? 3話「花に願いを」結果フェイズ

結果フェイズ

真城朔:「……っ」
真城朔:「お、――」
真城朔:途中で真城の声が詰まる。
真城朔:喉で止まって、引き絞られる。
真城朔:その吸血鬼の姿を見上げて、立ち上がることもできずにいる。
フォゲットミーノット:フォゲットミーノットは青い髪を夜風に靡かせながら、真城を見下ろした。
糸賀大亮:杭を拾い上げた。
糸賀大亮:真城の様子は無理もないことだった。望みは断たれた。
糸賀大亮:そればかりか、積み上げて来たものが。
糸賀大亮:殺さなければならない吸血鬼として、目の前に結実したのだ。
夜高ミツル:フォゲットミーノット。あの日、自分の家族を殺した吸血鬼。
夜高ミツル:──真城の母親。
乾咲フラン:背に仮初めの碧を置いたまま、FMNに向かって静かに構える。
フォゲットミーノット:狩人たちには構わず、真城に向けて柔らかく微笑む。

フォゲットミーノット:「朔」
フォゲットミーノット:「一緒に来る?」
夜高ミツル:真城とフォゲットミーノットの間に割って入る。
真城朔:「…………」
真城朔:答えられずにいる間に、ミツルに割って入られる。
夜高ミツル:「……行かせない」
真城朔:その背にすら何も言えないまま。
フォゲットミーノット:フォゲットミーノットはミツルを見る。
フォゲットミーノット:金色の視線をまっすぐにミツルへと注ぐ。
夜高ミツル:……こうして相対すると、あの日の凄惨な光景が、自分の命が喪われるかもしれないと思った記憶が、ありありと蘇る。
夜高ミツル:それを押し隠して、その視線を受け止める。
フォゲットミーノット:一方でフォゲットミーノットは穏やかなものだった。
フォゲットミーノット:殺気すら漂わせない。ただ見極めるようにミツルの姿を瞳に収めて、
フォゲットミーノット:「明日の夜」
フォゲットミーノット:「時計台広場で、待ってるね」
フォゲットミーノット:その向こう側の真城へと声をかけ、
フォゲットミーノット:次の瞬間には掻き消える。
フォゲットミーノット:青い勿忘草の花弁を残して。
GM:それすらも見えなくなって、フォロワーたちもいつしか去り、公園に残されたのは狩人たちだけ。
GM:プルサティラとの戦いを乗り越えた狩人と、真城朔と、
GM:蘇り今なお眠る皆川彩花と、真城碧。
糸賀大亮:「…………」
乾咲フラン:「……」ゆっくりと、ゆっくりと構えを解く。
夜高ミツル:……フォゲットミーノットが姿を消したのを見て、大きく息をつく。
忽亡ゆかり:「明日、か……」
糸賀大亮:「……」それでもしばらく緊張していたが、やがて嘆息して。
プルサティラ:プルサティラの残した花の効果は一晩きり。
プルサティラ:それに願いを託すのは、恐らく明日の夜になるだろう。

夜高ミツル:今何時くらいなんだ 夜明け?
GM:夜明けで。
GM:ゆうて3時くらいかな。
GM:これから明るくなってくるくらいで。
糸賀大亮:はい~。
夜高ミツル:深夜だ 了解です
乾咲フラン:はい

糸賀大亮:ちらりと真城と夜高の方を確認してから、彩花ちゃんの方へ歩いていこう。
皆川彩花:まだ眠っています。
糸賀大亮:抱え上げて、……どうするかな。とりあえずクラブに連絡して、病院に診てもらうのがいいか。
皆川彩花:病院はまだちょっとどたばたしているかもしれない。
糸賀大亮:ああ、そっか。
糸賀大亮:寝てたから、ケアできなかった患者とかがな……
皆川彩花:病気は治ってると思うので、まあどこかで休めるといいんじゃないですか。
皆川彩花:そのあたりをまあ個別でやりましょうか。
糸賀大亮:はーい。俺はじゃあこれで。
夜高ミツル:「……真城」立てるか、と手を差し出す。
真城朔:反応がない。顔をうつむけて、地面に視線を落としている。
乾咲フラン:フランは……碧を抱えて持って帰るか
真城碧:碧も眠っています。懐かしいセーラー服姿で。
乾咲フラン:優しく抱え上げ、昔のままのその顔を一度見て目を逸らす。
GM:東の空が白みつつある。
GM:透明感のある夜空に薄いグラデーション。
GM:その向こうのあしたのそのまた先に、
GM:狩人たちの、決戦が待っている。

GM:では、ゆかりさんからいきましょうか。

結果フェイズ:忽亡ゆかり

GM:家に帰りますか?
忽亡ゆかり:帰ります!
忽亡かなた:では、かなたがゆかりを出迎えます。
忽亡かなた:連絡は多分しましたよね。
忽亡ゆかり:しましたね!
忽亡かなた:到着前に。
忽亡かなた:うんうん。
忽亡かなた:それでもかなたは、
忽亡かなた:玄関の扉を開けた貴方の姿にほっと息をつき……かけて。
忽亡かなた:「おかえ――」
忽亡ゆかり:「いぇーい……」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「そ、それ……」
忽亡ゆかり:「あ、うん、超痛い」
忽亡かなた:お腹の怪我に顔をしかめる。
忽亡かなた:「超痛いとかで済むの!?」
忽亡かなた:「病院とか……」
忽亡かなた:「救急車呼ぶ?」
忽亡かなた:スマホを取り出しています。
忽亡かなた:わたわため。

忽亡かなた:一般人なので一部位で大騒ぎする。
糸賀大亮:おおごとなんだよな

忽亡ゆかり:「あーいや、大丈夫大丈夫」
忽亡ゆかり:血の着いたジャケットを脱いで、ベッドへと腰掛けて。
忽亡かなた:心配そうに見ています。
忽亡ゆかり:「洗面所にでっかい箱あったでしょ。取ってきてもらえる?」
忽亡かなた:「え、と」
忽亡かなた:「うん」
忽亡かなた:ぱたぱたと走っていく。
忽亡ゆかり:洗面所に備え付けられた医療キット。それでひとまずは処置をすることにした。
忽亡かなた:医療キットを抱えて戻ってきます。なにやら大切なものらしいので大事そうに持っている。
忽亡かなた:「これだよね?」
忽亡ゆかり:「さんきゅ」
忽亡ゆかり:「病院でも診てもらうつもりだから、そんな心配しなくてもいいよ」とはいえ、早くともそれは明後日になるのだろうけど。
忽亡かなた:「……やばそうだったらすぐにでも呼ぶからね」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「なんか手伝えることある?」
忽亡ゆかり:「ん、じゃ、これ、巻いてもらえる?」慣れた手付きで消毒と縫合を済ませて、弟に包帯を渡す。
忽亡かなた:「うん」
忽亡かなた:包帯を受け取る。
忽亡かなた:端をゆかりの身体に当てて、恐る恐る巻いていく。
忽亡かなた:慣れた者の手付きではない。忽亡かなたにとっては、怪我の処置など日常的にするものではなかった。
忽亡ゆかり:「……なんか、いいなあ。こういうの」
忽亡かなた:「え」
忽亡ゆかり:ちゃんと心配してくれる人がいる。心配させてしまうのは心苦しいけれど、こうして面倒を見てくれる。
忽亡かなた:「何が……?」
忽亡ゆかり:妄想ではなく、本当に経験するのは初めてのことで。
忽亡ゆかり:「かなたが、帰りを待っててくれたのが、嬉しかったんだよ」
忽亡かなた:包帯の巻き方も、少々つたない。少したゆんでしまっている。
忽亡かなた:それでも、触れる手が、暖かい。
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「それは」
忽亡かなた:「良かった、けど」
忽亡かなた:あれだけ言ったはいいものの、頭を冷やして落ち着いてみると気恥ずかしさが湧いてくるということなのか。
忽亡かなた:ややしどろもどろに口を尖らせる。
忽亡かなた:「でも、怪我は良くないと思うから」
忽亡かなた:「いくらでも心配はするけど!」
忽亡ゆかり:「はい。ごめんなさい」
忽亡ゆかり:「自分の体……。大切にする」
忽亡ゆかり:「帰り、遅くなっちゃってごめんね」
忽亡かなた:「う、……ん」いやに素直なゆかりの調子に毒気を抜かれている。
忽亡かなた:「大丈夫だよ」
忽亡かなた:「いくらでも待つしさ」
忽亡ゆかり:「きっと、わかんない事だらけなのに……私を信じてくれて、ありがとう」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:もくもくと包帯を巻きながら、ゆかりの声を聞いている。
忽亡かなた:「……わからないことだらけだけど」
忽亡かなた:「教えてくれるんだろ」
忽亡ゆかり:「……うん」
忽亡かなた:「だから、それでいいんだよ」
忽亡かなた:「俺は姉さんが好きだし、信じるし、心配するし」
忽亡かなた:「姉さんの力になりたいし」
忽亡かなた:「それだけだよ」
忽亡ゆかり:「かなた……」
忽亡ゆかり:「見てほしいものが、あるんだ」
忽亡かなた:「?」
忽亡かなた:「あ、待って、包帯巻き終わるから」
忽亡かなた:「……これでいい?」
忽亡かなた:と確認される出来上がりは、あまり上等ではないが。
忽亡ゆかり:「うん。ばっちり」
忽亡かなた:「……良かった」
忽亡かなた:ほっと息をつく。
忽亡かなた:「で、何?」
忽亡かなた:「見てほしいものって」
忽亡ゆかり:「これだよ」
忽亡ゆかり:今巻いたばかりの傷跡を指す。次いで、袖を捲って、腕を。たくしあげて、腹を。
忽亡かなた:「!」
忽亡ゆかり:素肌が覗く。黄色く焼けた顔と比べて、その色は白い。
忽亡ゆかり:しかしそれは、お世辞にも、綺麗な体とは言い難かった。
忽亡かなた:眼鏡の奥の目を見開いて。
忽亡かなた:「……姉さん」
忽亡ゆかり:あちこちに点在するのは傷跡。それも一種類ではない。中には銃創と思しき痕や、どのように付けたかもわからない不思議な痕までも。
忽亡かなた:その一つ一つから、
忽亡かなた:けれど、目を逸らさない。
忽亡かなた:見せつけられる全ての傷を、じっと見つめている。
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:暫し言葉を失っている。
忽亡ゆかり:「私が今、会社員をしているのは、かなたも知ってるとは思うんだけど」
忽亡かなた:「……う、ん」
忽亡ゆかり:「……今の職場の裏のお仕事はね、なんていうのかな……」
忽亡ゆかり:「殺し屋、みたいなものなんだ」
忽亡かなた:「ころっ……」
忽亡かなた:「え、と」
忽亡かなた:「いや」
忽亡かなた:「続けて」
忽亡かなた:座り直して、ゆかりを見る。
忽亡ゆかり:「そう。決して褒められたものではない仕事」
忽亡かなた:「…………」
忽亡ゆかり:「その人を放っておくと、たくさんの人が死ぬ。それを食い止めるために、その人を……殺す。そういう事をしてる」
忽亡かなた:「……うん」
忽亡かなた:「それが――それが」
忽亡かなた:「姉さんの、危ない仕事?」
忽亡ゆかり:「……うん」
忽亡ゆかり:「おとぎ話やゲームで、よく聞く話に、吸血鬼っていうものがあるでしょ?」
忽亡かなた:頷く。
忽亡ゆかり:「……人の血を吸って、不思議な力を使う、強い化け物」
忽亡ゆかり:「そんなものがもし、本当にいるとしたら、どう思う?」
忽亡かなた:「え、えと」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「すごく危険で、人がいっぱい、殺される……?」
忽亡ゆかり:「うん」
忽亡ゆかり:普通であれば、信じさせるのは難しいことだ。
忽亡ゆかり:まして、自分は精神に問題を抱えていて、しかも手持ちの証拠となるものは……強いて言うならば、この傷くらいしかない。
忽亡かなた:「……姉さんは、そういうやつらと?」
忽亡ゆかり:「うん」
忽亡ゆかり:「自分の目で、何度も見た。人の姿をしたやつが、人を殺したり、血を吸ったり、不思議な力を使ったりするんだ」
忽亡かなた:「…………」
忽亡ゆかり:「うちの会社は、そういうのと闘うとこなんだ」
忽亡ゆかり:「他にも、いくつかの組織がある。あなたが立ち会った人たちもそう」
忽亡かなた:また暫し沈黙していたが。
忽亡かなた:「……だよ」
忽亡かなた:ぼそり、と。
忽亡かなた:「なんだよ、それ」
忽亡かなた:「バカだ」
忽亡かなた:「……バカ、みたいだ」
忽亡ゆかり:「あっいや……確かに信じてもらうのは難しいと思うけど……!」わたわた
忽亡かなた:「違う」
忽亡かなた:「そうじゃない」
忽亡かなた:「そうじゃなくて」
忽亡ゆかり:「……じゃあ、何?」
忽亡かなた:首を振る。
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「……そんな」
忽亡かなた:「姉さんが、そんな危ないやつらと」
忽亡かなた:「そんなになるまで」
忽亡かなた:「そんな、傷とかいっぱいできるまで、戦ってて」
忽亡かなた:「そういう仕事、してて、…………」
忽亡かなた:「……それを」
忽亡かなた:「そんなとんでもないこと、全然知らなくて」
忽亡かなた:「知らないで生きてきて」
忽亡かなた:また少し黙る。
忽亡かなた:「……だから!」
忽亡ゆかり:「……」
忽亡かなた:「バカなのは、俺の方!」
忽亡ゆかり:「…………それは……」
忽亡かなた:「昔からけっこう荒れてるときは荒れてたしさ」
忽亡かなた:「そういうののなんか延長だと思ってた俺、完全にバカじゃん!」
忽亡かなた:「いやバカだけど……バカだな!!」
忽亡かなた:「あー!!」
忽亡かなた:頭を抱えて叫ぶ。

