2.5話
幕間2
GM:――真城朔と皆川彩花が姿を消した。GM:そのことが狩人たちに共有された時には、
GM:それがただの失踪ではないことが既に明白だった。
GM:ミツルの通う高校に、彼らの席は最早ない。
GM:モンスターとなって行方不明となった紅谷菖太と石原胡桃の座席は残されているのに。
GM:学校の誰もが彼らを覚えていない。
GM:皆川彩花の入院していた病院も同じだ。彼女の家族すら、一人娘の存在を完全に忘却していた。
GM:ただし。
GM:狩人たち――ミツルたち以外の――は、真城朔のことを未だ認識していた。
GM:またフランが調べたところ、真城碧と朔が五年前に暮らしていたアパートは契約がそのまま維持されているようだった。
GM:数少ない手掛かりの一つと言えるかもしれない。
GM:狩人たちは相談の末、その部屋に向かうこととなった。
GM:そのアパートは繁華街に近い場所にある。
GM:駅は近いが線路も近い古いアパート。
GM:フランは碧の生前、何度かそこを訪れたことがあった。
GM:ダイニングキッチンと寝室がきちんと仕切られていて、広さの割には快適な住まいだったような記憶がある。
GM:碧は近くの繁華街で働いていた。
GM:その賑わいは彼女が亡き人となった今も同じ。
GM:時間ばかりが残酷に流れて。
GM:夏の日差しの濃い影が落ちる、古びたアパートの前に、狩人たちは立っている。
GM:じいじいと蝉の鳴く声がする。
糸賀大亮:初めてのお宅訪問
GM:冷静に考えると8月だから、補習とかで学校行ったんだな。
GM:そしたらまるっと真城が座ってたはずの席がない。
夜高ミツル:そういえば夏休みだった
GM:ロッカーもない。
糸賀大亮:ないない尽くしだ
GM:真城はロッカーになんもかも詰め込んでましたからね。
忽亡ゆかり:しょうめつしている
夜高ミツル:そこからフランさんに連絡を取った感じですね
GM:それでグループラインで色々共有して 行くかってなって かな
乾咲フラン:ロッカー…
GM:真城が消えて二、三日後くらいかな。
GM:強い日差しが濃い影を落とすように。
GM:深く刻まれた思い出の落とす影は、未だフランの中には濃厚だった。
糸賀大亮:「……古いんだな」
夜高ミツル:「乾咲さんは行ったことあるんでしたっけ、真城の部屋」
乾咲フラン:「うん、何年か前だけど……」この通りはあんまり変わってない、なんて感想は口に出さず。
夜高ミツル:以前ミツルが真城に聞いてみた時は、なんやかんやと理由をつけて断られた。
夜高ミツル:何もおもしろいもんねーよとか、そんなことを言っていた気がする。
乾咲フラン:「とりあえず。」大家から貰った鍵をひょいと出して「入ろうか?」
夜高ミツル:「何年か前……」真城の母親が生きていた頃だろうか、とぼんやりと思う
糸賀大亮:「そうだな、ここでこうしていても仕方ない」
夜高ミツル:「……そうですね」
乾咲フラン:「流石に暑いしね。」払った汗がキラキラと輝く。
夜高ミツル:はじめて家を訪ねるのがこんな形になるとは思わなかった。
忽亡ゆかり:「……」懐に手を入れて、周囲を警戒している。
GM:不審な人影とかは見あたりませんね。
GM:至って平和な、夏の日の住宅街。
糸賀大亮:とにかく……早く調べたいところだな。何かが出てくるとは思えないが。
GM:ではフランが鍵を入れて回すとですね。
GM:がちゃりと音を立てて、
GM:鍵が閉まる。
GM:押しても引いても扉は開かない。
乾咲フラン:「え……」
忽亡ゆかり:「……開いてた……?」
乾咲フラン:「鍵が、開いていた。」独りごちるように知らせながら、もう一度回す。
GM:今度は開きます。
糸賀大亮:「……中に、誰か……いや」
乾咲フラン:ではドアを盾にするようにしながら開けましょう。(警戒しぐさ)
夜高ミツル:フランの後ろから部屋の中を覗く。
GM:部屋の中からは特に物音などは聞こえません。
GM:扉が開くと、どこかひんやりした空気が流れてくる。
GM:電灯がついている。
GM:ミツルが部屋の中を覗くと、
GM:玄関とダイニングキッチンを仕切るためにかけられたカーテンが、
GM:大きくはためいたその瞬間の形で、止まっている。
糸賀大亮:クーラー……?
糸賀大亮:なに。
GM:重力に逆らう形で硬直したカーテン。
GM:視線を落とすと、土間には血痕。
GM:とはいえ量は……そうですね。そんなに多くはないです。
GM:かといって日常で見られるものではない。
夜高ミツル:「……??」どうなっているのだと、カーテンを見て
糸賀大亮:「どうした?……」後ろから覗き込んで、黙り込む。
忽亡ゆかり:ナイフを構える。
GM:2LDKの部屋の、玄関から繋がるダイニングキッチン。
夜高ミツル:血痕は新しいものですか?
GM:新しく見えます。
GM:シーリングライトが点けっぱなしになっている。
GM:人の気配はない。
GM:中に入ります?
