
「そゆの、変に定めすぎると疲れへん?」
楠瀬新
表向き世間話ノリの軽さで返しています。
伊月鮮己
「?そういうものでしょう」
伊月鮮己
「弟って、生きていてくれるだけで偉くて、可愛いもの。先に生まれたんだから、あたしが守ってあげなくちゃ。」
楠瀬新
地図に目を落としながら聞いている。
伊月鮮己
そこに疑問はない。もう何度となく繰り返したようにスラスラと述べる。
伊月鮮己
「あたしの弟に生まれてきてくれたから。あたしの手を握ってくれたから。」
楠瀬新
「…………」
伊月鮮己
「それだけでもいっぱい褒めてあげたい。いっぱい守ってあげたい。幸福に、生きてほしい。」
伊月鮮己
「そういうものなんじゃないのかなあ?お姉ちゃんて」
楠瀬新
「俺は姉やないから分からんへんなあ」
楠瀬新
「……てゆか」
楠瀬新
「アザミちゃんも大概な家庭環境しとるよな」
楠瀬新
この男が、
楠瀬新
あなたの過去の話に踏み込んでくるのは初めてであった。
楠瀬新
問いかけのトーンも、あなたの答えを引き出す意図は薄く。
楠瀬新
違う。
楠瀬新
薄く見せかけている。
伊月鮮己
「…そうだね。」
楠瀬新
あなたが拒むなら、ただの感想として流せるように。
伊月鮮己
「あんまりいい環境じゃ、ないかもねえ。」
楠瀬新
「なんや宗教的なことゆうてたしな~」
楠瀬新
「俺も当事者やないけど見かけはしたで」
楠瀬新
「バケモノをな~信仰対象にして邪魔してくる奴おんねん」
楠瀬新
「マジ困ったわ」
伊月鮮己
普段なら絶対に、絶対に見せない弱み。
伊月鮮己
少しこぼしてしまうほどには、この男を信頼してしまっていた。
伊月鮮己
「…救世主様って、知ってる?」
楠瀬新
「日本の方の?」
伊月鮮己
「そう。ここのとは違うやつ。」
楠瀬新
「ん~……」考え込む間。
楠瀬新
「覚えないかなあ」
伊月鮮己
「なんか世界ってもうすぐ滅びるらしくてさ、それを救ってくれるんだって。救世主様は。」
楠瀬新
「なんやっけそれ」
楠瀬新
「ノストラダムス?」
楠瀬新
いやこれはだいぶ古い話やな……
伊月鮮己
「それとはちょっと違うかも。私がいた世界、普通に平和そのものだったから滅ぶ感じしなかったし。」
伊月鮮己
「何で滅ぶかって重要じゃなくてさ。まあなんていうか…」
楠瀬新
「うん」
伊月鮮己
「滅ぶと思わせてた方が都合がいい人たちがいて、で、あたしの母さんはそれをどっぷり信じてましたって」
伊月鮮己
「そんなとこ」
楠瀬新
「シンプルにアレやな」
楠瀬新
「カルト」
伊月鮮己
「そうだねえ」
楠瀬新
「巻き込まれる側はたまったもんやないなあ」
伊月鮮己
「本当、そうだよねえ」
伊月鮮己
歩みを止めず、吹き荒ぶ雪風の中では表情も良く見えない。
楠瀬新
あなたの顔は見ず、地図に視線を落としている。
楠瀬新
あなたの少し先を歩いている。
楠瀬新
「母親がそうゆうことは、弟もそこかあ」
楠瀬新
「そら帰りたいわな」
楠瀬新
「ろくでもないことわんさかありそうや」
伊月鮮己
「……そうだね、帰らないとね。」
伊月鮮己
「あたしが、守ってあげないと。」
伊月鮮己
「怖いことも、痛いことも。あたしは大丈夫だけど、あの子は。」
伊月鮮己
「…あのこは、そういうのから全部、守ってあげなきゃいけないから。」
楠瀬新
「…………」
楠瀬新
「『怖いことも』」
楠瀬新
「『痛いことも』」
楠瀬新
復唱する。
楠瀬新
「ある場所に帰ろう、ゆうんやなあ」
楠瀬新
砂を踏みしめて歩いている。
伊月鮮己
ただ前を向いて、歩いている。楠瀬に借りたジャケットをぎゅっと握りしめて。
