? 3話「花に願いを」導入

「花に願いを」導入

GM:では
GM:ブラッドムーンキャンペーン「あなたへの花」第三話
GM:「花に願いを」はじめていきましょう。
GM:よろしくお願いします!
乾咲フラン:苦しんで死ぬ(よろしくおねがいします)
糸賀大亮:よろしくお願いします……………
夜高ミツル:よろしくおねがいします!!!!

惨殺シーン

GM:「――大丈夫」
GM:「大丈夫よ。大丈夫だからね」
GM:「わかってる。仕方なかったんだもの」
GM:「あなたは間違ってないわ」
GM:「あなたが責められることなんて、なんにもない」
GM:「そんなこと、お母さんが許しませんから」
GM:「ねえ」
GM:「だから、ほら」
GM:「そんな顔してないで、笑って――」

導入フェイズ

GM:導入フェイズに入っていきましょう。
GM:うーんと ミツルくんからかな やりたいこと聞いてるし
夜高ミツル:はーい
GM:多分ミツルくん→フランさん→ゆかりさん→大亮さんで。
GM:よろしくお願いします。
乾咲フラン:ホイ
糸賀大亮:はい…

導入:夜高ミツル

GM:路地裏。
GM:ぐしゃり、と、
GM:不快な水の音を立てながら、男の亡骸が地面に倒れる。
GM:脇腹を深々と斬り裂かれ、傷口からは赤い血が溢れてアスファルトを汚していく。
GM:見開かれた瞳が、天を、
GM:そこに立つミツルを見上げている。
GM:男の手にはナイフが握られている。
夜高ミツル:刀で男の脇腹を裂いた感覚が、まだ手に残っている。
GM:まだ辛うじて息はある。意思が宿った瞳が、ミツルの顔を見ている。
夜高ミツル:「……っ、」
夜高ミツル:目が合う。
GM:ナイフを握った手をもがもがと動かすが、動揺ゆえにか、
GM:神経がどうかしているのか、明後日の方向にそれは泳いで。
GM:ミツルの足へと突き立てようと振るわれるそれが、何度も繰り返し、空を切る。
夜高ミツル:どうするべきか、逡巡する。
夜高ミツル:いや、本当はどうしたらいいのか分かっている。こうなってしまえば。
GM:腕の動きが、少しずつ弱々しくなっていく。
夜高ミツル:せめて少しでも早く、楽に。

忽亡ゆかり:ウエーーーーーン
忽亡ゆかり:グスッ グスッ
乾咲フラン:弟値が下がっちゃう
忽亡ゆかり:なんでこの世界は弟にこんな事をさせるんだ
GM:弟、継続!
乾咲フラン:大丈夫だぁ
糸賀大亮:弟なので問題ないが弟にこんなことはさせたくない

夜高ミツル:掌に滲んだ汗で滑る柄を握り直し、刀を振り上げる。
夜高ミツル:それを、男の喉に突き立てた。
GM:がひゅ、と、空気の抜ける音がした。
GM:ナイフが男の手から滑り落ちる。からん、とアスファルトを転がって、
GM:広がる血溜まりの中に、それが沈む。
夜高ミツル:「う……、」
GM:瞳から光が失われていく。
GM:血走った瞳が、ぐるりと焦点を失って、頭が投げ出される。
夜高ミツル:フラフラと後ずさり、地面に広がった血に足を取られて尻もちをつく。
夜高ミツル:──殺した。人間を。
夜高ミツル:それは吸血鬼や魔女のように、花びらになって消えたりもしない。
GM:今なお血が広がっている。
GM:少しずつ体温の失われゆく肉体。
GM:人間だった肉の塊が、そこには横たわっている。
夜高ミツル:フォロワーだった。人を襲おうとしていた。
GM:既に何人も殺したという風に、下卑た笑いを浮かべていたのを覚えている。
夜高ミツル:相手も武器を持っていて、簡単には止められなくて。
夜高ミツル:手加減なんて、できるわけもなかった。それを可能にする程の力は自分にはない。
夜高ミツル:だから、止めるなら急所を狙うほかなくて。
夜高ミツル:真城も、フォロワー相手に躊躇うなと。
夜高ミツル:以前に、そう。
夜高ミツル:……いや、違う。真城がそう言っていたからとかじゃなくて。
夜高ミツル:俺がやった。
夜高ミツル:自身の判断で。
夜高ミツル:人間の、命を、奪った。
夜高ミツル:こうするしかなかった。本当にそうだろうか?
夜高ミツル:死体はどうする?
夜高ミツル:暴力で命を奪うという点で、俺とこの男にどれほどの差があるだろうか?
GM:不意に、
GM:かたん、と小さな物音が、ミツルの背後から響いた。
夜高ミツル:「っ!」
夜高ミツル:振り向く。
GM:「にゃあ」
GM:黒猫だった。一匹の黒猫。
夜高ミツル:「……は」
夜高ミツル:「ね、こ」
GM:金色の瞳を瞬かせて、ミツルを見上げて大あくび。
夜高ミツル:息をつく。心臓は早鐘を打ち続けている。
GM:たたっと男の亡骸の上を駆け抜けて、路地裏を抜けていく。
GM:血飛沫が跳ねた。
夜高ミツル:それを見て、少しだけ頭が冷えて。
夜高ミツル:……まだ、狩りの途中だ。
夜高ミツル:ごちゃごちゃと考えている暇なんてない。
夜高ミツル:『ミツは余計なこと考えすぎ』
夜高ミツル:『考える前に動け』
夜高ミツル:そんなことを、よく真城に言われていたのを不意に思い出す。
夜高ミツル:……ビルの壁に手をついて、立ち上がる。
夜高ミツル:おぼつかない足取りで男の死体に近づいて、その喉に突き立ったままの刀を抜く。
夜高ミツル:刀を抜くと、傷口からまた血が溢れた。
夜高ミツル:「……」
GM:男の身体が僅かに身じろぐ。
GM:身じろいだ、ように見える。
夜高ミツル:「!」
夜高ミツル:目を瞠る。
GM:錯覚だ。
GM:刀を抜かれて、その僅かな振動で揺れた肉が、
GM:ミツルにそのように思わせただけで。
GM:顔も、見開いた瞳ももう、明後日の方向を向いている。
夜高ミツル:息すらもできず、男を凝視していた。
夜高ミツル:それが確かに死体だと確信するまで。
夜高ミツル:「……っ、」
夜高ミツル:息をつく。死体から目を逸して、刀にべっとりとまとわりついた返り血を払う。
夜高ミツル:服も、刀と同じくらい返り血でまみれている。
夜高ミツル:誰かに見られたら。
夜高ミツル:そう思うと、闇の中に誰かが潜んでいるような気がして。
夜高ミツル:たまらず男を置いて路地裏を駆け出した。
夜高ミツル:──狩りの続きをしなければ。
夜高ミツル:考え事をするのは、それからだ。
夜高ミツル:ハンターなんかになってほしくないとか。
夜高ミツル:やめてほしいとか。
夜高ミツル:そう言ってくれた人たちのことを考えるのも。
GM:月が雲に隠された夜空の下、
GM:黒猫の瞳が、ビルの上からミツルを見下ろしていた。
GM:月の代わりとばかりに輝く金色の瞳が、それを、見ていた。

導入:乾咲フラン

GM:庭園から、小鳥の囀り声が聞こえる。
GM:血みどろの狩りの翌日にはふさわしくない、爽やかな朝だった。
GM:それでも乾咲邸はいつもの美しい佇まいを保っている。
GM:その大きな玄関に立つゆかりに、フランは気遣わしげに声をかける。
乾咲フラン:「……お疲れ様。大丈夫?帰れそうかな?」
忽亡ゆかり:「大丈夫です。お世話になりました」
忽亡ゆかり:未だに疲れの見える顔。
忽亡ゆかり:しかし、最悪の頃よりは、だいぶ晴れやかな顔色で。
乾咲フラン:「ならよかった、あ、そうだ……ついでに、この子も途中まで一緒に帰ってほしいんだ。」
乾咲フラン:メイド服を脱いだ美メイドの一人がやってくる。
忽亡ゆかり:「……?」
乾咲フラン:大丈夫そうに見えても途中で何があるかわからない……碧が死んだ後、一人で歩いている時――不意に落ち込んでしまう時がある、という経験がフランにはあった。
乾咲フラン:「方向が途中まで一緒だからね。あとこれ……試供品のお土産のバスボムだよ。」
乾咲フラン:可愛い包みを手渡しながら。主な用途は血の匂い消しである。
忽亡ゆかり:「…………乾咲さん、優しすぎますよ」
乾咲フラン:「そうかな?」
GM:ためらいがちに出てくるメイド服を脱いだ美メイド。
GM:化粧を落として、普通の格好をしていることでやっと分かる。
野嶋優香:野嶋優香だった。
野嶋優香:「……フラン様、そんな……お気遣いは…………」言い募りかけるが、強くは出られないのか。途中で黙り込む。
野嶋優香:兄を亡くし、大学をやめた野嶋優香は、今は乾咲邸で美メイドの見習いとして働いている。