乾咲フラン:「…………」入りましょうか。
糸賀大亮:入ろう……
夜高ミツル:入ります
GM:カーテンをくぐろうとすると、硬い感触。
GM:硬直しきったそれは、全くなびくことなく形を保ち続けている。
GM:……もしカーテンが引かれた形で固まっていたら、恐らく中に入ることもできなかったでしょう。
糸賀大亮:硬いのか。
GM:完全に硬直していますね。
GM:中に入れば、既にフランも知っている。少々狭いが普通のダイニングキッチンだ。
乾咲フラン:「……まるで時が止められているようだな。」コンコンとカーテンを叩きながら。
夜高ミツル:硬直したカーテンに困惑しつつ、その先のダイニングへ。
糸賀大亮:「……魔女か?」得体の知れないものは全部魔女の仕業だと思っている節がある。
GM:二口コンロの片側に、おたまの入った寸胴鍋。
GM:コンロには火が点いている。
糸賀大亮:火も固まっている?
GM:火も固まっています。
GM:ダイニングテーブルの上には数学のワークと教科書。
GM:銀のシャープペンシル。赤ペン。無印のプラスチックの筆箱。使いかけの消しゴムと、消しかす。
GM:床に置かれた中学校のかばん。
乾咲フラン:これはこれは…
GM:生活の痕跡がそのまま残されている。
夜高ミツル:「魔女、なんですかね……」他に理由も思い当たらない
GM:寸胴鍋の中身はカレー。
糸賀大亮:「……」
GM:シールの剥がされた痕のある冷蔵庫に、中学校の学級だよりが貼られている。
GM:日付は五年前の春の、四月。
GM:フォゲットミーノットの事件の起こる少し前。
GM:冷蔵庫の隣に戸棚があり、炊飯器が収められている。
GM:表示を見れば炊けてから一時間経っていない。添えられた黒いプラスチックのしゃもじに米粒がついている。
糸賀大亮:ひとつひとつ眺めている。
夜高ミツル:「……」
GM:フランにとっては懐かしい光景だった。
乾咲フラン:その日付を見て理解する。静かに嘆息した。「そうか、そうか……」
GM:懐かしすぎるほど。
GM:五年より前、そのままの形。
GM:埃すら積もっていない。
糸賀大亮:「…何か、分かることがあるのか」
GM:ダイニングキッチンの左手に寝室へと続く扉がある。
GM:その扉は閉ざされている。
乾咲フラン:「ここは……5年前のあの日のままなんだ。……真城碧が、ああなってしまった日……」
夜高ミツル:「……5年前」
GM:ひんやりと冷えた空気は、
GM:春の夜の涼しさのそれだと、理解できる。
糸賀大亮:「……」
糸賀大亮:「……それは」
GM:窓が開いている。僅かにカーテンが、夜風にたなびいた形で、これも固まっている。
夜高ミツル:わずかに眉根を寄せる。
糸賀大亮:「真城に何かがあって……その余波で、ここがこうなったのか」
糸賀大亮:「……それとも、五年前から、ずっとこのままなのか?」
糸賀大亮:ふと思い浮かんだ疑問をそのまま述べて、この場の誰にも分かるはずはないと口を閉ざす。
忽亡ゆかり:「だとしたら……真城くんはずっと、この時間の止まった部屋で、暮らしてたのかな……」
乾咲フラン:「あの日のまま、ずっと……」
GM:ふとミツルの脚に、何か柔らかいものが当たる。
GM:薄いカーテンですら硬直したこの部屋の中ではむしろ特異な感触。
夜高ミツル:「……?」
夜高ミツル:足元のそれに目をやる
GM:柔らかいクッションだった。枕にできるほどの大きさの。
GM:辛うじて人間一人が寝転がることができる空間の、頭にあたるだろう部分に置かれている。
GM:そのクッションにだけ干渉することが叶う。動かすことも、拾い上げることもできる。
夜高ミツル:「……」クッションを手に取る。
GM:使い古された灰色のクッション。
GM:恐らく唯一の、この部屋がこのように”成り果てた”後に、持ち込まれたもの。
夜高ミツル:「……ここで、寝てたのか」
忽亡ゆかり:「……真城くん……」
糸賀大亮:「……」
GM:土間の血痕を調べてみれば、真新しい、乾いていないものに見えて、
GM:それがどうしても拭い去ることの叶わないものだということも、狩人たちには分かる。
忽亡ゆかり:「奥の部屋は?」
GM:扉は閉ざされています。
乾咲フラン:「ずっと、ここで……」どんな気持ちで、彼は?
