#4 海より深く、なお深く 導入

GM
R:クロニック・ラヴ #4『海より深く、なお深く』
GM
始めていきましょう。
GM
よろしくお願いします!
安武 陸
よろしくお願いします……!
敷村 修也
よろしくお願いします!
赤木 叶恵
よろしくおねがいします
迷ノ宮 光葉
よろしくお願いします~
GM
惨殺シーンはありません。
GM
そのまま導入に入っていきましょう。

導入:安武陸

安武 陸
失われた弟の命について思考するため、生涯の多くの時間を割いてきた。
安武 陸
その弟の、存在しなかったはずの18歳の姿が映し出されたスマートフォン。
安武 陸
指先が動く。
安武 陸
弟とは違う。
存在しないことにされたはずの、18歳の青年の番号を、見つける。
安武 陸
耳慣れた、発信音。
安武 陸
「──もしもし、師匠」
安武 陸
「俺です」
安武 陸
一瞬だけ。
安武 陸
言おうか言うまいか迷って。
安武 陸
「助けに、来ました」
GM
返答までは、
GM
一呼吸の間があった。
海野標
陸PL「えーんえーんえーん」……お前
海野標
陸PL「しゃべってる……」お前なぁ……
海野標
困惑したような。呆れ果てたような。
海野標
低く抑えた声。
海野標
耳慣れた声、聞き慣れた喋りが通話越しに陸の耳を打つ。
安武 陸
耳慣れた声に、聞き慣れた喋り。
安武 陸
バレエ・メカニックのように、人格の全てを焚べられたような語り口ではなく。
海野標
その声音には感情が籠もっている。
安武 陸
つい数時間前に聞いたはずの声なのに、もうずっと聞いていなかったような声。
海野標
実際の期間で言えば半年にも満たなかったその不在だったが。
GM
それがこうして埋められて、同時に今、世界には冬の風が吹いている。
海野標
『……わかった、もういい』
海野標
『いいっつか』
海野標
『とりあえず、直接話すぞ』
安武 陸
「……っ」
安武 陸
「いいんですか」
安武 陸
「直接、話しても」
海野標
『なんでだよ』
安武 陸
「会えるんですか、師匠に」
海野標
『……お前が願ったんだろ』
安武 陸
「…………」
海野標
『いいから。4月前の格好で12月の風に吹かれている。そのままだと風邪引く
海野標
『家戻ってこい』
海野標
『あんまダラダラ話してる時間もねえんだよ』
安武 陸
「……はい」
安武 陸
通話を切る。
安武 陸
会話をした。
GM
通話終了の画面には、間違いなく海野標の名前がある。
安武 陸
海野標に言葉を投げ、海野標が返事をした。
安武 陸
いつもの調子で、聞いたことのある声で、聞き慣れた喋り方で。
安武 陸
「……っ」
安武 陸
目元を雑に拭い、立ち上がる。
安武 陸
12月の風に凍えてしまう。 帰らなければいけない。
安武 陸
海野標に会うために。