忽亡ゆかり:うぉい
夜高ミツル:野嶋!?
乾咲フラン:ヒヒヒ
忽亡ゆかり:とつぜんの トラップ
糸賀大亮:なるほどな~
見学の水面:美が過ぎて正体分からないの草
野嶋優香:めちゃめちゃメイク教わってるんですよ。
野嶋優香:美メイドたちから。

乾咲フラン:「ふたりとも、帰り道に気をつけてね。痴漢とか。」
乾咲フラン:もっと別の事へ気を回しているが……そこはあえて語らない。
忽亡ゆかり:「優香ちゃんは……帰り道に二人きりになるのが、私なんかでいいの?」
野嶋優香:「私は、……そんな、だって」
野嶋優香:「いやとかだめとか、そういうのも、なんていうか、もうよく分からない」
野嶋優香:「と、いうか、…………」
野嶋優香:俯いてしまう。
乾咲フラン:他の美メイド――狩りに備えて待機していた別の非常勤メイドたちが、優香や忽亡に手を振りながら横を通り過ぎ去っていく。
忽亡ゆかり:「……うん」
忽亡ゆかり:多くは語らない。
忽亡ゆかり:彼女の最も大事な拠り所を奪ったのが自分であること。そんなことは、誰もがわかりきっていることで、今更確認するまでもないことで。
野嶋優香:彼女らに厳しくも優しくしごかれながら、優香はどうにか、美メイドとしての修練を積んでいた。
野嶋優香:優香はゆかりに連れ添うように、乾咲邸を出ようとする。
忽亡ゆかり:心の整理がつかず、どうすればいいかもわからぬままでいる気持ちは、今の自分には痛いほどよくわかる事で。
忽亡ゆかり:「それじゃ、行きます」
乾咲フラン:「ああ、気をつけて。」
野嶋優香:その寸前に。
野嶋優香:「……あ、あの」
野嶋優香:思い切ったように、優香が切り出す。
忽亡ゆかり:「ん?」
野嶋優香:「……私、こんなお世話になっておいて、今更なんですけど」
野嶋優香:「どうしても、わからないことがあって」
野嶋優香:フランとゆかりを見回す。
乾咲フラン:「?」首を小さく傾げ
野嶋優香:「…………」ためらいに唇を震わせてから、
野嶋優香:「咎めるとか、そういうのじゃないんですが」
野嶋優香:「……あの、雪の日」
野嶋優香:「どうして、って……」
野嶋優香:「何が、悪いのかって」
野嶋優香:「大切な人を取り戻したくなってしまうのは、どうしても、仕方のないことで」
野嶋優香:「…………」
野嶋優香:詰まりづまりに語って、黙り込む。
乾咲フラン:「…………」
乾咲フラン:「そうだね、仕方のない事だ。」
野嶋優香:ちらりとフランを窺う。
忽亡ゆかり:「……」
乾咲フラン:「……狩人だから、というだけなら簡単だけどね。」
乾咲フラン:「そうやって戻って来た人は本当にその人なのか、とか……」
乾咲フラン:「……死ななければとか、時が戻ったなら、とか思うだろう。私だって時々思うよ。」
野嶋優香:「……はい」
乾咲フラン:「……まあでも、ほぼほぼ、そういう奴らに心を囚われてしまえば最後は……死ぬだけだ。」
野嶋優香:表情を曇らせる。
乾咲フラン:「あの雪の日に君が魔女と一緒に居たように、そういう者どもに使われたり、従ったり。」
乾咲フラン:「狩人によっては人間相手でも排除するのを厭わない人も居る。」
野嶋優香:「そう、ですね」
野嶋優香:自分を納得させるように頷いているが、表情は精彩を欠いている。
乾咲フラン:「魔の物と人間は、どうあがいても共存できないんだ。奪われるだけなんだ。」
乾咲フラン:「どれだけ願ってもね。」
野嶋優香:「……だから、その全てを、拒まなければならない?」
乾咲フラン:「そうだ。そうするのが……理想だよ。」

夜高ミツル:こう言ってるフランさんの背徳もねぇ……
糸賀大亮:人は背徳を抱いてしまうのですが……
野嶋優香:味わいが最高
夜高ミツル:くそ~モンスターめ~ モンスターが人を惑わすから~~
乾咲フラン:オー背徳背徳
見学の水面:理想って言い方が本当に良いんだよな
野嶋優香:ね……
夜高ミツル:理想なんですよね……

野嶋優香:「…………」
野嶋優香:「……ありがとうございます」
野嶋優香:小さく、一礼をする。
乾咲フラン:「あくまでも私がそう思っているだけさ。礼なんていい。」
忽亡ゆかり:「……刺さるなあ」
野嶋優香:「私もです」眉を下げて、ゆかりに頷く。
乾咲フラン:「私は君のお兄さんの敵と言われても、しょうがないからね。」
野嶋優香:「……本当に良くしていただいていると、思っています」
野嶋優香:フランの言葉は否定しない。
野嶋優香:「……すみません、朝からこんな」
乾咲フラン:「かまわないよ。」
野嶋優香:覇気のない笑顔を返す。
野嶋優香:「……行きましょうか、忽亡さん」
忽亡ゆかり:「……うん」
忽亡ゆかり:「乾咲さん」
乾咲フラン:「ん。」ゆかりの方を見て。
忽亡ゆかり:「今の答え」
忽亡ゆかり:「私も昔は、同じように問われたら、乾咲さんみたいなことを答えていたと思います」
忽亡ゆかり:「けどそれは、失った人の苦しみを知らない人の言葉で……」
乾咲フラン:「……そうだね。」
野嶋優香:「…………」
乾咲フラン:碧の事を思う。
忽亡ゆかり:「……それを知っても、そう言えるのは、凄い事です」
乾咲フラン:「……強がっているだけさ。」
忽亡ゆかり:「私は少し、それを知るのが遅くて……まだ、未熟なハンターですけど」
忽亡ゆかり:「それぐらい強がれるようになりたい」
乾咲フラン:「そうしないと美しくあれない、立っていられないからそうするしかなかっただけ。私も弱い人間だよ。」
忽亡ゆかり:「……ふふっ。お互い、他のハンターには恥ずかしいところ見せちゃいましたからね」
乾咲フラン:「だから、皆で支え合っていこうじゃないか。ね?」
乾咲フラン:「うん…………」
忽亡ゆかり:「行こう、優香ちゃん」
野嶋優香:「……はい」
忽亡ゆかり:「乾咲さんとは、また遠くないうちに仕事で会うかもしれませんが、また」
野嶋優香:「お疲れ様でした」最後にまた、一礼。
乾咲フラン:「また」ゆるやかに手を振って。
GM:ゆかりと優香が、二人連れ立って乾咲邸を出ていく。
GM:玄関口の重厚な扉が開かれ、眩しい朝の光が射し込んで、
乾咲フラン:フランの髪が、登りゆく朝日を受けてより煌めく。
GM:閉じられると同時に、それが遮られる。
GM:一人残ったフラン。
GM:かつての日も、同じだったかもしれない。
GM:真城朔を産むために、乾咲邸に一時的に身を寄せた真城碧も。
GM:母を失って、乾咲邸を仮の住まいとした真城朔も。
GM:同じようにあなたのもとから去っていった。
真城碧:『いつまでも頼ってばかりじゃいられないから』
真城朔:『……当たり前にしてしまうのは、よくないので』
GM:ふたりとも、同じように。
乾咲フラン:踵を返して、己の部屋へと帰っていく。
乾咲フラン:フランの周りには自立した、孤高の『美』を持つものが多かった。
乾咲フラン:己もその様に、ただ自分の心にのみしたがって美しくあったが……時折、考えてしまう。
乾咲フラン:こういった立場を捨てて、誰かと共にただ静かに生きていくという事を……
乾咲フラン:花瓶の横に置かれた写真立てを手に取る。
乾咲フラン:ごく僅かに残った、自分と碧のツーショット写真。
真城碧:眩しい笑顔が、写真からあなたを見ている。
乾咲フラン:碧も朔も居なくなってから、この部屋に人を入れる事は殆どなくなってしまった。
乾咲フラン:一人で美しく佇んでいる。誰かと共に居ることもできず、ただ一人だ。
乾咲フラン:どれだけ狩人同士の交流があろうとも、取り落してしまった輝きはもう取り戻すことができない……
乾咲フラン:碧はもう居ない。フランは今日も一人で輝き続けるのだろう。
乾咲フラン:「マシロ……君の息子は、きっと見つけるから……」
乾咲フラン:感傷に浸るのは美しくない――写真立てを置く。
乾咲フラン:自分にはまだすべき事が、あるからだ。

