結果フェイズ
夜高ミツル:結果誰から?GM:ゆかりさんは最初か最後がいいよね……
忽亡ゆかり:そうだね……ミツルくんに付き添ってもらうシーンを描くなら最初かな?
GM:あーいっそ最初にそういうのと真城との会話やって
GM:最後の最後で家の確認とかする……?
GM:退院までに時間がかかると……思うので……タイムラグ挟む形の……
忽亡ゆかり:お、ありがたい
糸賀大亮:誰もいない家を…………確かめに……
GM:変速分割結果フェイズ2段構成……
GM:やりたいじゃんな 確認をよ
忽亡ゆかり:現実に向き合わなきゃな
GM:向き合おうな……
GM:じゃあそんな感じにゆかりさんはしましょう それ以外はなんか……いい感じに……
忽亡ゆかり:ありがとう、ありがとう
糸賀大亮:俺もまた入院かこれ
GM:9部位で入院しなかったらおかしいよ!
夜高ミツル:不死身か?
乾咲フラン:ほんとだよ
糸賀大亮:今度は闇病院だな……と思って
夜高ミツル:前回ミツルが4部位で闇送りでしたからね
糸賀大亮:闇送り笑う
乾咲フラン:闇緊急病棟だよ
GM:大亮さん闇じゃない方送られるまであるもんな今回
糸賀大亮:重傷過ぎて。
GM:だって1話の冒頭よりとんでんだぞ
GM:あれで普通の病院に送られて彩花と会ってるでしょ
糸賀大亮:そうなんだよ。
GM:ガラスに突っ込んだ扱いか?
忽亡ゆかり:緊急搬送だ(キャッキャッ)
糸賀大亮:そういえばこれ聞くのがあまりにも辛すぎて今の今まで確認できなかったんですが
GM:はい……
糸賀大亮:あの、背徳修復したら彩花ちゃんの病気って……
乾咲フラン:ヒヒ
GM:そのままだから安心しろ!!!!
GM:背徳は戻んないから!
GM:治ったままだから!!
糸賀大亮:(泣く)
糸賀大亮:そうだと、そうだと思ってたけど
糸賀大亮:怖くて……………
GM:そうか……………
GM:がんばったね……………
GM:どんな褒めだ?
糸賀大亮:うん……………胡桃ちゃん死んじゃった………
GM:死んじゃったね……
乾咲フラン:幸福……
糸賀大亮:(倒れる)
結果フェイズ:忽亡ゆかり 1st
GM:ミツルくんと真城がお見舞いに行く感じでいいかな。GM:多分ゆかりさんと大亮さん入院一ヶ月くらいで。
夜高ミツル:いくぞー!!
忽亡ゆかり:ぐったり
夜高ミツル:一話と逆になったね
GM:今回は普通の病院に入院してもらおう。
夜高ミツル:光病院
忽亡ゆかり:夫婦でお見舞いにくるの????
真城朔:夫婦じゃねーよ!
夜高ミツル:夫婦じゃない!
GM:というわけで、
GM:ハイドレンジアとの戦いで重傷を負ったゆかりさんは普通の病院へと搬送されました。
GM:曙光騎士団と繋がりもあるし今回クラブも関わってるしそういう感じで言い訳が入っている。
GM:大亮さんともども全治一ヶ月という感じですね。
GM:そういうところに、ミツルと真城が見舞いにやってくる。
夜高ミツル:今入院してどのくらいかな 最初のお見舞い?
GM:最初がいいでしょう。
GM:約束しましたからね。
夜高ミツル:だよね おっけー
GM:真城もついていきますけど、まあミツルくんのほうがメインでしょ。お見舞いとしては。
忽亡ゆかり:個室で寝たまま、ぼんやりと天井を眺めている。
忽亡ゆかり:もはや言い訳も、さほど取り繕う必要もない。
忽亡ゆかり:カバーストーリーを用意すべき相手は、もう居ないのだから。
夜高ミツル:こんこんと、控えめなノックの音。
忽亡ゆかり:「……はい」
忽亡ゆかり:それでも世界は回り続ける。
忽亡ゆかり:騎士団の仲間からは、自分が入院する表向きの理由を説明された。
夜高ミツル:「お邪魔します」 ミツルが病室へとやってくる。隣には、真城朔の姿。
真城朔:ミツルの隣で、小さく会釈。
忽亡ゆかり:「!」
夜高ミツル:手には……悩んだ末に無難に選んだ、フルーツと花を携えている。
夜高ミツル:「どうも、忽亡さん。……身体、大丈夫ですか?」
忽亡ゆかり:「……うん、全然大丈夫」
真城朔:「それは何より、……で」
真城朔:どうにも口が重い。視線が床に落ちる。
夜高ミツル:見舞いの品をサイドテーブルに置きつつ。花は……花瓶に入れるのか? とりあえず後にするか……。
忽亡ゆかり:「真城くんは……例の件?」
真城朔:「……ん」頷いた。
真城朔:「でも、先にミツから、言うことあるだろ」
真城朔:背中を小突く。
忽亡ゆかり:「?」
夜高ミツル:「え? えーと……」
夜高ミツル:言うこと、なんだか色々あるような気がするけど。まずは。
真城朔:椅子を引っ張ってきて座っている。ミツルのことも座らせる。
夜高ミツル:「……忽亡さん、生きててくれて良かったです。二人とも生きてないと、約束守ったことにならないですから」
忽亡ゆかり:「……うん」
忽亡ゆかり:「夜高くんも、生きててくれてよかった……。ごめんね。私、足を引っ張ってばっかりだった」
夜高ミツル:「そんなことないですって」
夜高ミツル:首を振る
忽亡ゆかり:「私が時間を食わなければ、もっと早く、真城くんと合流できたんだよ」
真城朔:「いやっ」
真城朔:思わず声が出たが。
夜高ミツル:「……だって、それだけ忽亡さんにとって弟さんのことが大切だったんですから」
真城朔:「…………」やや気まずげに視線を逸らしている。
忽亡ゆかり:「……でも、きみにとっては見知らぬ他人。しかもとっくに居ない人だった」
忽亡ゆかり:「君が戦う理由は、真城くんでしょ?」
忽亡ゆかり:「じゃあ、やっぱり私は邪魔だったんだよ」
夜高ミツル:「忽亡さんがたくさん話を聞かせてくれたから、見知らぬって感じでもないですよ」
夜高ミツル:「いや、なんか誤解されてませんか? 別に俺は真城のために戦ってるわけでは……」
真城朔:「そうそう」
忽亡ゆかり:「そうなの?」
真城朔:やっと口を挟んだ。
真城朔:「もっとなんつーか、めんどくさい理由というか」
真城朔:「俺一人のためとか言ってたらとっとと叩き返してるっての」
真城朔:「そんなアホ鍛えてる暇もねえっつーか」
夜高ミツル:「散々お前がいる方が邪魔って言われましたし」
真城朔:「ミツと二人よりは一人の方が楽だからな」
真城朔:「……だから」
真城朔:「それだけじゃない、し」
真城朔:「……忽亡さんのことだって、理由だろ」
真城朔:ミツルを見る。
夜高ミツル:小さく頷いて。
忽亡ゆかり:「……」腑に落ちない表情を浮かべながら、二人を見比べる。
真城朔:「……嘘言ってると思われてる?」
忽亡ゆかり:「……私に時間を食ってる間に真城くんを殺されても、そう言えるの?」
真城朔:「や、…………」そんなバカは、と言いかけるが、そういうことではないと理解して口を噤む。
夜高ミツル:「……」
夜高ミツル:「……そうなっても、それは忽亡さんのせいじゃないと思います」
夜高ミツル:「誰だって、簡単には譲れないものがあって」
夜高ミツル:「そういうことになったら、なんていうか、誰が悪いとかじゃなくて……」
忽亡ゆかり:「…………誰も責めてくれない」
忽亡ゆかり:「『現実を見ろ』」
忽亡ゆかり:「『私情に流されるな』」
真城朔:「…………」
忽亡ゆかり:「『選択を誤るな』」
忽亡ゆかり:「『吸血鬼とも魔女とも共存はできない』」
忽亡ゆかり:「他の狩人にそんな事を言ってきた。それを、何一つ私は守れなかった」
真城朔:「そういうのはさ」
真城朔:「今すぐ戦わなきゃならない瞬間にこそ、必要な方便だろ」
真城朔:「……少なくとも、弱ってる相手に追い打ちかけたところで」
真城朔:「何がどうなるもんでもない」
真城朔:「…………」小さく、息を吐く。
真城朔:「俺はあんたが生き残ってくれて良かったと思うよ」
真城朔:「それだけだ。あんたの弱さも間違いも、責めるつもりはない」
忽亡ゆかり:「…………」
真城朔:「……俺だって、他人のこと言えねえんだからさ」
真城朔:魔女に願いを叶えられたというのは、そういうことだ。
夜高ミツル:「俺たちの時は忽亡さんが止めてくれた。今度は俺たちが止める番だった」
夜高ミツル:「お互い様、みたいな……そういう感じですよ」
真城朔:「ミツだってこの前やらかしかけたって話だもんなあ?」
夜高ミツル:「…………うるせ」
忽亡ゆかり:「夜高くんは、思い出を忘れようとしただけだ」
忽亡ゆかり:「私は……仲間すら捨てようとした」
忽亡ゆかり:「『お前は仲間を捨てた』」
忽亡ゆかり:「『お前は最低だ……』」
忽亡ゆかり:「『人間じゃない』」
忽亡ゆかり:頭を抱える。
忽亡ゆかり:「『生きる価値なんかない……』」ばりばりと頭を掻き毟る。
忽亡ゆかり:「『お前を愛する人間は死んだ!もはや誰も残っちゃいない!』」
真城朔:「…………」
夜高ミツル:「っ、忽亡さん……!」
忽亡ゆかり:「あはは、ふふっ、はっ」
忽亡ゆかり:はっと我に帰る。
忽亡ゆかり:「っ……うっ……」ベッド脇の薬を手に取り、流し込む。
忽亡ゆかり:「ごめっ……なさい……」
夜高ミツル:「……いえ」
夜高ミツル:「俺達は本当に、忽亡さんが生きててくれて良かったと思ってるんです」
夜高ミツル:「責める気なんて、ありません」
真城朔:「タチの悪い魔女だった」
真城朔:「一人欠けてただけで、全員死んでたかもしれない」
真城朔:「あんたが戦ってくれたおかげだよ。誰も死なずに済んだのは」
忽亡ゆかり:「……狩人って凄いね」