伊月鮮己
「…お姉ちゃんは、弟を守らなくちゃ。」
伊月鮮己
そうやって、生きてきたんだもの。
伊月鮮己
つぶやく声は、ひどく小さかった。
伊月鮮己
聞かせるための声ではない、自身に言い聞かせるようなそれが、相手の耳に届いたかはわからなかった。
楠瀬新
髪を掻いている。
楠瀬新
「六ペンスコイン」
楠瀬新
「持って帰れたらええんやけどなあ」
伊月鮮己
「そうだねえ。この力、本当に便利だもんね。」
楠瀬新
「全部壊して弟連れて逃げられるで」
楠瀬新
「カルト教団なんやバッキバキや」
伊月鮮己
「ふふふ、いいね、それ。」
楠瀬新
「…………」
楠瀬新
「あとは」
楠瀬新
「そうやなあ」
楠瀬新
「ぶっちゃけ最悪具合じゃプラマイゼロやけど」
楠瀬新
「同じ日本やったらなあ」
楠瀬新
「俺、やったことあるで。そういうアカン宗教団体ふっ飛ばしたん」
楠瀬新
「まあ母体バケモノのやつやったちゅうのもあるけど」
伊月鮮己
「っ」
伊月鮮己
「…」
楠瀬新
「バケモノとか、吸血鬼とかな」
楠瀬新
「そういう奴が関わってることにして、全部ふっ飛ばしてまうんや」
楠瀬新
「そういうのの被害者の面倒見てくれる組織もまああるで」
楠瀬新
「ツテならある」
楠瀬新
「……やけん」
楠瀬新
「そういう」
楠瀬新
「そういう感じで、なあ」
楠瀬新
「うまくやってこうや」
楠瀬新
などと。
楠瀬新
凍える荒野をゆきながら、馬鹿げた夢物語を語っていた。
楠瀬新
*鮮己の心の疵『陰謀の犠牲者』を才覚で舐めます。
伊月鮮己
*システム的に横槍を入れますがこんなん通しだよ!!!!!!
伊月鮮己
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
伊月鮮己
2d6=>7 (2D6=>7) > 10[6,4] > 10 > 成功
伊月鮮己
1d6 (1D6) > 6
楠瀬新
*ティーセット使用
楠瀬新
2d6+3+2-6=>7 判定(+才覚) (2D6+3+2-6>=7) > 2[1,1]+3+2-6 > 1 > 失敗
伊月鮮己
ごめん、鉄壁かも!!!!!!!!!!!
[ 楠瀬新 ] ティーセット : 1 → 0
[ 伊月鮮己 ] HP : 17 → 16
GM
お茶会中のスペシャルとファンブル
PCがお茶会中の判定でスペシャルを起こした場合〔自身の所有する六ペンス/2〕までの価値の小道具を1つ入手します。
PCがお茶会中の判定でファンブルを起こした場合、所持している小道具を1つランダムに失います。
失うべき小道具を1つも所持していない場合、キャラクターのHPを1D6点減少させます。
GM
*判定にティーセットを使用しており、失うべき小道具の所持がないので、楠瀬はHPを1d6点減少します。
楠瀬新
1d6 (1D6) > 3
[ 楠瀬新 ] HP : 14 → 11
楠瀬新
白い息を吐いて、曇天の空を見上げる。
楠瀬新
はらはらと降る雪を見る。
楠瀬新
あの頃。
楠瀬新
運命の分岐に立ち会ったあの頃も、確か、雪の降る頃合いであったか。
楠瀬新
自分はどこまでも傍観者であった。
楠瀬新
誰を救う立ち位置にもなかった。
楠瀬新
だから、二人の少女の命を落とすさまをただ見送った。
楠瀬新
分かっている。
楠瀬新
理解している。
楠瀬新
自分の言葉が人を救うはずもない。
楠瀬新
自分の言葉が他人の心を動かせるはずもない。
楠瀬新
こんなごみ溜めの底のふざけた世界で夢物語を語ることの、
楠瀬新
滑稽と無意味はよく理解している筈なのに。