導入:忽亡ゆかり

忽亡ゆかり:「まあ、そんな流れでさ」
忽亡ゆかり:「次はお料理教室をする事になったんだ」
忽亡ゆかり:アスファルトに腰を下ろして、嬉しそうな笑顔で語る。
忽亡ゆかり:「ゆうて、私もそんなに自信があるわけじゃないから、いま猛勉強中で」
忽亡ゆかり:「ちょっとプレッシャーを感じているわけですよ」
忽亡ゆかり:「早く具体的な日取りの連絡が欲しいなという気持ちと、もうちょっと時間をくださいという気持ちと……」
忽亡ゆかり:「当日の格好も悩んでるんだ」
忽亡ゆかり:「でもすることは料理だし、相手は高校生の男子だから、気合入れすぎるのも変かなって……」
忽亡ゆかり:「それになんか、がっついてる感じ出すと、あんまりよろしくないだろうし」
忽亡ゆかり:「結局、メイクもファッションもナチュラルな感じに落ち着きそうなんだよね」
忽亡ゆかり:「と、まあ、色々考えており、最近はそんな感じでずっとモヤモヤしている」
忽亡ゆかり:「……でも、そうだね」
忽亡ゆかり:「楽しみだ」
忽亡ゆかり:「これが生きがいっていうのかな」
忽亡ゆかり:「君はどう思う?」
忽亡ゆかり:そう言って──右手でグリップを握り
忽亡ゆかり:その肉塊から、ナイフを引き抜く。
忽亡ゆかり:花弁を舞い散らせながら、目の前に転がる存在──魔女へと問うた。
GM:夜の闇に落ちた路地裏。
スカビオサ:そこには血塗れの魔女がいる。
スカビオサ:四肢をナイフで貫かれた魔女が。
スカビオサ:苦しげに胸を上下させながら、ゆかりを見ている。
スカビオサ:薄紫の瞳が、震えている。

乾咲フラン:よかった~相手がいた
糸賀大亮:よかったよかった
夜高ミツル:相手がいてよかった!!
糸賀大亮:よくない
忽亡ゆかり:相手がいるから怖くないねえ
夜高ミツル:>スカビオサの花言葉は「恵まれぬ恋」「不幸な恋」「私は全てを失った」「未亡人」「喪失」「哀しみの花嫁」「失恋の痛手」「不幸な愛情」「悲哀の心」です。

忽亡ゆかり:「まあ、すぐにとはね」
忽亡ゆかり:「最近は忙しくて──ミツルくんとは、二人きりの時間もなかなかとれないし」
忽亡ゆかり:「わかってる?君たちのせいなんだよ」
忽亡ゆかり:再びナイフを突き刺す。埋めた刃をじりじりと捻り、体の内側をじっくりと傷つけながら。
スカビオサ:「あ! ああ、っく…………!」
スカビオサ:フリルのスカートは斬り裂かれ、血に汚れている。
忽亡ゆかり:「君たちさえ出てこなければさ」
忽亡ゆかり:抜いて。
忽亡ゆかり:「ミツルくんと一緒にいられたし」
スカビオサ:苦しみにのたうつ魔女はゆかりに手を伸ばそうとするが、
スカビオサ:貫かれた傷からぼたぼたと血が垂れて、指先がほどけていく。
忽亡ゆかり:「そもそもミツルくんは、こんな風に、手を汚すような事もしなくてすむし」
忽亡ゆかり:その手を乱暴に振り払い、再び突き刺し。
スカビオサ:薄紫の細かな花弁がはらはらと散っていく。
忽亡ゆかり:「本当に迷惑だよね」
スカビオサ:「っぐう!」
忽亡ゆかり:手足一本ずつ、少しずつ切れ込みを深くしていく。
忽亡ゆかり:「やっぱり害虫だったんだよ、魔女なんて。人とは決して相容れない」
スカビオサ:その痛みに、苦悶に表情を歪ませながら、
スカビオサ:魔女は叫ぶ。
スカビオサ:「う、るさい」
スカビオサ:「うるさい、うるさ、い!」
忽亡ゆかり:「なに?」
スカビオサ:「っ………」
スカビオサ:息を呑み。
スカビオサ:何か言い掛けたのを、首を振って、唇を噛んでから、
スカビオサ:「……わかる、わよ」
スカビオサ:低く、唸るように。
忽亡ゆかり:「? なにが?」
スカビオサ:「わたし、魔女だ、もん」
スカビオサ:「わかるの」
スカビオサ:「あなたの、ほんとうの、望みが」
スカビオサ:「……ねえ」
スカビオサ:「どうして、かなたくんのことは言わないの?」
スカビオサ:「忘れられてないでしょう?」
忽亡ゆかり:「……何?」
スカビオサ:「あなたの中にあるほんとうの望み」
スカビオサ:「あなたは、本当は」
スカビオサ:「今でも――」
忽亡ゆかり:「あっ」
忽亡ゆかり:魔女がその言葉を終えるよりも早く、ぱかりと魔女の喉が開く。
スカビオサ:「ご、ほっ」
忽亡ゆかり:無彩色の路地が、彩られていく。
スカビオサ:喉を押さえようとする、その手も既にない。
忽亡ゆかり:その言葉を続けられないように、しっかりと、もう一度、喉を潰して。
忽亡ゆかり:「私に、弟なんて居ないよ」
忽亡ゆかり:「やっぱり、気づかれちゃうかな。魔女には」
忽亡ゆかり:「私の望みは、ミツル君や糸賀さん、乾咲さん……」
忽亡ゆかり:「仲間たちに、受け入れらる事なんだー、って!」
忽亡ゆかり:「……はあ」
忽亡ゆかり:「なんてね」
忽亡ゆかり:魔女を裂いた銀のナイフは、血に濡れ、輝きを失っている。
忽亡ゆかり:「……私は、みんなみたいに強くなれない」
忽亡ゆかり:「大事だからこそ……思い出すたび、心が、壊れそうになる……」
忽亡ゆかり:花弁彩る裏路地の真ん中で、一人俯いて。
忽亡ゆかり:「嫌な事を言われて、逆上して刃物を振るような人間が」
忽亡ゆかり:「弟とさして変わらない年齢の子を、切り刻むような人間が」
忽亡ゆかり:「……こんな人間が狩人をやめて、日常に戻れるのか?」

GM:――それは八月の末のことだった。
GM:満月まで、あと一週間と、一日。
GM:狩りを終えたゆかりは、待つ者のない自分の家に帰る。
GM:シャワーを浴びて。最低限、血を流して、身体を清めて。
GM:眠るなら……どこででしょうかね、今は。
忽亡ゆかり:ちゃんと……ベッドで眠ります!
GM:ちゃんとしている。
GM:では自室のベッドに潜り込み。
GM:ゆかりは泥濘のような眠りについた。

GM:「…………!」
GM:「……、さん」
忽亡かなた:「姉さん!」
GM:ベッドをゆすられて、呼びかけられて。
GM:忽亡ゆかりは目を覚ます。
忽亡ゆかり:「……ふあっ!?」