夜高ミツル:喧嘩歴への言及
忽亡ゆかり:いっぱいけんかをしました
忽亡かなた:かわいいね
糸賀大亮:かわいさ
乾咲フラン:かわいいぜ…

忽亡ゆかり:「……違うよ。全部隠してたもん、私」
忽亡かなた:その状態でちらりとゆかりを窺って。
忽亡ゆかり:「かなたを巻き込みたくなかったから、って、勝手に子供扱いして、ずっと」
忽亡かなた:「……でも」
忽亡かなた:「そんな怪我いっぱいしてたの全然気付かないのは、いくらなんでもだろ……」
忽亡ゆかり:「……違うん、だよ」
忽亡ゆかり:「それも、違うんだ……」
忽亡かなた:「……?」
忽亡ゆかり:「かなたは、気づかないんだよ。気付くはずがない……」
忽亡かなた:「……なんで」
忽亡かなた:身体を起こしながら。
忽亡かなた:「一緒に暮らしてたのに?」
忽亡かなた:「隠せるもんじゃないだろ、そんなの」
忽亡ゆかり:「だって…………」
忽亡ゆかり:その先の言葉に詰まる。
忽亡かなた:「だって?」
忽亡ゆかり:言うべき言葉は決まっていて、けれど、それを吐き出すまでに、しばらくの迷いがあった。
忽亡かなた:ゆかりの顔を見つめて、それを待つ。
忽亡ゆかり:「………………っ」
忽亡かなた:「?」
忽亡ゆかり:「違うんだ。暮らしてなかったんだ」
忽亡かなた:「えっ?」
忽亡ゆかり:「……居なかっ、たんだ……」要領を得ない言葉。しかしそれでも、絞り出すように。
忽亡かなた:「……えっと」
忽亡かなた:「それも、なんか、吸血鬼とかのせいとか……?」
忽亡ゆかり:「……そうだね。……そうだ……」
忽亡かなた:「?」
忽亡ゆかり:少し心を落ち着けないといけない。両手で顔を押さえる。
忽亡ゆかり:「私が……」
忽亡ゆかり:「私が」
忽亡ゆかり:「こんな事になったのは、二年前から」
忽亡かなた:「……うん」
忽亡ゆかり:「覚えてるでしょ。二年前、うちに何があったか」
忽亡ゆかり:両親が死んだ。
忽亡かなた:「…………」頷く。
忽亡かなた:「あの時、姉さんすごい大変そうで」
忽亡かなた:「俺、なんにもできなくて……」
忽亡ゆかり:「…………ううん」
忽亡かなた:「いや、それからもだけど……」
忽亡かなた:「……?」
忽亡ゆかり:首を振る。違う。違うのだ。
忽亡ゆかり:「あれはね、襲われたの」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「……吸血鬼、に?」
忽亡ゆかり:「……うん」
忽亡かなた:「……なんていうか」
忽亡かなた:「やっぱり俺、何にも知らないんじゃ……」
忽亡ゆかり:「…………」苦しい。この先の言葉を伝えるのが。
忽亡ゆかり:「あのっ。あの、ね」
忽亡かなた:「ねえさ、……」
忽亡かなた:涙を滲ませる姉の様子に腰を浮かしかけるが。
忽亡ゆかり:それを静止する。言わなければならない。今。ここで。
忽亡ゆかり:「あの時、あの時ねっ」
忽亡ゆかり:「い。生き残ったのは、私だけだった!」
忽亡かなた:「え?」
忽亡ゆかり:「ごめんなさい。ごめ、っ、なさい」
忽亡ゆかり:「かなた。あなたはあの時。あの時っ」
忽亡かなた:「…………」
忽亡ゆかり:「…………覚えてない?思い出せない?あの時、かなたは一緒に襲われたの」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「……うん、と」
忽亡かなた:「え――」
忽亡かなた:はた、と目を瞬いて。
忽亡かなた:戸惑いに揺れていた瞳が、すっと静まった。
忽亡かなた:「…………ああ」
忽亡かなた:ちいさく、息を吐く。
忽亡かなた:「ああ……」
忽亡かなた:自分の額に手のひらを当てて、かなたは俯く。
忽亡ゆかり:「…………かなた」
忽亡ゆかり:「かなたは、気付けなくて当然なの」
忽亡かなた:「……うん」
忽亡ゆかり:「私は、この二年間、あなたとは一緒に居なかった……」
忽亡かなた:「思い出せない、よ」
忽亡かなた:「でも」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「……帰ってくる、途中にさ」
忽亡かなた:ぽつりぽつりと話し出す。
忽亡かなた:「見かけたんだよな。コンビニとかでさ」
忽亡かなた:「みんな寝てて、しかもなんか、枕とかあって」
忽亡かなた:「……あと、公園でもさ……」
忽亡かなた:空に漂う少女の姿。
忽亡ゆかり:「あ。そっか。そうだよな」
忽亡ゆかり:あの時の帰路は、明らかに現実離れした光景だった。
忽亡かなた:「……なんか、関係あったり、するんだろ」
忽亡かなた:流石に色々と呑み込み難い顔はしているが。
忽亡ゆかり:「あれは、吸血鬼とは別で……魔女っていうんだ」
忽亡かなた:「増えた……」
忽亡かなた:いろいろいる……って呻いている。
忽亡ゆかり:「まあ、似たようなもんだよ」
忽亡ゆかり:「魔法を使って、ああやって人を眠らせたりできる」
忽亡かなた:「うん」
忽亡かなた:「魔法」
忽亡かなた:「……魔女だもんな」
忽亡かなた:「俺は、ええと……」
忽亡かなた:「その吸血鬼に襲われて、眠ってた、とか……?」
忽亡かなた:「本当はそう、なの?」
忽亡ゆかり:「…………魔女は、魔法で空を飛んだり、不思議な力で戦ったり、願いを叶えたりできる」
忽亡ゆかり:「たとえば、相対する狩人が“昇進したいなー”と願っていたら、その本心に囁きかけるんだ。“昇進したいか?”って」
忽亡かなた:「昇進」
忽亡ゆかり:「すると、上司の存在が消えていて、その狩人は一つ上の地位に上り詰めていて、それが元々の世界の真実だったかのように書き換わってたりする」
忽亡かなた:「…………」
忽亡ゆかり:「そうやって、事実を書き換えることができるんだ」
忽亡かなた:「でたらめだ」
忽亡ゆかり:「……できるんだよ」
忽亡かなた:「うん」
忽亡かなた:「信じるよ」
忽亡ゆかり:「たとえば……“死んだはずの弟は、生きていました”といった具合にね」
忽亡かなた:「………………」
忽亡かなた:「へ」
忽亡かなた:「あ?」
忽亡ゆかり:「吸血鬼に襲われて、何もなしに、そのまま生き延びる事なんて、普通は出来ない」
忽亡ゆかり:「そのまま殺されて、おしまいなんだ」
忽亡かなた:呆然とゆかりの話を聞いている。
忽亡ゆかり:「かなたは、二年前にいちど死んでる」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:その言葉を。
忽亡かなた:その言葉に、大きく目を見開いて固まっている。