忽亡ゆかり:「みんな、こんな事を乗り越えて来たんだ……」
忽亡ゆかり:「今の会社にもさ……たまに、会話が通じなくなる人が居たんだ」
忽亡ゆかり:「怪我だらけで、でも鍛えられた体してて、鋭い目してて。ひとめ見て、こっち側の人だって分かった」
真城朔:頷いている。
忽亡ゆかり:「今、私、そうなってないかな。大丈夫かな。ちゃんと、普通の人っぽく振る舞えてるかな?」
忽亡ゆかり:「夜高くん?夜高くんだよね? 居る、よね? 生きてるよね? 本物だよね……?」
夜高ミツル:「……はい。大丈夫です。ここにいます」
忽亡ゆかり:体をむりやり起こして、手を伸ばす。その身に触れようと。
真城朔:ミツルの背を押してゆかりへと追いやる。
夜高ミツル:押されてうわっとなりつつ、されるがままにゆかりの方に。
夜高ミツル:「ちゃんといますよ。魔女を倒して……まぁ、多少怪我はしたけど」
夜高ミツル:「帰ってきました。ここにいます」
忽亡ゆかり:「うん……うん」手を握る。怪我人とは思えないほどに強い力で。
夜高ミツル:少しでも彼女の不安を取り去れればと、その手を握り返す。
忽亡ゆかり:「よかった……よかった……」
真城朔:二人の様子を、隣から見ている。
真城朔:「……狩人なんて生き方、あんたが言う通りマジでクソくらえでさ」
真城朔:「いつやめてもいいんだ。やめたヤツの方がよっぽどまともだ」
真城朔:「……だから」
真城朔:「本当はこんなの、余計な情報だ。聞かなくてもいい話、で、…………」
真城朔:躊躇いに、わずか黙り込む。
忽亡ゆかり:「……やめられないよ」
真城朔:「…………」
忽亡ゆかり:「私はきっと、もう無理なんだ。普通の世界には帰れない」
忽亡ゆかり:「だから……聞かせて」
真城朔:小さく頷いた。
真城朔:「……あんたの弟を殺したヤツを、俺は知ってる」
夜高ミツル:「俺、席外しましょうか……?」
真城朔:「いや」
真城朔:首を振った。
真城朔:「そこにいろ」
忽亡ゆかり:「……一人で聞くのは、怖い」手を握る。
夜高ミツル:「……ん」
夜高ミツル:「わかりました」
真城朔:「…………」
忽亡ゆかり:「……どんな奴?」
真城朔:「……分からない」
忽亡ゆかり:「どういうこと?」
真城朔:「そいつのことは、俺はジョン・ドゥって呼んでて」
真城朔:「誰も覚えてないんだ。その姿も、特徴も」
夜高ミツル:ゆかりの手を握ったまま、二人の話を聞く。
忽亡ゆかり:「……名無しの男…………」
真城朔:「……ただ」
真城朔:「誰も覚えていないという特徴から、足取りを掴むことはできる」
真城朔:「……そいつは」
真城朔:「五年前に、俺の母親を吸血鬼にして」
真城朔:「四年前に、俺の仲間を皆殺しにした」
真城朔:「……二年前には、あんたの家族を」
忽亡ゆかり:「……!」
夜高ミツル:「……」
真城朔:「……一年前には、糸賀さんの仲間を」
糸賀大亮:えっ
忽亡ゆかり:「…………糸賀さんも…………!?」
真城朔:「珍しい名前だからな。忽亡、なんて、偶然じゃ被らねえだろ」
真城朔:頷く。
忽亡ゆかり:「……弟の事も、知ってたの?」
真城朔:「…………」
真城朔:「……乾咲さんの家で話した時には、既に」
真城朔:「でも、…………」
忽亡ゆかり:「……はは」
忽亡ゆかり:「君の目には、私はどう映ってたんだろう」
真城朔:「……本当は、あそこで言うべきだったのかもしれない」
真城朔:「そうすれば、最悪の形で魔女に暴かれるようなことも、なくて」
真城朔:「だから、…………」
真城朔:「……あんたは俺のことも、恨んでいいんだよ……」
忽亡ゆかり:首を振る。
忽亡ゆかり:「そんな事言われても、私は信じなかった」
忽亡ゆかり:「魔女が、記憶の光景を見せてきたから、私はあれを自覚できたんだ」
真城朔:でも、と言いかけて、首を振った。
真城朔:「……そうだな」
真城朔:「悪い」
真城朔:「……そいつのことは、他に言えることは何にもなくて」
真城朔:「だから、特に有益な情報でも、多分ないんだけど……」
真城朔:「でも、……俺はそれを、知ってた、から」
真城朔:だからあの時、と。
忽亡ゆかり:「…………」
夜高ミツル:5年前、真城の母親を。それなら自分にも関わりのある話で、真城がここにいろと言ったのも頷ける。
真城朔:「……あんたに死んでもらいたくなかった」
真城朔:「それだけの話だよ」
忽亡ゆかり:「……私は」
忽亡ゆかり:「私の役割は、きみを疑う事だった」
真城朔:「…………」
夜高ミツル:「……真城を?」
忽亡ゆかり:「紅谷くんも、胡桃ちゃんも……きみのお母さんもそうか。吸血鬼や魔女が生まれる前には、必ずきみが接触してた」
真城朔:「……そうだな」
真城朔:真城はそれを否定しない。あっさりと頷いて、続きを促す。
忽亡ゆかり:「だからきみをマークして、もし敵だとわかったら、首を刈る。そういう立ち位置だった……」
真城朔:「正しいよ」
忽亡ゆかり:「本当は、それは今でも変わってないんだけど。だから、言うべきじゃないんだけど……」
真城朔:「はは」軽く笑う。
真城朔:「……いいんだよ。あんたはそのまま、俺を警戒してくれ」
真城朔:「俺だって、自分がいつどうなるやら自信がねえからな」
夜高ミツル:「……」
真城朔:倒れ臥したグラジオラスを喰らった、あの姿。
真城朔:狩人たちがそれを忘れることはないだろう。
真城朔:何より、真城本人が、そのことを。
真城朔:「……俺は、どういうヤツが吸血鬼とか魔女にされるか、とか」
真城朔:「そういうのも、なんとなくわかるんだよ」
忽亡ゆかり:「……!」
忽亡ゆかり:「……だから、紅谷くんが吸血鬼だったことを、胡桃ちゃんが魔女だったことを、私たちより早く知っていた?」
真城朔:「確信はなかったけどな」
真城朔:「されるか、っていうか……才能? か? そういうとこだな」
真城朔:「だから、一応俺なりに警告してた、……ん、だけど」
真城朔:「……一般人に通じる話じゃねえし」
真城朔:でも、と首を振る。
真城朔:「もっと強めに言っておけば、大丈夫だったかもしれないかと思うと」
真城朔:「まあ、それも俺のせいになるか」
忽亡ゆかり:「…………ごめん」
真城朔:首を振る。
真城朔:「実際俺が厄ネタなのは確かだしな」
真城朔:「これからも警戒してもらえるならそれに越したことはないよ」
真城朔:「正直、ありがたい」
忽亡ゆかり:「……わかった」
真城朔:「ん」薄い笑みを浮かべる。
夜高ミツル:「俺にもその辺説明しといてくれてよかったんじゃないか?」初耳だ 別にいいけど……
忽亡ゆかり:「ふふっ」
真城朔:「いや、なんか機会がなくてな……」
真城朔:「急に言われても……何? って感じじゃね?」
夜高ミツル:「まあ……なるか? なるかもな……」
真城朔:だろ、とミツルに頷いてからゆかりを向く。
忽亡ゆかり:「それにしても……」
忽亡ゆかり:「私と、夜高くんと、真城くんと、乾咲さんと、糸賀さんの……共通の仇か」
忽亡ゆかり:「……まだ、長い付き合いになりそうだね」
真城朔:「……まあ、そうだな」
真城朔:「手がかり掴むのも結構キツいしな」
真城朔:「なんせ、覚えてないことに、言われるまで気付けないんだから」
夜高ミツル:「これって、偶然……なのか?」
真城朔:「……分かんね」
真城朔:「でも、……俺はずっとそいつを追って」
真城朔:「まあ……俺についてくるなら、どうせいつかは巻き込まれることではあったな」
真城朔:「俺から言えるのはこれくらい」
真城朔:「あんたに戦い続けろとも、ハンターやめろとも、言う気はないけど、……」
真城朔:ゆかりの顔を見る。
忽亡ゆかり:「……」
真城朔:「……まずは休むのがいいんじゃねえかな」
真城朔:「ミツも、おっさんも、……糸賀さんはまあ、寝込んでるけど」
真城朔:「あんたのことを気に掛けてる」
夜高ミツル:頷いて
真城朔:「少なくとも、あんたは独りきりじゃないよ」
忽亡ゆかり:「……うん」
忽亡ゆかり:「ありがとう。今度こそ全部。聞きたい事が聞けた」
忽亡ゆかり:「続けるよ、ハンター。ダメだったぶん、みんなの役に立ちたい」
真城朔:「ん」頷く。
真城朔:「そりゃ頼もしい」
忽亡ゆかり:「まだ、空っぽなんだ。生きる目的が欲しい……みんなが、自分の知らないところで戦ってるのが耐えられない」
夜高ミツル:「忽亡さん……」
忽亡ゆかり:「……弟と過ごしてきた時間は嘘だったけど、狩人として生きてきた時間は本物だった」
忽亡ゆかり:「これは正真正銘、自分に残った、自分のものだ」
忽亡ゆかり:「夜高くんは、護らせてくれるって言った」
忽亡ゆかり:「情けないけど……もうちょっと、心が元気になるまで、拠り所にさせてほしい……」
夜高ミツル:「忽亡さんがこれからも一緒に戦ってくれるなら……心強いです」
夜高ミツル:ボロボロの彼女にこんなことを言っていいのかとも思ったが
夜高ミツル:それが少しでも彼女の支えになるのなら。
真城朔:「良かったなーミツ、憧れのお姉さんがまた一緒に戦ってくれるぞ」軽口。
夜高ミツル:「おま……お前! お前!!」
真城朔:「わはははは」
忽亡ゆかり:「……」憧れ、という言葉には、複雑な心境だ。
忽亡ゆかり:けれど、こんな自分に未だに好感を持ってくれている。
忽亡ゆかり:それはきっと信じていい事実で、自分が捻じ曲げた幻ではないと思いたい。