忽亡かなた:「あ、起きた」
忽亡ゆかり:「かっ……!?」

糸賀大亮:えーん
乾咲フラン:ギャアア
忽亡ゆかり:どうして こういうこと するの
夜高ミツル:えーんえーん

忽亡かなた:「最近ずっと疲れてるみたいだからさ」
忽亡かなた:「寝坊も珍しくなくなったし」
忽亡かなた:「だから、ええと、…………」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「大丈夫?」
忽亡かなた:かなたが。
忽亡ゆかり:「……………………」
忽亡かなた:ベッドの隣に跪いたかなたが、案ずるようにゆかりの顔を覗き込んでいる。
忽亡ゆかり:「…………………………かなた?」少し、いや、だいぶ遅れて、間の抜けた質問をする。
忽亡かなた:「かなただけど」
忽亡かなた:「ねぼけてる?」
忽亡かなた:「ごめん、無理に起こして」
忽亡ゆかり:「あ……」手を伸ばして、その顔に触れようとする。
忽亡かなた:「でも、姉さん俺が言わないで出てくと大変だか――わっ」
忽亡かなた:触れられる。目を瞬く。
忽亡ゆかり:「あ……ああ、あ……………………?」
忽亡かなた:シャツとジーンズのラフな格好ですね。
忽亡ゆかり:状況が飲み込めない。
忽亡ゆかり:わかるのは、おかしいという事だけ。
忽亡かなた:「……あの、ほら」
忽亡ゆかり:でも、何がおかしくて、こんな状況になっているのかは、さっぱりわからない。
忽亡かなた:「無理に起きなくていいから」
忽亡かなた:「ちょっと出る前に、声だけかけようと思っただけでさ」
忽亡かなた:「休んでなよ、姉さん」
忽亡ゆかり:「……出、る?」
忽亡かなた:「え、うん」
忽亡かなた:「古本カフェに誘われてさ」
忽亡ゆかり:「どこに…………?」
忽亡かなた:「うちは始業式9月だからさ、今のうちに……」
忽亡かなた:「え、だから古本カフェ」
忽亡かなた:「いい感じのところがあるらしくて、一緒に行かないかって……」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「……嫌?」
忽亡かなた:首を傾げた。
忽亡ゆかり:「……」
忽亡ゆかり:「……始業式?」
忽亡かなた:「だ、大丈夫?」
忽亡かなた:「熱とかあるんじゃないか」
忽亡かなた:かなたが手を伸ばす。ゆかりの額に、触れようとする。
忽亡ゆかり:手の感触が冷たい。
忽亡ゆかり:少し遅れて、自分に本当に熱があることに気付く。
忽亡かなた:「うわ」目を見開く。
忽亡かなた:「ほんとにあるじゃん!」
忽亡かなた:「確認してよかった」
忽亡かなた:慌てて腰を上げる。
忽亡ゆかり:それは寝起きのせいか、それとも内側から痛いほどに打ち付ける心臓の鼓動のせいか。
忽亡ゆかり:「かな、た……」
忽亡かなた:「ええと、冷えピタ――って」
忽亡かなた:「そんな辛い!?」
忽亡ゆかり:「つらい」
忽亡ゆかり:「つらいよ」
忽亡かなた:「医者行く? 行ったほうがいいよな、すごい熱いよ」
忽亡かなた:「あ、だから先に体温計か」わたわた
忽亡ゆかり:「いやだ」
忽亡かなた:「えっ?」
忽亡ゆかり:「ここにいる……動きたくない……」
忽亡かなた:「…………」
忽亡ゆかり:両腕で抱きしめる。
忽亡ゆかり:「……よくないよ」
忽亡かなた:抱き締められて、おとなしく腕に収まる。
忽亡かなた:小さく息を吐く。その吐息が、ゆかりの耳にかかる。
忽亡かなた:ゆかりの背中に、腕が回った。
忽亡かなた:とんとんと優しく、あやすように叩く。
忽亡かなた:「……ん」
忽亡ゆかり:「ちっともよくない……」
忽亡ゆかり:「こんなの、悪い夢なんだ…………」言葉とは裏腹に、その両腕は、弟を掴んで離さず。
忽亡かなた:「……嫌な夢でも、見てたの?」
忽亡ゆかり:「………………そうだよ、嫌な夢を見てるの」
忽亡かなた:「そっか」
忽亡ゆかり:「自分の心を砕いて」
忽亡ゆかり:「もう、自力じゃ、立てなくなるような……」
忽亡かなた:背中を、とん、とん、と。
忽亡かなた:「じゃあ、大丈夫になるまで一緒にいるから」
忽亡かなた:「今日出かけるのもなしにするから」
忽亡ゆかり:「……うん」
忽亡かなた:「何か食べたいものある? ネットで頼んじゃおう」
忽亡ゆかり:「なんでも、いい……」
忽亡ゆかり:きっと味なんてわからない。何もわからない。
忽亡かなた:「ええ……うーん……」
忽亡かなた:「いい感じのやつ適当にいっぱい頼んじゃおうか」
忽亡ゆかり:この五感は現実なんだろうか。それとも夢なんだろうか。あるいは、今まで見てきたものが夢だったんだろうか。
忽亡かなた:「食べたいやつだけ食べようよ」
忽亡ゆかり:「……うん」
忽亡かなた:「姉さん、根詰め過ぎだったからさ」
忽亡かなた:「丁度いいんだよ」
忽亡かなた:「……その」
忽亡かなた:「なんていうか、ほら」
忽亡かなた:「……たまには、甘えてくれよな」
忽亡かなた:「たまにじゃなくても!」
忽亡かなた:慌てて付け加える。
忽亡ゆかり:弟が一言を口にするたび、固めたはずの覚悟が揺らいでいく。
忽亡ゆかり:目の前の弟の姿に、心が満たされていく。
忽亡ゆかり:それは何よりも恐ろしい。
忽亡ゆかり:これを現実として受け止めた瞬間、すべては崩れ落ちていきそうで。
忽亡ゆかり:目の前の弟にすがりついた瞬間、彼もまた消えてしまいそうで。
忽亡かなた:それでも、温もりが確かにそこにある。
忽亡かなた:触れられる。触れてくれる。優しく呼びかけてくれる。
忽亡かなた:受け止めて、抱き締めてくれる。

忽亡かなた:ゆかりさんかわいいね
糸賀大亮:おそろしいよ
見学の水面:かわいい
乾咲フラン:エーンエン
忽亡かなた:かわいいだろ!
夜高ミツル:かわいいけど
夜高ミツル:かわいいけど…………

忽亡ゆかり:「……かなた……」
忽亡かなた:「なに? 姉さん」
忽亡ゆかり:「ごめん。ごめんね…………」
忽亡かなた:「…………」
忽亡ゆかり:辛くて、逃げ出したくて、喪失を埋めたくて、正気を保つために、
忽亡ゆかり:目の前の弟を忘れようとしたことが。
忽亡かなた:「……ん」何も言わずに頷いて、ゆかりの言葉を聞いている。
忽亡ゆかり:今になって、ひどく自らの心を痛めつける。
忽亡かなた:「いいよ」
忽亡ゆかり:忘れられない。
忽亡かなた:「大丈夫」
忽亡かなた:「許すよ」
忽亡ゆかり:それがどれほど大切なものか、思い出してしまったら。
忽亡ゆかり:手放せないことに、気付いてしまう。
忽亡かなた:理解しているのかはわからないままに、かなたは全てを肯定する。
忽亡ゆかり:「…かなた……かなた……かなたあ……」
忽亡かなた:「姉さんが何しても、俺は許すから」
忽亡ゆかり:ただ名前を呼び続ける。
忽亡かなた:「大丈夫だよ」
忽亡かなた:「姉さん」
忽亡ゆかり:なんでこんな事になっているんだろう。
忽亡ゆかり:けれど、何も聞けない。
忽亡ゆかり:聞いたところで、彼の口から真実が出てくるとは……いや、違う。そうではない。
忽亡ゆかり:この夢を手放す瞬間が怖くて、後回しにしているんだ。
忽亡ゆかり:今は、弟と過ごす平和な日常で。
忽亡ゆかり:この日を、この時を、この瞬間を、どんなに。
忽亡ゆかり:何も問えず、何も踏み込めず、ただ静かに
忽亡ゆかり:弟の胸に顔を埋めて、泣き続けた。

忽亡ゆかり:こんなひどい初手ありますか?
夜高ミツル:えーん……
夜高ミツル:どうして……
糸賀大亮:導入……
夜高ミツル:導入だぞ!?
乾咲フラン:惨殺シーン

導入:糸賀大亮

GM:大学ですか。
糸賀大亮:大学ですね。
GM:ぼんやりしてるんですか?
糸賀大亮:そうですね。えーと。
GM:あ、そうだ
GM:ええとですね。
GM:8月の末あたりから、花の名を冠するモンスターの出現はぴたっと止まりました。
糸賀大亮:ほう。
GM:それまではもうとんでもない勢いでぽこじゃが出てきてたんですが、
GM:それがもうすっかりスンッ……っと。
糸賀大亮:暇になった。
GM:それ以外のモンスターは出てないわけじゃないんですけど、もともとそっちの割合が多すぎてね。
糸賀大亮:感覚が狂って暇に感じる。
GM:そのせいで八崎市は縄張りとしてもアレだったのか、まあ、要するに、ヒマですね。
GM:ほとんど出てきません。クラブなんかは警戒態勢敷いてますけど。
GM:真面目な組織ほど警戒態勢を続けている。そういう頃かな。
糸賀大亮:出現が途絶えた原因が分からん以上はそうだろうな。
糸賀大亮:いつまた同様に出てくるか分からない……