忽亡ゆかり:そういえばソロ撮影の写真立てとかどうなってるんだろう
忽亡かなた:ソロじゃなくなってます。
糸賀大亮:改変能力
忽亡ゆかり:だよね~~~~~~
忽亡ゆかり:痛々しいゆかりちゃんは居なかった

忽亡かなた:三度沈黙が落ちて、
忽亡かなた:かなたは不意に立ち上がった。
忽亡かなた:ゆかりに背を向け、無言でキッチンの方へと向かう。
忽亡かなた:冷蔵庫を開ける音。何かを注いでいる。
忽亡かなた:戻ってくる手元に、グラスがふたつ。
忽亡かなた:コーヒーと、ミルクコーヒーに氷が揺れている。
忽亡かなた:コーヒーの方をゆかりに差し出して。
忽亡かなた:「……はい」
忽亡かなた:氷の触れ合う軽やかな音がする。
忽亡ゆかり:「……ありがと」
忽亡ゆかり:涙を拭いて、コーヒーに口をつける。
忽亡かなた:腰を下ろしながらかなたも口をつける。
忽亡ゆかり:自分も落ち着かなければならない。頭にきちんと説明の順序を立てていたはずなのに、しどろもどろになってしまった。
忽亡かなた:「……こういう風にさ」
忽亡かなた:「姉さんにコーヒー渡されて、一緒に飲んだりとか」
忽亡かなた:「ご飯食べたりとかさ」
忽亡ゆかり:「……うん」
忽亡かなた:「まあ、そういう普通のことを」
忽亡かなた:「俺はこの二年もやってきたと思ってて」
忽亡かなた:「……姉さんの方は、違う?」
忽亡ゆかり:「……」かつての幻覚が思い出される。
忽亡ゆかり:この二年間、ずっと。普通の生活を、弟と共に過ごしてきた。
忽亡ゆかり:それが誤りだったと気付いたのはつい最近のことで、それが誤りではなくなったのはついさっきのことで。
忽亡ゆかり:望んだこととはいえ、人生を大きく揺るがすほどの認識が二度も反転したことに、戸惑いを感じていないはずはない。
忽亡ゆかり:「…………ごめんね……」
忽亡かなた:「えっ」
忽亡かなた:「なんで謝るんだよ」
忽亡ゆかり:「この二年間、幸せだったのに。それを否定するような事を言った」
忽亡かなた:「いやいや」
忽亡かなた:「そういう話じゃないって」
忽亡かなた:「俺ほんとのこと聞かせてって言ってんだからさ」
忽亡ゆかり:「私も、私も同じだったんだ」
忽亡かなた:「…………」
忽亡ゆかり:「私もね、二年間、ずっとかなたと一緒に過ごしてると思ってた」
忽亡ゆかり:「それが違うって知ったのが、本当につい最近のことで」
忽亡かなた:「……うん」
忽亡ゆかり:「その時は、もう何も信じられなくなって」
忽亡ゆかり:「全部どうでもよくなって」
忽亡ゆかり:「めちゃくちゃに荒れたんだ。少し、かなたも見てたでしょ?」
忽亡かなた:「ああ……」
忽亡かなた:「帰ってくるのも遅くて」
忽亡かなた:「俺、心配してて」
忽亡かなた:「……でも」
忽亡かなた:「なんでもっと早くちゃんと声かけなかったんだって」
忽亡かなた:「……そう、思ったな……」
忽亡ゆかり:「……うん……」
忽亡ゆかり:しおんによってかなたは起こされた日。あれは彼にとっては日常だっただろうか。それとも姉が急に壊れたように映っただろうか。
忽亡ゆかり:喪服姿で、目には隈を浮かべ、感情の起伏が激しい姉の姿など、到底まともなものではないはずで。
忽亡かなた:「……あの日、だったのか」
忽亡かなた:「そっか……」
忽亡かなた:そうか、と小さな声で繰り返す。
忽亡ゆかり:「……この二年間、私はずっと戦ってきた」
忽亡かなた:「……うん」
忽亡ゆかり:「深い傷とかもあって、何日も入院するようなこともあって」
忽亡ゆかり:「……本当に、私とかなたが一緒に暮らしてたら、きっと隠し切れなかったと思う」
忽亡かなた:「……覚えてないもんな、俺」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「姉さん」
忽亡ゆかり:「なあに、かなた」
忽亡かなた:「姉さんが、願ってくれたのか?」
忽亡かなた:「その――魔女に」
忽亡ゆかり:「…………うん」
忽亡かなた:「だよな」
忽亡ゆかり:「私、かなたが居ないと生きていけない」
忽亡かなた:「うん」
忽亡かなた:「そうだな」
忽亡かなた:「今の姉さん、そんな感じだし」
忽亡かなた:「なんかその方がしっくり来る」
忽亡かなた:なんて困ったように笑っている。
忽亡ゆかり:「……ずっと一緒だったの。私の中には、いつもかなたが居て」
忽亡ゆかり:「それが居なくなったら、私は、私じゃなくなる
忽亡かなた:「……大丈夫だよ」
忽亡かなた:「一緒にいるからさ」
忽亡かなた:「俺だって、姉さんと一緒にいたいんだし、それに」
忽亡かなた:「だから」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「……愛してる、し」
忽亡ゆかり:「……それって、家族として?」
忽亡かなた:「えっ?」
忽亡かなた:きょとんと目を丸くする。

乾咲フラン:ゆかり、立ち上がる
忽亡かなた:ゆかりが攻める!
夜高ミツル:いけ~っ!!
糸賀大亮:ウオオ
乾咲フラン:ゆかりが踏み込んだら用心せい

忽亡ゆかり:「かなたが、私の全てなの」
忽亡ゆかり:「私の生きがい、頑張る理由、幸せ、全部、何もかも、かなたなの」
忽亡かなた:「え、っと」
忽亡かなた:ひとしきりあたふたとして、ミルクコーヒーを飲んで落ち着こうとしている。
忽亡ゆかり:「あなたは弟。だから、私はあなたが家族として大事。愛してる」
忽亡かなた:「うん」
忽亡かなた:「うん、そうだ、うん」
忽亡ゆかり:「だけどそれだけじゃない。あなたは私が命を懸けて守りたい我が子みたいな存在で、楽しく居られる友達で、頼りにできる、頼りにしてくれる相棒で、困った時に助け合える同居人で……」
忽亡かなた:「…………」
忽亡ゆかり:「……想うだけで心が暖かくなる、恋人のような存在で……」
忽亡かなた:「こい」
忽亡かなた:「びと……」
忽亡ゆかり:「……私はね、あなたのために頑張る事が、何よりの生きがいだった」
忽亡かなた:「……………それは」
忽亡かなた:「ええと」
忽亡かなた:「あー」
忽亡かなた:「……………」
忽亡かなた:本日何度目かわからない沈黙ののちに。
忽亡かなた:ひときわ長い沈黙の、
忽亡かなた:忽亡かなたが長く長く、深く深く考え込んだのちに。
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「……姉さん」
忽亡かなた:「傷、どんな」
忽亡ゆかり:「……っ、え?」
忽亡かなた:「いや、これもよくないな、ええと」
忽亡かなた:「そう、だから」
忽亡かなた:「……抱きしめてみても」
忽亡かなた:「大丈夫か、って…………」
忽亡ゆかり:「っ……!」
忽亡ゆかり:「うん、うん、うんっ、うんっ、うんっ」
忽亡かなた:「……でっ」
忽亡かなた:声が上ずった。
忽亡かなた:「では、あの、失礼して、…………」
忽亡かなた:こわごわと。
忽亡かなた:ゆっくりとかなたの腕が伸びる。
忽亡かなた:ゆかりに触れて、背を抱き込んで、密着する。
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:鼓動が伝わる。
忽亡かなた:心音が聞こえる。
忽亡かなた:生きているものと、触れ合っている、感触がする。
忽亡ゆかり:「…………」拒まれなかった幸福と、幸福への混乱と、未知へのほんの少しの恐ろしさ。
忽亡ゆかり:とても、笑顔など作れる余裕もなく、とても、気の利いたことを言う余裕などもなく。
忽亡かなた:その抱擁を長く吟味していたが、
忽亡かなた:「あ」
忽亡ゆかり:「う?」
忽亡かなた:「いや」
忽亡かなた:「なんか」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「……………」
忽亡かなた:「……いけるな、って…………」
忽亡かなた:ぼそぼそ。
忽亡かなた:ものすごくぼそぼそと。小さな声で答えるが、
忽亡かなた:聞き逃すには近すぎる。
忽亡ゆかり:「っ、ふはっ」
忽亡ゆかり:思わず溢れる変な笑い。
忽亡かなた:「いや」
忽亡かなた:「いやーー」
忽亡かなた:「あの」
忽亡かなた:「ええ」
忽亡かなた:「考えたこととかは、だから、なくて」
忽亡かなた:「なかったよ!?」
忽亡かなた:「でも、だから、わかんなくて」
忽亡ゆかり:「うん、うんっ、大丈夫」
忽亡かなた:「いや、ええと」
忽亡かなた:「ええと……」
忽亡ゆかり:茶化すようになってしまったのも許して欲しいと思った。自分ももう、本当に限界で。
忽亡かなた:ゆかりの方に顔をうずめている。
忽亡かなた:眼鏡がずりあがる。
忽亡ゆかり:それはきっと、ただの恋人同士では得難いほどの緊張と興奮と背徳だ。そこには一生の重みが乗っていて、自分の生きる意味が賭けられている。
忽亡かなた:「うー…………」
忽亡かなた:耳がすっかり赤い。
忽亡ゆかり:姉としては失格だろう。守ってきたはずの相手に手を出すようなやり方で。誰も自分の決断を讃えはしない。きっと唯一人、とある魔女を除いては。
忽亡ゆかり:「……こんな姉さんでも、受け入れてくれるの?」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「こんな姉さん」
忽亡かなた:「だからだろ……」

忽亡かなた:このまま判定するか!?
忽亡かなた:このまま判定して失敗したらセックスするか!?
糸賀大亮:怪我をおしてセックス
糸賀大亮:まあ死ぬかもしれないしね 心残りはね
忽亡かなた:死ぬなよ!!
忽亡かなた:かなたの叫び GMは殺しにかかる
糸賀大亮:断絶
夜高ミツル:いけ~!ゆかり~!
忽亡かなた:別に気にせずセックスしてもいいけど……
忽亡かなた:背徳、壊れてるし……
夜高ミツル:してもいいじゃん!
忽亡ゆかり:判定がんばります がんばいrます、はんてい
乾咲フラン:1セックスしてから考えてもいいんじゃないですか?
乾咲フラン:試食みたいに言うな
忽亡かなた:ひひひ
忽亡ゆかり:わりかし手遅れですよね?