GM:フランはそこが二人の寝室であったことを知っていますね。
夜高ミツル:いたたまれずに、クッションをそっと床に戻す。
GM:くたびれたクッションが、音もなく床に下ろされる。
糸賀大亮:ノブも回らない……んだろうな。
GM:回りません。
乾咲フラン:「……寝室だ、親子の。」
糸賀大亮:「…………彩花ちゃんは、部屋もなくなっていた」
乾咲フラン:「……」
GM:洗面所やトイレに繋がる扉も、すべて閉ざされている。
糸賀大亮:「ここはむしろ、こうなってるから、残されたままなのかも知れない……分からないが」
忽亡ゆかり:「っ、ぐ……!」扉を引いて、強引に開けようと試みる
GM:動かない。
忽亡ゆかり:「……だめだ」
夜高ミツル:「カーテンですらアレでしたもんね……」
GM:古いアパート。耐久性も心配になるくらいの。
GM:なのに力を込めて引いても、いくら体重をかけたところで、その扉は微動だにしない。
GM:数学のワークは中学1年生のものですね。存外に几帳面な字。正の数、負の数についての問題かな。
忽亡ゆかり:「動かすことも、壊すことも……力ずくじゃ、できそうにない」止まったままの火を、指で弾いて
GM:火はゆらめきすらしない。
夜高ミツル:真城が自分の部屋に泊まる時、床で寝るのに抵抗がなかったことに思いを馳せる。
夜高ミツル:ハンターだからとか、本人は言ってたけど。
乾咲フラン:「……しかしこれは、いったい何の力によって止められているんだろうな?」
GM:フランの脳裏に、D7の須藤の言葉が過ぎらないはずはありませんね。
乾咲フラン:ヒーン
糸賀大亮:「……魔女の……」
夜高ミツル:「……5年前からこうなら、真城がいなくなったのとはまた別の理由なんでしょうか」
GM:フォゲットミーノットと真城朔の血戒に、共通する特徴。
乾咲フラン:「……血戒……」口元に手をやって、思い出すように。
糸賀大亮:「……いや、そういえば真城の母親は、吸血鬼だったか」
GM:この部屋の空気は冷えている。
GM:窓も扉も開かれたまま、外は真夏のうだるような暑さ、
GM:本当であればこの部屋にも熱が籠もっていてしかるべきなのに。
乾咲フラン:「……そしてその息子、マシロが……"何か"を受け継いでいる。」
糸賀大亮:「……しかし、吸血鬼の血戒で……」
夜高ミツル:「血戒……」フランの呟きを反芻して
糸賀大亮:「……」
夜高ミツル:「……血戒で、こんなことが可能なんですか?」
GM:微妙ですね。血戒も血を媒介とした魔法ということではありますが。
GM:あんまりこういう不条理なことをそもそも吸血鬼はしないんですよね。奪う者だから。
乾咲フラン:「どうだろうな?……あまり聞いたことのない例だ。」
糸賀大亮:「……ふつうはない……」
糸賀大亮:グラジオラスのことを思い出している。
夜高ミツル:こんな、まるで魔女の行使する魔法のような。
GM:半吸血鬼でここまででたらめな現象を起こせる者も普通いないし。
GM:まあ、でも、でたらめなことをやった半吸血鬼や吸血鬼には覚えがありますね。ここの面々は。
糸賀大亮:「ないが……」考え込むように沈黙する。
乾咲フラン:「……」大亮のほうを見る。まさにそういったデタラメの被害者の顔を。
忽亡ゆかり:「……真城くんは、“普通”か?」
夜高ミツル:「……」
乾咲フラン:「……とは、言い難いんだよな……」やや苦々しく噛みしめる。
GM:一人で狩りに出て、モンスターと相対して、当然のように生きて帰っている。
GM:その時点で彼が異常でないと言えるはずがない。
糸賀大亮:「……」
乾咲フラン:フランは思い出を反芻しています。そんな事をしている場合ではないが……
夜高ミツル:部屋の異常に見慣れてくると、遅れて、真城の望まないだろう形で秘密を暴いてしまった罪悪感がやってくる。
夜高ミツル:失踪の手がかりが見つかればまだ良かったものの……。
真城朔:『あ? うち?』
真城朔:『……や、来ても仕方なくね?』
真城朔:『面白いもんなんもねえぞ』
GM:あくまで軽く、そう語っていたが。
夜高ミツル:冗談めかしてだが、部屋にあげることを真城は拒んでいた。
夜高ミツル:「……何も見つからなさそうだし、出ませんか?」
夜高ミツル:「このまま、ここにいるのも……」
乾咲フラン:「っ……ああ、そうだな。」思い出から戻ってくる。
忽亡ゆかり:「……わかった」最後にもういちど部屋を見て回る。
乾咲フラン:最後に台所を見る。碧の後ろ姿と、包丁の音が聞こえるようだった。
GM:調理の最中だった。剥かれた人参やじゃがいもの皮、洗いたての白いまな板。
GM:そうして部屋を出ようとしたところ、
GM:下駄箱の上の空間に置かれた写真立てが、狩人たちの目に入ります。
GM:室内に入る時には死角になっていて、見つけられなかった。
真城碧:真城碧と、
真城朔:五年前の真城朔が、中学校の前で並んでいる写真。
GM:――フランが撮ったものだ。
乾咲フラン:「あ……」
GM:もちろん、それも動かせるものではない。
GM:触れてもびくともしない。
GM:この部屋の止まった時を象徴するように、飾られている。
乾咲フラン:写真立てに触れる。動かないのは幸いだった。「……これは、私が撮った……覚えている。」
GM:ひんやりとしている。
糸賀大亮:「……」
夜高ミツル:写真立てに目を遣る。
糸賀大亮:髪が長いな……と思っています。
忽亡ゆかり:「この方が、真城碧さん……」
真城朔:五年前の真城朔は今よりも髪が長い。
真城朔:散髪に行くのを億劫がるのだと碧が言っていた。
真城朔:家計の苦しさを慮ったものであることも、彼女は理解していた。
夜高ミツル:写真に映った二人の姿に、見覚えがある。碧の方は記憶に残った印象とはやはり違うけれど。
夜高ミツル:五年前。自分の家族が殺された日。
夜高ミツル:複雑な心境が……まあ、ないと言えばやはり嘘になる。
乾咲フラン:(美人だろう)と心の中だけで笑った。写真の中の碧は、もう他人のもので……そう口にする立場に自分は無いと感じていたから。
乾咲フラン:写真立てが動かせなくてよかった。動かせていたら何か言い訳をつけて持っていってしまったかもしれないから。
糸賀大亮:「……出るか?」と、促す。
乾咲フラン:「そうだね。」何も変わらない調子で頷いて。
夜高ミツル:「……そうですね」写真を見ながら固まってしまっていた。
忽亡ゆかり:「はい」
GM:狩人たちは部屋を出る。
GM:鍵は……どうしますか?