GM:ちなみにスカビオサが最後でした。
夜高ミツル:惨殺されたラスト魔女
忽亡ゆかり:ラストワンにあんなことをしてしまった
GM:かわいそう。

GM:とはいえ、暇になり、大学でぼんやりする時間も生まれ。
糸賀大亮:俺はクラブ所属だけど、正式所属ってわけでもないしな。
GM:学生の本分とかいって体良く追い出されそうですね。
糸賀大亮:何か……クラブの狩人ではあるけど、微妙な……
GM:もう9/1でいいですか? もうちょっと前が良い?
糸賀大亮:9/1でいいかな。
GM:じゃあ9/1で。まだ夏休みだよな大学は。
糸賀大亮:大学、9/1やってないな
GM:人の姿もまあまあ疎ら。
GM:マジでボーッとしてる人か?
糸賀大亮:ボーっとしている。
GM:どこでぼーっとしてるんですか。食堂?
糸賀大亮:食堂だな。営業してんのかな。
糸賀大亮:テーブルに突っ伏している。
GM:あいてはいるけど昼食は売ってない感じかな。
GM:開放はされてる。売店の食べ物とか持ち込んで喋ってる学生がいる。
糸賀大亮:目の前にも、水の入ったペットボトルがあって。
GM:無邪気というにはちょっと厳しい笑い声が響く。
糸賀大亮:半ばまで飲まれた状態で放置されて、汗をかいている。
糸賀大亮:9月から復学する予定でいる。
糸賀大亮:夏休みに大学に来ている連中は、まじめな奴か遊び惚けている奴の二択。
糸賀大亮:とは言え俺はどっちでもなく……ただボーっとしている人だな。
糸賀大亮:ほかの学生の馬鹿笑いもどこか遠い。
GM:ではそのぼーっとしている大亮さんにですね。
高尾すみれ:「……大亮じゃん」
高尾すみれ:「久しぶりに見た」
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:顔を上げて、視線を合わせる。
高尾すみれ:元カノが大亮を見下ろしている。
高尾すみれ:いるんですが。
糸賀大亮:目を瞬かせて。

乾咲フラン:出ちゃった
乾咲フラン:元カノ
夜高ミツル:フォロ……
乾咲フラン:ワ…
乾咲フラン:エーンエーン
忽亡ゆかり:出しやがった…………………………
高尾すみれ:だってこのまま大学でぼーっとするだけの導入をさせるわけには……

高尾すみれ:なんか……結構変わってますね。様子が。
高尾すみれ:きちんと染めていた髪がプリンになっている。
高尾すみれ:服も、なんというか女子大生らしいフェニミンだったのが、動きやすいボーイッシュなスタイルに。
糸賀大亮:どういう顔をしていいか分からなくなって、視線をうろつかせる。
高尾すみれ:パンプスではなくスニーカー。
高尾すみれ:スポーツバッグを担ぎ直す指先の、ネイルが剥がれかけているのが見える。
糸賀大亮:変化には気づくんだが、その意味には考えを巡らせられないでいる。
高尾すみれ:「…………」
高尾すみれ:化粧もろくにしていない。目の下に隈。
高尾すみれ:声をかけたはいいものの、こちらはこちらで気まずいようだった。
高尾すみれ:黙り込んでいる。
糸賀大亮:「…………」人のことは言えないんだが。
糸賀大亮:ボロボロだ。いや、つまり……
高尾すみれ:「……なんか」
糸賀大亮:自分が狩人になってしばらくしてから、この目の前の彼女に迷惑をかけていたころの……
糸賀大亮:その頃の自分のような姿だ。
高尾すみれ:「前よりマシになってんね」
糸賀大亮:「……ああ……」
高尾すみれ:髪を手櫛ですきながら、そんなことを。
糸賀大亮:目を泳がせる。
高尾すみれ:「でもさ」
糸賀大亮:逆に、相手の変化に言及するか迷う。
高尾すみれ:「もっと前のほうが好きだったよ」
高尾すみれ:「私は」
高尾すみれ:投げつけるように言って、大亮に背を向ける。
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:立ち上がった。椅子を引く音がする。
高尾すみれ:そのまま去っていきますね。
高尾すみれ:立ち上がったのがわかると、なお足を早めようとするが。
糸賀大亮:ただ、引き留めることはできない。
高尾すみれ:一瞬だけためらうように足を止めて、でも、やはり。
高尾すみれ:振り切るように小走りになって、食堂を出ていく。
糸賀大亮:背を見送ってから、再び腰を下ろした。
高尾すみれ:その姿は見えなくなる。
糸賀大亮:もう関係ない、と自分に言い聞かせるまでのことはできない。
糸賀大亮:どちらかと言えば、今更俺が関わっていいのか、そういう躊躇いが大きい。
糸賀大亮:ただ……追いかけて、引き留めたところで。
糸賀大亮:自分に何か、彼女にいい影響が与えられるとは思えない。
糸賀大亮:大学には復学するつもりだった。それは狩人を将来的にやめようってわけじゃなくて。
糸賀大亮:大学ぐらい出ておいた方がいいと、前にチームのみんなに言われたことをふと思い出したからだ。
糸賀大亮:……でも、正直なところそれは言い訳に過ぎない。
糸賀大亮:彩花ちゃんと真城は、あれっきり見つかっていない。手掛かりもない。
糸賀大亮:そうこうするうちに花の名前を冠するモンスターが大量に出るようになって。
糸賀大亮:それがふっつり途絶えたところで、探す当てがあるわけでもなく。
糸賀大亮:かと言って、家に帰って前のようにぐだぐだと悩む生活に戻ることもできず。
糸賀大亮:……つまりは、すみれの言う通り、ましになったということなのかもしれない。
糸賀大亮:ましになったところで、すみれの言う通りさらにその前には戻れないのだが。
糸賀大亮:汗をかいたべしゃべしゃのペットボトルを手に取ると、水はすっかりぬるくなっている。
GM:そのままぐだぐだと時間を潰しているうちに、日が傾く。
GM:食堂も閉鎖される。
糸賀大亮:追い出されました。
GM:追い出されましたね。
糸賀大亮:帰ろうかと思うのだが、家に足が向かない。
GM:見回りにでも行きますか?
糸賀大亮:そうだな。実のところ──
糸賀大亮:帰ると彩花ちゃんにもらったハーバリウムがあるんだが。
GM:ありますか。
糸賀大亮:……あれがもし、帰っていた時。
糸賀大亮:なくなってたらどうしようとか、そういうことを。
糸賀大亮:本気で恐れているわけではないのだが、考えていると、何となく帰るのが躊躇われて……
GM:ははは。
糸賀大亮:なんか一回出ると、家になかなか帰れなくなっている。
GM:では見回りついでに、大亮はコンビニに寄ります。
GM:ミネラルウォーターが尽きてしまったので。まだまだ残暑も厳しく。
糸賀大亮:うん。
GM:なんか他にも適当にものを買ったりして。
GM:していると。
GM:「ありがとうござい、まし――」
糸賀大亮:ん。
GM:なおざりに頭を下げたコンビニ店員の身体が傾ぐ。
GM:倒れる。
GM:それは店内の他の客も同様に。
GM:みな揃って床に倒れて、意識をなくして、
糸賀大亮:「!」
GM:眠っている。
GM:頭には白い枕が。
糸賀大亮:魔女の方だな……と思います。
GM:誰一人の例外なく、いつの間にか敷かれた枕に、人々はぐっすりと眠っている。
GM:病院で見かけるようなパイプ枕だ。
GM:あなたがよく、見てきた枕だった。
糸賀大亮:眉根を寄せる。
GM:店を出ると。
GM:目の前に、紫の花が咲いている。
糸賀大亮:脳裏を、よぎるものがあって。
GM:頭を垂れるオキナグサ。
糸賀大亮:沈黙したまま、その花を見つめる。
GM:まるでヘンゼルとグレーテルのパンくずのように。
GM:その花は点々と咲いて、道を示す。
糸賀大亮:一度、深呼吸をした。
糸賀大亮:予感があって──
糸賀大亮:その予感に対して、覚悟を決める必要があったからだった。
糸賀大亮:瞬間的に、鉛のように足が重くなる。踏み出してはいけないと思う。
糸賀大亮:それを振り払って、花の導く先へ進む。
GM:導かれるまま進む先に、
GM:いつかの公園が見えてくる。
GM:あの雪の日に、馬鹿げた相談所の開設された公園。
GM:その、休憩所に。
プルサティラ:「こんばんは」

プルサティラ:公園所のベンチに、彼女が腰掛けている。
プルサティラ:その膝には一人の少年が眠っていた。

真城朔:真城朔が、魔女の膝で眠っている。

夜高ミツル:真城・・・・・・・!!!!!

