結果フェイズ
GM
最後の裂帛で陸の狂気が4を突破し、軽度狂気を発症したため
GM
その結果だけまず決めてしまいましょう。よろしくお願いします。
安武 陸
MIT 軽度狂気表(1) >
【誇大妄想】(判定に失敗するたびに【テンション】が1増加する。)
安武 陸
* ロケットペンダントを使用 破壊する幸福は【背徳】海野標
[ 安武 陸 ] 部位ダメージ : 3 → 4
[ 安武 陸 ] 耐久力 : 8 → 5
[ 安武 陸 ] 激情 : 0 → 1
GM
陸はロケットペンダントの効果により幸福『【背徳】海野標』を破壊。
これにより激情を1点獲得します。
[ 安武 陸 ] 激情 : 1 → 0
GM
了解しました。
陸は軽度狂気『お守り中毒』を発症。
これは狂気が0点になるまで消えません。
また、結果フェイズに伴い陸、修也の狂気が1点減少します。
[ 安武 陸 ] 狂気 : 6 → 5
[ 敷村 修也 ] 狂気 : 2 → 1
GM
では軽度狂気の処理を終え、改めて結果フェイズへと突入しましょう。
結果フェイズ
楠瀬新
「……どんだけ力になれたかも、こうなると正直怪しいしな」
楠瀬新
「フォロワーの二人、俺からクラブの方引き渡しとく。
……ちゅうても、あれか。イマイチやらかしも分からん感じなっとるんやっけ?」
海野標
「……まあ、そうですね。
クロニック・ラヴによる犠牲の殆どは覆されているはずです」
海野標
「クラブの方にも、どれだけ記録が残ってるか……」
楠瀬新
「ちゅうて野放しにするわけにゃあかんし、さりとて私刑するのも違うしなぁ。
まあ魔女案件てことで、できる限り説明しとく」
海野標
ポケットを探る。
折り畳まれたチラシを取り出して開くと、楠瀬に渡した。
海野標
恐らくこれで、卯田千奈美へも連絡が行くだろう。
海野標
卯田千奈美に再会した高地結凪が、風香のことをどれほど話すかは分からない。
ハンターの世界に巻き込むことを厭うて全てを覆い隠すかもしれないし、
思い出を共有できる友達として、全てを打ち明けるかもしれない。
海野標
どちらにせよ、彼女らの話だ。
自分の知るところにはない。
荻原稜介がこれからどのように生きるかも含めて。
楠瀬新
「残念、とは言わへ……いや……んー。いや」
楠瀬新
「……なんちゅうか、若すぎんのよな。全部が」
楠瀬新
「そういうとこが一際強かったから、だから……」
楠瀬新
「……もうちょっと色々、適度にうまくやれるようなったらなぁとは思うてたけど」
楠瀬新
「でもそんならバレエ・メカニックに逆らわんのよな」
楠瀬新
「もうちっと俺もうまくやれたらよかったかね」
海野標
「いえ。十分していただいたと思っています」
海野標
「実際退いてたの、正解ですよ。
あなたにはバレエ・メカニックの加護がないので」
海野標
「……だから、本当に感謝してますよ。
埋め合わせはします。困ったら声かけてください」
海野標
「お姉さんの件とか。……あんま人に知らせたくないんでしょ」
赤木恵夢
恵夢は保護犬カフェ『スペシャルフード』に顔を出すようになっていた。
まだ正式に店員にはなっていないが、ゆくゆくはそうなる予定が立っている。
赤木恵夢
ソファに腰掛けた足元には、怪我の手当てをされた福が寄り添っている。
福
恵夢の足元で伏せの姿勢で待機。標を見つけると、ゆる、としっぽを振った。
赤木恵夢
標と福の戯れを見ながら、しかし表情を曇らせる。
海野標
誰に促されるまでもなく。
止められる気配すら振り切って。
海野標
自分が告げるべきだと、開口一番に彼女に告げた。
安武 陸
修也は決戦の後改めて倒れたため、ここには来られていない。標の少し後ろで、俯く。
赤木恵夢
陸の顔を見て、ぎこちない笑いすら掻き消える。
安武 陸
「叶恵ちゃんや、光葉ちゃんを生き返らせるのを」
海野標
「赤木が言ってるのは、俺があの時みたいにできたはずだって話だろ」