夜高ミツル:「あー……で、でも! 今はとにかくゆっくり休んでてくださいね!」
夜高ミツル:「お見舞い、また来ますし」
忽亡ゆかり:「……うん。すぐに元気になって、復帰するよ」
忽亡ゆかり:「お見舞い、また来てくれると……すごく嬉しい」
忽亡ゆかり:だから、皆のために、刃を振るおう。今の自分が戦う理由は、仲間だ。
夜高ミツル:「何か欲しい物とかあれば、言ってもらえたら買ってきますし」
真城朔:噛み合ってないなーってちょっと思ってる。
夜高ミツル:俺はテンパっているのでよくわかってないぞ
忽亡ゆかり:「……じゃあ、お菓子とか、雑誌とか」
忽亡ゆかり:ついさっきまで、何かを読もうなど、考えもしなかったけど。
夜高ミツル:「俺が入院して時、忽亡さん買ってきてくれましたもんね。雑誌とか」
夜高ミツル:暇ですもんね、と頷いて
忽亡ゆかり:「……うん、少年向けの漫画雑誌。元気が出るやつがいい」
忽亡ゆかり:もうちょっとだけ、生きてみよう。
忽亡ゆかり:弟の居ない人生を。
夜高ミツル:「分かりました。じゃあ次はそうします」
夜高ミツル:「それじゃあ、また」
真城朔:「お大事にー」
GM:ミツルと真城が退室して、しばしのち。
GM:ゆかりの個室に新たな来客が訪れる。
『兄想いの』野嶋優香:……野嶋優香だった。
『兄想いの』野嶋優香:その顔は青褪め、頬はひどくやつれている。
『兄想いの』野嶋優香:ノックもなく。挨拶もなく、手土産すらなく、
『兄想いの』野嶋優香:幽鬼のような足取りで、優香は病室へと入ってくる。
『兄想いの』野嶋優香:「……忽亡、さん」
『兄想いの』野嶋優香:震える声。
忽亡ゆかり:「!…………優香……ちゃん?」
『兄想いの』野嶋優香:あまり眠れていないのか、クマがひどい。髪も乱れている。
『兄想いの』野嶋優香:「忽亡さん、私、……わた、し」
『兄想いの』野嶋優香:ふらふらとベッドの脇へと近づいて、縋るような目をゆかりに向ける。
忽亡ゆかり:「……どう、したの?」
『兄想いの』野嶋優香:瞳が合って、恐らく、悟るだろう。
『兄想いの』野嶋優香:優香もまた、”気付いてしまった”のだと。
『兄想いの』野嶋優香:「――兄さん、は」
『兄想いの』野嶋優香:「に、いさ、………」半ばでひゅっと喉が鳴る。
忽亡ゆかり:「…………」
『兄想いの』野嶋優香:「いない、んです」
忽亡ゆかり:「……うん」
『兄想いの』野嶋優香:「いない。家に帰っても、いなくて」
『兄想いの』野嶋優香:「帰っても、来なくて」
『兄想いの』野嶋優香:「シルバーバレットの人に訊いても、……兄さん、は、…………」
忽亡ゆかり:「…………、うん…………」
『兄想いの』野嶋優香:「兄さん」
『兄想いの』野嶋優香:「にいさん――」
『兄想いの』野嶋優香:膝を折る。両腕で顔を覆う。
忽亡ゆかり:「……私が、殺したんだ」
『兄想いの』野嶋優香:「――ぁ」
『兄想いの』野嶋優香:「あ、う」
『兄想いの』野嶋優香:「にいさん」
『兄想いの』野嶋優香:「にいさん、は」
『兄想いの』野嶋優香:「しんだ――ん、です、か?」
忽亡ゆかり:「…………確認した。間違いなく、死んでるよ」
『兄想いの』野嶋優香:「あなたが、ころして」
『兄想いの』野嶋優香:「あなたが」
『兄想いの』野嶋優香:「にいさん、を」
『兄想いの』野嶋優香:隠した顔を、ゆっくりと上げる。
『兄想いの』野嶋優香:ゆかりを睨みつける。
忽亡ゆかり:「……」
『兄想いの』野嶋優香:けれど。
『兄想いの』野嶋優香:ゆかりのあの日の姿が、
『兄想いの』野嶋優香:ゆかりもまた、同じように失った者であると、
『兄想いの』野嶋優香:それを。
『兄想いの』野嶋優香:知ってしまって、いるから。
『兄想いの』野嶋優香:「――あ」
『兄想いの』野嶋優香:視線はすぐに力を失って、落ちる。
『兄想いの』野嶋優香:「ああ、あ、あ」
『兄想いの』野嶋優香:「あああああああああああ――」
『兄想いの』野嶋優香:ベッドの横に蹲って、優香が叫ぶ。
忽亡ゆかり:なんと声をかければいいのだろう。
忽亡ゆかり:きっと必要なのは、言葉ではない。たくさんの時間と、そばに寄り添う誰かだ。
忽亡ゆかり:彼女が自ら命を絶たないように。自らの足で立てるようになるように。
GM:「忽亡さん、どうかしましたか……!?」悲鳴を聞いてか、看護師が病室に飛び込んでくる。
忽亡ゆかり:……そうか。自分もまさに、そういう状態なんだ。
忽亡ゆかり:「……ごめんなさい。友達と、お話を」
GM:看護師は室内の光景に驚いたが、すぐに優香の隣に駆けつけて、
GM:「大丈夫ですか……?」ゆかりと優香の、両方に問う。
『兄想いの』野嶋優香:「う、……うっ、ぁ」
『兄想いの』野嶋優香:優香はぼたぼたと涙を落としている。
忽亡ゆかり:その頭を撫でようと手を伸ばしかけて
忽亡ゆかり:……寄り添う資格はないなと、手をおろした。
忽亡ゆかり:「私は大丈夫です。その子の方を……お願い」
GM:「……はい」
GM:看護師に促されて、優香は去っていく。
GM:涙の痕が病室の床に残される。
忽亡ゆかり:「……」病院の天井を、ぼんやりと見上げる。
忽亡ゆかり:「……生きるって、大変だ」
忽亡ゆかり:「でも、がんばらなくっちゃね、かな……」隣へとほほえみかけて
忽亡ゆかり:「…………」それを止める。
忽亡ゆかり:まだ、
忽亡ゆかり:傷は癒えていない。
忽亡ゆかり:たくさんの時間と、寄り添う仲間たち。
忽亡ゆかり:これからの旅は、彼らとともに歩み、少しずつ、少しずつ。自分を取り戻す旅だ。
忽亡ゆかり:「…………大変、だなあ……」そう、ぽつりと呟いた。
GM:たいへんだね……………
夜高ミツル:一緒に頑張ろうね……
忽亡ゆかり:がんばる!!!!!!!!!!!!!
糸賀大亮:がんばろう……
糸賀大亮:生きるって大変だからな……
乾咲フラン:毎日がリハビリだぁ
結果フェイズ:夜高ミツル
GM:えーとでは、次はミツルくんですね。夜高ミツル:はーい
GM:どうしようかな。もうゆかりさんも大亮さんも退院したあとぐらいの
GM:結構もう日常に戻ってますねって頃でいいですか?
夜高ミツル:いいです
夜高ミツル:8月か
GM:はーい シーンとしてはそうだな
GM:あんまり料理要素やってないしな
GM:ミツルくんの作った夕飯食べながら話そうか
GM:その後今日も訓練するぞーみたいな感じで。
夜高ミツル:素麺だな
GM:OK
GM:じゃあそういうシーンで。
真城朔:そうめんっすか。
夜高ミツル:なんでもいいけど 夏だし
真城朔:夏だもんな。
真城朔:真城はスマホ弄って待ってますね。もう夏休みか。
真城朔:いつものミツルくんの部屋。
真城朔:夏休みということで、狩りに連れ出されるのも訓練でしごかれるのも結構容赦がなくなってきた。
真城朔:元からそんなに容赦はないが。
夜高ミツル:「たまには手伝えよなー」とか言いつつも、大して期待してない声。
真城朔:「何すればいいかいまいちわかんねえんだよな」
真城朔:「言われたらやるけど」
夜高ミツル:片手には大きな器に盛った素麺、もう片手に取皿を二つ。
夜高ミツル:台所に戻ってつゆとかネギとか持ってきたり。
真城朔:ぼーっと眺めてる。
糸賀大亮:なんも分かんないもんな 家事
真城朔:なにもわからない
糸賀大亮:金で何とかしてきたんだもんな…
真城朔:「あー」
真城朔:そういうのかーって顔するけど、そうこうしてるうちにミツルにやられる。
真城朔:真城がスマホを置くと、その間も何やら新着メッセージが届いている。
真城朔:狩人の知り合いからだろう。
夜高ミツル:「麺つゆ薄めないやつだから、適当に自分で入れろ」
夜高ミツル:さすがにそこまではしなかった。
真城朔:「んー」
真城朔:本当に適当にやっている。だばだば。
夜高ミツル:「ん、なんか急ぎの連絡か?」
真城朔:「いや別に」
真城朔:「いつでもなんとかなる奴」
真城朔:「多分」
夜高ミツル:そういうこともたまにあったので、それならそれで何も言わないけど。
夜高ミツル:「ふーん、じゃ食おうぜ。素麺が伸びる」
真城朔:面倒になって機内モードに切り替えてしまっている。
真城朔:「えっ伸びんのこれ?」
夜高ミツル:ちなみに氷水に入れているタイプの盛り方。
真城朔:なるほどね。
夜高ミツル:家庭によって差がね……
真城朔:「冷たくても水吸うんだなー」
夜高ミツル:「そう。だからさっさと食え」
真城朔:「うーす」
真城朔:「いただきます」
夜高ミツル:「いただきます」
真城朔:のろのろと箸を取って、適当に薬味を突っ込んでいる。
夜高ミツル:一人の時は結構適当にしてたけど、真城が言うので言うようになった。
真城朔:ぼんやりくるくるとめんつゆを混ぜている。
夜高ミツル:「……素麺嫌いだったか?」
真城朔:「いや?」
真城朔:「特に好き嫌いとかは別に」
真城朔:「にんにくも問題ねえの知ってるだろ」
夜高ミツル:「それ結構びっくりしたんだよなー」
真城朔:そうめんをひとつまみ取って、めんつゆへと漬ける。
夜高ミツル:「いや、気のせいならいいけど」
真城朔:「半吸血鬼、言うほど吸血鬼じゃないからなあ」
真城朔:「日光問題ねえし」
真城朔:「まあ眩しくはあるけど」
真城朔:またくるくる回してる。
乾咲フラン:食べ物で遊ぶましろくんかわいいね
真城朔:幼児か?