糸賀大亮:結局。
糸賀大亮:忽亡さんの立てた推測は、正しかったというわけだ。
プルサティラ:「あのね」
糸賀大亮:「…………」
プルサティラ:「本当は、なんにもなしにね」
プルサティラ:「ただの偶然で、一番最初に見つけてほしいなって思ってたの」
プルサティラ:「でも」
プルサティラ:「大亮さんと私は、別に運命でもなんでもないでしょう?」
プルサティラ:「だから、ずるをしました」
プルサティラ:「えへへ」
糸賀大亮:「……君は」
プルサティラ:膝に眠る真城の頭を撫で、髪を梳いてやりながら、魔女が語る。
糸賀大亮:どういう顔をしたらいいか分からない。
プルサティラ:「?」
糸賀大亮:「…………」唇を何度か動かした。聞きたいことが──
糸賀大亮:知りたいことが、たくさんある。だがそれは、俺が知るべきことか?
糸賀大亮:「君の、名前は」
糸賀大亮:だから、一番聞くべきと思ったことを聞いて。
プルサティラ:「プルサティラ」
プルサティラ:「裏切りの恋の、花だよ」
プルサティラ:笑った。

乾咲フラン:(嘔吐の絵文字)
夜高ミツル:導入からキッツいシーンばっかりだな今日

GM:そうしているうちに、他の狩人に到着してもらいましょうか。
GM:大亮からは少し遅れて、しかし同じように、紫の花が。
GM:彼らを公園へと導く。
糸賀大亮:……立ち尽くしている。
プルサティラ:プルサティラは休憩所のベンチに座って、真城を撫でてやりながら、
プルサティラ:笑って大亮を見つめていた。
プルサティラ:まっすぐに、その顔を見つめていた。
糸賀大亮:どうしてこんなことになったんだろうという、答えの見つかるはずもない問いと。
糸賀大亮:ひとりで魔女と相対するべきではない、他の狩人と何とかして合流しなければならないという冷静な思考が。
糸賀大亮:ぶつかって、結局何の行動もできず、何も口に出せない。

プルサティラ:どわわっと出てきてくれていいですよ
夜高ミツル:この空気に……乱入を……
プルサティラ:乱入しなかったら……大亮さんがどうなるかな?
プルサティラ:魔女と一対一で……どうなるかな?
夜高ミツル:ヒンヒン
忽亡ゆかり:くちなしゆかり どんなふうにでて……でてくるんですか?
プルサティラ:かなたくんは眠ってますよ。
プルサティラ:どうにかしないと起きないですね。
プルサティラ:魔女をどうにかしないと、起きない。
忽亡ゆかり:ハァ ハァッ
プルサティラ:守らなければ……なりませんよね?
プルサティラ:波長が合わないと魔女には対抗できないわけで、波長が合ってる狩人って……貴重ですからね?
忽亡ゆかり:い いき いきま す

乾咲フラン:ハイヒールの音が公園にやってくる。
糸賀大亮:杭に手をかけることさえ。でもそれは、目の前の彼女を手にかけたくないわけではないのではないか。
糸賀大亮:武器を持ったところで、一人では彼女に対抗できないことを、分かっているからでは?
乾咲フラン:「糸賀クン!」立ち尽くす大亮の背中に声を掛け……
プルサティラ:にこにこと笑っている。
糸賀大亮:聞こえてきた声に、はっとした顔になる。
糸賀大亮:思わず、彼女から視線を切って、振り返ってしまう。
乾咲フラン:「君は……」明らかに様子の変わった糸賀の友人に眉根を寄せた。
プルサティラ:プルサティラは大亮を見ています。
プルサティラ:膝に眠る真城を撫でてやりながら。
乾咲フラン:フランハウスもメイドがガッツリ寝たんでしょうね
GM:寝てますね。波長の合う数名を残して。
GM:そうして外に出たら花に導かれる。
真城朔:真城は静かに眠っています。
糸賀大亮:「……プルサティラだ」呻くように言って、魔女に視線を戻す。
夜高ミツル:フランの少し後に、紫の花に導かれてあの雪の日の公園に辿り着く。
夜高ミツル:仲間のハンターたちがここにいることに少し安堵の息をついた後。
夜高ミツル:魔女の姿と、その膝で眠る人物の姿を見て目を瞠る。
プルサティラ:ミツルを見て、ちょっと目を瞬きます。
プルサティラ:それからふいっと顔をそらす。
夜高ミツル:「……」
夜高ミツル:皆川さん、と呼びそうになって。もうそうではないのだと。
プルサティラ:真城の頭を撫でて、髪を梳いて耳にかけてやって。
プルサティラ:愛おしむような手つき。
夜高ミツル:一ヶ月ぶりに見た真城の姿。
夜高ミツル:生きていたことに安堵するべきなのか、魔女の手元にいることを嘆くべきなのか。
乾咲フラン:「……」大亮が寝ていないという事はつまり……彩花を倒す事になる、と大亮のこれからの事を考えて歯噛みしている。
忽亡ゆかり:「…………」
忽亡ゆかり:幽霊のような足取り。
忽亡ゆかり:忽亡ゆかりは、魔女と立ち会う前から、真っ青な顔色をしていた。
忽亡ゆかり:真城と魔女の姿を見ても、さほど表情は変わる事もなく。
忽亡ゆかり:「……ああ。彩花ちゃんか……」
プルサティラ:ゆかりを見て、ぱっと表情を綻ばせた。
プルサティラ:「ゆかりさん」
忽亡ゆかり:「みんな寝てるね。どうしたの?」
プルサティラ:「眠ってもらったの」
プルサティラ:「眠るのって、とっても気持ちのいいことだから」
プルサティラ:「少し休んでもらいたくて」
忽亡ゆかり:「……ああ……」
プルサティラ:にこにこと笑って、狩人を見回す。
忽亡ゆかり:「……そうだね。眠るのは気持ちいい。いい夢なんかが見られると、特に……」
プルサティラ:「うん」
忽亡ゆかり:「でも、いい夢は苦手なんだ。目が覚めた時に、寂しくなるから」
プルサティラ:「……そう」
プルサティラ:「悲しいね」
忽亡ゆかり:「うん」
プルサティラ:「悲しいこと、つらいことをね」
プルサティラ:「私はみんな、なくなってほしいって思ってて」
プルサティラ:「だから」
プルサティラ:「――だから、ね」
プルサティラ:プルサティラは、狩人たちを見回す。
プルサティラ:「私は、みんなにお願いがあるの」
プルサティラ:狩人の一人ひとりの顔をまっすぐに見つめて、そして、
プルサティラ:その唇は。