楠瀬新
吹きつける風は、ひどく冷たい。
楠瀬新
それが頭の中をも正しく冷ましてくれていれば良かったのにと、
楠瀬新
今更の後悔は遅すぎた。

行動:伊月鮮己

伊月鮮己
1d12 (1D12) > 7
GM
7 レンガの道。申し訳程度に整備された、街と街を繋ぐ街道。歩きやすい以上の意味は無い。
GM
歩きやすいと本当によいとされます。
GM
言葉少なに荒野をゆくあなたたち。
GM
途中立ち寄った辺鄙な村は……ダメでしたね。
GM
同じように氷漬けでした。
GM
ですが、そこから少し歩いて、メアリが言っていた街へと向かっていくと、
GM
少しずつ暖かさが増していく感じがありました。
GM
あれからまた数日が経っています。
GM
その間あなたたちは荒野の中をどうにか野宿などして生き延びてきました。
GM
アンディがそうしていたように、瓦礫ですらこの世界では雨風をしのげる物体のひとつに含まれます。
GM
あるいは凍えた枯木の影。あるいは廃墟。
GM
そういった劣悪な環境で、どうにか亡者の肉で作った手弁当のかけらをかじり、時には木の皮を剥いでそれをしゃぶる。
GM
ろくな食糧もなく疲弊しきった身体を、それでも動かすことが叶っているのは六ペンスコインの力か。
GM
奇跡の力で生を繋ぎながら、この堕落の国を二人で歩く。
GM
その果てで、ついに街に繋がるレンガの道にたどり着きました。
GM
あの救世主を殺してから。
GM
既に29日が経過した頃合いのことでした。
GM
レンガの道は凍えていません。あの亡者は別の方角に向かったようです。
GM
ここから見える街も雪に覆われることなく、
GM
都市としての機能を保っているように見える。
楠瀬新
「……はあ」
楠瀬新
「ギリギリ、間に合う」
楠瀬新
「かね? こりゃあ……」
楠瀬新
地図を見下ろしながら、息をつく。
伊月鮮己
「少なくとも、人がいそうな街だね」
伊月鮮己
「…良かった」
楠瀬新
二人でレンガの道を歩く。
楠瀬新
足取りは重いが、それでも砂を踏むよりは相当楽だ。
楠瀬新
何より。
楠瀬新
街なら、他の救世主がいるかもしれない。
楠瀬新
心に灯る希望は、救世主の身体を動かす源となる。
楠瀬新
……よくも、悪くも。
伊月鮮己
街があって人がいる。きっと、この人を、殺さなくてもいい。その可能性に安堵する。
伊月鮮己
ここ数日、心を覆っていたのはそれだった。だから、希望が見えて、少し会話をする元気が出る。
伊月鮮己
「ねえ、楠瀬さん。…ありがとう。」
楠瀬新
「……なんや」
楠瀬新
「急に」
楠瀬新
饒舌さで何もかもを誤魔化してきたはずの男の、
楠瀬新
今は口数もひどく少ない。
伊月鮮己
「いろいろ全部。ちゃんとお礼、言いそびれてたから。」
伊月鮮己
「最初に助けてくれたことも、あの亡者から逃げるのに手を引いてくれたことも。」
伊月鮮己
「…この前、同じ日本だったらって、言ってくれたことも。」
楠瀬新
「…………」
伊月鮮己
「あたし、全部嬉しかったんだよ。」
伊月鮮己
*楠瀬の心の疵『憧憬』を猟奇で舐めます。
楠瀬新
*横槍します
楠瀬新
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
楠瀬新
2d6+0=>7 判定(+猟奇) (2D6+0>=7) > 6[3,3]+0 > 6 > 失敗
[ 楠瀬新 ] HP : 11 → 10
楠瀬新
*どうぞ……………
伊月鮮己
2d6+3=>7 (2D6+3=>7) > 3[2,1]+3 > 6 > 失敗