忽亡ゆかり:たまに子供の顔みせてくんのズルいわ
糸賀大亮:真城はめんつゆで遊ぶからな
真城朔:「めんどくさいし……」
真城朔:「よくまー頑張るもんだと感心してたわ」
真城朔:小さなひとすくいを取って、ちゅるちゅる啜る。
夜高ミツル:「まあ、行くからにはな……」
夜高ミツル:高校に通う資金は、ある程度親戚に出してもらっていたので。
真城朔:「まあ成績気にしたらそうなるか」
真城朔:成績気にしてない人の言動。
夜高ミツル:「ちょっとは気にした方がいいんじゃねーの? 卒業できるのか?」
真城朔:「正直、できなくても困る気がしない……」
真城朔:だから逆に困ってるみたいな顔をする。
夜高ミツル:そうめんを取っては食べしつつ。
夜高ミツル:「3年まで来たんだから卒業はしとけよ、せっかくだし」
真城朔:「うえー」
夜高ミツル:「あと半年ちょいだろ」
夜高ミツル:がんばれがんばれ、とよく真城に言われるように
真城朔:「半年かー……」
真城朔:「半年なー……」
真城朔:頬杖をついて微妙な顔をしている。
真城朔:くるくると回しためんつゆの液面を眺めながら。
真城朔:「……運がよければなんとかなるといいよな……」
夜高ミツル:「……なるだろ」
夜高ミツル:根拠もなくそう言う。
真城朔:「モンスター殺すほうが楽じゃね?」
夜高ミツル:「そうか~~?」
真城朔:「物理でなんとかなるから……」
真城朔:「最後は暴力だし……」
夜高ミツル:「暴力だけどさ……」
真城朔:「高校は暴力で倒せないからな」
夜高ミツル:「まあ真面目にテス勉してる真城とか想像つかねえな……」
真城朔:「だろ~?」
夜高ミツル:「……教えてやろうか? 勉強」
真城朔:「ええ………………」
真城朔:かなり嫌そうな声と顔が出た。
夜高ミツル:「それは勉強が嫌なのか? 俺に教わるのが嫌なのか?」
真城朔:「…………」
真城朔:「……どっちだと思う?」
真城朔:これ見よがしの笑顔で首を傾げてみせた。
夜高ミツル:「両方」
真城朔:「はははははは」
真城朔:「っていうかそんな暇ないだろ」
真城朔:「まだまだ俺、ミツのこと鍛えなきゃなんねえし」
真城朔:「ナシナシ」
真城朔:手と手でバツマーク作った。
夜高ミツル:「……それもそうだな」
真城朔:「俺の高校卒業よりもミツの生存だよ」
真城朔:言ってからん? って首かしげた。
真城朔:バツマーク作ったまま止まる。
夜高ミツル:「?」
真城朔:「……まあ」
真城朔:「うん」
真城朔:「そういうことで」
夜高ミツル:「なんだよ」
真城朔:戻した。
真城朔:「いや、色々叩き直さねばならんなあと」
真城朔:「そう思いました」
真城朔:小並感。
夜高ミツル:「はぁ!? そういう流れだったか!?」
夜高ミツル:叩き直すと言ったらやるやつだ、こいつは。
夜高ミツル:大変な特訓が待っているのは想像に難くない。
真城朔:「そもそもそんな余裕がないことをだな~」
夜高ミツル:「う……」
真城朔:「魔女も吸血鬼もさ、増えてるし」
真城朔:やっと次のそうめんを掬いながら。
夜高ミツル:「……ん」
真城朔:モンスターの出現頻度は相変わらず増しており、
真城朔:それに連れ回されることも、当然多くなっていた。
真城朔:他の狩人たちを伴って、あれからずっと戦ってきた。
真城朔:そのたびに真城との差を思い知らされていることは否定できないだろう。
夜高ミツル:「……わかってるよ、わかってる。今日も頼みますよ真城大先輩」
真城朔:「まかせろー」
真城朔:またくるくるとめんつゆとそうめんを回しながら非常に軽い返答。
夜高ミツル:「……そういえばさ、」そうめんを掬いながら、なるべくさり気なく、ふと思い出したというように
真城朔:「んー?」
夜高ミツル:「……真城さ、俺のことミツって呼ぶだろ」
真城朔:「?」
真城朔:それがどうかしたのかと視線を向けて。
夜高ミツル:「それ、めぐる……うちの姉ちゃんがしてたのと同じ呼び方なんだよな」
真城朔:「えぁ?」
真城朔:「何その突然の激重告白」
真城朔:ちょっとヒいてる。
夜高ミツル:「……え? 重かったか?」
真城朔:「いや……軽くはないだろ……」
夜高ミツル:重くならないようにしたつもりだったんだけど……
真城朔:ばっちり重がっている。
夜高ミツル:「いや、なんとなくさ、なんとなく思ったんだよ! そういえばなって!」
真城朔:「はあ……」
真城朔:視線をミツルに向けたまま手元でめんつゆをかき混ぜている。
夜高ミツル:彩花にちゃんと話をしろと言われてから一ヶ月。機会を得られずになんとなく後回しになってしまっていた。
夜高ミツル:「まぁ、だから何ってわけでもねーんだけどさ」
夜高ミツル:「呼ばれると思い出すから、まぁ……嬉しいかなって思ったんだよ」
真城朔:「…………」
真城朔:「俺はお前の姉ちゃんじゃねえぞ」
夜高ミツル:前は、少し嫌だった。思い出すから。
夜高ミツル:「そうだな」
夜高ミツル:そりゃそうだという顔
真城朔:「そうだなってお前」
夜高ミツル:「なんだろうな、なんていうか……」言い方を探っている。
夜高ミツル:でも既に出だしで重いって言われたし、どうやっても重くなるな……ということに気づき始めている。
真城朔:はあ……みたいな顔でミツルを見てるが。
真城朔:「……なんていうか、何」
夜高ミツル:なんとなく座り直して。
真城朔:ぱちぱちと瞬き。
夜高ミツル:「……結局重くなるんだけど」
真城朔:「え。何」
真城朔:進まない箸を片手に。
夜高ミツル:「……俺、家族のことと、真城と友達でいること。どっちかしか選んじゃいけないような気がしてて」
真城朔:「は」
夜高ミツル:「でもさ」
夜高ミツル:「多分そうじゃないんだよな」
真城朔:「…………」
夜高ミツル:「俺の家族が死んだことと、真城と友達でいたいことは両立するって……」
夜高ミツル:「えーと……だから……」
真城朔:「???」
夜高ミツル:「お前! 今更変な遠慮とかするなよな!」
真城朔:「はあ???」
夜高ミツル:やっぱりこいつの中でこの話は前で終わってたんじゃないのか!?
真城朔:「いや遠慮って何を?」
真城朔:「もっと蹴ってほしいってこと?」
真城朔:「そういう趣味?」
夜高ミツル:「ちげーよ!」
夜高ミツル:「ていうかそこは遠慮してないだろお前」
真城朔:「じゃあ何だよ」
真城朔:「いや手加減はめちゃくちゃしてるし」
真城朔:「しなきゃミツ死ぬし」
夜高ミツル:「はいはい……」
夜高ミツル:「……別に、お前が気にしてないならそれでいい」
夜高ミツル:俺が恥ずかしい思いをしただけで……
真城朔:「だから何を……?」
真城朔:首をひねっている。
夜高ミツル:「俺の家族のことで、友達じゃいられないとか言ってただろ……前に……」
真城朔:「…………」
真城朔:「……そういう話かよ」
真城朔:はー、と、ため息。
真城朔:「それこそ遠慮しなくていいのはそっちだろ、その話」
夜高ミツル:「別に、俺は……」
真城朔:「お前話わかりづらすぎ」
夜高ミツル:「……はい」
真城朔:「…………」
夜高ミツル:敬語になってしまった。自覚があったので。
真城朔:「……許す側がそっちなんだから」
真城朔:「俺の側の問題じゃねえわけ、それは」
真城朔:「最初から」
真城朔:「何をまーいきなりよく分かんないこと言い出すかと思ったら……」
真城朔:やれやれと首を振る。
夜高ミツル:「……機会が、タイミングが、なくて」
夜高ミツル:よく分からないタイミングになってしまった。
真城朔:「それこそ遠慮しなくていいんだよ」
真城朔:「別にどんだけ責められても構わねえと思ってるし」
真城朔:「ついでにやっとく?」
夜高ミツル:「いや……俺そういうのはあんまり……」
真城朔:「えー」
真城朔:何故か不満そうに。
夜高ミツル:「えーってなんだよ」
真城朔:「いや、不満溜められる方がめんどくせえなって思って」
真城朔:「ガス抜き、できるときにしといた方がいいぞー」
乾咲フラン:えっ、やっとくって……
乾咲フラン:エロ同人誌の導入じゃん今!
乾咲フラン:ママー!!!1
真城朔:ヒーヒヒヒ
糸賀大亮:ひひひひ
乾咲フラン:げ、現実が俺の脳に追いついた!
真城朔:不満ってそういう……
乾咲フラン:ガス抜きってそういう意味じゃん!!!
真城朔:「なんだよ」
夜高ミツル:「皿の洗い方が適当すぎるとか……」
真城朔:「あー」
真城朔:「うーん」
真城朔:「まあ普段全然やんねえからな……」
真城朔:「すっかり忘れたわ、やりかた」
夜高ミツル:「皿洗うのにやり方もなんもねえだろ」
真城朔:「いやほら感覚っていうかさ……」
真城朔:「力加減とか……」
真城朔:適当言ってる
夜高ミツル:「モンスター殺すより簡単だろ」
夜高ミツル:「暴力は通じねーけど」
真城朔:「モンスター殺すのに力加減とかないじゃん」
真城朔:「ミツ殴るのには力加減要るけど」
夜高ミツル:「あとは……準備手伝わねーのはさっき言ったな。あー、脱いだ服その辺に散らかしてるのとか」
真城朔:「生活面ばっかじゃん」
夜高ミツル:「そうだな……」
真城朔:「いやあ人間の暮らしとか久しぶりでなあ」
真城朔:クソ適当言ってるな……
夜高ミツル:「普段どんな生活してたんだよ」
真城朔:「いやほらなんていうか」
真城朔:「だいたいのものはさ、なんつかこう」
真城朔:「買い替えるのが一番早いっつーかさ」
真城朔:「実際そうじゃん?」
夜高ミツル:「いちいち買うのも面倒じゃねえ?」
真城朔:「ええー?」
真城朔:わかんね~って声
見学の水面:いちゃついてる……
乾咲フラン:これ~~!
乾咲フラン:ほのぼの同人誌じゃん!!!
elec.:ママ~~~~続きのR18シーン出して~~~!!!