夜高ミツル:鍵かけたら真城帰れない可能性あるのでは?
乾咲フラン:フランは開けたままにしておこうかな……マシロがまた使えるように
GM:そうかもしれませんね。
夜高ミツル:開けっ放し、持ち歩いてないでしょ……
GM:では鍵はそのままに、狩人たちはアパートを去る。
GM:外に出ると、
GM:真夏の強すぎる日射しと蒸し暑い空気が全身にまとわりついてくる。
GM:これこそが正しい現在なのだと、狩人たちに思い知らせるかのように。
GM:フラン邸行く?
夜高ミツル:毎度お邪魔します
GM:たよれるフラン宅
乾咲フラン:クーラーきいた室内いこうぜ
糸賀大亮:涼しい~
夜高ミツル:最高
乾咲フラン:やたらとフルーツの入ったアイスティーがデカいポットで置かれている
GM:優雅だ……
糸賀大亮:フォトジェニックだ
GM:フォトジェニックNTR未亡人乾咲フラン
GM:冷房の効いた快適な空間に佇む狩人たちは、
GM:先程見た光景の薄ら寒さを、拭いきれずにいる。
糸賀大亮:「……手がかり自体は、なかったか」
夜高ミツル:「……そうですね」口が重い。あの部屋の光景はまだ目に焼き付いている。
乾咲フラン:「あの部屋は、マシロか、彼女……FMNの血戒か、それとも……」
糸賀大亮:「……五年前からそうなら」
糸賀大亮:「今回のことには関係ないってことに……なるんだろうが、どうも……」
糸賀大亮:「…気にかかる。彩花ちゃんと……」
糸賀大亮:「……彩花ちゃんと、二人で、って言うのも」
乾咲フラン:「アヤカくんの失踪の仕方は、尋常ではないからな……」
夜高ミツル:「真城だけならともかく……ともかくって言うのもあれですけど」
夜高ミツル:真城だけなら、魔女に目をつけられたとかそれらしい理由を想像することができる。では彩花は?
夜高ミツル:「皆川さんの教室も行ってみましたけど、真城と同じでまるで最初からいなかったみたいになってて」
忽亡ゆかり:「……彩花ちゃんは…………」少し、言いづらそうに目を伏せて
忽亡ゆかり:「……寿命、延ばしたんですよね」
糸賀大亮:「……ああ」
忽亡ゆかり:「その……………」
忽亡ゆかり:「しわ寄せは、どこに?」
糸賀大亮:「…………はじめは、俺もそう思った」
糸賀大亮:「彩花ちゃんの病気を、治して」
糸賀大亮:「ハイドレンジアを殺した」
糸賀大亮:「そういうしっぺ返しが……あったんじゃないかとな」
糸賀大亮:「真城も、母親を……生き返しているから、そういう話の通り方は、する……」
糸賀大亮:「……だが、なんだか……」
糸賀大亮:「……」
忽亡ゆかり:「…………」
忽亡ゆかり:「病気は治った」
忽亡ゆかり:「……そう見えているだけで、私たちは幻覚を見ている。だから本当は今も彼女はどこかで苦しんでいる」
忽亡ゆかり:「病気は治った」
忽亡ゆかり:「でも寿命は変わらない。だから、彼女は消えてしまった……」
忽亡ゆかり:「病気は治った。なぜなら……」
忽亡ゆかり:「彼女は、人外として生まれ変わったから」
糸賀大亮:「……」
忽亡ゆかり:「…………ごめんなさい」
糸賀大亮:さすがに顔を引きつらせる。
糸賀大亮:「いや……」
糸賀大亮:「……いや、あり得る話だ……あり得る話だと思う」
糸賀大亮:「だが、どれにしたって……消え方ってものは、あるんじゃないか」
糸賀大亮:「さっき、真城は母親を生き返らせて、彩花ちゃんは病気が治った……と言ったが」
糸賀大亮:「……やっぱり、それだと真城が消えるのはおかしくなる、と思うし……」
夜高ミツル:「俺たちだけ……真城の方は他のハンターもですけど、覚えてられているのも不思議ですよね」
乾咲フラン:「なぜ二人で連れ立って消えたのか……二人に共通点はどれだけあるかな?」
糸賀大亮:「……幼馴染」
糸賀大亮:「それから……ハイドレンジア……胡桃ちゃんの共通の友人」
夜高ミツル:「真城からそれ以上のことは聞いてないですね、俺も」
夜高ミツル:聞いてないよね?