伊月鮮己
くそ〜〜〜〜〜惜しい
楠瀬新
首の皮一枚繋がってるはずなのに繋がった気が一切しません
楠瀬新
「……なんや」
楠瀬新
「そんな嬉しかったんか?」
伊月鮮己
「うん、すごく。…あんなこと言ってくれた人、いなかったから。」
伊月鮮己
たとえそれが叶わないと知っていても。
伊月鮮己
「なのに、あたしその…失礼な態度、取っちゃったと思うから。」
楠瀬新
「何がよ」
伊月鮮己
「あの、ほら…その、明らかに怖がっちゃったでよ。楠瀬さんのこと。」
伊月鮮己
「楠瀬さんは助けてくれた人だって、わかってるのにね。」
楠瀬新
「別に」
楠瀬新
「正しい警戒心やろ」
楠瀬新
「怖い相手が怖いん、なんか悪いか?」
楠瀬新
「他人の恐怖心」
楠瀬新
「論って笑うほど、」
楠瀬新
「――――」
楠瀬新
黙り込む。
楠瀬新
腐った根性を。
楠瀬新
している男だと、思っていたのだが。
伊月鮮己
「…あたしに優しくしてくれたひとのこと、怖がりたくないよ。」
伊月鮮己
「楠瀬さん、あたしにとってはずっと、優しい人だったから。」
伊月鮮己
「…怖がりたく、なかったんだよ。」
楠瀬新
「ハハ」
楠瀬新
「アザミちゃん」
楠瀬新
「わる~い男に引っかかるなァ」
伊月鮮己
「……引っかかってるのかな。自分じゃわからないや。」
楠瀬新
「そこはさァ」
楠瀬新
「悪い男の方否定してくれへんかなあ~?」
伊月鮮己
「悪い人ではあるんでしょう?自分でずっと言ってるから、楠瀬さんの中では。」
伊月鮮己
「でも、あたしが見てた楠瀬さんは、軽口が多いけどなんだかんだ親切で、…助けてくれて、とっても優しい人だったから。」
伊月鮮己
「あたしには、いい人だったよ。世間とか、楠瀬さんの中ではどうであっても。」
楠瀬新
「…………」
伊月鮮己
我ながら酷いエゴだと思う。きっとこの男の本心にも届かないかもしれない。それでも、言わずにいられなかった。
伊月鮮己
あなたは、優しい人だよと。迷子の弟みたいな目をした目の前の男に。伝えずにいられなかった。届かなくても。
楠瀬新
男は背を丸めて歩いている。
楠瀬新
「さよか」
楠瀬新
「ほんなら」
楠瀬新
「優しくしとった甲斐は、あったんかなァ」
楠瀬新
――自分は、そうではない。
楠瀬新
誰かを導くことのできる人間ではない。憧れられるような存在ではない。
楠瀬新
愛する者のために己の信じた道を道を貫き通す度量はなく、
楠瀬新
運命に抗い、信念のもとに戦い続ける強さもなく、
楠瀬新
犠牲に屈さず、心に決めたことを最後まで堅持し続ける一途さもない。
楠瀬新
ないのだ。
楠瀬新
自分には。
楠瀬新
「……アザミちゃん」
伊月鮮己
「なあに?」
楠瀬新
「……んー」
楠瀬新
「なんもないわ」
楠瀬新
「呼んだだけ」
伊月鮮己
「うん」
伊月鮮己
「ねえ、楠瀬さん」
楠瀬新
「なんや」
伊月鮮己
…願ったことが叶ったことなんて、一度もなかった。
伊月鮮己
それでも、ずっと願っていた、きっと誰かに助けて欲しかった。
伊月鮮己
それを、初めて叶えてくれたこの人が。
伊月鮮己
……少しでも、幸福であるようにと。そう願っては、いけないだろうか。
伊月鮮己
「…ごめんね、呼んだだけだよ。」
伊月鮮己
半歩、距離を詰める。大丈夫、体は震えない。
伊月鮮己
たとえ泡沫のひと時だとしても、どうか今だけは。温もりが近くにありますように。

マスターシーン

GM
あなたがたは街に到着する。
GM
あの村に比べたらそれなりにましな格好をした末裔たちが、新たに訪れた救世主たちを出迎える。