GM:では
GM:そろそろ背徳の修復判定をしましょうか。
GM:退路『背徳:忽亡かなた』と日常『背徳:忽亡かなたへの衝動』ですね。
GM:興奮剤2コあるから使っていいですよ。
忽亡ゆかり:使います!
GM:がんばってください

忽亡ゆかり:2D6+2>=8 (判定:捕らえる)
BloodMoon : (2D6+2>=8) → 8[3,5]+2 → 10 → 成功

忽亡ゆかり:捕らえた
GM:捕らえた……
忽亡ゆかり:退路、捕らえました
GM:日常のほうも
GM:衝動チャレンジ!

忽亡ゆかり:2D6+2>=7 (判定:蹴る)
BloodMoon : (2D6+2>=7) → 6[2,4]+2 → 8 → 成功

忽亡ゆかり:蹴りました
忽亡ゆかり:衝動、蹴りました
GM:衝動を蹴った!!!

糸賀大亮:蹴られた
夜高ミツル:蹴った
糸賀大亮:良識~(告白はしている)
乾咲フラン:勝った
忽亡かなた:なんか必ずしもセックスしなきゃならない感じの破壊じゃなかったからな。
糸賀大亮:破壊手がプルサティラでよかったという説

GM:では
GM:背徳が修復されたゆかりさんの答えをどうぞ。

忽亡ゆかり:「……あのね」
忽亡ゆかり:「いくら時間をかけてもいいから、かなたもゆっくり考えて欲しいの」
忽亡かなた:「…………ん」
忽亡かなた:茹だった頭が小さく頷く。
忽亡ゆかり:「自分が本当にしたい事とか、これから幸せになる生き方とか」
忽亡ゆかり:「私に、どうしてほしいかとか」ミツルとの約束を思い出す。それはもしかしたら、狩人をやめるような選択肢なのかもしれないが。
忽亡かなた:「うん。……うん」
忽亡ゆかり:「明日、決着をつけてくる。そしたら多分、少しの間は休めると思う」
忽亡かなた:「……決着?」
忽亡かなた:少し身体を離して、ゆかりの顔を見る。
忽亡かなた:その頬が赤らんでいる。
忽亡ゆかり:「うん。あの時の狩人さんたちとしてる仕事」
忽亡ゆかり:「……私の家族を殺したやつも関わってる。狩人としての私にとっては案件の大詰めで、忽亡としての私にとっては過去の精算で」
忽亡かなた:「……!」
忽亡ゆかり:「心配だと思うけど、もうちょっとだけ待ってて欲しい」
忽亡ゆかり:プルサティラが言った言葉を信じてみようと思った。弟の決断を信じてみようと思った。
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「……待つよ」
忽亡かなた:「待つし、信じるし、待つけど」
忽亡かなた:「でも、心配はしてるからな」
忽亡かなた:「本当に」
忽亡ゆかり:「うん。ありがとう」
忽亡ゆかり:「……今日は、一緒のベッドで寝てもいい?」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「……いいよ」
忽亡かなた:「一緒に寝よう」
忽亡かなた:「それで――それで、だ」
忽亡かなた:「色々わかることも、あるかもしれないし」
忽亡ゆかり:「……うん」
GM:温もりがある。触れている。そこにいる。言葉を交わせる。
GM:当たり前だったはずで、当たり前ではなかったことを思い知らされて、
GM:戻って来た今だって、当たり前としてはとても受け止められない。
GM:だから噛み締める。
GM:ここにその存在のあることを。
GM:自分の戦う理由が、原動力が、確かに存在していること。
GM:それこそが狩人に力を与えるのだから。

結果フェイズ:乾咲フラン

GM:家に連れ帰ったところで、碧は目を覚まします。

真城碧:ぼんやりと瞼を上げて、周囲を見回している。
真城碧:「え……」
真城碧:「…………」
乾咲フラン:お姫様抱っこなので気づいてしまう。
真城碧:「あれ……?」
真城碧:お姫様抱っこをされながら首を傾げて、
真城碧:すぐ近くのフランの顔を見上げた。
乾咲フラン:「……」いっそ目を覚まさないでいてくれれば、そう思わずにはいられない。
真城碧:「……フラン?」
真城碧:「え、あれ……私……」
乾咲フラン:「おはよう。」出会った当初とは髪の色は違うかもしれないが、美しさで判別可能だろう。

夜高ミツル:美しさで
糸賀大亮:美しさで判別可能
真城碧:美しさで
夜高ミツル:すごい文章
糸賀大亮:感動しちゃった
真城碧:シリアス未亡人なのに文章がすごいよ

真城碧:「おはよう」
真城碧:「…………」
真城碧:まじまじとフランを見つめている。
乾咲フラン:「いろいろあって……」一度溜息を吐いて 「本当にいろいろあって……今、とりあえずマシ……君をここに保護することになったんだ。」
真城碧:「うん……」
真城碧:「うん?」
真城碧:「保護……えっと、私、学校から……」
真城碧:「……ええと…………」
真城碧:混乱している様子だが。
真城碧:「……まあ、でも、そっか」
真城碧:そっとフランの胸に頭を寄せる。
真城碧:「フランのとこなら、安心ね」
乾咲フラン:「……」 「ああ、安心してくれ。」
真城碧:「なんか、今日はすごく光ってるのね」
真城碧:「ちょっと雰囲気変わった?」
真城碧:「もともとすごくきれいだったけど、もっときれいになってる」
乾咲フラン:「ああ、ワケあって光るようになってしまって……」美メイドたちが扉を開ける。
真城碧:「なにそれ!」
真城碧:「本当にいろいろあったんだ」ころころと笑う。
野嶋優香:扉を開ける美メイドの中には、野嶋優香の姿もあった。
野嶋優香:化粧の下に表情を押し隠して、彼女は二人を迎える。
乾咲フラン:「……」野嶋優香からすれば大口を叩いた人間が失った人間を抱いて仲睦まじく帰ってきたといったところか。フランは長いまつ毛を伏せ……視線をするりと逃した。
乾咲フラン:「ああ、どうしようか、どこから話そうか……お茶でも飲むかい。いや、今は実は明け方なんだが眠かったりしないか?」
真城碧:「ううん」
真城碧:「なんだか全然眠くないんだ」
真城碧:「っていうか起きたばっかりだしね?」
真城碧:碧はその様子に気付かずに、嬉しそうにフランに抱かれたままでいる。
真城碧:そう。
乾咲フラン:「そっか、じゃあ……ちょっとお茶にしようか。」ゆっくりと歩いていく。
真城碧:とても嬉しそうに、フランの胸に収まっている。
真城碧:「うん」
真城碧:「あ、でも」
真城碧:「あのね」
真城碧:「フラン」
真城碧:「私、その前にあなたに伝えたいことがあって」
乾咲フラン:「なんだい。」
真城碧:碧が笑っている。
真城碧:フランに笑いかけて、そっとその胸に頬を寄せながら、
真城碧:「――私、あなたのことが好きよ」
真城碧:碧が決して言わなかった言葉を口にする。
真城碧:違う。好意を伝えられたことはあった。
真城碧:けれど、きっと、今のこれは。
真城碧:「好きなの」
真城碧:「……ずっと、好きだった」
乾咲フラン:「……」思い出されるのは、プルサティラが大亮に言った言葉。
乾咲フラン:(そうしてあなたのものになる皆川彩花はね)
乾咲フラン:(あなたのこと、好きなんだよ)
GM:プルサティラはこうも言っていた。
プルサティラ:(誰かが真城碧さんを願い、蘇らせても)
プルサティラ:(彼女の存在は、どこか歪んだ形で蘇って、そして)
プルサティラ:(――その命も、長くは保たない)
乾咲フラン:肩が震える。小さい忍び笑いから、優雅な笑い声に。
乾咲フラン:「そっか、そっか……」続く言葉に首を締められたように言葉が詰まり、崩れて霧散する。
真城碧:「なんで急に、勇気が出たんだろうね?」
真城碧:「ずっと言えずにいたのにな」
真城碧:「あなたが私を見つけてくれて」
真城碧:「手を引いてくれて」
真城碧:「色んなことを、教えてくれて」
真城碧:「それがとっても幸せで、広がった世界がは前よりもずっと輝いて」
真城碧:「美しく、見えて」
真城碧:「それで」
真城碧:「そうして私の手を引いてくれるあなたが、私の目には、誰よりも美しくて――」
真城碧:碧は夢見心地に語る。
真城碧:愛おしい男と共にあることを、至上の幸福として噛み締めている。
乾咲フラン:自分の醜い願望の結実を腕に抱いたまま、小さな客間にたどり着く。
乾咲フラン:あまりにも都合のいい夢を、自分の愛した女をゆっくりと下ろして立たせてやる。

忽亡ゆかり:告白されるほど惨めになる構図すごいな…………
乾咲フラン:最高だな
糸賀大亮:最高になるPL ズタズタになる美
真城碧:ちなみに修復判定なんですが
真城碧:成功したらその手で殺せるけど失敗したら目の前で朽ちる感じになると思います。
乾咲フラン:ウケる
乾咲フラン:ウケるな
糸賀大亮:思わず笑いが零れる