糸賀大亮:「同じ学校に通っている。……関係性はあるが、共通点となると」
GM:ないですね。
GM:訊かれない限り彩花については話してないので、セッション内のことが全てじゃないかな。
忽亡ゆかり:「もともと、私は……」
忽亡ゆかり:「……っ、真城くんが、人を吸血鬼に変える、という線にアタリを付けて動いてました」
忽亡ゆかり:「つまり、グラジオラス、ハイドレンジア、そして今回の行方不明の彩花ちゃんの共通点を、全員、真城くんに接触している、という考え方です」
乾咲フラン:「…………」興味深そうな視線をゆかりに向ける。
夜高ミツル:ゆかりを見る。あの日、病室で聞いた話。
糸賀大亮:「……」
夜高ミツル:あの時はまだ真城が隣にいた。一緒に彼女と話をした。
忽亡ゆかり:「この疑念について、真城くんから直接答えを貰っています」
糸賀大亮:「!」
糸賀大亮:「……あいつは、何て言ってたんだ」
忽亡ゆかり:「……吸血鬼や魔女になりそうな人間を、直感的に予想ができる、と」
乾咲フラン:「……」口元に手をあてる。つまり、アヤカちゃんは……
糸賀大亮:「……」
糸賀大亮:「……グラジオラスやハイドレンジアが」
夜高ミツル:「俺もその話をした時一緒にいたんですけど、そうなりそうな相手に警告してたって言ってました」
乾咲フラン:「なるほどな……」
糸賀大亮:「妙に真城を狙う風だったのは」
糸賀大亮:「……奴が前々から、狩人として二人に接してたせいだった、ってことか」
忽亡ゆかり:「たぶん」
忽亡ゆかり:頷く。
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:胡桃ちゃんが魔女になる前に。
糸賀大亮:その前に、真城がそのことを伝えてくれていれば、と。
糸賀大亮:咄嗟に思う。思うが……分かっていたところで、何ができたのかというと。
糸賀大亮:「……とは言え、真城は彩花ちゃんのことについては……」
糸賀大亮:「…………真城から、彩花ちゃんに、そういう警告をしていた様子は、なかったんじゃないか、と思う、が………」
GM:電話越しでしたが、彩花の件に関しては青天の霹靂といった反応でしたね。
糸賀大亮:声は弱々しい。そのはずだ、と思うが、自信がない。
忽亡ゆかり:「……………………で、あれば」
忽亡ゆかり:「彩花ちゃんは魔女になったわけではない、か」
忽亡ゆかり:「あるいは……何かしらの、イレギュラーがあって、真城くんには予想ができなかったか」
乾咲フラン:「イレギュラー……」思い起こされるのはこの、二人の失踪。
夜高ミツル:「……彼女に特別気をつけてる様子とかは、なかったとは思います」とはいえ真城は教えてくれないことも多いので、自信はない
糸賀大亮:「……彩花ちゃんが消えて、その後に真城が消えた」
糸賀大亮:「…………順番があって……」
糸賀大亮:「……だが、それが、真城の予想を覆す形で、……彩花ちゃんが、……」
糸賀大亮:その先は、言葉にならない。一度、大きく息をつく。
乾咲フラン:悲観的な話をするなら、真城が予測できずに彩花が魔女になって、警告をしにいった真城が……ということがありうる。しかし口にはしない。
忽亡ゆかり:「…………少なく、とも」
忽亡ゆかり:「我々がハイドレンジアと戦ってた時の、あの彩花ちゃんの態度は……」
忽亡ゆかり:「吸血鬼を、狩人を、魔女を、知っていたものでは、ないんじゃないかと思うんです」
糸賀大亮:「……」
糸賀大亮:〈やっぱり〉って言ってたな……
夜高ミツル:「そう、ですよね……」あの日の彩花の様子に嘘があったとは、ミツルには思えなかった
夜高ミツル:一方で、あの状況に妙に順応してるなと思ったことも覚えていて、いや、でも……
糸賀大亮:考えれば考えるほど、ゆかりの想定が正しいものではないかと思えてくる。
糸賀大亮:ただそれは、まだ確かめようもないことで、想定でしかない。たぶん……考える中では、最悪の方から数えた方が早い方の。
糸賀大亮:「……しかし、ハイドレンジアとグラジオラス、彩花ちゃんは……消え方が違う」
糸賀大亮:「ハイドレンジアは消えてさえいなかったが、グラジオラスも失踪者として記録は残ってた」
糸賀大亮:「……何かが、違うはずなんだ。何かが……」そうであってくれ、という願いが籠っている。
乾咲フラン:「まあ、異常な消え方ではあるな……」
夜高ミツル:「……あの二人の席は学校に残ってます。みんなも覚えてた」
忽亡ゆかり:「……覚えてた?紅谷くんと胡桃ちゃんのことを、みんな?」
夜高ミツル:頷く
忽亡ゆかり:「………………本当に?」
夜高ミツル:「紅谷は5月からずっと行方不明扱いで……真城がいなくなってからも同じです」
GM:普通に吸血鬼になった人間はだいたいそんな感じですね。
GM:魔女はまちまちかな。
夜高ミツル:「石原さんの方も……流石に学年が違うので、そんなに何回も確認に行ったわけじゃないですけど」
忽亡ゆかり:「……」頭をよぎるのは、冬園数と冬園文、あの二人とすれ違った時のこと。彼女らは果たして──グラジオラスという存在を、その戦いの記憶を残していただろうか?