海野標
「お前がクロニック・ラヴを拒んだのとは違う話だ」
海野標
「たとえ、クロニック・ラヴが願いを叶えたとして」
海野標
「それでここで待つ赤木に、叶恵を帰してやれたわけじゃない」
海野標
「クロニック・ラヴを拒み続けたのは、あくまで俺だ」
海野標
「俺があの場ですぐに命を断てば、二人は生き返ったんだから」
赤木恵夢
「標くんは、カナちゃんを生き返らせてくれないの?」
赤木恵夢
「あの時みたいにしてくれないの? できないの?」
赤木恵夢
「標くんが死んだら、カナちゃんは、生き返るの……?」
安武 陸
標の言葉に、同意なんてできる訳がないが。
安武 陸
自分が標なら、その立場を受け入れるだろうと思ったから。
赤木恵夢
「私が生き返ったの、二回もしてもらったの」
GM
気を使った店員に促され、二人と一匹はバックヤードへと通される。
GM
少しごちゃついた手狭な部屋で、小さな椅子に腰掛けて話をする。
赤木恵夢
福を撫でている。
負傷し、主を失い、この店で過ごすことになった福の元へと。
恵夢は足繁く通っていた。
赤木恵夢
二人分。暖かいミルクティーが湯気を立てている。
福
恵夢に撫でられながら、しかしずっと出入り口の方を見つめている。
いつか主人が迎えに来ると、思っているのかもしれない。
福
福は光葉が死んでから、以前よりずっと、精彩を欠いてしまった。
餌を食べる量も減り、動きも緩慢で、急に年老いてしまったかのようで。
赤木恵夢
そんな福を撫でてやりながら、ぎこちなく笑う。
海野標
優しさと厳しさの配分に、それぞれ差はあったように思うが。
不器用な意思の強さといい、よく似た兄妹だった。
赤木恵夢
「そうしたら福さんとも共通の話題、いっぱいあったのに」
赤木恵夢
福を撫でる。
ミルクティーにはなかなか手が伸びない。
赤木恵夢
「だいたいなんていうか、知っちゃってるまま、って、聞いた……けど……」
赤木恵夢
「そうしたら、カナちゃんのやってること理解してくれるのも、狩人のひとじゃない?」
赤木恵夢
「私、カナちゃんのこと、ちゃんと理解してくれる人じゃないと」
赤木恵夢
「誤解して悪く言ってくるような人、絶対やだから」
赤木恵夢
「それはけっこう、聞けないかも、なんて……」
赤木恵夢
「にわとりの前に出て、虹色の炎の中に、わーって」
赤木恵夢
涙が落ちる。
握り締めた拳の上に弾けて、やがて伝い落ちてスカートを濡らす。
赤木恵夢
「ああすればよかった、こうすればよかった、って」
赤木恵夢
「私、自分のしなきゃいけないこと、いっぱいあった……」
赤木恵夢
「カナちゃんのこと、行かせなきゃ良かった」
赤木恵夢
「夜出歩いてる、怪我してる、って分かってたのに」
赤木恵夢
「危ないことしてるんだろうって分かってたのに」
赤木恵夢
「お母さんみたいにちゃんと叱って、捕まえて」
赤木恵夢
「そんなこと絶対ダメだよ、やめて、って伝えて」
福
そっと、恵夢の握りしめた手に濡れた鼻先を軽く押し付ける。
福
鼻を鳴らす。気にすることはない、というように。
赤木恵夢
「カナちゃんも、きっと、あの時の私と同じだったと思うから」
赤木恵夢
「魔女とかフォロワーとか、そういうのになっちゃったら」
海野標
また来る、と、口ではそのように告げたがどうだろう。
海野標
さんくちゅありで仲間を得た彼女にとっては自分は既に不要の存在かもしれないと思うし、
そのように決めつけて放置してしまうのもひどく無責任に思われた。
海野標
様子を窺うくらいのことはしよう、と結論を出す。
海野標
決断を急ぐことに意味はないとは言わないが、安易なそれが災禍を招くことを自分はよく知っている。
GM
六分儀大附属病院、その入院病棟、とある個室。
海野標
学生服はやめて青いパーカー姿、何かビニール袋を提げている。
敷村 修也
既視感のあるやりとり。