真城碧:少し名残り惜しそうに床に立つ。
真城碧:代わりに碧は、フランの手のひらを取ろうとする。

乾咲フラン:「ありがとう、うれしいよ。」今まで何人の女性にこうやって返しただろう。手を取られるままに微笑んで。
真城碧:「うん。……うん」
真城碧:碧の瞳は期待に満ちていた。
真城碧:あなたへの恋慕を隠しもせずに、そこにいる。
乾咲フラン:「とても、とても嬉しいよ……」優美に笑う。「私も君に、色々と言わなくてはいけないことがあるんだ。さ、座って」
乾咲フラン:手をゆっくりと引いて、席にエスコートする。
真城碧:「色々とって何?」
真城碧:「今ここで言うことって、もっとおっきなこと」
真城碧:「ひとつあるんじゃない?」
真城碧:と、エスコートをされながら。
真城碧:じっとフランを見つめている。
乾咲フラン:「君への答えだよね。……わかっている、わかっているとも。」
乾咲フラン:「ええと、でも、情けなくてすまないんだけど……まだ冷静になりきれてなくて、ほんの少しだけ、落ち着かせてほしい……」対面に座りながら。
真城碧:「あら」
真城碧:「そんなに驚いてたの?」
真城碧:「全然びっくりしてくれないから、こっちが驚いてたくらいなのに」
乾咲フラン:胸中は――この先に自分がすべき事への思いで酷く傷ついている。
乾咲フラン:「ふふ、今がちょっと大変な仕事の後でなければ飛び上がっていたよ。」
真城碧:「私みたいなの、全然相手にされてないのかなって」
真城碧:「……ちょっと、そう思ってたよ、さっき」
真城碧:「……実は」
乾咲フラン:「そんなこと……」本音を零しそうになる。偽物相手に。
乾咲フラン:口を開くその前に、美メイドがフルーツアイスティーのポットを持ってやってくる。
真城碧:「っていうか、仕事?」
真城碧:「今……今、何時、ええと」時計を確認している。
真城碧:「えっ」
真城碧:「こんな時間!?」
真城碧:「に、仕事のあと? あ、でもそっか」
真城碧:「フラン、けっこういろいろ……そういう……大変な……」
乾咲フラン:美メイドは優雅に会釈すると、二人分のグラスに鮮やかな色の紅茶を注いで前に置く。
真城碧:注がれる紅茶の色を、碧は上機嫌に眺めている。
真城碧:あなたはその顔を、
真城碧:薔薇色の頬を見つめながら。

GM:修復判定をしましょうか。
GM:『背徳:真城碧』。地位ですね。

乾咲フラン:2D6>=7 (判定:伝える)
BloodMoon : (2D6>=7) → 7[3,4] → 7 → 成功

乾咲フラン:フフッ
GM:はい。
GM:乾咲フランの幸福『背徳:真城碧』は修復されました。
GM:伝えるんですね。
乾咲フラン:伝えてしまいますね

真城碧:「あ、これも新しいカップだ」
真城碧:「いつも素敵なの出てくるから、けっこう楽しみにしてるんだよね」
真城碧:髪を耳にかけながら、碧は朗らかに語っている。
乾咲フラン:「そうだろう。君と最後に会ってから……もう10年以上経ったからね。」
真城碧:「へえ――」
真城碧:「へ、えっ?」
真城碧:フランの顔を見る。
乾咲フラン:「私の仕事は、あれから増えて……今は超常の者を退治する仕事をしているんだ。」その驚きを受け流しながら、滔々と語る。
真城碧:「???」
真城碧:「えっと、……何の話?」
乾咲フラン:「人の幸せを壊す存在、歪めて叶える存在と……人類の敵と、私は戦っている。本当の真城碧は、5年前に死んだんだ。吸血鬼になって、死んだんだ。」
真城碧:「…………」
真城碧:ぽかんとしたまま気もそぞろに、
真城碧:とりあえず紅茶を飲んでみた。
乾咲フラン:「ごめんね、こんな事言ったって……わからないよね。」
真城碧:「…………」
真城碧:「……いつも通りの味だわ」
真城碧:「あなたは、なんだか……とんでもないことを言っているのに」
乾咲フラン:自分も一口、何も入っていないフルーツティーを飲む。
乾咲フラン:碧のグラスにだけ、少しずつ意識が滑り落ちるように眠らせるための薬が入っている――。
真城碧:それを飲みながら頭を押さえて、顔をしかめている。
真城碧:「…………」
乾咲フラン:「そして君の今の姿は、息子ができる前の姿だ。」
真城碧:「……でも、えっと」
真城碧:「えっ」
真城碧:「息子?」
乾咲フラン:「本当の君……未来と言ったほうがいいかな、君には高校三年生になる息子がいてね。」
真城碧:「あなた、との……?」
乾咲フラン:やわらかく首を横に振る。
真城碧:「…………」
真城碧:「……よく、わからないけど」
真城碧:「でも、私」
真城碧:「私は、答え、もらってないよ」
真城碧:「もら、って、…………」
真城碧:少しずつ、呂律が回らなくなっていく。
乾咲フラン:「私は……私は、」言葉を区切らせて、切り替える。「大丈夫、少しだけ、眠って……」
真城碧:碧の頭が重たげに下がっていく。
真城碧:「……わた、し」
真城碧:「わたしは、だって」
真城碧:「フラン」
真城碧:「あなたのことが」
乾咲フラン:碧の横に近寄って跪き、柔らかく手を取る。
真城碧:握り返される。その力が弱い。
真城碧:「好き、なのに――」
乾咲フラン:「少し眠って、朝日が登ったらまた話をしよう――」その時は来ないと解っている。
真城碧:「ん、う――」
真城碧:「……すき」
真城碧:「すき、よ」
真城碧:「フラン……」

乾咲フラン:その言葉が、何よりも望んだその言葉が、今はあまりにも虚しい。
真城碧:碧の瞼が落ちる。
真城碧:小さな声は、囁き声は、最後まであなたを呼んで、
真城碧:握り返した手からも力が抜けていく。
真城碧:それなのに、まだ、あたたかい。
真城碧:生きている。この真城碧は。
乾咲フラン:「おやすみ、碧……」しばらく、ずっと。どれくらい経ったか――碧の寝息が聞こえて少しの間、手を握っていた。
真城碧:静かに胸が上下している。
真城碧:握りしめられた指先の、空色のネイル。
真城碧:フォゲットミーノットの髪と同じ色。
乾咲フラン:ゆっくりと手を離すと、携帯電話を取り出して狩人の知り合い――碧を運んでいる間にすべきことを決断し、連絡していた相手だ――を呼び出す。
真城碧:深い眠りに落ちた碧は、新たな来客に気付くこともない。
真城碧:その横顔はどこまでも安らかだ。
乾咲フラン:隣の部屋に待機していたらしい狩人の知り合いは、気まずそうな顔をしながらも部屋にずかずかと入り、ポットの横に乱暴にアタッシュケースを置いて開く。
乾咲フラン:中身は小瓶と注射器。
狩人の男:手早く小瓶の蓋を開け注射器で中身を吸い取るとフランに軽々しく差し出した。「使い方はわかるな?見える血管に刺せばイイんで。アルコール消毒いる?いらねえか。」
乾咲フラン:「ありがとう。後は私がやるから、外で。」
乾咲フラン:フランの剣呑な雰囲気に軽口を叩きながら男は出ていく――雑多な物と、自分と、碧だけが残された。
乾咲フラン:二人分の呼吸の音がする。
真城碧:何も知らずに碧は眠り続けている。
真城碧:静かな客間では、その音もよく聞こえる。
乾咲フラン:注射器の中の、無色透明の死を、登ってきた朝日に翳して確かめる。
乾咲フラン:白い首を見る。
乾咲フラン:近づくと指先でそっと撫で、動脈の位置を探る。
真城碧:無防備な細い首。
真城碧:抵抗もなく、あなたに身体を預ける碧の肢体。
乾咲フラン:もう一度深呼吸をして、針をそっと沈める。
真城碧:柔らかい肌に容易く針が入る。
乾咲フラン:親指に力を込める。親指で押し込んでいく、たったそれだけの事で全てが終わってしまう――心臓が砕けそうなほどに痛む。
真城碧:まだ腕の中の碧は呼吸をしている。
真城碧:暖かさがある。
真城碧:あなたへの思慕を告白した唇は薄く開かれている。
乾咲フラン:毒は流れゆき、碧の鼓動をゆっくりと止めていく。ゆっくり、ゆっくりと。
真城碧:その呼吸が、
真城碧:少しずつ、薄れていく。
乾咲フラン:「碧……碧、私は、私も碧を愛していて……」
真城碧:か細くなっていく。

乾咲フラン:「でも、碧……本当の碧は、私を好きだなんて、言わなかったんだよ……」
乾咲フラン:手を握り跪いたまま、乾咲フランは静かに泣いた。
乾咲フラン:朝日が部屋を満たす。
GM:射し込む日差しが部屋を温めていく。
GM:一方で碧の身体は二度と温められることはない。
GM:あなたが愛し、あなたが蘇らせ、
GM:あなたを愛していると告げた女。
GM:その命の灯火は、あなたの手によって掻き消された。

結果フェイズ:糸賀大亮

GM:どこがいいですか?
GM:帰り道にします?
GM:連れ込む?
糸賀大亮:死
糸賀大亮:死ぬな
GM:死ぬな
糸賀大亮:帰り道
糸賀大亮:帰り道?
GM:家にとりあえず……では?
糸賀大亮:俺はいったいどこに帰るんだ……?
GM:他にどこに連れて行くんですか?
糸賀大亮:クラブに連絡してもどうしようもないか。
GM:クラブに置いていくのと家に置いていくの
GM:どっちがいいと判断します?
GM:彩花、クラブに知り合いとか……ないですけど……当然……
糸賀大亮:そうなんだよな。彩花ちゃんちに送るにしても、
糸賀大亮:時間が……
乾咲フラン:事件ですよ
GM:事件だよな
糸賀大亮:俺んちに連れてくとあとで一人になってしまうし……
GM:いいだろそれくらい
GM:いいだろ!
GM:ちょっとくらいいいだろ!
糸賀大亮:NPCを一人にするの心配なんだよ!(別にほかにいくらNPCがいても不安)
GM:じゃあ迷ってる途中にしてあげるよ
GM:とりあえず公園出てはみたもののでいいですか?
糸賀大亮:そうしよう。
GM:で、どうやって運ぶんですか。
糸賀大亮:横抱きにして……
GM:はい。
糸賀大亮:これはお姫様抱っこという言葉を意図的に避けました。
GM:ギャハハ
乾咲フラン:ニコ…
糸賀大亮:やってることは一緒なんだよな。両手が塞がるな。

皆川彩花:では、大亮の腕に抱かれている彩花が。
皆川彩花:静かな寝息を立てていた彩花が。
糸賀大亮:はい。
皆川彩花:ふっと目をさまします。
皆川彩花:ぱち、ぱち、と目を瞬いてから、
糸賀大亮:「……」
糸賀大亮:視線を落とす。
皆川彩花:大亮を見上げてへにゃっと笑う。