糸賀大亮:「……何か、気になることがあるのか」
忽亡ゆかり:「グラジオラスが倒れた後、冬園数と冬園文を見ました」
忽亡ゆかり:「私に反応せず、グラジオラスの事を気にかける様子もなく、楽しそうに談笑しながら通り過ぎていったのを覚えています。あの校庭のことを覚えているようには見えなかった」
糸賀大亮:「……」
夜高ミツル:そういえばグラジオラスの傍にいた女の子がそんな名前だったな、と遅れて思い出す。
糸賀大亮:少女のことを思い出す。グラジオラスのことを、そう簡単に忘れるとは思えない。
乾咲フラン:「記憶から消えることに、条件でもあるのか……?」考え込み。
忽亡ゆかり:「兄を忘れた野嶋優香と、弟を忘れた私。このあたりは個人の問題かもしれませんけど……」
忽亡ゆかり:「“忘れる”という共通点が、とにかくよく出てくるんです」
忽亡ゆかり:「……たとえば、糸賀さん」
糸賀大亮:「……俺か?」
忽亡ゆかり:「糸賀さんは、仲間を吸血鬼に殺されたと聞きました」
糸賀大亮:「……ああ。それが……」
忽亡ゆかり:「その仇の特徴、なにか一つでも覚えてますか?」
糸賀大亮:怪訝な顔をする。忘れる、という話に関係があるとはとても思えない。
糸賀大亮:思えなかった……のだが。
糸賀大亮:「そんなのは……」
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:息を呑んだ。
糸賀大亮:思い出せない。……そんなはずはない。
GM:あの時自分に向かってきたはずの吸血鬼の姿が、
GM:靄がかかったように、頭をすり抜けていくのが分かる。
糸賀大亮:〈あの〉吸血鬼に、全身をずたずたにされて、立てなくなったのだ。
糸賀大亮:俺だけを逃がして、三人とも殺された……その姿が。
GM:思い出せるのは、大亮を庇って仁王立ちになった師の姿だけ。
糸賀大亮:「…………あ……?」
GM:へし折られた長銃と、もげ落ちた腕と。
GM:アスファルトを染め上げた夥しい血の赤ばかりが蘇って、
糸賀大亮:「待て……待ってくれ……」
GM:吸血鬼の具体的な姿は、何一つ。
糸賀大亮:「……忽亡さん、何を……何だ、これは」
糸賀大亮:「何を知ってるんだ」
忽亡ゆかり:「……やっぱり、そうなんですね」
糸賀大亮:「…………何の、話だ……」
忽亡ゆかり:「これは、真城くんから聞いた話です」
糸賀大亮:「……真城…………」
夜高ミツル:「……ジョン・ドゥって、真城はそう呼んでました」
夜高ミツル:「誰もそいつの姿を覚えてないって」
乾咲フラン:「……」
糸賀大亮:「何だそれは……」
糸賀大亮:だが、確かに思い出せない。
糸賀大亮:何で今まで、……気が付かなかったんだ?
忽亡ゆかり:「糸賀さんの仲間を殺し」
忽亡ゆかり:「私の家族を、真城くんの仲間を殺し」
忽亡ゆかり:「真城碧さんを、吸血鬼に変えた存在だ、と」
糸賀大亮:「……」
乾咲フラン:「ここ一連の、死すると何も残らない、花の名前のモンスターたち……」ぽそりと呟く。
忽亡ゆかり:「5年前にも、花の名前のモンスターがいましたね」
忽亡ゆかり:「フォーゲット・ミー・ノット……」
忽亡ゆかり:「……勿忘草」
乾咲フラン:「……FMNが死ぬときも、花になって、何も残らなかった……」
糸賀大亮:「みんな……同じだっていうのか」
乾咲フラン:「一つの源流があるのか?……全ての災禍の、もとが?」
夜高ミツル:「5年前から、今まで……」何もかも、繋がっているとしたら
夜高ミツル:バカバカしいような気もするけど、偶然の一致では片付けられないことが多いのも事実で
糸賀大亮:「…………だと、するなら」
糸賀大亮:「……それで、忽亡さん、さっきから……」
糸賀大亮:だとするなら、そのジョンドゥとやらによって、彩花ちゃんが……
糸賀大亮:……魔女か吸血鬼に変えられている可能性も、ある、ってことか? そんなことがあるか?