ハロウィンの後と違うのは、病室には見舞いの品もなくがらんとしている。
海野標
袋から紙皿とプラフォークを出して、ポケットからはナイフ。
海野標
身を屈めて剥き始める。
ビニール袋へと皮が降りていく。
海野標
手は止めぬまま。するすると皮が降りていく。
敷村 修也
血色は戻ってきている。クマがあるわけでもない。
海野標
「体の方、なんてわざわざ注釈つけるんだから」
敷村 修也
「……あの夜で心が折れました。もうできません。なんて、言えないだろ」
敷村 修也
「あー………それはそうだけどさ、……いや、うん。そうだな」
海野標
皮を剥き終えた。
紙皿を出してまな板代わりに、すとんと縦に割る。
敷村 修也
「自分で決めて、やるって言ったけど。それでもちょっとキツいだけだ」
GM
手土産はないが、何度か顔を出してくれている。
敷村 修也
いつも通りのようにふるまおうとして、怒られた。
松井正幸
ガキはガキらしく泣き喚けと頭を押さえつけて。
松井正幸
そんなところまで優等生ぶるなと、病院なのに怒鳴られた。
敷村 修也
大声を出して泣いた。
自分の無力さに、2人を死なせてしまった悔しさに、それを漏らすことをできなかった苦しみに。
松井正幸
荒っぽい手つきで、それでも恐らく出来うる限りの優しさでもって。
敷村 修也
両親にも、標にも、安武さんにも見せることはない。
師匠の前だけで泣き喚いた。
敷村 修也
5年前にはできなかった分まで。
声を出して涙を流した。
敷村 修也
「キツけりゃさっきみたいに言うし頼る」
海野標
切り分けたりんごにプラフォークを添えて、修也へと差し出す。
敷村 修也
右手に比べれば自由に動かせる左手でフォークを掴む。
その手の中で、道具としての役目を果たさないまま弄ぶ。
海野標
「普通に心配してんの。お前の今後とか、そういうのを」
敷村 修也
「……前もこんなようなやりとりしたなぁ」
海野標
自分でフォークを取ってりんごを刺した。修也の口に乱暴に突っ込む。
敷村 修也
口に突然放り込まれたりんごを咀嚼する。
海野標
「頼るべき相手には頼れてんのは知ってるし」
海野標
「当然俺もやめねえから、狩人やめろとも言わないけど」
敷村 修也
「今後っていっても、まだあんまり考えられてないよ」
敷村 修也
「でも、自分で考えて自分で決めないとな」
GM
今回の狩りにはクラブのバックアップがあったため、
修也の怪我は交通事故に巻き込まれたものとして処理されている。
GM
少女二人が死亡、少年一人が重態に陥ったトラックの交通事故。
そのように誤魔化されたため、推薦そのものには影響は出ていない。
GM
それでも立て続けの大怪我に、なにやら口さがない噂は立っているが。
敷村 修也
「体がなおれば卒業まで高校にだって通うし、大学にも進学する」
敷村 修也
しゃりしゃりと咀嚼音がわずかに漏れる。
敷村 修也
「自棄じゃねぇよ。慣れちゃいけないけど、でも俺の当たり前はもう"こっち"だ」
敷村 修也
「こっちを選んだからには、ちゃんとしたいだけだ」
敷村 修也
「もちろんそりゃ……やめたり諦めたりする道だってあるだろうけど」
敷村 修也
「……あの夜にクロニック・ラヴに言ったように、そう決めたんだよ」
敷村 修也
餌やりされているようでわずかに眉が寄る。
実際のところは定期的に口に運ばれるりんごを食べる人だ。
海野標
定期的にりんごを口に運んで食べさせています。
海野標
「やるって決めたんなら、できる範囲で力にもなるし」
敷村 修也
尋ねるために開いた口を、自分から閉じる。
海野標
突き立てたそれを差し出さずに、修也の言葉を待っている。
敷村 修也
聞きたいこと、聞けないこと。言いたいこと、言えないこと。
それはたくさんの棘になる。
標にも自分にも、その棘は硬く鋭い。
敷村 修也
「………どう喋っていいかわからなかったんだよ」
敷村 修也
「お前のことを忘れてたこと。どう喋ってたかもピンとこない」