プルサティラ:「――さっくんを殺してほしい」

プルサティラ:そう、願いを口にした。

忽亡ゆかり:ハアーーッ
糸賀大亮:おっとぉ~
忽亡ゆかり:これだよな
乾咲フラン:心臓止まっちゃった
夜高ミツル:えーんえーんえーん

プルサティラ:「私がさっくんを吸血鬼にするから」
プルサティラ:「みんなにはさっくんを殺してあげてほしい」
プルサティラ:「みんなはさっくんを殺したいし、さっくんはみんなに殺されたい」
プルサティラ:「円満だよ」
プルサティラ:「みんなの願いが叶って、みんな幸せになれるでしょう?」
夜高ミツル:「な……、」唖然。
糸賀大亮:「……」さすがに。
糸賀大亮:予想していなかった。
乾咲フラン:「……ハァ!?」
忽亡ゆかり:「……」
プルサティラ:「どう?」
プルサティラ:「だめ?」
プルサティラ:小首をかしげてみせる。
糸賀大亮:「……どうして、そんなことを?」
糸賀大亮:魔女のやろうとすることに意味を問うても無意味だと思いながら。
プルサティラ:「……だって」
プルサティラ:「大亮さんの仲間とゆかりさんの弟を殺したの、さっくんだよ?」
プルサティラ:「それだけじゃない」
プルサティラ:「胡桃ちゃんを魔女にしたのも」
プルサティラ:「紅谷菖太さんを吸血鬼にしたのも」
プルサティラ:「――ずっと出てきてた、お花の名前のモンスターたち」
プルサティラ:「あれだって、全部さっくんがそうしたんだよ」
糸賀大亮:「…………は?」
忽亡ゆかり:「…… ……………………」
忽亡ゆかり:「え?」
プルサティラ:「さっくんがしたの」
プルサティラ:「全部、さっくんがしてきたこと」
プルサティラ:「さっくんのお母さんを――真城碧さんを、蘇らせるために」
プルサティラ:「あ、ここ一ヶ月のぶんはぜんぶ私だけどね」
プルサティラ:「がんばってたんだよーあれ。すっごい大変だった」
夜高ミツル:「……そ、んな、わけ」
乾咲フラン:「…………」
プルサティラ:「さっくんほんとがんばってたんだなーって思った。吸血鬼でもないのにね」
プルサティラ:よしよし、と眠る真城の頭を撫でてやっている。
プルサティラ:大亮が記憶を探ると、
プルサティラ:今度は、確かに、その吸血鬼の姿が像を結ぶ。
糸賀大亮:前に思い出そうとした時は、思い出せなかった。
糸賀大亮:まるで像を結ばなかったはずなのに。

真城朔:血に濡れた吸血鬼の、その金色の瞳が。
真城朔:確かに、真城朔のものであることを、思い出す。
糸賀大亮:「…………あ……?」顔を押さえて、呆然と声をこぼす。
忽亡ゆかり:「糸賀さん?」
プルサティラ:「完全に吸血鬼になっちゃった方が、ずっと楽だったろうになあ」
プルサティラ:「バカなさっくん」
プルサティラ:「寂しがりや、甘えんぼ、泣き虫弱虫いじけ虫のさっくん」
プルサティラ:「ミツルさんを見捨てられなくて、私を魔女にもしてくれなかったさっくん」
プルサティラ:うたうように言葉を重ねながら、プルサティラは真城の頭を撫でている。
糸賀大亮:ジョン・ドゥ。人の記憶に残らない吸血鬼。
糸賀大亮:「……真城……が……? まさか…………」
糸賀大亮:思い出していることを信じられない。
乾咲フラン:「どういう事だ……」理解が追いついていない、というよりは飲み込むことを拒否しているようで。
プルサティラ:「だから、さっくんが人をモンスターにして回ってたし」
プルサティラ:「糸賀さんの仲間と、ゆかりさんの家族を、殺しちゃったの」
プルサティラ:「だからね、ふたりとも、さっくんのこと、殺したいでしょう?」
忽亡ゆかり:「……え……?でも、いや、だって」
忽亡ゆかり:「そうだよ、根拠は?どうしてそういう結論になったの?」
糸賀大亮:もしそれが本当なら。いや、思い出している以上は、間違いがないはずなのだが。
糸賀大亮:信じられない。本当にこの記憶は信じられるのか?
プルサティラ:「え、だって私魔女だもん」
プルサティラ:「わかるよ。ほんとのこと」
プルサティラ:「後でさっくんが起きたらさ、訊けばいいよ。認めると思うし」
プルサティラ:「っていうか」
プルサティラ:「大亮さん、思い出してるでしょ?」
糸賀大亮:さっきまで、思い出せなかったはずなのに。
忽亡ゆかり:「糸賀さん?まさかね?」
糸賀大亮:「…………」答えられず、俯いている。
夜高ミツル:縋るように大亮を見る。
夜高ミツル:否定してほしい。魔女の言う言葉を。
糸賀大亮:「…………どうしてだ?」
糸賀大亮:「やっていることが、めちゃくちゃだ」
プルサティラ:「?」
糸賀大亮:「ハンターを殺しながら、モンスターも殺している」
プルサティラ:「あーと」
プルサティラ:「うーんと」
プルサティラ:「うー」
糸賀大亮:「君の言うことが本当なら、モンスターを自分で生み出しながら、そのモンスターを手にかけている」
プルサティラ:「めんどくさいな……」

乾咲フラン:怠惰ァ
糸賀大亮:怠惰! こら!
夜高ミツル:急に相を発揮しないで
プルサティラ:怠惰なので……

プルサティラ:「ええと……」
プルサティラ:「お母さんをね、蘇らせるためにはね、血戒を強くしなきゃいけなくてね」
プルサティラ:「それでね、そのために……そんな感じで……そういう手段がね……一番効率いいみたいでね……」
プルサティラ:ふわふわ。
糸賀大亮:フワフワしている。
糸賀大亮:「…………」
プルサティラ:「そんな感じで、そういう事情です」
プルサティラ:「わかってくれましたでしょうか?」
プルサティラ:「殺したくなってくれました?」
糸賀大亮:それで、何食わぬ顔で、俺たちに協力していたというなら、それは……
糸賀大亮:それは確かに、許すことができない、ことかもしれない。だが、頭が付いていかない。
忽亡ゆかり:「糸賀さん……、本当に本当なの?」
忽亡ゆかり:「思い出したの?」
糸賀大亮:「…………ああ」
夜高ミツル:「……!!」
糸賀大亮:「確かに、真城だった……」
忽亡ゆかり:「……ははっ。嘘だあ」
忽亡ゆかり:「いやっ、だって、そんな……」
糸賀大亮:「…………」
忽亡ゆかり:真城と交わした約束を思い出す。
忽亡ゆかり:監視してくれと、疑い続けてくれと。
忽亡ゆかり:俺のことも、恨んでいいと。
忽亡ゆかり:「だって、それじゃあ」
忽亡ゆかり:自分の決意を思い出す。
忽亡ゆかり:復讐。敵討ち。
プルサティラ:「ひどいよねえ」
忽亡ゆかり:「……殺すしかないじゃないか」
プルサティラ:「そうでしょう?」
プルサティラ:「さっくんは人殺しだよ。ほとんどモンスターみたいなものでさ」
プルサティラ:「本人にだって、それが分かってる」
糸賀大亮:「……」
プルサティラ:「だから」
プルサティラ:「どうかあなたたちの手で、さっくんを終わらせてあげてほしい」
プルサティラ:「――それが、私の願い」
乾咲フラン:「…………」絶句。
夜高ミツル:「っ、真城、起こせよ! 直接聞く!」
プルサティラ:「…………」
プルサティラ:ミツルに目を向ける。
プルサティラ:その視線は、どこか冷たい。
忽亡ゆかり:「いや、でも、え、ち、ち。ちょっ……」
忽亡ゆかり:聞けば聞くほど、わからないことが増えていく。
乾咲フラン:「だが、いや、他の魔女が生き返らせた母親を、マシロは殺していたのに……」
プルサティラ:「だって、それは本物のお母さんじゃないもの」
忽亡ゆかり:自分は物事の真実と偽りを見抜くことができない。
忽亡ゆかり:他人の言うことだけじゃない。自分の見たもの聞いたもの、感じたもの。何も信じられなくなっていた。
プルサティラ:「偽物を蘇らせても意味がないでしょう?」
プルサティラ:「本当の、本物の、真城碧さん」
プルサティラ:「『フォゲットミーノット』には、それが眠っている」
プルサティラ:「吸血鬼を蘇らせる血戒に」
忽亡ゆかり:でも。
乾咲フラン:「マシロの血戒は、そんなことを……?いや、そんなもの、あるはずがない……!あるはずが……!」
プルサティラ:「さっくんはずっと、物言わぬお母さんの手を握っていたから」
忽亡ゆかり:自分の知っていることと繋がっていく。
忽亡ゆかり:辻褄が合ってしまう。
プルサティラ:「現れたそれが、偽物だって、絶対にわかった」
プルサティラ:「何を願っても、偽物以外が蘇らないことを、知っていた」
真城朔:真城は眠っている。ミツルの呼びかけにも応えずに、こんこんと、深く。
忽亡ゆかり:「べ、別に今起こさなくてもっ、ほらっ、よく寝て、寝てるし」
忽亡ゆかり:また、現実から目を背けた。
忽亡ゆかり:真実を知るのが怖くて、逃げた。
忽亡ゆかり:決断を迫られるのが恐ろしくて。
夜高ミツル:「……っ、でも……!」
プルサティラ:「今は起こしてあげないよ」
プルサティラ:「起こしたげない」
プルサティラ:「あげないんだから」
プルサティラ:真城を胸に抱き寄せる。
忽亡ゆかり:その時に、皆がどんな判断をするのか。それは果たして自分の判断と一緒なのかが分からなくて。
忽亡ゆかり:答えを先延ばしにされたことに、少しだけ安堵してしまう。
乾咲フラン:「君はなぜ魔女になった……!」もしかすると他に真実が――真城以外の何かが暗躍しているのではないかという期待からの問い。
プルサティラ:「え、胡桃ちゃんに頼んだからだけど……」