糸賀大亮:「…………くそ……」
GM:見舞いに渡されたハーバリウムも、彩花とやり取りをしたLINEのメッセージも大亮のもとには残っている。
GM:しかし、逆に言えばそれだけだ。
乾咲フラン:「D7に、マシロについて情報提供を求められた……D7は、この事を知っているのだろうか?」
糸賀大亮:「……好きそうな話ではあるがな……」
乾咲フラン:「彼らがなにかを知っているとすれば情報が欲しいところではあるが、私としてはあまり、な……」
夜高ミツル:ミツルはD7からなんか聞かれたりしてるのかなその辺
GM:特にないですね
夜高ミツル:ないか
GM:多分ですけど、ミツルくん本人からの情報はあんまり期待してないんですね。逆に。
夜高ミツル:なるほど
GM:なぜかと言うとどう考えても真城を庇うからです。
夜高ミツル:そうですね
糸賀大亮:真城くんを引き寄せる餌扱いのミツルくん
忽亡ゆかり:「とにかく、いま大事なのは、真城くん身辺の事情よりも、消えた真城くんと彩花ちゃんを探す手段です」
忽亡ゆかり:「真城くんの居場所を知りたい、真城くんを目の届く場所に置いておきたい……という点で、目的は一致する可能性はあります。こちらでも少し、情報を集めてみます」
乾咲フラン:「そうだな、私の方でも何か情報を掴んだら……連絡するよ。」
糸賀大亮:「……俺も、いくつか当たってみる」
夜高ミツル:「俺の方からは……D7くらいしか当たれそうなところはないですね」
夜高ミツル:「学校の方も、一応変化がないか気をつけておきます」
糸賀大亮:「頼む」
乾咲フラン:「というわけで今日は解散、かな。」
乾咲フラン:「忽亡クン、今日は来てくれてありがとうね」
忽亡ゆかり:「えっ……」
乾咲フラン:「……あんなことがあって、すぐには立ち直れないかもしれない。それなのに来てくれた忽亡クンに敬意を評したいんだ。」
夜高ミツル:「俺からも、ありがとうございます」
忽亡ゆかり:「い、いえ、そんな……」
忽亡ゆかり:「……むしろ、お礼を言うのはこっちの方です」
夜高ミツル:「俺じゃ考えの回らないようなところまで、忽亡さんは気がついて……えーと、忽亡さんに負担をかけてるってことだから、良くないんですけど」もごもご
忽亡ゆかり:「いいんだよ。働く機会が、欲しかった。役に立ってると思われたかった」
糸賀大亮:「……」
夜高ミツル:……無理をさせてないだろうか。尋ねても、多分大丈夫だと言われてしまうんだろうけど
忽亡ゆかり:「一緒にいてくれて、仕事させてくれて……」
忽亡ゆかり:「……夜高くんのおかげで、しっかりしなくちゃって、思えたんだよ」
夜高ミツル:「俺の……?」
夜高ミツル:俺が頼りないからか…………?
忽亡ゆかり:「糸賀さんや乾咲さんだけだったら、きっと甘えてばかりになってた」
忽亡ゆかり:「夜高くんが、私を……大人として評価してくれたから、その評価に見合った人になりたいって思えたんだ」
夜高ミツル:「忽亡さん……」
夜高ミツル:「……無理、させてませんか?」結局聞いてしまった
忽亡ゆかり:「……………………………………………………」
忽亡ゆかり:「……大丈夫だよ!もう少しぐらい、全然!」
夜高ミツル:今の、間は…………
夜高ミツル:「……そう、ですか」と、なんとも歯切れ悪く応えて
乾咲フラン:「(ええと……)ああ、そうだ、もし生活で困った事があったらいくらでも頼ってくれて構わないよ。些細なことでもいい……暇だとかそういうのでも。」
忽亡ゆかり:「……ほんとに大丈夫だよ。ちゃんと仕事は果たすし、役割はやり遂げるから」
糸賀大亮:「……」
糸賀大亮:「…………頼らせてもらうことには、なると思う」
糸賀大亮:「……今日のことも、感謝してる。新しいことも知れたし」
忽亡ゆかり:「ああ……でも、仕事以外の時間は、全部、暇かな」
夜高ミツル:「……あ、俺も、夏休みなので! いつでも声かけてもらって大丈夫ですから!」
夜高ミツル:誤魔化すように、フランに続く
夜高ミツル:狩りは相変わらず続いているが、真城の特訓がなくなった分は、まぁ……暇と言える状況だ。
夜高ミツル:バイトも今はしてないし。
糸賀大亮:「…………」
乾咲フラン:「じゃあ今度ウチで仕事を……」などと、美関連会社でゆかりの暇を潰せそうな道を提示するなどしたり。
忽亡ゆかり:「それは嬉しいです!仕事ならいくらでも!」飛びつく。
忽亡ゆかり:仕事ならば迷惑にならず、罪悪感も少ない。時間もいくらでも使える。物理的な限界まで動ける。
忽亡ゆかり:「……みんな、優しいね……私が、不甲斐ないからかな……」
乾咲フラン:碧を失った自分がそうだった。一人になる時間を作るにはまだ早い……思い出に潰されないように、肉体を酷使して無理やり走ったあの頃の事を思う。
糸賀大亮:「いいや……」
糸賀大亮:「……他人のことになると、急に無理をしているのが心配になるんだな……」
忽亡ゆかり:「本当に大丈夫なんだよ。迷惑とか、かけないようにするから。今は仕事も残ってるし……」
忽亡ゆかり:生きる役割も与えられている。ならば自ら死は選べない。戦死のような“不測の事態”ならともかくとして。
夜高ミツル:「不甲斐なさで言ったら俺のほうがよっぽどですよ」自嘲する
乾咲フラン:「一人になると、つらいから。……そんな時が、私にあったからさ。つい、おせっかいを焼いてしまう。」
夜高ミツル:「色々、考えちゃいますよね……」
糸賀大亮:「……夢見も悪いからな……」
忽亡ゆかり:「……………………………………」
忽亡ゆかり:目をそらす。自分が何を求めているか、見抜かれていることへの気まずさ。
忽亡ゆかり:「……私なんかが……人に迷惑は……」
夜高ミツル:「……迷惑なんて、思ったことないですよ」
夜高ミツル:もしかしたら今は優しくされることすら居心地が悪いのかもしれないけど。それは彼女を心配しない理由にはならない。
夜高ミツル:「今まで……というか今日も、俺はずっと忽亡さんに助けてもらってるので。忽亡さんも、俺のこと頼ってください」
忽亡ゆかり:「………………………………う」胸に手を当てる。
夜高ミツル:きっと他の二人も同じ気持ちだと思う。
忽亡ゆかり:甘える言葉が出かかって、喉元で止まる。
忽亡ゆかり:「それは……その…………」
夜高ミツル:「……あ、なんか、全然頼りないとか不甲斐ないとかだったら、えーと、改善するので……!」
夜高ミツル:どうやって? どうにか……
忽亡ゆかり:自分が求めるものを再確認して
忽亡ゆかり:「…………む」
夜高ミツル:む?