敷村 修也
「どういう態度でいても、お前に嫌な思いをさせてるんじゃないかって」
敷村 修也
「……で、今それを言った。もしかしたらなんだそんなことって思うかもしれないけど」
海野標
「それで嫌な思いするとかどんだけ身勝手だ俺は」
敷村 修也
「うるせーよ、それでも気にすんだよこっちは」
海野標
「気ィ使うんならわざわざエミュってんじゃねえよ」
敷村 修也
「それぐらい言えるようになったってことだよ。わかってるくせに」
敷村 修也
「心配してんのお前だけじゃねーんだよ」
海野標
「お前らがどう足掻こうが、俺が勝手に死んだらそこで終わりなんだから」
海野標
「そうしなかった俺に全面的な責任があったわけ」
海野標
「そんなんもひっくるめて、俺はとっくに選んでる」
海野標
「……お前が死んでも、多分止まらなかったよ」
海野標
「最初に言ったけど、別に気に病んでるとかじゃないからな」
海野標
「因果を整理するとそうなるって事実の話だ」
敷村 修也
口の中のりんごを噛みながら、責任大好きヤローめと悪態をつく。
海野標
「お前が俺を心配してるってんなら、俺から言うことがいくらかある」
海野標
「自棄っぱちになって危険に身を晒しすぎるな」
海野標
「俺がひなたのことを話せる相手、もうお前しかいねえんだよ」
海野標
残りの二切れ。茶色くなりつつある、その片方を取って齧る。
敷村 修也
やがて最後のりんごも胃の中へと消える。
病室には備え付けの時計が刻む音だけがなっている。
海野標
と、腰を上げる。残ったりんごは2つほど並べていき。
敷村 修也
忘れたくなくて止めてしまった時間から。
敷村 修也
今までに過ごしてきた時間はかけがえのない思い出。
敷村 修也
後ろを見ているだけでも、前を向いているだけでも。
どちらかだけでは進むことはできない。
敷村 修也
時々後ろを振り向きながら、きちんと行先を見定めながら。
海野標
学生向けの安アパートが並ぶ住宅街を、パーカー姿の少年が歩いている。
海野標
手にはビニール袋を2つ提げて、長く伸びる影の中を、どこか茫洋と。
海野標
錆びた階段を一段一段と登り、部屋のドアの前に立って、ドアノブを回す。
海野標
ポケットから鍵を出し、それを回して扉を開けた。
海野標
返ることのない挨拶をして、部屋へと上がる。
安武 陸
生活感の満ちた部屋に、しんと冷えた空気だけがいる。
海野標
ビニール袋を片方、テーブルに置く。中身がごろりと小さな音を立てる。
海野標
ぼんやりと部屋の真ん中へと歩いて、ベッドへと腰を下ろした。
安武 陸
足音は部屋に近づいて、部屋の前で鍵を取り出す音。
安武 陸
開いている鍵を閉めて、一瞬間を置いて、また解錠。
安武 陸
バッグからノートPCを取り出して、こたつの上に置く。
海野標
以来標はこうして陸の部屋で寝泊まりするようになった。
安武 陸
偶然、たまたま。 来客用の布団を買う予定があったので。
安武 陸
ちょっと強引に、うちでいいじゃないですか、という話になった。
海野標
今ではこの部屋から高校に通っている。
出席日数が相当まずいので、特別に補習を受け続ける日々だ。
安武 陸
二人の生活もそれなりに慣れたが、帰ってきた時だけはすこしぎこちない。
安武 陸
ノートPCを開いて、帰路で気になった部分を少し直す。
海野標
ビニール袋を攫って、中から追加で買ったりんごを出す。
海野標
りんごを洗って、包丁を出して、その皮を剥き始める。
安武 陸
俺がしますよ、とか、そういう気は使わない。
海野標
するすると皮を三角コーナーへと落としていく。
海野標
詳細を伝えた方がいいと思ったり、言っても仕方ないとそれを否定したり。
海野標
頭の中で思考を整理して、呑み込む方に傾きかけて、
海野標
「ああいう感じは、結構、燃え尽きた後の狩人に多い」
海野標
「松井さんもいるし、心配しすぎても仕方ないけど」