糸賀大亮:えれくさんがあまりのことにしっかりえれくさんとして発言を
真城朔:中身が
糸賀大亮:まろび出ている
真城朔:そのあたりで真城が箸を置きます。
真城朔:「ごちそうさま」
真城朔:あんまり食べてないですね。相変わらずの少食。
真城朔:スマホを取って、座布団から立ち上がる。
夜高ミツル:「ん。あ? あ~……」話してる内にそうめんが伸びてしまった。
夜高ミツル:残りを適当に食べて、ミツルも手を合わせ。
真城朔:「俺先公園行ってるから、そのあたり洗ってから来いよ」
真城朔:真剣を振り回すようになってから、先に真城が人払いをしたりとか、
真城朔:周囲に人の目がないか確認したりとか、そういう風になってますね。
真城朔:見られたらマジでやべえからな……
夜高ミツル:「はー? 置いとくからお前が後で洗えよな」
真城朔:「洗い損ねが出るだろー」
真城朔:言い返しながら、さっさと玄関に向かっている。
夜高ミツル:「出ないように努力しろ!」
真城朔:「わははは」
真城朔:適当な笑い声を返して、真城が先に出ていく。
真城朔:玄関の扉が閉まる。
GM:こうして夕飯を食べた後に、
GM:二人で訓練に赴くのがいつもの日常になってから、随分と長い。
GM:日常になってしまった、と思うことさえもないくらいに。
GM:狩人の日常。ゆかりを留めた自分たちの日常。
GM:それを全うすることもまた、きっと、夜高ミツルの果たすべき責任の一つなのだろう。
結果フェイズ:乾咲フラン
GM:フランさん、ハイドレンジアの討伐後入院とかはしないかなGM:普通に家で静養できそうですよね
乾咲フラン:あんまり飛んでませんでしたね
GM:両脚と感覚器くらいだしねえ
乾咲フラン:闇病院ですみそう
GM:なんならフランさんなら家の設備でなんとかなるでしょ。
乾咲フラン:どんどんでかくなる家
GM:フランさんの家はいくらでも盛っていい。
糸賀大亮:乾咲邸に対する信頼感
夜高ミツル:なんでもあるな~
忽亡ゆかり:美医者の控える美務室があるんだな
糸賀大亮:美務室
糸賀大亮:かかると美しくなってしまう
夜高ミツル:医療要素が消えてる
糸賀大亮:ほんとだ
忽亡ゆかり:傷とかを美しく消す……
糸賀大亮:傷を治すだけではなく美しく
GM:乾咲家に訪問があります。
乾咲フラン:誰だ誰だ~
GM:D7のハンターですね。
GM:名前は……須藤でいいかな。須藤というD7所属のハンターが訪れます。
GM:学生エージェントではなく、研究機関寄りの、結構上の方の人。
GM:フランさんとは何度か協力して狩猟にあたったこともあると思われます。
乾咲フラン:おやおや
乾咲フラン:では客間で出迎えます
GM:「急な訪問、失礼致します」
GM:スーツを着込んだその男は礼儀正しく頭を下げる。
GM:「ハイドレンジアの件はお疲れ様でした」
乾咲フラン:「気にせず、どうぞ楽にしてください。」
乾咲フラン:「どうもありがとう……とは言え、私はそれほどダメージがありませんでしたので」
GM:「いえいえ。大変な魔女でしたからね」
GM:「うちのエージェントからも報告が上がっています」
GM:なかなかの破壊されぶりでしたからね。街。
乾咲フラン:事後処理がもう大変だっただろうな
GM:ハイドレンジア本人による破壊はもちろん、雪にまつわるものでもなかなかの被害を受けたので、
GM:今もその爪痕が八崎市全体に残されています。
乾咲フラン:無関係の電力会社にクレームが大量に……
GM:「……乾咲さん」
GM:「あなたは信頼できる狩人だ」
乾咲フラン:カップから顔を上げる。
GM:「今回の件も、あなたの活躍で被害を抑えられた側面は大きいでしょう」
乾咲フラン:「須藤さんにそう仰って頂けるとは恐縮……いえいえ、4人いてこそでしたよ。」
乾咲フラン:真城の事は迷ったので、伏せる。
GM:「そうかもしれませんね」その男は曖昧に笑った。
GM:「そのあなたに、確認したいことがあります」
乾咲フラン:「何でしょう。」平時の、対外的な美しい笑顔。
GM:「真城朔」
GM:フランが今しがた伏せた名前を、須藤はあっさりと口にした。
GM:「あなたは彼と非常に親交の深いハンターだ」
乾咲フラン:「そうですね。」
GM:「彼に関して、あなたからの情報提供を求めたい」
GM:「……ああ、いえ」
GM:須藤は頭を振る。「まずはこちらから開示するのが筋でしたね」
乾咲フラン:「そうですね。」
乾咲フラン:二連そうですねになっちゃった
GM:そうですね~
GM:「疑惑というほど深いものではまだないのですよ」
乾咲フラン:「ふむ?」優美に指を組んで須藤を見る。
GM:「ただ、彼には特異な特徴がいくつか窺える」
GM:「あなたにも心当たりがないはずはないでしょう」
乾咲フラン:「……隠し通せるものでもないですね。ええ。少しばかりね。」
GM:「はい」
GM:「D7としても、独自の調査を進めてはいたのですが……」
GM:「決定的だったのは、以前の訪問ですね。夜高ミツルを伴っての」
乾咲フラン:「ほう……」
GM:「彼に使わせた血戒を観測した際」
GM:「半吸血鬼には有り得ない、魔力の発生をこちらで確認しました」
GM:「……魔法少女や魔女の魔法に伴って観測されるはずの、ね」
乾咲フラン:「マシロの、血戒か……」
乾咲フラン:やっぱり魔法少女 やっぱりお姉ちゃんじゃないか(錯乱)
夜高ミツル:ママお姉ちゃん!
糸賀大亮:雑談タブが一気に落ち着きがなくなってまいりました
糸賀大亮:魔女にして吸血鬼、相手にしたくなさ過ぎて泣いちゃうな
夜高ミツル:嫌な展開ばっかり考えちゃうからずっと与太の話してたいよ
GM:「フォゲットミーノットの持っていたそれと一致しています」
GM:「彼の母親のね」
乾咲フラン:「…………」
GM:「思えばあの事件も不可解でした。被害の規模の割に、表社会では騒がれていない」
GM:「魔女による認識障害が働いていたかのように」
乾咲フラン:笑顔は薄れ、じっと須藤の話を聞いている。
GM:「彼はその息子ですから、何らかの関係があると見て間違いない」
GM:「男性の魔法少女というのは、希少ながら他にも報告例があります。我々の手で保護していた時期もありました」
GM:「ですが、半吸血鬼が魔法を操るという例は……」
GM:ちらりとフランの顔を窺う。
乾咲フラン:「と、言われましてもね……」どうしたものかと背もたれに体を預け
GM:「……彼は」
GM:「知り合いのハンターに、血を求めていたという情報もあります」
GM:「それは合意の上の取引で、強制した、襲いかかった、ということではないのですが」
乾咲フラン:「まだ理性があるということで、素直に喜んでいいのかな」
GM:「その取引は金銭によって為されるものと、…………」
GM:「……いえ」
GM:首を振った。
GM:「別にね、我々も彼を特別危険視しているわけではありませんよ」
乾咲フラン:「ふむ?本当にかい。」
GM:「ええ。彼が熱心なハンターであることは、その功績からも明らかだ」
GM:「ですが……半吸血鬼というのは、そもその存在が危うい」
GM:「いつ足を踏み外すかも分からない存在であることは、あなたも知っている筈でしょう」
乾咲フラン:「……まあ、ね。」
GM:「取り返しのつかない事態になる前に、先手を打ちたい」
GM:「そのために彼と親交の深いあなたに協力を求めたいのですが……」
GM:とは言うものの、まあD7ですからね。
GM:どう言い繕ったところで、普通に研究対象として見ていることはまあ、隠しきれないでしょう。
乾咲フラン:「何をするつもりなのかな?」
乾咲フラン:ろくでもないことだろうし協力しないと思いますが、話は聞きます
GM:「まだ監視段階ですよ」
GM:「あなたがそれに加わってくれたならありがたいし」
GM:「今の時点で有益な情報を提供していただけるなら、それは我々が買い取りましょう」
GM:「なにか、心当たりなどは?」
乾咲フラン:「ははは、残念ながら。見ての通り資金に困ってはいなくてね……」
乾咲フラン:「ないね」首を横に振って笑いながら「私が聞きたいぐらいだ。」
GM:「もちろん、金銭だけではなく魔女の遺物などもご用意できますよ」と笑って付け加えるが、
GM:首を振られると残念そうに眉を下げる。
GM:「本当に、何も?」
乾咲フラン:「むしろ聞きたいぐらいだね、君たちが見たマシロの血戒がどのようなものだったか……」
GM:「ではそれを対価といたしましょうか」
GM:「いかがですか?」
乾咲フラン:「……やめておくよ、たとえ吸血鬼に落ちたとて旧友の、その一人息子だ。」
乾咲フラン:「私は一人で彼を見守る事にするよ。」
GM:「……そうですか」
GM:「――我々は常に情報を求めています」
GM:「気が変わることがありましたら、その際はお気軽にご連絡ください」
乾咲フラン:「ああ、あれば、ね。」
GM:慇懃無礼な挨拶を最後に残し、須藤は去っていく。
乾咲フラン:須藤は美メイドが送るに任せ、フランは客間に残り優雅に茶を飲む――
GM:そのフランの脳裏に、
GM:フォゲットミーノットと。
GM:あの夜の、グラジオラスを食らった真城朔。
GM:そして夢に見る真城碧の姿が、笑顔が過ぎる。
乾咲フラン:カップから静かに口を離し……遠い遠いどこかを見ながら、深く長く、息を吐いた。
真城碧:『私に何かあったら、この子のこと、よろしくね――』
GM:真城を抱いて笑っていた、彼女の言葉。
GM:思い出は数え切れないほど。
GM:そしてその思い出を抱く胸ごと引き裂かれるほどの痛みをもたらした、
GM:ハイドレンジアの氷にずたずたに裂かれた、碧の亡骸。
GM:彼女にまつわるありとあらゆる光景が、フランの胸の中には深く刻まれている。
乾咲フラン:カップを置いて、背もたれにぐったりと身を預け天井を見る。
乾咲フラン:碧との思い出が、失われた罅割れのようにフランの心を穿ち、摩耗させていく。
乾咲フラン:今までは仲間たちや仕事でその心を埋めて立ち上がってきた。
乾咲フラン:それでも、どうしても、彼女の形に空いた穴はどうやっても埋まらない。
乾咲フラン:息子の、朔の体の感触を思い出す。
乾咲フラン:「どうして……」あの時あんなに柔らかいなんて、思ったんだろう。
乾咲フラン:見せてくれと言われれば朔は見せてくれるだろう。というかあれから日が経ったんだからさすがに女になっていたら夜高が何か言うだろう。
乾咲フラン:「ないよな……」ないよな、そんな事。とひとりごちた。自分はそんなに疲れていたのか?魔女の見せた悪夢か?
乾咲フラン:それとも、願望なのだろうか。
乾咲フラン:……自分はあの息子に対して、どういう感情を抱くべきなのか?