夜高ミツル:続く言葉を待つ
忽亡ゆかり:「むりです……」
忽亡ゆかり:「倫理的に…………やばいやつなのです……………人として…………」
夜高ミツル:「…………え?」
乾咲フラン:「倫理か…………」倫理か、という気持ちになりました
夜高ミツル:「は……えっ?」
糸賀大亮:倫理……?
忽亡ゆかり:顔を伏せて
忽亡ゆかり:「魔女になんか……こう、私がアレされそうになったら……殺してください……」
糸賀大亮:「あやふやな口調のままそういうことを頼むな……」
夜高ミツル:突然泣き出してしまったゆかりを見て、オロオロと
夜高ミツル:どうしよう、男子高校生なのでハンカチとか持ち歩いてないけど?
乾咲フラン:ミツルの年齢、弟クンの年齢、ゆかりの弟への思い……それらがフランの脳に答えを導きました。
乾咲フラン:「まあ……その時はその、魔女が悪いから……」ネ……と柔らかいハンカチを取り出します。
夜高ミツル:フランがハンカチを差し出したのを見て、少し落ち着きを取り戻す……
夜高ミツル:とはいえ、忽亡さんを泣かせてしまった”事実”だけが頭を駆け巡っていて何も分からない
GM:美メイドが落ち着く感じのハーブティーをゆかりに持ってきます。
GM:あったかいやつ。冷房効いてるからね。
糸賀大亮:倫理、何の話なんだ……と思っています。
忽亡ゆかり:「…………ぜったい高いハンカチだそれぇ……」
乾咲フラン:「肌にはこれぐらいがいいのさ。」
乾咲フラン:フワ……フワ……
忽亡ゆかり:「……肌……」
忽亡ゆかり:「……肌、気を使ったら、魅力的な人間になれますかね……」
乾咲フラン:「いいね、魅力高めていこうじゃないか。」意欲が出るのはいいことですね
夜高ミツル:大人の女性を泣かせてしまった時にはどうしたらいいんですか? ここに彩花ちゃん相談室があったら聞きたかった……
GM:まさか彩花ちゃん相談所を恋しく思う日が来るとはな……
忽亡ゆかり:「愛されてえ……17歳男子に求められてえ……あの家かえりたくねえ……ひッ、ふぐぅ……」
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:夜高を見た。
夜高ミツル:「…………」
夜高ミツル:固まる。
糸賀大亮:「……」
糸賀大亮:倫理か……と思っている。
乾咲フラン:「うんうん……まずは本音を出していくところから頑張っていこう……私達は仲間なんだから……」
乾咲フラン:横目で夜高を見る。その視線に様々な言葉が内包されているような気がする。
夜高ミツル:これは、だって、俺が自意識過剰で勘違いしてる……アレじゃないですか!?
乾咲フラン:「今部屋幾つか開いてるから、なんなら泊まっていってもいいからね……晩ごはんも出るからね……」セラピーの様相を呈する。
忽亡ゆかり:「……乾咲さん……!!!!!」
忽亡ゆかり:「ずびばぜん、ずびばぜん、生きててごめんなさい……泊めてくださいぃ……」
夜高ミツル:情報量が多すぎてぐるぐるしている間に乾咲さんがいい感じにしてくれてて、人生経験だな……と思いました
乾咲フラン:「うんうん、生きてていいからね、うちのメイドたちも喜ぶよ……」
GM:花の名を冠するモンスターたち。
GM:それらの出現はこの後さらに頻度を増し、狩人の戦いは苛烈になっていく。
GM:真城朔と皆川彩花の失踪についての調査も進まずに。
GM:無情な日常ばかりが巡りゆく。
GM:その先に待つ、
GM:夜風に揺れる花の色を、
GM:その花が果たして誰に捧げられたものであるかを。
GM:狩人たちはまだ、知らずにいる。