皆川彩花:「えへへ」
皆川彩花:「大亮さんだ」
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:咄嗟に緊張していたのが、笑われて。目を瞬かせて。
糸賀大亮:「ああ…………」
皆川彩花:彩花は腕を伸ばして、大亮の首の裏に手を回します。
皆川彩花:「おはよう、大亮さん」
糸賀大亮:えっ。
糸賀大亮:「えっ」
糸賀大亮:「お、おはよう……」
皆川彩花:「おはようございます~」二回目。
皆川彩花:「ふふ」
皆川彩花:「ふふっふふふふふ」
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:何をどこから……どう確認しようか……
皆川彩花:「これからどこに行くんですか?」
皆川彩花:「どうしますか?」
糸賀大亮:分からないまま、含み笑いを浮かべられて首に腕を回されています……
皆川彩花:首の裏に彩花の指の感触。
糸賀大亮:「…………彩花ちゃん」
皆川彩花:「はい」
糸賀大亮:「君は……ええと……」
糸賀大亮:「待ってくれ……とりあえず」
糸賀大亮:「体調は大丈夫か」
皆川彩花:「覚えてまーす」
皆川彩花:にこっと満面の笑顔。
糸賀大亮:「…………」
皆川彩花:「大丈夫でーす」
皆川彩花:「えへへへへ」
皆川彩花:ご機嫌。
糸賀大亮:「下ろそう」
皆川彩花:「えー」
皆川彩花:ご機嫌が曇った。
糸賀大亮:分かるよ。
皆川彩花:大亮さんはわかってないのでは?
糸賀大亮:大亮もさすがにそうだろうなと思ってます。
皆川彩花:そっかあ。
糸賀大亮:「下ろしていいか」
皆川彩花:「だめっていったら?」
糸賀大亮:「……困る……」
皆川彩花:「…………」
糸賀大亮:「…………」
皆川彩花:大亮の胸に頬を寄せる。
皆川彩花:「……家、連れてって」
皆川彩花:「そこで下ろしてくれるなら、いいよ」
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:困った。
皆川彩花:上目遣いに大亮を見ます。
皆川彩花:「……それに」
皆川彩花:「つけないかも、しれないし……」
皆川彩花:とかぼそぼそと言っている。
糸賀大亮:えっ、家に?
皆川彩花:どうなんでしょうね。
皆川彩花:「あのね」
皆川彩花:「嘘っていうのは、まあ」
皆川彩花:「既にちょっと分かってるとは、思うんだけど……」
皆川彩花:ぷらぷらとつま先を揺らしている。プルサティラがそうしていたように。
糸賀大亮:「……ああ」
皆川彩花:「プルサティラの頃の記憶があったら、今までの私じゃないよね」
糸賀大亮:「そうだな」
皆川彩花:「変わらない時間には、ならないよね」
皆川彩花:「プルサティラはあそこで死んで、私はプルサティラではないけど」
皆川彩花:「でも、覚えてたら違うもん」
糸賀大亮:「ありなんだな、と思った」
皆川彩花:「ありなんです~」
皆川彩花:「実は、戸籍とかも戻ってないでしてね」
糸賀大亮:「待ってくれ……」
皆川彩花:「お母さんもお父さんも、私のこと覚えてないし、学校の友達なんかもね」
糸賀大亮:「それはいくら何でも……」
皆川彩花:「覚えてるのは、大亮さんだけ~」
皆川彩花:「あ、あと狩人の皆さんとさっくんもか」

乾咲フラン:>「待ってくれ……」
乾咲フラン:クソほど笑ってる
皆川彩花:最高だよ
皆川彩花:最高の気分だ
糸賀大亮:いくら何でも捨て身特攻過ぎないか?!!!
皆川彩花:乙女やぞ!
乾咲フラン:よかったね大亮さんはほぼ本物を手に入れて

糸賀大亮:「…………」
皆川彩花:「びっくりしましたか?」
糸賀大亮:「…………どちらかというと、愕然としている」
皆川彩花:「うーん」
糸賀大亮:「もしくは、呆れている」
糸賀大亮:なるほど…………と呻いています。
皆川彩花:「えー」
皆川彩花:しゅん。
糸賀大亮:「よくない……」
皆川彩花:「でも、でもね」
皆川彩花:気を取り直して、
皆川彩花:「それじゃ公約違反でしょう」
糸賀大亮:はい……
皆川彩花:「今ここにいる皆川彩花は」
皆川彩花:「魔女ではないし、もう魔女にはなれないんだけど」
皆川彩花:「ひとつだけ、あなたのための特別な機能を備えているのです」
皆川彩花:胸を張る。えへんと。
糸賀大亮:「……何だろうか」
皆川彩花:「それは」
皆川彩花:「それはね」
皆川彩花:悪戯を打ち明けるような囁き声。
皆川彩花:「あなたに望まれなかったら、今晩限りで消える機能です」
糸賀大亮:「…………」
皆川彩花:「あなたのための、彩花です」
皆川彩花:「なので」
皆川彩花:「あなたが私を望まない」
皆川彩花:「あなたのものにならない私なら」
皆川彩花:「もう、あなたに負わせることもない」
糸賀大亮:「…………プルサティラ…………」
皆川彩花:「この私は彩花ですよう~」
糸賀大亮:呻いた。
皆川彩花:嬉しそうにしている。

皆川彩花:まだしなくてもいいけど、判定の話をしましょう。
糸賀大亮:はい……
皆川彩花:背徳の修復判定に成功したら、この皆川彩花は消えます。
糸賀大亮:はい?!
皆川彩花:望んだのを良くなかったと認めることになりますので。
皆川彩花:本来は背徳が叶ったものは戻らないのですが、プルサティラが気を利かせた特別機能です。
皆川彩花:失敗した場合は、4話で皆川彩花を「幸福」として取っていただきます。
糸賀大亮:気の利かせ方!
皆川彩花:ではそのつもりで続けていきましょうか。

夜高ミツル:邪悪じゃん
忽亡ゆかり:邪悪すぎる
忽亡ゆかり:こんなことある?
乾咲フラン:GMのほうが邪悪だった
乾咲フラン:一瞬で
乾咲フラン:地獄
      開始!

皆川彩花:でも逃げるの判定に成功したらそうじゃないですか?
忽亡ゆかり:失敗してしまえばいいのでは?
皆川彩花:うん!
皆川彩花:激情もあるね!
忽亡ゆかり:こんなことある?

糸賀大亮:「望むって言うのは」
皆川彩花:「え、わからない?」
皆川彩花:首を傾げる。
皆川彩花:「あれだけ私、私じゃないけど、私じゃないけど」
皆川彩花:「言ったのに……」
皆川彩花:「もう一度言いましょうか?」
糸賀大亮:「よくない…………」
糸賀大亮:項垂れている。
皆川彩花:その顔をじっと見つめています。
皆川彩花:至近距離で。
糸賀大亮:だからつまり、魔女というのは。
糸賀大亮:世界観が………………
糸賀大亮:世界観が違うんだよな……
皆川彩花:「今ここにいるのは~皆川彩花ですので~」
皆川彩花:主張しています。
糸賀大亮:「…………」
皆川彩花:「だから」
皆川彩花:「だめだったら、だめでいいんだよ」
皆川彩花:「恨まないよ」
皆川彩花:「無理させたいわけじゃないもんね」
糸賀大亮:「帰ってきてほしいんだよ……」
皆川彩花:「うん」
糸賀大亮:「だから、無理とか」
糸賀大亮:「無理……あのな……」
糸賀大亮:「本当に……」
皆川彩花:「?」
皆川彩花:にこにこと聞いています。
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:「分かった」
皆川彩花:「えっ」
糸賀大亮:「分かった。分かったよ」
皆川彩花:「えっ、えっ」

皆川彩花:別にいいんですよ 好きにしてくれて……
皆川彩花:乙女の捨て身特攻!
糸賀大亮:捨て身特攻すぎるんだよ!!!
皆川彩花:そうでもしないと逃げるじゃん! そうでもしないと逃げるじゃん!
糸賀大亮:そりゃ逃げるけど……よくないよ!!!!
皆川彩花:逃げるな!!
忽亡ゆかり:自分のやってきた信念を曲げる最後のチャンスかもしれない
糸賀大亮:笑いが止まらなくなってままならなくなってる。
乾咲フラン:でもマジレスすると人間性を得るチャンスですよ
乾咲フラン:得た彩花ちゃんを目の前で否定するなんてそんな狩人ロボなこと…
皆川彩花:愛した女を殺した後の男はそう言った。
忽亡ゆかり:ひでえ返しだ
乾咲フラン:息子を託された事だけを拠り所に幻想を否定しました…
皆川彩花:えらいね 美しいね
忽亡ゆかり:こっちはちゃんと弟育んでますよ どうです 案外悪くない人生に見えませんか

糸賀大亮:判定しましょうか。
皆川彩花:はい。
糸賀大亮:分かりました。考えないから修復判定します。
皆川彩花:どうぞ!!

糸賀大亮:2D6>=16 (判定:考えない)
BloodMoon : (2D6>=16) → 4[1,3] → 4 → 失敗

皆川彩花:はい。
糸賀大亮:はい。
皆川彩花:では糸賀大亮の幸福『背徳:皆川彩花』は修復されませんでした。
糸賀大亮:はい…………

皆川彩花:ヒャーーッハハハハハ
糸賀大亮:クソが!!!!!!!
夜高ミツル:乙女大勝利だ
忽亡ゆかり:ゲラゲラゲラゲラ
忽亡ゆかり:考えないから判定、秀逸だ
皆川彩花:うれしーーーーーーー!!
糸賀大亮:こんなことある!?!?!???
夜高ミツル:狩人ロボからの脱却!
乾咲フラン:ウッフフ

糸賀大亮:「言っておくが」
皆川彩花:「うん?」
糸賀大亮:「部屋は、汚いからな」
皆川彩花:「!!」
皆川彩花:瞠目ののちに、にこっと笑う。
糸賀大亮:帰ろう……歩き出します。
皆川彩花:「大丈夫」
皆川彩花:「大丈夫です」
皆川彩花:「そんなのは期待してませんので!」
糸賀大亮:「そう…………」
皆川彩花:にこにことその腕に身体を預けていたが。
皆川彩花:「あっ」
皆川彩花:ふと何か思い出したような声を漏らす。
糸賀大亮:「ん」
皆川彩花:「いや、あのね」
皆川彩花:「プルサティラは私じゃなくてね、記憶はあるけどね、私じゃないので」
皆川彩花:「だからこれは私の不手際じゃないんですが……」
皆川彩花:もにょもにょと言い訳を始めている。
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:そういう言い訳の仕方にしちゃうんだな……と思っている。
皆川彩花:「……ミツルさんにもねえ」
皆川彩花:「嘘ついたの」
皆川彩花:「そういえば、バラすの忘れてたなって……」
糸賀大亮:「……あとで分かることじゃないのか」
皆川彩花:「どうだろ……どうだろうな……」
皆川彩花:「わかるかな……」
皆川彩花:「ええと……」
皆川彩花:「あのね」
皆川彩花:こしょこしょと。
糸賀大亮:「……」
皆川彩花:「別にさっくん、血を吸っても魅了とかそういうの」
皆川彩花:「実はそんなないんだよね……」
糸賀大亮:「………」
皆川彩花:「ちょっと? ちょっとそういう?」
皆川彩花:「そういう気には……なったり……あの……そういう……」
皆川彩花:「そういうのは……そういう……」もしょもしょ
皆川彩花:「でも学校じゃどっちもそれどころじゃなかったからこう……事なきを……」