乾咲フラン:解っている。私は彼の母親の旧友で、彼の古くからの友。彼の数多いる友の中の一人、良いおじさん。そこにいるのが私だ。
乾咲フラン:一つため息を吐いて背を起こす。
乾咲フラン:少し冷めた紅茶を一口飲んだ……忽亡クンは大丈夫だろうか、彼女は大事なものを失ったばかりで……
乾咲フラン:そして記憶は連鎖する。ゆかりが見せた彩花ちゃん相談室での有様と、自分の醜態。
乾咲フラン:雷鳴の如く思い起こされた記憶に、フランは紅茶を吹き戻した。
乾咲フラン:ここ数年で最も美しくない行いであった。
結果フェイズ:糸賀大亮
GM:では闇じゃない病院に入院した大亮さん。GM:の個室に、まあ控えめなノックの音。
糸賀大亮:「……はい」と返事をする。
皆川彩花:「こんにちは」
皆川彩花:「開けて大丈夫ですか?」と、礼儀正しくお声がけ。
糸賀大亮:「……どうぞ」と、返す。
皆川彩花:扉が開く。窺うように覗き込んで。
皆川彩花:「わっ」
糸賀大亮:きょとんとした顔をして。
皆川彩花:「すっ……えっ…………」
糸賀大亮:「ああ、ごめん……けっこう、大怪我で」
皆川彩花:「いや……えっ、いや、そう」
糸賀大亮:包帯まみれだからな。驚くよな、と思っています。
皆川彩花:「け、怪我!!」
皆川彩花:思ったよりだいぶ、だいぶだったらしい。
皆川彩花:手に紙袋を下げていて、わたわたした様子にがさがさと鳴る。
糸賀大亮:「とりあえず、中に入って」
糸賀大亮:「座るといい。ええと……」
皆川彩花:「あ、はい、うん」
糸賀大亮:「……大丈夫なんだ」
糸賀大亮:「治る怪我だし」
皆川彩花:頷き頷き。入室して、扉を閉めて。
皆川彩花:恐る恐る隣に寄ってきて、
糸賀大亮:「前よりは」
糸賀大亮:「慣れたというか」
糸賀大亮:「慣れちゃだめなんだが」
皆川彩花:じっと大亮の顔と、その怪我を見ている。
皆川彩花:「慣れた、って……」
皆川彩花:悲しげに眉を寄せて。
糸賀大亮:「ええと、……入院、二度目だから」
糸賀大亮:「治る……だろうみたいな」
糸賀大亮:「そういう」
皆川彩花:「二回目って、まだ、だよ」
皆川彩花:彩花単位。
皆川彩花:「それに怪我じゃ、ほら」
糸賀大亮:「病気と怪我じゃ……」
糸賀大亮:「違う……というか」
皆川彩花:「違うから!」
皆川彩花:「違うから、よくない、っていうか」
皆川彩花:「…………」
糸賀大亮:「……」
糸賀大亮:「……いや、ごめん」
皆川彩花:「……ううん」
皆川彩花:首を振った。
糸賀大亮:「無理しないって……」
糸賀大亮:「……そういう話だったよな」
皆川彩花:「…………」
皆川彩花:うつむいている。
糸賀大亮:「……」
糸賀大亮:「あの」
皆川彩花:「は、はい」
糸賀大亮:「……いや、来てくれてありがとう」
糸賀大亮:「来てくれると」
糸賀大亮:「……うん。嬉しい」
皆川彩花:「……!」
皆川彩花:「あ、と」
皆川彩花:「……わ」
糸賀大亮:「ん」
皆川彩花:「私の方こそ、……えっと、私、が? 私だから……ええと……じゃなくて」
皆川彩花:「とにかく」
皆川彩花:「お見舞いに、来たのに」
皆川彩花:「責めるようなこと言っちゃって、ごめんなさい……」
糸賀大亮:「…いや」
糸賀大亮:「ええと…」
糸賀大亮:「……親にはもっと、怒鳴られたから」
皆川彩花:「それは……」
糸賀大亮:来たんだ。親が。
皆川彩花:「……だろうね……」うなずいた。
糸賀大亮:「二度目だからな……」
皆川彩花:「でも、心配されてるってことですよ」
皆川彩花:やっと思い出したように椅子を引いてきた。
皆川彩花:膝に紙袋を乗せて、ちょこんと座る。
糸賀大亮:「……そうだな」
糸賀大亮:「……でも、前よりは、たぶん」
糸賀大亮:「心配させないで帰せた……と思う」
皆川彩花:「……?」首を傾げた。
皆川彩花:「二回目なのに?」
糸賀大亮:「前に入院した時は……」
糸賀大亮:「……ろくに受け答えもできなかったからな」
皆川彩花:「…………」思い出しているらしい。
糸賀大亮:「……彩花ちゃんにも、けっこう、迷惑とか」
糸賀大亮:「あの時は……」
皆川彩花:「えっ」
皆川彩花:「別に迷惑とかは、ぜんぜん!」
皆川彩花:「ほら、いろいろお話してくれたし、それは私嬉しかったし」
皆川彩花:「サクラの散歩もしてくれ、て」
糸賀大亮:「……そうか? それなら……」
皆川彩花:「…………」
糸賀大亮:「…………」
皆川彩花:サクラの話を出してしまうとともに、表情が暗くなる。
皆川彩花:石原胡桃はあの雪の日に行方不明となった。
皆川彩花:そのように、一般社会には知らされている。
糸賀大亮:「……彩花ちゃんは」
糸賀大亮:「……あの日、大丈夫だったか、帰り」
皆川彩花:「あ、と、うん」
糸賀大亮:「連絡してくれって言って」
糸賀大亮:「……行けなかったから」
皆川彩花:「さっくんが送ってくれたから……」
皆川彩花:「…………」
糸賀大亮:「…そうか」
皆川彩花:紙袋を胸に抱え込んでいる。
糸賀大亮:相変わらずあいつ、働いてくれるな……
糸賀大亮:「…………」
真城朔:能天気そうな笑顔が脳裏をよぎるなど。
皆川彩花:「…………」
糸賀大亮:大亮は、紙袋だな……と受け止めています。
皆川彩花:黙り込んでしまった彩花ですが、大亮の視線に気付くと。
皆川彩花:「そ、そうだ」
皆川彩花:「これ、あのっ、これね、お見舞いで」
糸賀大亮:「え」
糸賀大亮:驚く。
糸賀大亮:前に行った時何も持ってかなかったのに…
皆川彩花:紙袋を下ろして中をがさごそと。
皆川彩花:なにか細長い紙箱を取り出して、大亮に渡そうとしたが、
糸賀大亮:おう
皆川彩花:怪我でそれどころではないことに気づき。
皆川彩花:「……あ、開けても、いい?」
糸賀大亮:利き手は一応無事だけど、そういう問題じゃないな。
皆川彩花:片手で開けるの大変でしょ。
糸賀大亮:「ああ、お願いしていいか」もっともだ。
皆川彩花:「ん」
皆川彩花:頷いて、中身を取り出す。
皆川彩花:それは細長い丸瓶に収められた、
皆川彩花:薄紫色の花の、ハーバリウム。
糸賀大亮:「…………」
皆川彩花:光を受けて中身がきらきらと光るそれを大亮へと差し出す。
糸賀大亮:沈黙して、受け取ります。
糸賀大亮:神妙な顔で、中の花を見つめる。
皆川彩花:「お花はね、生だと結構、いいところとダメなところがあって」
皆川彩花:「ほら、手入れしなきゃダメでしょう? 私はお母さんが毎日来てくれるから大丈夫だったんだけど」
皆川彩花:「でも、大亮さんはきっと大変だろうなって思って」
糸賀大亮:「…………うん」
皆川彩花:「これだとね、飾るだけで手入れとか要らないから楽だし、きれいだし、ええと」
皆川彩花:「…………」
糸賀大亮:「…………そうだな」
皆川彩花:神妙に見つめるその眼差しに。
皆川彩花:「……ど、どうですか……?」
糸賀大亮:「……綺麗だ」
糸賀大亮:ぼんやりとした顔で呟く。
皆川彩花:「う、うん」
皆川彩花:「きれい、だよね」
糸賀大亮:「この花……」
皆川彩花:「?」
糸賀大亮:「……いや、彩花ちゃんが」
糸賀大亮:「選んでくれたのか」
糸賀大亮:「その……ありがとう」
皆川彩花:「あ、えと、私が作ったんじゃないけど」
皆川彩花:「そういうきれいな詰め合わせのね、売ってて」
皆川彩花:「私はあんまりちゃんと、そういうの選ぶのとか、器用でもないし、わかんないんだけど」
皆川彩花:「でもきれいなやつ、あるから、そういうのをそのまま……」
糸賀大亮:「……うん」
糸賀大亮:「いや、ええと……」
糸賀大亮:「……嬉しいよ。ちゃんと、見えるところに飾っておく……」
皆川彩花:「!」
皆川彩花:ぱっと笑って。
糸賀大亮:確かに、俺は花の面倒とかみれないからな……正しいな…
皆川彩花:「ありがとう、ございます」
皆川彩花:「……嬉しい」
皆川彩花:「えへへ」
糸賀大亮:「……こちらこそ」
乾咲フラン:甘いぞ……?空気が……
忽亡ゆかり:花を……知ったか……
見学の水面:怪我してイケメン度がちょっと上がってる
見学の水面:怪我してよかったね
忽亡ゆかり:外道の言い方
糸賀大亮:この花なんて花なんだろう……
皆川彩花:薄紫だと紫陽花とかラベンダーとかですね
糸賀大亮:紫陽花
皆川彩花:あと薔薇もあるかな
夜高ミツル:あじさい……
糸賀大亮:紫陽花……
皆川彩花:また紙袋をがさごそやり始めた。
皆川彩花:「これはフルーツゼリーだから、冷蔵庫で冷やしてね」
皆川彩花:四角い小箱を出す。
糸賀大亮:誕生日かな……
糸賀大亮:「うん」
皆川彩花:「あとジュースをね、瓶のやつでね、いいとこのでね、デパートで」
皆川彩花:どんどん出てくる。
糸賀大亮:暑いから冷たいものはありがたい
糸賀大亮:えっ
糸賀大亮:どんどん出てくる
糸賀大亮:「……大丈夫か?」
糸賀大亮:思わず聞いてしまった。
糸賀大亮:聞いてから、大丈夫ではなくないか? と思った。
皆川彩花:「えっ?」
皆川彩花:ぴたっと止まった。大亮を見る。
糸賀大亮:「いや……」
糸賀大亮:「もらいすぎじゃないかな、と思って……」
糸賀大亮:何せ俺は何も持って行かなかったので……
皆川彩花:「あ、え」
皆川彩花:「うーと」
皆川彩花:空になった紙袋を胸に寄せる。わたわたと。
皆川彩花:「め、迷惑だった……?」
糸賀大亮:「いや、そんなことはない」
糸賀大亮:「ありがたいよ、……最近暑いし」
皆川彩花:「…………」
糸賀大亮:「それに、これで……まだあんまり歩けないし」
糸賀大亮:「ええと……」
皆川彩花:「あ、紙コップも一応あります、プラスプーンも」
皆川彩花:紙袋からまた出してきた。まだ残ってた。
糸賀大亮:「至れり尽くせりだ……」
糸賀大亮:思わず口に出した。
皆川彩花:「慣れてるので……」
糸賀大亮:「ああ……」
皆川彩花:「……あのね」
糸賀大亮:「ん」
皆川彩花:「あんまり、ほら」
皆川彩花:「お見舞いに行く側って、経験がなくて……」
糸賀大亮:「……うん」
皆川彩花:「だから、その……いつもね、貰う側だからね」
皆川彩花:「今日はそうじゃないから、それで」
皆川彩花:「……つい」
糸賀大亮:「そうか」
糸賀大亮:「うん、だったら」
糸賀大亮:「……よかった」
皆川彩花:「……うん」
皆川彩花:「あれ以来、すごく調子いいんだよ」
糸賀大亮:「……そうか」
皆川彩花:「お医者さんも家族もびっくりしてて、奇跡みたいって」
糸賀大亮:「……」
皆川彩花:「……だから」
糸賀大亮:「……うん」
皆川彩花:「だから……」
皆川彩花:それを喜んでくれる筈の、誰かが。
皆川彩花:いないことを思い出してか、また、言葉に詰まって。
糸賀大亮:彼女がここにいて、喜んでくれたら。
糸賀大亮:……どんなに。
皆川彩花:「……ご、めん」
皆川彩花:「お見舞いなのに……」
糸賀大亮:「いや」
糸賀大亮:「……いや」
糸賀大亮:「……そんなことはない」
皆川彩花:「…………」
糸賀大亮:どんなによかったろう、と思っている。
糸賀大亮:「……彩花ちゃんが、治ってよかった」
皆川彩花:「…………」
糸賀大亮:「もし、」
皆川彩花:「?」
糸賀大亮:「…………もし、胡桃ちゃんがここにいたら」
皆川彩花:「……うん」
糸賀大亮:「胡桃ちゃんだって、そう言ってる」
皆川彩花:「……うん……」
糸賀大亮:そう言っているはずだ。
糸賀大亮:本当は誰より、彩花ちゃんが治るのを望んでいたのは。
糸賀大亮:……きっと、胡桃ちゃんのはずだ。
糸賀大亮:「…………」
皆川彩花:「…………」黙り込んでいる。
糸賀大亮:彼女に言うべき言葉は、いくらでもあるような気がしていて。
糸賀大亮:それが、出てこない。
糸賀大亮:あの子は。もういないし。
皆川彩花:細い指先が紙袋を握り締めている。
糸賀大亮:あの魔女を倒したのは、俺たちなのだ。
糸賀大亮:その俺が、どうして、どんな顔で。
糸賀大亮:ハーバリウムの花に目を落とした。
糸賀大亮:「…………」
皆川彩花:光を受けてきらきらと光る、薄紫の花弁。
皆川彩花:「……あ」
皆川彩花:「あの、ね」
糸賀大亮:「…………ん」
皆川彩花:「私、すごく良くなって、奇跡だとか、そういうふうに言われて」
糸賀大亮:「……うん」
皆川彩花:「でも、本当はこんなの、有り得ないくらいで」
糸賀大亮:「…………うん」
皆川彩花:「だからまた、検査入院とかが、あるんですね」
皆川彩花:「で、だから、その」
皆川彩花:「…………」
皆川彩花:「その、そういう……その時は……」
糸賀大亮:「…………ああ」
糸賀大亮:「行くよ」
皆川彩花:「……ん」
糸賀大亮:「…………その時までに、怪我が治ってたらだけど」
皆川彩花:「うん」
糸賀大亮:「まあ……大丈夫で」
皆川彩花:「ありがとう」
糸賀大亮:「それに、彩花ちゃんも」
糸賀大亮:「……きっと、大丈夫だよ」
糸賀大亮:俺がそんなことを言うのはおかしいのだが。
皆川彩花:「……うん」
皆川彩花:「私も、そんな気がしてる」
皆川彩花:「でも、入院で一人は寂しいから……」
皆川彩花:「待ってます」
糸賀大亮:フランが、魔女が望みをかなえると、どこかで歪みが出ると言っていた。
糸賀大亮:でも、そんな気はどうしてもしなくて、きっと大丈夫だろうと、思っていて。
糸賀大亮:「ああ」
糸賀大亮:だからこそ、今さらになって、尾を引くように。
糸賀大亮:どうして俺はハイドレンジアを倒さなければならなかったのかと、疑問が繰り返し沸いていて。
糸賀大亮:「……必ず、行くよ」
皆川彩花:「うん!」
糸賀大亮:その疑問が湧いてなお、たぶん俺は何度同じことになったって、魔女を倒す道を選んだと思う。
糸賀大亮:その俺が、こうして彼女と話していていいのかと。
GM:修復判定をしましょうか。日常から。
GM:逃げるからですね。それでいいのか?