海野標
「自分が魔女かフォロワーかになったら止めてくれ、ってさ」
海野標
まな板と包丁を片付ける。
細めのフォークを二本添えて、テーブルに戻る。
安武 陸
「恵夢ちゃんが魔女になった夢を見るんです」
安武 陸
「それで、叶恵ちゃんを生き返らせようとする」
安武 陸
「でも、バレエ・メカニックみたいにきれいに生き返らせれないんですよ」
安武 陸
「それで、ゾンビみたいな叶恵ちゃんが出てくるんです」
安武 陸
ノートPCを閉じて、あーあ、と背伸びをする。
海野標
あれ以来、学生服を着るのは高校に行く時くらいになった。
安武 陸
「これからも魔女と戦うだろうし、あんまり与太で済ませられる話でもないし」
海野標
「……そうならないようには、努めるけどな」
安武 陸
「福さんも……、元気、出るといいですね」
安武 陸
たまに保護犬カフェに寄ることがある。 福には、少しでも元気になって欲しいと思う。
安武 陸
そして、それが難しいことも理解している。
海野標
それはこの事件に関わった全員がそうだった。
海野標
誰もが傷を負って、誰もが失って、それでもこの運命を歩んでいる。
海野標
運命変転魔法『クロニック・ラヴ』は失われた。
海野標
もはや何もかも取り返しのつかぬ箱庭の外へ。
安武 陸
「……修也くんのお見舞いにも、りんご持っていったんすか?」
安武 陸
前もりんご持っていってたよな、なんて思いながら、こたつの上にあごを乗せる。
安武 陸
標の口から、姉の世間話を聞くのは初めてだ。
海野標
「おすすめの店行くなら無理に詰め込むことないだろ」
海野標
ラップを取ってきて、りんごの皿にかけている。
海野標
冷蔵庫の前で微妙に迷って、まあいいか、と冷蔵の方へ。
安武 陸
一切れだけ食べて、残りが運ばれてゆくのを見る。
海野標
あなたが望み、手を掴み、今ここに生きる少年の。
海野標
「先延ばしにしてきた俺が悪かったんだよな」
海野標
「正直困ったり、どうしたもんかと思ったことはあったけどな……」
海野標
「そもそもが、勘違いしてるかもしれないけど」
海野標
「バレエ・メカニックは、討伐されたことであの運命を手放す羽目になったんじゃない」
海野標
「あのままお前の願いを叶えずに消えることもできた」
安武 陸
「師匠はそう思うだろうなっていうのもわかる」
安武 陸
「でもさ、責任がどこにあるかっていうのは、事実をどう切り取るかでいくらでも変わるじゃないですか」
安武 陸
「そう思うのをやめることは、できないと思います」
海野標
言葉を遮るように頬を挟んで、自分の方へ向けさせる。
海野標
「責任の所在の話をしてるんじゃねえんだよ」
海野標
「俺が、お前にされて、嫌だったことはなかったって話をしてるんだよ!」
海野標
その足元に踏みしめた命と犠牲を常に知らされて尚。
海野標
存在を肯定されて、そして、生きていくことを。
海野標
俯く。陸の顔を捕まえたまま、自分だけが顔を伏せる。
安武 陸
「クロニック・ラヴが……、空韻風香が死んだのとか」
海野標
腕を回して、背を撫でる。自分よりも大きな背を。
安武 陸
自分より小さい少年の肩に顔を押し当てて、呻くように泣く。
海野標
それを抱き留め、背を撫でながら、やがてゆっくりと口を開く。
安武 陸
「俺たちは、生きていかないといけないんだ」
海野標
風香。
一人ずつ仲間を増やしていた風香。
お前もそれを知っていたんだろう。
一人では、いつか挫けてしまうことを理解していたんだろう。
安武 陸
「どうせもう、師匠が側にいないとだめですよ」
安武 陸
「師匠が死なないためなら、いくらでも終わりますよ、俺」
安武 陸
「俺も師匠がヤバくならないようにがんばりまーす」
安武 陸
「もっとちゃんと、鍛錬しとけばよかったなって」
安武 陸
「努力でなんとかなったとも思えないけど、できることはあった」