夜高ミツル:えっ!?
夜高ミツル:そうなのか……そうなんだ……
皆川彩花:言われても違和感ないくらい好きだったのかということ
夜高ミツル:はは……
忽亡ゆかり:自分の意思でプロポーズをなあ
皆川彩花:実際PL側にそういうつもりがない以上あんまりフェアじゃないからね
皆川彩花:ブラフですね あれは
皆川彩花:あれで揺らぐようならだめなので……
夜高ミツル:フランさん周りとかはちゃんと伏線あったけど、こっちは結構急に言われたもんな~~なるほどな~~
乾咲フラン:なるほどな~~

糸賀大亮:「…………君は」
皆川彩花:「は、はい……」
糸賀大亮:「しっかりした女の子で」
皆川彩花:しょぼ……
糸賀大亮:「今回のことについて考え抜いて選択して」
糸賀大亮:「こうやって、帰ってくるまで果たして」
皆川彩花:聞いています。
糸賀大亮:「……大したものだと思っているが」
糸賀大亮:「言いたいことはたくさんあるぞ…………」
皆川彩花:「えっ」
皆川彩花:ちょっと嬉しそうにします。
皆川彩花:ちょっとじゃないですね。
皆川彩花:かなり嬉しそうにします。
糸賀大亮:何でそこで嬉しそうな顔を?
皆川彩花:「た、たとえば、どういう!」
糸賀大亮:「…………帰ってから言う」
糸賀大亮:とにかく帰って…………帰って、それから?
糸賀大亮:気が遠くなってきた……
皆川彩花:「じゃあ」
皆川彩花:「帰ってから、いっぱいお話ができますね」
糸賀大亮:「ああ……そうなるな」
皆川彩花:「あ、でも、明日ね」
皆川彩花:「明日は大変になるからね」
皆川彩花:「私はもう何の役にも立たない皆川彩花だし」
皆川彩花:「プルサティラの花だって、一晩しかもたなくてね」
皆川彩花:「怪我とかは全部治るのも一時的で、終わったら戻ってくるので!」
糸賀大亮:「……」
糸賀大亮:「十分だろう。プルサティラが……やったこととしては」
皆川彩花:「うん……」
皆川彩花:「そのためにいっぱいためこんでましたので……」
糸賀大亮:「あとは、何とかする」
皆川彩花:「ん」
皆川彩花:「……うん」
皆川彩花:「……ちゃんと、倒してあげてね」
糸賀大亮:「ああ。ちゃんと……生きて帰ってくる」
皆川彩花:「はい」
皆川彩花:「生きて帰ってこないと、だめです」
皆川彩花:「明日になったらもうクーリングオフ切れてますので!」
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:また渋い顔になった。
皆川彩花:「?」
皆川彩花:笑顔で首を傾げた。
糸賀大亮:よくないと思うんだよな……
糸賀大亮:とはいえそれを言うなら、プルサティラの手を取って、彼女を生き返らせたところからそうで。
糸賀大亮:そう言うことで……
糸賀大亮:「何でもないよ、彩花ちゃん……」
糸賀大亮:ため息をつくように言った。
皆川彩花:「私はいっぱいありますよう」
皆川彩花:「でも、私は待つのは大得意なので」
皆川彩花:「全部終わるまでちゃんと待ってます」
皆川彩花:「大亮さんのおうちで、どっしり構えて待ってますので!」
皆川彩花:「あ、掃除してよっか?」
糸賀大亮:「お構いなく……」
糸賀大亮:それは招かれた方が言うセリフだ。
GM:魔女に願い、得られたものを腕に抱く。
GM:狩人の誓いは挫かれた、とも言えるかもしれない。
GM:けれどあるいはそれこそが狩人に必要なもの。
GM:手を伸ばすこと。諦めないこと。
GM:大切なものを、大切なものとして受け止めること。
GM:それと、ちょっとくらいのずるだとか。
GM:長い人生を戦っていくには、そういうものも、必要なのだ。

夜高ミツル:女子高生をお姫様抱っこしながら早朝の道を歩く大亮さん
乾咲フラン:元カノもびっくりだよ
忽亡ゆかり:狩人の再起失敗を皆で祝うという不思議な流れとなって参りました
GM:大亮さんは逆に失敗が必要なプロセスだなって思って……
GM:1話で成功した結果ああなってるので……
夜高ミツル:生きて帰る理由ができたの本当によかったなあって思う
糸賀大亮:3話開始時点で「4話の背徳と幸福どうすればいいんだ……?」って思ってたので
糸賀大亮:よかったと思います(ねじ切れる)
忽亡ゆかり:コングラッチュレーション!コングラッチュレーション!(パチ・・パチ・・)
糸賀大亮:嘘だろ……