GM
しかし。
GM
他の救世主たちは、丁度この街から出払っている最中であるそうだった。
GM
彼らがいつ帰ってくるのか。末裔たちには分からない。
GM
今日かもしれない。明日かもしれない。
末裔
「ですから」
末裔
「私達には、どうしようも……」
末裔
怯えた末裔たちが、救世主であるあなたたちの顔色を窺っている。
末裔
白兎に限らず、あの村と違ってさまざまな末裔がいます。
末裔
けれどその”顔”に大差はない。
末裔
救世主を恐れ、救世主に縋るしかない、無力な存在のかんばせ。
末裔
あなたがたに向けられる顔はそういったものだ。
楠瀬新
「…………」
伊月鮮己
「…………」
楠瀬新
「宿」
楠瀬新
「あるか?」
末裔
「あ、の」
末裔
「はい。その……」
末裔
「なんとか」
末裔
「一室くらい、は」
末裔
「いえ、あのっ」
末裔
「救世主さまが相手なら、宿だけでなくともっ」
楠瀬新
「ええよ、それで」
楠瀬新
「…………」
楠瀬新
「ええよな?」
楠瀬新
鮮己に確認をとります。
伊月鮮己
「……うん」
楠瀬新
二人とも、疲れ切っている。
楠瀬新
不幸中の幸いにしてまだ一日の猶予が残っており。
楠瀬新
その一日の間に、他の救世主が戻ってくる可能性は
楠瀬新
ゼロではない。
楠瀬新
そのために、ひとまずは休息を取るべきだと。
楠瀬新
言外に見解が一致していた。
楠瀬新
通された部屋には、ベッドがひとつきり。
楠瀬新
それでもあの辺鄙な村の宿よりは相当に上等だった。
楠瀬新
「アザミちゃん、そっちで寝な」
楠瀬新
「俺はまあ床寝イケるけん」
伊月鮮己
「…大丈夫。気、使わないで。」
伊月鮮己
「あたしも床、慣れてるし。平気。」
楠瀬新
「そういうんやないて」
楠瀬新
「男の見栄ってやつ」
楠瀬新
「立ててもらうわけにはいかへんかねえ?」
伊月鮮己
「そういうの、あたし、あんまわかんない、かも。ごめん。」
楠瀬新
「じゃあここで学んどき」
楠瀬新
「あと、あれやな」
楠瀬新
「アザミちゃんのが身体が資本や」
楠瀬新
「身体休めてもろた方が、裁判の時動けるやろ?」
伊月鮮己
「っ」
伊月鮮己
「……でも 、でも……」
楠瀬新
「ほな」
楠瀬新
「そゆことで~」
楠瀬新
さっさと話を切り上げて、襤褸の毛布を取って床に転がる。
伊月鮮己
「……ごめん じゃあ これ使って。無いよりいいと思うから。」
伊月鮮己
ベッドのうわかけとか、ありったけの布系のものを持って楠瀬のそばに行く。無いよかましだろう。
楠瀬新
腕を枕にして眠りの姿勢をとっている。
伊月鮮己
「……腕、痺れちゃうよ。……楠瀬さん罠張るのに、困っちゃう。」
楠瀬新
「んー…………」眠そうな声。
楠瀬新
「あれは……心の疵でできるやつやけん……」
楠瀬新
もたもたとした返事がくる。
伊月鮮己
眠そう。寝かせてあげなきゃ。
伊月鮮己
深呼吸をして心を落ち着かせて、大丈夫。大丈夫。この人は怖く無い人。大丈夫。
楠瀬新
相当な疲労困憊状態からの解放ゆえにか、背中が寝息に上下している。
伊月鮮己
楠瀬の腕をそっと頭から外して、シーツを折りたたんで枕がわりにしたものを代わりに置く。うわかけはそっと体の上にかける。
楠瀬新
されるがままになっている。
伊月鮮己
「…ごめんね」と呟いて、楠瀬の頭をひとなでしてからベッドに戻る。
伊月鮮己
そのままベッドの上に体育座りで寝ます。この姿勢が落ち着く被虐待児童。
GM
沈黙の中を、日が落ちる。
GM
やっと辿り着いた宿の一室で、あなたたちは眠りにつき。
GM
世界に闇が訪れた。