糸賀大亮:日常に逃げるな
糸賀大亮:でも考えないも違うしな……
糸賀大亮:2D6>=12 (判定:逃げる)
BloodMoon : (2D6>=12) → 3[1,2] → 3 → 失敗
糸賀大亮:6一個も出ない
糸賀大亮:逃げられない男か?
GM:激情を使いますか?
糸賀大亮:はい。激情2個切ります。
GM:では激情的に回復ですね。
GM:糸賀大亮は激情を使用!(激情:2->0)
GM:糸賀大亮の余裕が3増加!(余裕:0->3)
GM:大亮さんの幸福『背徳:皆川彩花』は修復されました。
GM:このあとももうちょっとやらせてね。
糸賀大亮:あ、その前にちょっとだけ。
GM:はーい。
糸賀大亮:正しい理由の上に正しい行為が積み重なるとは限らなくて、
糸賀大亮:ハイドレンジアもグラジオラスも、そんなに悪くない願いから出発したはずで
糸賀大亮:……それはきっとハンターだって同じなのではないか
糸賀大亮:生き残った以上、それが問われ続ける。
糸賀大亮:言えた口じゃあないけれど、狩人をやめない以上は、そうなるだろう。
糸賀大亮:重く締めようとしてしまうが、まだシーンがあるんだなと思っています。
GM:ありますね。
GM:では。
GM:後日。
GM:退院した後の大亮さんは彩花から連絡を受けて、
GM:言っていたとおりの、彼女の検査入院のお見舞いに行きます。
GM:今度は流石に見舞いの品とか持ってきてるかな。
糸賀大亮:持ってきた。ゼリー美味しかったので、ゼリーとか。
GM:やさしい。
GM:では見舞い品を片手に、いつもの病院の受付口を訪れる。
GM:しかし。
GM:「……皆川、彩花さん?」
GM:今まで何度もあなたを応対してきたはずの職員が、怪訝そうにその名前を問い返します。
糸賀大亮:「はい、こちらに検査入院してるはずですが……」
GM:「皆川彩花……みながわあやか、みながわ……あやか……」
GM:首をかしげる。再びパソコンで何か調べていますね。
GM:「……別の病院ではなく?」
糸賀大亮:「……そんなはずは」
GM:「んん……?」
GM:「みながわ、あやかさん……ええと」
GM:「いえ」
糸賀大亮:LINEで連絡きたのかな。スマホとか確認しているが。
GM:LINEで連絡きてますね。
糸賀大亮:「…………」
GM:ちゃんとそのように、いつもの病院に検査入院したというふうに、やり取りが残っている。
GM:「そういった方はいらっしゃいませんね」
糸賀大亮:待ってくれ。その言い方は……
GM:「そもそも、皆川彩花さんという方が」
GM:「この病院に入院した記録もありませんが……」
糸賀大亮:「……なに、」
糸賀大亮:いやな予感、どころではない。
GM:「なにか勘違いしていませんか? 別の病院とか……」
糸賀大亮:「…………ッ」
夜高ミツル:ヒ……
乾咲フラン:はわわ…
夜高ミツル:こんな こんなことが えっ!? 許されるんですか
乾咲フラン:どうして…どうして…
忽亡ゆかり:ああっ……
糸賀大亮:おかしい。そんなわけはない。
糸賀大亮:電話します。
糸賀大亮:何が起こっているか、分からない。いや、分かっている。
GM:彩花は出ない。
GM:どころか。
GM:『おかけになった電話番号は、現在使われておりません……』
糸賀大亮:分かっているからこそ。
GM:無機質な声が返るばかり。
糸賀大亮:……分かっているからこそ、愕然とする。
GM:一方で、LINEのログはそのまま残されている。
糸賀大亮:手が震えて、スマホを取り落としそうになる。
皆川彩花:『またお世話になっちゃって、申し訳ないんだけど』
皆川彩花:『待ってます』
糸賀大亮:画面を、確認して、
糸賀大亮:何度も何度も、確認して。
皆川彩花:『お見舞いの品とかだって』
皆川彩花:『別に大丈夫だからね』
糸賀大亮:確かに彼女がそこにいたことを確かめて。
皆川彩花:『来てくれるだけで嬉しいんだから』
糸賀大亮:口を押さえる。
糸賀大亮:フランの言葉が蘇る。
糸賀大亮:でも、じゃあ、ハイドレンジアは。
糸賀大亮:胡桃ちゃんは、いったい、何のために。俺は。
糸賀大亮:彩花ちゃんは。
糸賀大亮:息をついて、……いや、GM。
GM:はい。
糸賀大亮:真城に連絡取れるかな。
GM:……いいでしょう。
糸賀大亮:いや、確認しないと、いや……確認をしなければ。
真城朔:『何?』と、ややぶっきらぼうな真城の声。
糸賀大亮:電話かな。
真城朔:電話で。
糸賀大亮:「……確認を、したいんだが」
真城朔:『えっ』
真城朔:『なんだよ藪から棒に』
糸賀大亮:言い訳や前置きをする余裕はない。
糸賀大亮:「お前、皆川彩花ちゃんを知ってるよな」
糸賀大亮:縋るような気持ちで、問いかける。
真城朔:『え? うん』
真城朔:『前もそういう話しただろ』
真城朔:真城の声は至って普通ですね。
真城朔:『何か相談?』
糸賀大亮:「……彼女が、検査入院をするって話だったから、見舞いに」
糸賀大亮:と、経緯を話す。
真城朔:聞いている。
糸賀大亮:「そんな名前の患者は、今まで入院してなかったと」
真城朔:『は?』
糸賀大亮:「…………俺は、」
真城朔:『…………』
糸賀大亮:「俺が、俺たちが、ハイドレンジアを」
真城朔:電話越しの、絶句の気配。
糸賀大亮:「倒したからか、倒したから、彼女は」
真城朔:『……いや』
糸賀大亮:「ハイドレンジアが病を治した、彼女も」
真城朔:『まさか』
真城朔:『そんなのは』
真城朔:『関係が、ないはず、で』
糸賀大亮:「俺のッ……」荒げかけた言葉を切って、息をつく。
真城朔:『一度』
真城朔:『一度叶ったんだから』
真城朔:『…………』
糸賀大亮:「……電話も、通じない」
糸賀大亮:「ラインの履歴は、残ってて」
糸賀大亮:「…………どうすればいい」顔を覆う。
真城朔:『……こっちで、調べる』
真城朔:『何か分かったら連絡する』
真城朔:『だから、あんたも』
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:「…………ああ」
糸賀大亮:「頼む…………」
真城朔:『……ああ』
真城朔:重苦しい返答ののち、通話が切れる。
糸賀大亮:…………俺は。
糸賀大亮:俺は、間違ったのか? 疑問が繰り返される。
糸賀大亮:確かに、間違った。魔女の誘いを受け入れて、彼女の病を治した。
糸賀大亮:それが、過ちだというならそうで。……でも、これは全然。
糸賀大亮:違う話だ。でも、なら、どこか。別のところで間違ったのか。
糸賀大亮:ハイドレンジアを倒すことを選んだこと? どこで、何を?
糸賀大亮:間違っていないとしたら。……間違ってなくて、これなら。
糸賀大亮:俺は、いったいどうすればいいんだ?
結果フェイズ:忽亡ゆかり 2nd
GM:退院日かな。GM:まっすぐに家に帰りますか?