結果フェイズ:夜高ミツル

GM:魔女が息を引き取り、フォゲットミーノットは消え、狩人たちの去った公園。
真城朔:真城朔はそこで膝をつく。
真城朔:顔を俯けて、なんの言葉も発することなく、ただそこにへたり込んでいる。
夜高ミツル:しゃがんで目線を合わせる。
夜高ミツル:目線は合わないな……。
真城朔:地面を見ていますね。
真城朔:視線の高さは合えど、目は合わない。
真城朔:むしろ真城はそれを背けすらする。
夜高ミツル:「……真城」
真城朔:「……笑いに来たかよ」
夜高ミツル:「んな訳あるか」
真城朔:「じゃあ何だよ」
真城朔:震える声を、絞るように吐き出す。
夜高ミツル:「……話しにきたんだよ」
真城朔:「話すことなんかあるか」
真城朔:「てか、…………」
夜高ミツル:「俺はある」
真城朔:「いや」
真城朔:「こうなるのが、当然、か……」
真城朔:「最初から」
夜高ミツル:「今まで言えなかったこととか、聞けなかったこととか」
夜高ミツル:「…………」
真城朔:「どうせ、だって」
真城朔:「…………」
真城朔:話が合わない。
夜高ミツル:「プルサティラはずっと、お前の願いを叶えようとしてた」
夜高ミツル:「……俺が止めたんだ」
真城朔:黙り込んでいる。
夜高ミツル:「お前に吸血鬼になってほしくなかった、生きててほしかったから」
夜高ミツル:「真城が今までどんな思いで、何をしてきたか、知ってて……」
夜高ミツル:「……知った上で、俺はそれを止めた」
真城朔:「はっ」
真城朔:「まあそうだよな」
真城朔:「それくらいはされる」
真城朔:「されて、正しい」
真城朔:「全部知ってんなら、分かってんだろ」
夜高ミツル:「……正しいもんか」
夜高ミツル:「俺は真城を罰したくてそうしたんじゃない」
夜高ミツル:「真城」
真城朔:「あんなに人が死んだのに?」
夜高ミツル:「ああ」
真城朔:「糸賀さんと忽亡さんのさ」
真城朔:「仲間とか家族とか殺してんのも知ってるよな?」
夜高ミツル:「……それも知ってる」
真城朔:「紅谷も」
真城朔:「紅谷だけじゃなくて、だから」
夜高ミツル:「知ってるよ」
夜高ミツル:「分かってる」
真城朔:「……じゃあ、なんでだよ」
真城朔:「おかしいだろ」
真城朔:「道理が合わない」
夜高ミツル:「……そうかもな」
真城朔:「生きて苦しめって方がまだわかるし」
真城朔:「……忽亡さんとか、それこそ」
真城朔:「いくらでも俺のこと詰れるだろ」
真城朔:「その権利があるし、そうするべきだし」
夜高ミツル:「それでも、俺は」
夜高ミツル:「世間一般の正しさとか、狩人の道理とか」
夜高ミツル:「そういうの全部知らなくて、お前に」
夜高ミツル:「……お前に生きて、幸せになってほしいと思ったんだよ」
真城朔:「知らないでいられるわけないだろ!」
真城朔:「幸せにって――バッカじゃねえのか」
真城朔:「んなもん俺にあるか!」
真城朔:「こんだけ好き勝手しといて」
真城朔:「殺しといて」
真城朔:「俺のせいで何人死んだ? どれだけ大切な人を失った?」
真城朔:「俺は、俺が」
真城朔:「俺が大切な人を蘇らせたいって」
夜高ミツル:「……そうだな」
真城朔:「そういう理由で、何百人、なんなら何千人!」
真城朔:「全部、俺のせいで……ッ」
夜高ミツル:「……ああ」
夜高ミツル:「……でも、俺はお前に助けられたよ」
真城朔:「そもそも俺のせいだってのも知ってんだろ!」
夜高ミツル:「そうだな。それでも、助けられたことはなくならない」
真城朔:「紅谷にだって」
真城朔:「あの人、だって」声が裏返る。
真城朔:「お前が襲われたのは俺のせいで」
真城朔:「お前の家族が全員死んだのだって、俺のせいで」
真城朔:「クソみてえなマッチポンプだよなあ!」
真城朔:「お前の人生だって俺のせいでめちゃくちゃだよ!」
夜高ミツル:「……5年前のことは少なくとも、お前のせいではないだろ」
真城朔:「……俺のせいだろ」
夜高ミツル:「……お前の母親が吸血鬼になったのは、あの男のせいだろ」
夜高ミツル:「あれは、お前が悪いわけじゃない」
真城朔:「そもそも俺が半吸血鬼だからだよ」
真城朔:「じゃなきゃ狙われてない」
真城朔:「――あそこで」
真城朔:「あそこで、俺が、吸血鬼になってれば」
真城朔:「それで全部終わってたのに」
真城朔:「あの人に、俺は」
真城朔:「救ってもらいたくなんて、なかった……」
夜高ミツル:「そもそも吸血鬼なんか、何が理由で目つけてくるかわかんねえだろ」
夜高ミツル:「たまたまお前は半吸血鬼って理由があって、それで狙われて」
夜高ミツル:「…………」
夜高ミツル:「死ぬのが自分だったら良かったのにって思う気持ちは……俺も分かるよ」
真城朔:「はは」
真城朔:「生まれてこなければ良かったってのも?」
真城朔:「あの人さあ」
真城朔:「そもそも俺産むために高校やめてんだわ」
真城朔:「それでなんだ、両親にも勘当されててさ」
真城朔:「そりゃあ苦労してさ」
夜高ミツル:「…………」
真城朔:「その末にあれで、俺のために吸血鬼になって」
真城朔:「俺のために人殺して」
真城朔:「で、俺に殺されて……いや」
真城朔:「違うよな」
真城朔:「そんなんどうでもいいんだ」
真城朔:「なんも正当化できるもんじゃなくて」
真城朔:「だから」
真城朔:「だから、…………」
真城朔:「……関係ないだろ」
真城朔:「全部」
真城朔:「何もかも」
夜高ミツル:「……俺は、お前に会えて良かったと思ってる」
真城朔:「俺は最悪だよ」
真城朔:「会わなきゃ良かった」
夜高ミツル:「……本当に?」
真城朔:「当たり前だろ」
夜高ミツル:「……お前のせいとかマッチポンプとか言うけどさ、それでも俺はお前に会って楽しかったし」
真城朔:膝に力を入れて、なんとか立ち上がる。
真城朔:脇腹の傷を残したままに、しかしそれに頓着することもなく。
夜高ミツル:立ち上がり、その腕を掴む。
真城朔:振り払う。
真城朔:「楽しかったからなんだよ」
真城朔:「他にもいくらでもあるだろ、そんなの」
夜高ミツル:再度腕を取る。今度は先程よりも強く。
真城朔:「…………」
真城朔:辟易したように顔をしかめる。
夜高ミツル:「あの頃、お前と会った頃、他に楽しいもんなんかなかったよ」
夜高ミツル:「学校とバイトの往復して、ただ生きるために生きて、全部なんとなくで」
夜高ミツル:「……それでも、生きててよかったかもって思えたのはお前と会ってからだ」
夜高ミツル:「そもそも家族が生きてればとかお前と会ってなけりゃとか、そりゃそうかもしれねえけど」
夜高ミツル:「でも、仮定の話したってどうしようもねえだろ」
真城朔:「でも今は仲間とかいんだろ」
夜高ミツル:「それもお前といたからだな」
真城朔:「この先に俺がお前といる必要はない」
真城朔:「……俺は」
真城朔:「俺はお前が狩人になってから大変なことばっかだったし」
真城朔:「素人の面倒とか、二度と見たくもねえし」
真城朔:「お役御免になるならありがたいよ」
夜高ミツル:「……ああ、ああ、散々手間かけただろうな、悪かったよ」
夜高ミツル:「……それでも、必要なくても、俺はお前といたい」
真城朔:「俺は嫌だ」
真城朔:また振り解いて、一歩引く。
真城朔:「……俺がさ」
真城朔:「一人で戦ってる理由、教えてやろうか」
真城朔:「それとももう知ってるか?」
真城朔:「どこまで知ってんだよ、お前」
真城朔:諧謔的に笑う。
夜高ミツル:空いた距離の分を一歩詰めて。
夜高ミツル:「……お前がしてきたこと。吸血鬼とか魔女とかになりかけてること」
夜高ミツル:「……体質のことも、多分、大体知ってる」
真城朔:「はは」
真城朔:「じゃあ言うまでもねえのか」
真城朔:「わかるだろ」
真城朔:「誰かといるの、嫌いなんだよ」
夜高ミツル:「……お前が、」
夜高ミツル:「俺といるのが楽しいって思ってたことも、知ってる」
真城朔:「そりゃ、嘘だ」
真城朔:「……嘘だよ」
夜高ミツル:「嘘なら」
夜高ミツル:「なんで今まで一緒にいたんだよ」
真城朔:「…………」
真城朔:「そういう頃があったとしても、これからは別だろ」
真城朔:「俺はお前といたくないよ」
真城朔:「っていうか、もう、そういう話でもなくてさ」
真城朔:「……いいだろ」
真城朔:「殺せよ」
夜高ミツル:「よくねえよ」
夜高ミツル:首を振る。
真城朔:「たぶんもう俺死ねるんだろ」
真城朔:「じゃあ、それで良くて、……」
夜高ミツル:「殺さない。そう決めて、選んだんだ」
真城朔:「…………」
真城朔:「……でも、そっか」
真城朔:「そうだよな……」
真城朔:ぼそぼそと一人で何か納得している。
夜高ミツル:「ていうかずっと言ってるだろ、お前に生きてほしいんだって」
真城朔:「…………」
夜高ミツル:「……例えば、これから先、もし誰かがお前を殺すべきだって言ったとしたら」
夜高ミツル:「俺はそれを止める」
夜高ミツル:「……それがもし、糸賀さんや忽亡さんが相手でも」
真城朔:「好きにしろよ」
真城朔:「いいよ」
真城朔:「いいよ、俺は――俺は、そうだよ」
真城朔:「どうするべきかなんて、分かりきってた」
夜高ミツル:「……何が」
真城朔:ミツルに背を向ける。
真城朔:「あの人のために生きて」
夜高ミツル:「っ、待てって!」
真城朔:「あの人のために全部、やってきたから」
真城朔:「だから、そうするのが正しいんだ」
夜高ミツル:肩を掴む。
真城朔:「今更、……」
真城朔:「今更、一人、二人、それで――」
真城朔:振り払う。
夜高ミツル:「何する気だ!」
真城朔:ミツルを突き飛ばして、歩いていく。
真城朔:「あの人につくよ」
真城朔:「俺は」
真城朔:「たぶん、それを望まれてた」
夜高ミツル:「……ついて、どうするんだ」
夜高ミツル:真城を追う。
真城朔:「ああ」
真城朔:一度足を止めてミツルを振り返って、
真城朔:ポケットから何か取り出して、投げつける。
真城朔:裸のままのミツルの家の鍵。
夜高ミツル:「……っ!」
夜高ミツル:鍵が足にぶつかって跳ねる。
真城朔:キーホルダーすらつけられていないそれを投げつけると、肩を竦めて笑う。
真城朔:「どうなるかな」
真城朔:「知らないけど、あの人が喜ぶんなら十分だろ」
真城朔:「俺はそういうやつだよ」
夜高ミツル:「……やめろ、行くな」
夜高ミツル:「真城」
真城朔:「俺のせいでまだ人が死ぬかもしれなくても」
真城朔:「それでいいと思ってる」
真城朔:「んなクソ野郎のために、ああだこうだ心を砕くな」
夜高ミツル:「……そうして、それを後悔するんだろ」
夜高ミツル:「言っておくけど、向こうに行ったって俺はお前を殺したりしないからな」
真城朔:「お前はそうでも、他の人は?」
真城朔:「他の狩人は?」
真城朔:「D7とか、多分俺にもう目をつけてる」
真城朔:「これ幸いと手を下してくれるかもな」
夜高ミツル:「……他の人にだって、させない」
夜高ミツル:「フォゲットミーノットを倒して、お前を連れ戻す」
夜高ミツル:「……あの時、前もさ、そう言ったろ。お前がどっか行ってもまた探すって」
真城朔:「じゃあ」
真城朔:視線を切る。
真城朔:また前を向いて、歩き出す。
真城朔:「勝手にしろ」
真城朔:「俺だって、勝手にさせてもらう」
真城朔:「あの人が人を殺すのに荷担して」
真城朔:「あの人が望むなら、吸血鬼にでもなって」
真城朔:「あの人の願いを叶えて」
真城朔:「……俺は、そうさせてもらうよ」
夜高ミツル:「……お前、本当に人を殺させたいのか?」
夜高ミツル:「誰かを殺したいのか?」
真城朔:返事をしない。
真城朔:ミツルから遠ざかっていく。
夜高ミツル:距離を詰めなおす。
夜高ミツル:「そうじゃないだろ!」
夜高ミツル:「真城」
夜高ミツル:「……俺と、俺たちと一緒に戦ってくれ」
真城朔:「はっ」
真城朔:鼻で笑う。
夜高ミツル:「……お前の願いを邪魔して、勝手なことを言ってると思う」
真城朔:「本当に勝手だよ」
夜高ミツル:「……ああ」
真城朔:「んなこと俺が承諾するわけねえだろ」
真城朔:「諦めろ」
真城朔:歩調を速める。
真城朔:道路を叩く靴の音が、夜の静寂にいやに響く。
夜高ミツル:「勝手だけど、お前にもあの人にも、これ以上人を殺させたくない」
夜高ミツル:こちらも歩調を上げて。手が届く距離から外れないように。
真城朔:もはや振り返らない。
真城朔:話すことなどないとでも言うように、ただ頑なに道を進んでいく。
夜高ミツル:「……殺させたくないんだ。殺させちゃいけない。これ以上は」繰り返して、手を取る。
夜高ミツル:「真城」
夜高ミツル:「行くな」
GM:手を取った、その瞬間に。
GM:ミツルの腹に身体を押し留めるような衝撃が響く。
夜高ミツル:「……っ、」
GM:――腹が熱い。この熱さは知っているものだ。
GM:視線を落とせば、
GM:ミツルの腹部を、血で作られた槍が貫いている。
GM:手はすり抜ける。
夜高ミツル:「っ、ぅ」
GM:自覚に伴い、熱が痛みへと変化していく。
夜高ミツル:身体を貫く痛みに身体を折る。
GM:しかし、ミツルの足を止めたのはそれだけじゃない。
GM:ミツルの足を止めたのは、
GM:ミツルから力を奪ったのは、
GM:交わった血から伝わった、ただただ昏く、重いばかりの絶望。
GM:伝わったのは一瞬。
GM:それでもあらゆる気力を奪うには十分なほどの昏い絶望の中、
GM:ミツルの視界は、霞んでいく。
夜高ミツル:「ま、しろ……」
夜高ミツル:痛みと、絶望と、霞む視界の中で、それでも手を伸ばして。
真城朔:振り返った真城が、ミツルを見下ろしている。
真城朔:その手を取れず。
真城朔:取ることもなく。
夜高ミツル:震える指先から、力が抜ける。

真城朔:自分を見下ろす真城の瞳の金色を最後に、
GM:ミツルの意識は、闇へと落ちた。

ブラッドムーン「あなたへの花」
3話「花に願いを」おしまい

――4話「あなたへの花」に続く