 
安武 陸
安アパートの、錆びた階段を登る。
安武 陸
普段は何も考えずに駆け上がるのだが、今日は一段一段、踏みしめるように。
ざらざらの手すりに手を添えて。
安武 陸
自分が緊張しているのを感じる。
安武 陸
これだけのことをして、本当に望んだものがそこにあるのか。
安武 陸
既に中にいるのか、まだ来ていないのか、本当に標本人なのか、どこかの魔女にでも騙されているのではないのか。
安武 陸
考えてもどうしようもないことを考えて、不安に目眩がしそうだ。
安武 陸
部屋のドアの前に立ち、鍵を差し込む。
安武 陸
解錠。 そして、扉を開く。
GM
開かない。
GM
かつて得てしてそうであったように。
安武 陸
はぁっ、と息を吐く。
安武 陸
そう、呼吸を忘れていた。
安武 陸
「…………」
安武 陸
もう一度、がちゃりと鍵を回して、バーンと扉を開いた。
安武 陸
「ただいま帰りましたー!」
海野標
「うわっ」
海野標
狭い部屋のベッドに、海野標が腰掛けている。
海野標
勢いよく扉を開けた陸に視線を向け、その瞳を何度か瞬かせ。
海野標
「……おかえり」
安武 陸
「ははは、ただいまです」
安武 陸
「いや~、外さみーのなんの! 12月って寒いんですね~」
海野標
「当たり前だろ……」
海野標
呆れたように返しながら腰を上げる。
安武 陸
体を擦りながら、部屋の小さい小さいコタツに入る。
海野標
その襟首を掴む。
海野標
「ツッコミ待ちのムーブやめろ」
海野標
そのまま引っ張り上げ。
安武 陸
引っ張り上げられる。
海野標
「さっさと支度」
安武 陸
「…………」
海野標
「手前の言い出したことだろ」
海野標
「きっちりケリ付けてもらわねえと困るんだよ」
安武 陸
雑談「はっ???」「なんかこのまま額をくっつけるぐらいはしそうな重さですね」「やべ~」両手で標の頬を挟み込む
安武 陸
皮膚に温度がある。 血液が流れている。
安武 陸
バレエ・メカニックのような硬質な体ではなく。
安武 陸
人体の温かさと、柔らかさがある。
安武 陸
「支度、しますよ」
安武 陸
急激に凄まじく重い。あんたを失わないためなら、何だってやる
海野標
こういう顔にもなる。…………
海野標
大きな手に頬を包まれて、固まっている。
安武 陸
手を離す。
安武 陸
言葉の通りに、支度を始める。
海野標
それを認めて、
海野標
陸から視線を外しながら。
海野標
「……お前さあ」
海野標
「言ってて恥ずかしくねえの」
安武 陸
「言うなってんなら言いませんけど」
海野標
「そういう話じゃなくてよ……」
海野標
「…………」
安武 陸
「多分困ると思って、軽い感じで流そうとしたんですけどね」
海野標
「……………………」
安武 陸
「流せなかったので、諦めてください」
海野標
「…………………おう」
安武 陸
なんだこの顔?
GM
GMはいやだ・・・・・・・・・・・・・・っていいながらやってます
安武 陸
これアイコン合ってますか??????????????
迷ノ宮 光葉
なんだこのかお……えっちじゃん
GM
間違いたい
赤木 叶恵
そういう反応するんだ
安武 陸
諦めるんだな……
安武 陸
やめろ!!じゃああんまり誤魔化したりしないでいいか……
海野標
がしごし頬を手で擦っている。
海野標
「で」
海野標
「だ」
海野標
気を取り直したように語気を強める。
安武 陸
部屋は12月の状態だ。 冬服を探すのにさほど苦労はしない。
安武 陸
「はい」
海野標
「クロニック・ラヴは虐殺結界の発動陣を刻んでる」
海野標
「とにかく夜が来る前にそれを全部潰さないと話にならない」
安武 陸
「確かに時間がないですね」
海野標
「前は潰しきれなかったからな……」
安武 陸
時刻はまだ朝だが、日は昇っている。
海野標
「発動地点は全部覚えてるから後で共有する」
海野標
「他の奴らの手も借りればなんとかなるだろ」
安武 陸
「はい、ありがとうございます」
安武 陸
「前回俺達が潰した場所も確認しますか」
海野標
「一応な」
海野標
スマホを持ち出してぽちぽちやっている。
海野標
「あとは人を避難させて、できれば交通機関も止めて……」
海野標
「まあこのあたりは手回ししつつ追々」
安武 陸
「人手欲しいですね。 知り合いにも頼むだけ頼んでみましょうか」
海野標
「頼む」
海野標
「知り合いになる前のやつに間違って声かけんなよ」
安武 陸
「あー」
安武 陸
「まぁ……、連絡先あるならいいんじゃないすか……」
海野標
「それもそうか……」
安武 陸
スマホをぽちぽちしつつ、仲間達にも状況を共有する。
安武 陸
結構連絡先消えてるな……
GM
標がいなくなるまではかなり標が窓口でしたからね。
安武 陸
まぁいいや、という感じで、普段接点が薄い人にも連絡してみたりする。
安武 陸
一通り連絡してから。
海野標
こちらもスマホを下ろして陸を見る。
安武 陸
「……師匠」
海野標
「何」
安武 陸
「一応聞きますけど」
安武 陸
「俺がやってること、嫌ですか?」
海野標
「は?」
海野標
「……何が?」
安武 陸
「何が……って」
海野標
困惑気味に陸を見ている。
安武 陸
「……バレエ・メカニックは言いました」
安武 陸
「ひなたと風香が、二人でいられるのはこの運命だけだと」
海野標
「…………」
安武 陸
「嫌かなって、思いますよ」
海野標
「……そう思いたくないなら」
海野標
「きっちり勝って、カタつけろ」
安武 陸
「ちゃんと答えてないと思うんすけど」
海野標
「………………」
安武 陸
「言いたくないなら、言いたくないでもいいですよ」
安武 陸
「どうせもう引き返せないし、引き返す気もないんだから」
海野標
俯く。
安武 陸
標に背を向けて、薬やらなんやらを補充する。
安武 陸
「……協力は、してくれると思っていいんですよね」
海野標
「当たり前だ」
海野標
「あいつとケリつけなきゃいけないのは、そもそも俺の方で」
海野標
「だから」
海野標
「…………」
安武 陸
「…………」
安武 陸
標を見る。
海野標
前髪に目元を隠して、唇を噛んでいる。
海野標
「……答えは」
海野標
「少し、考えさせてくれ」
安武 陸
「いくらでもどうぞ」
海野標
「…………」
安武 陸
「何年待ってもいい。 答えを待てるのは幸いなことです」
海野標
「……悪い」
安武 陸
「いいですよ」
安武 陸
「あんたがどう思うのか、あんたの口から聞けるんだ」
GM
重っ……………
GM
すべての言動が重いんですけど……???
敷村 修也
すごい
迷ノ宮 光葉
笑っちゃうほど重い…
安武 陸
めちゃめちゃおなかすいちゃった 重いロールってお腹が減るのか?
海野標
ちらりと陸を窺う。
安武 陸
「師匠、俺はね」
安武 陸
「あんたが生きて喋ってるのを見るだけで、嬉しくて泣きそうなんですよ」
安武 陸
「そりゃ、なんだっていいですよ」
海野標
「……なんだそりゃ」
安武 陸
冬物のコートを羽織って、荷物を背負う。
安武 陸
鏡の前で、ちょっとだけ考えて。
安武 陸
12月のあの時から、ずっと触っていなかったワックスを手に取る。
安武 陸
「じゃ、行きますか」
海野標
「……おう」
敷村 修也
は?
迷ノ宮 光葉
ころされる
GM
おい!!!!!!!!!!!1
赤木 叶恵
こいつもう
赤木 叶恵
毎回~~~~!!!!!!!!
GM
知っててもガー不のやつなんだよ
安武 陸
師匠が戻ってきて元気出たので髪の毛ちゃんとしました
GM
げんきでてよかったねぇ
安武 陸
玄関には陸のほうが近い。 先導するように、扉を出る。
海野標
その背を追うようにアパートを出れば、
GM
冬の冷たい風が二人へと吹きつけた。