忽亡ゆかり:じゃあ……そうしようかな……退院日だし……
GM:はい。
GM:オートロック付きのマンションでしたよね。防犯意識のしっかりした。
忽亡ゆかり:はい……弟を護るために……
GM:弟のためのマンション。吸血鬼に押し入られたことのある家からは引っ越して。
GM:それが弟のための安全だと信じて入居を決めたマンションの部屋に、あなたは帰る。
GM:誰も他の人を招くことはなかった。ここは弟との愛の巣だったから。
GM:そう自分を誤魔化して、無意識に、破綻から逃れていた。
GM:鍵を開け、玄関へと入る。
GM:薄暗い玄関には、女物の靴と男物の靴が両方並べられている。
GM:何度も使いまわし、履き古された女物の靴と。
GM:ぴかぴかに磨かれて、しかし、
GM:一度も履かれた様子のない、男物の運動靴が、仲良く並んでいる。
忽亡ゆかり:吐きそうになる。
忽亡ゆかり:家族を失った日の記憶は……ある。
忽亡ゆかり:あの日、自分は外出していた。帰ってきたときには家は血溜まりに沈んでいた。
忽亡ゆかり:ただひとり生き残った弟の手を引いて、すぐにその場から逃げ出し、新しい住処を捜した。
忽亡ゆかり:しかし、それは偽りの記憶だ。自分自信が描いた空想だ。
忽亡ゆかり:上書きされた記憶によって、あの日以来の記憶は覆い隠されている。
忽亡ゆかり:自分は、家族に起こった出来事を、何も知らない。
忽亡ゆかり:葬儀を執り行った記憶がない。前の家は、果たして片付けただろうか?
忽亡ゆかり:曙光騎士団に所属したきっかけすらも、あやふやだ。
忽亡ゆかり:いちど自覚してしまえば、あちこちの記憶が破綻していて。
忽亡ゆかり:崩れていく。自分の積み上げた人生が、ぼろぼろと崩れていく。
忽亡ゆかり:逃げ出そうとする足を引きずって、何とかここまで来た。
忽亡ゆかり:人生は消えてなどいない。勘違いをしていただけだ。
忽亡ゆかり:そして、それを取り戻して、ようやく忽亡ゆかりは、忽亡ゆかりを知るのだ。
GM:ハイドレンジアに見せられたあの光景だけが、あなたにとっては、あの日を再確認することのできる、唯一のもの。
GM:あなたが部屋に上がると、生活雑貨の何もかもが一対に揃えられている。
GM:傘も。スリッパも。歯ブラシも。マグカップも。
GM:使用感を持って佇んでいるのは、何もかも、その片方だけ。
忽亡ゆかり:「…………」
GM:或いは使われた様子のない眼鏡クリーナー。
GM:壁にかけられた、一度も袖を通した様子のない男子の学生服。
GM:学生用の鞄。高校の教科書。開かれたことは一度もない、新品。
GM:不在の痕跡。
GM:あなたのおままごとの、
GM:積み重ねた日々を示す、しるし。
GM:一ヶ月の不在で、それにすら埃が積もっている。
GM:やがてあなたは飾られた写真を見つける。
GM:弟の高校入学祝い。そう言って写真を撮ったことを覚えている。
GM:違う。
GM:そう思い込んでいたことを、覚えている。
忽亡ゆかり:「…………っ……」
GM:春の青空を背に、学校の前で笑っている。
GM:一人分の空間を開けた、
GM:忽亡ゆかり、
GM:あなた一人だけの写真。
忽亡ゆかり:「……か……」
忽亡ゆかり:「………な、た……」
忽亡ゆかり:今までは、ここが帰るべき家だった。温かい、自分の巣だった。
忽亡ゆかり:それが今は、不気味なほどに広く感じる。
忽亡ゆかり:思えばこの家には、ずっと“弟”がいた。
忽亡ゆかり:誰もいない家に帰ったことが、なかった。
忽亡ゆかり:部屋が暗い。
忽亡ゆかり:弟の姿は、何処にも無い。
忽亡ゆかり:自分の……片割れだった。
忽亡ゆかり:勉強も運動も、仕事も、社会性も。
忽亡ゆかり:自分が身に着けた全ては、弟が居たからだった。
忽亡ゆかり:弟のために、弟を護るために。
忽亡ゆかり:それは、弟を誰よりも愛していたからだ。
忽亡ゆかり:豊かな人生だと思っていた。
忽亡ゆかり:恵まれていると思っていた。
忽亡ゆかり:「あなたが、いるかぎり……あなたが……」
忽亡ゆかり:しかし、そんなものは居ない。
忽亡ゆかり:もう戻ることもない。
忽亡ゆかり:この家にあるもの全てが、現実を突きつけてくる。
忽亡ゆかり:『お前は狂っていたのだ』『ありもしない妄想に耽り』『本物の弟のことを忘れ、空想と共に、幸せな日々を一人のうのうと』
忽亡ゆかり:「……ッ、ああっ!」叫び、床を叩く。
忽亡ゆかり:その音は、広い部屋に寂しく響いた。
忽亡ゆかり:寂しい。
忽亡ゆかり:今までも、抱えていた。どこか違和感を。
忽亡ゆかり:弟と過ごす幸せな日々、そこに挿し込むわずかな虚無感、罪悪感、物足りなさ。
忽亡ゆかり:その答えがこれだ。
忽亡ゆかり:「ふッ、う……」
忽亡ゆかり:護るべき家だと思っていた。弟との思い出の場所だと。
忽亡ゆかり:けれど、そんな思い出はなかった。弟は、この家に居た事はない。
忽亡ゆかり:「……」
忽亡ゆかり:あんなに暖かかった家も、今では冷たく暗く感じる。
忽亡ゆかり:“弟”と共に買ったもの、“弟”のために買ったもの、“弟”が買ってくれたもの……
忽亡ゆかり:それら全てが、自分の狂気を責め立ててくる。
忽亡ゆかり:「…………誰か」頭を抱えて、うずくまる。
忽亡ゆかり:「助けて」
忽亡ゆかり:「このままじゃ私、また、おかしくなる……………………」
忽亡ゆかり:「助けて」独り言だ。ぶつぶつと、声に出して。
忽亡ゆかり:「怖い」
忽亡ゆかり:「一人は怖いよ」
忽亡ゆかり:「やだよ……こんな場所……」
忽亡ゆかり:社交的な性格だと思う。公私ともに、関わった人間は多い。
忽亡ゆかり:そのうちの何人が、自分のこの本性を知っているのだろうか?
忽亡ゆかり:弟など居ないと。みな心の中で思っていたのだろうか。それとも、言われたのを自分が記憶していないのだろうか?
忽亡ゆかり:あの同僚は、自分のことをどんな目で見ていただろうか。
忽亡ゆかり:「……助け……」
忽亡ゆかり:虚空へ放っていた言葉は、いつのまにか目の前へと放たれている。
忽亡ゆかり:手を伸ばし、自分がすがりついた相手は…………
忽亡ゆかり:はっと正気に戻る。見えかけていた弟の輪郭が霧散する。
忽亡ゆかり:「うう、ううあああああ……」
忽亡ゆかり:会いたい。
忽亡ゆかり:みんなに会いたい。
忽亡ゆかり:また、狩りの場で。
忽亡ゆかり:今度は役に立つから。今度はきちんと殺すから。
忽亡ゆかり:皆を護り、皆を助けるから。
忽亡ゆかり:だから、誰か、
忽亡ゆかり:私に、居場所を下さい。
忽亡ゆかり:大声をあげて泣いた。ひたすらに泣いた。
忽亡ゆかり:すぐとなりにいるはずの人々は、気配さえ感じられず。
忽亡ゆかり:分厚い壁は、泣き声すら外に漏らさない。
忽亡ゆかり:人に囲まれたはずの場所。けれど周囲の人々はあまりにも遠く。
忽亡ゆかり:いくら泣いても、そこに人が駆けつける事はなかった。
忽亡ゆかり:玄関に倒れ込んで、そのまま天井を見つめる。ベッドで寝るのは怖かった。この家の奥に入るのが怖かった。
忽亡ゆかり:でも、約束だから。
忽亡ゆかり:「生きるって……」
忽亡ゆかり:「大変だあ…………………………」
忽亡ゆかり:枯れない涙が、床を濡らす。
忽亡ゆかり:暗い部屋。硬い床、玄関で服も脱がず、一人ぼっちで眠る。
忽亡ゆかり:生きていて欲しいだなんて。
忽亡ゆかり:皆、なんて難しいことを言うのだろう。
忽亡ゆかり:少しの恨みと、恋しさ。
忽亡ゆかり:皆の顔を思い浮かべながら、瞼を閉じた。
結果フェイズ:ex
GM:「――出ないように努力しろ!」真城朔:「わははは」
真城朔:笑い声を残し、真城がミツルのアパートから出てくる。
真城朔:扉を閉める。
真城朔:靴の爪先でとんとんとアスファルトを叩いて、黒い革手袋をはめながら、
真城朔:いつもの公園に続く道を足早に進む。
真城朔:途中。
真城朔:不意に足をもつれさせて、塀へともたれかかる。
真城朔:ずるずると身体を折る。地に蹲る。
真城朔:道路脇の蓋の外れた側溝へと顔を伏せて、
真城朔:「……ぅ、え」
真城朔:「げほっ、ご――おえ、ぇ、……ッ」
真城朔:粘ついた、不快な水音。
真城朔:全く消化できていないそれを、真城は澱んだ目で見下ろしている。
真城朔:「ごほ、ぇほっ、はあ、は、……ぁ、くそ」
真城朔:這い蹲り、呼吸を整えながら、小さく毒づく。
真城朔:「……頼む」
真城朔:「頼むよ」
真城朔:「もうちょっとだけでいい」
真城朔:「今じゃ、まだ、ミツが――」
真城朔:祈るような言葉の半ばで、
真城朔:びくりと身を引き攣らせて、背を起こした。
真城朔:道の先を仰ぎ見る。
真城朔:そこに立つ人影を認めて、
真城朔:「――は」
皆川彩花:「こんばんは、さっくん」
真城朔:「彩花!?」
真城朔:「無事だったのか――いや」首を振る。
真城朔:「何あったんだよ、お前! 糸賀さん心配してたぞ!」
真城朔:「俺もそれで、調べ、て、だから」
真城朔:「だから、…………」
真城朔:途中で息を呑み、
真城朔:「――っ」
真城朔:目を見開いて、言葉を失う。
皆川彩花:「大丈夫」
皆川彩花:「大丈夫だよ、さっくん。私はもう全部わかってるから」
皆川彩花:ゆっくりとした足取りで、
皆川彩花:彩花は真城へと近づいていく。
真城朔:「……おい」
皆川彩花:「さっくんが何をしてきたかも」
皆川彩花:「さっくんがずっと苦しんできたことだって」
皆川彩花:「今の私は、全部知ってる」
真城朔:「彩花」
真城朔:「嘘だろ」
皆川彩花:「それを全部、全部取り上げてあげる」
皆川彩花:「全部私が終わらせてあげる」
真城朔:「なんで、お前が――」
皆川彩花:「だから、ねえ、さっくん」
皆川彩花:彩花が手を伸ばす。
皆川彩花:足元から紫の花弁が舞い上がり、その全身を包み込んで、
プルサティラ:「――今度は代わりに、私のことで苦しんで?」
ブラッドムーン「あなたへの花」
2話「魔女の生まれる日」おしまい
――3話「花に願いを」に続く