糸賀大亮:ハイドレンジアーーーーっ!
プルサティラ:しれっと真実
乾咲フラン:ホンギャー

プルサティラ:「さっくんは私のこと、魔女にしてくれなかったからね」
糸賀大亮:「……」
プルサティラ:「……大変なことをお願いしてるのは、分かってるけど」
プルサティラ:「でも、みんなは私を殺しに来たわけだよね」
プルサティラ:「私を乗り越えられるのなら、できるでしょう?」
夜高ミツル:「…………」
糸賀大亮:「……君は、あの時から、もう」
糸賀大亮:「胡桃ちゃんが魔女になっていたことも、俺たちが何をしていたかも」
糸賀大亮:「知っていたのか」
プルサティラ:「えーっと、ちょっとずつ、ちょっとずつです」
プルサティラ:「私は、胡桃ちゃんと同じになりたくてね、願ったんだけど」
プルサティラ:「でも、今すぐはダメって言われて……」
プルサティラ:「邪魔なもの全部片付けた頃には、魔女になるようにって」
プルサティラ:「そういうふうに、だからね」
プルサティラ:「…………」
プルサティラ:「……ええと」
プルサティラ:「でも、たぶん、胡桃ちゃんを殺すつもりで、あなたたちはいるんだろうなっていうのは」
プルサティラ:「分かってました。はい」
プルサティラ:「それは……うん……」
プルサティラ:後ろめたそうにしょんぼりしている。
忽亡ゆかり:「……」
糸賀大亮:「…………」

乾咲フラン:(ゲロ吐き絵文字)
糸賀大亮:俺たち魔女(になるつもりの子)に人生相談してたんだな……
忽亡ゆかり:糸賀さんのせいじゃなくてよかったね
糸賀大亮:よっ……よくはないですが………………

プルサティラ:「……お話、長くなってきちゃったなあ」
プルサティラ:「疲れちゃった」
プルサティラ:うーんと伸びをして。
プルサティラ:それから視線を落とすと、プルサティラの身体がふわりと浮き上がる。
プルサティラ:真城を抱えたままの彼女の下に、大きく花開いたプルサティラの花が現れて、
プルサティラ:彼女はその上に腰掛ける。真城を横たえて。
プルサティラ:「とにかくね、私はね、さっくんをみんなに殺してほしくてね」
プルサティラ:「でも、多分、大変だからね、ええと、こう、試練のようなね」
プルサティラ:「乗り越えられなかったらそれはね、その時でいいんだけど」
プルサティラ:「がんばるのってつらいもんね。私もがんばれないからよくわかるし」
プルサティラ:「その時はその時で、みんなのこと休ませてあげられるように、私はがんばるから」
プルサティラ:任せて、と胸をはりかけてから。
プルサティラ:「……いや、まあ」
プルサティラ:「あんまりがんばれないんだけど、私……」しょんぼりと頭を垂れた。
プルサティラ:それから気を取り直して顔をあげ、
プルサティラ:「そこはまあ、がんばります」
プルサティラ:「私はさっくんのための魔女なのです」
プルサティラ:「さっくんのためなら、まあある程度はがんばれるのです」
プルサティラ:そう言い残して。
プルサティラ:ふわりとその姿が、掻き消える。
GM:魔女も真城も、公園には影も形も残らない。
夜高ミツル:ましろ、と呼びかけることすらできず、二人が消えるのを呆然と見送った。
忽亡ゆかり:「……命がけの覚悟で……それを……」
糸賀大亮:……
糸賀大亮:考える時間が必要だった。落ち着く時間が。
糸賀大亮:だから、退いてくれたのはありがたい。……のだが。
糸賀大亮:落ち着いたところで、いったいどんな結論が出るだろう。
乾咲フラン:「…………」最初あった大亮への心配が吹っ飛び、今は『真城を殺さなければいけない』という可能性にずっと脳を圧迫されている。
夜高ミツル:真城が母親を蘇らせたいと思っていたことは、確かにあの雪の日のことで知っていた。
夜高ミツル:あの部屋に住み続けていたことからも、ずっと母を思っていたことは分かる。
夜高ミツル:理屈は、通るのかもしれない。
夜高ミツル:……でも、納得はできない。
糸賀大亮:「…………とにかく、」
糸賀大亮:「少し話そう。……まずは、それからだろう」
忽亡ゆかり:「……はい」
夜高ミツル:「…………」頷く。
乾咲フラン:「っ、あ、ああ。そうだな」
忽亡ゆかり:魔女の言葉に、言い返せなかった。
忽亡ゆかり:本当に戦わなければならないのだろうか?
忽亡ゆかり:魔女との衝突を避けられないものにしている理由は、魔女によって眠らされた人々の存在があるからで。
忽亡ゆかり:それはつまり、あの魔女が、すでに自らの退路を断つ覚悟で、ハンター達の前に立っていることを意味していて。
忽亡ゆかり:悩んだところで、この先起こることはつまり、戦いなのだ。
忽亡ゆかり:「何だ?これ……」
忽亡ゆかり:まだ、整理が追いつかない。部屋には弟が眠っている。その弟を殺したのは真城だという。
夜高ミツル:真城がそんなことをするわけない、と思う一方で。
夜高ミツル:もし、彼女が言ったことが真実なら……という可能性からもやっぱり目を逸らせなくて。
夜高ミツル:モンスターは殺さなければいけない。
夜高ミツル:クラスメイトを殺した。大亮の友人を殺した。
夜高ミツル:人に危害を加えるからという理由で、人間すらも手にかけた。
夜高ミツル:──なら、真城も?
夜高ミツル:……頭を振る。
夜高ミツル:真城に直接聞くまでは、まだ。
GM:静かな夜。
GM:誰もが眠りについた夜。紫の花弁の揺れる夜。
GM:満ちる前の月に見守られ、魔女に選択を迫られた狩人たちは答えを出す。

GM:――果たしてその答えは、
GM:伸べられた手の、行く末は。

◆魔女:プルサティラ
耐久力16 余裕16 血量16
初期テンション23 激情2
◆支配力
・真城朔《退路》強度5
 私を置き去りにする、大切なひと。
・糸賀大亮《日常》強度5
 私を置き去りにする、大切なひと。
◆フォロワー
・『かなたの級友』有本しおん
・『元カノの』高尾すみれ
・真城朔

GM:このうち、真城朔は前哨戦の対象に取れません。ご留意ください。

糸賀大亮:うわーーーーーっ元カノ
乾咲フラン:鬼悪魔GM
糸賀大亮:ほんとに昔の恋人が来ちゃったじゃねえか
乾咲フラン:お待ちになってくださいまし?
乾咲フラン:フォロワー3人めはどういうことでございますの???!!!
糸賀大亮:イッヒヒヒヒヒヒヒw
乾咲フラン:思わずお嬢様になってしまいましてよ
夜高ミツル:ンギギギ
GM:前哨戦できませーん。>3人目
糸賀大亮:はーい
乾咲フラン:アーアアアーアアーーー
夜高ミツル:亡霊じゃん……
GM:お膝で眠ってるので、ねらえませーん。
乾咲フラン:この世の終わりだ~(感想)
糸賀大亮:めちゃくちゃだ~
夜高ミツル:涙出てきちゃった……
GM:かわいそう
忽亡ゆかり:弟とのシーンで先に精神が崩壊したため事なきを得た
GM:get_kotonaki
糸賀大亮:先にぐちゃぐちゃになっておくことでダメージが少なくなる技だ
忽亡ゆかり:フレンドオブ弟おんねんけどな
夜高ミツル:大亮さん支配力になっちゃった
糸賀大亮:えっ支配力?
糸賀大亮:俺が破壊されてしまう