導入:赤木叶恵

GM
冴え冴えと染み渡るような朝の寒気。
GM
二人でこっそり戻った赤木家と言えば、予期したとおりに運命は巻き戻り、
GM
荒れ果て服やらゴミやらの散乱していたリビングも廊下もすっかり恵夢が健在だった頃のように。
GM
否、その表現は正しくない。
GM
今こうして二人が立つのは、彼女が生きてきた運命の地平だ。
GM
恵夢が失われる前の。
GM
そして同時に、
GM
白瀬礼子がクロニック・ラヴに殺されたままの運命でもある。
赤木 叶恵
「今夜、運命変転が起こった」
赤木 叶恵
未来の出来事を、過去形で語る。
赤木恵夢
「……うん」
赤木恵夢
緊張気味に聞いている。
赤木 叶恵
「その時、海野さんがひっくり返した事の中に」
赤木 叶恵
「クロラヴに人々が殺される、っていう出来事がある」
赤木恵夢
「…………」
赤木 叶恵
「この後、信じられないくらいたくさんの人が死ぬんだけど、虐殺自体はもう始まってて」
赤木 叶恵
1話の決戦フェイズに発動した運命変転で覆された死は、この段階ではもとに戻っている。殺された人の中には、礼子さんも居た
赤木恵夢
「え」
赤木恵夢
「えっ」
赤木恵夢
「れ」
赤木恵夢
「礼子、ちゃん……?」
赤木恵夢
先程、三月に至った運命で別れを告げてきたばかりの友人の名。
赤木恵夢
それが挙げられたことに戸惑いと驚愕を示す。
赤木恵夢
「え、と、つまり」
赤木恵夢
「これから礼子ちゃんが……」
赤木恵夢
「え、いや、もう」
赤木恵夢
「え…………」
赤木 叶恵
「うん。落ち着いて聞いて」
赤木恵夢
あわあわと頷いている。落ち着けてはいない。
赤木恵夢
すーはー深呼吸している。
赤木 叶恵
「礼子さんは……もう死んでる」
赤木 叶恵
「だけど、バレエ・メカニック。メカはこれを何とかする手があるって言ってた」
赤木恵夢
「し」
赤木恵夢
「……ど、どうにか」
赤木恵夢
「できるの……?」
赤木恵夢
縋るような、懇願するような色がある。
赤木 叶恵
「……海野さんが健在で、あたし達が頑張れば」
赤木恵夢
「…………」
赤木恵夢
指先が自らの胸元をつかんでいる。
赤木恵夢
「……そ、っか」
赤木恵夢
「これから、いろいろ」
赤木恵夢
「どうにかしに、行くんだもんね……」
赤木 叶恵
「うん」
安武 陸
やるぞっ やるぞっ
安武 陸
最悪師匠だけでも健在のままにするぞ
GM
やめろやめろ
安武 陸
背徳がこうだからそういう方向に傾きやすくはなります
赤木 叶恵
「今度はちゃんと離れなきゃダメだよ」
赤木恵夢
「はひ……」
赤木恵夢
窘められて肩を落とした。
赤木恵夢
「……私、できることないもんね」
赤木恵夢
「おうちで大人しくしてます……」
赤木恵夢
「バイト休みでよかった」
赤木 叶恵
「あっても休ませるけどね」
赤木恵夢
「うん……」
赤木恵夢
こくこく頷いている。
赤木恵夢
「……カナちゃんも」
赤木恵夢
「これが終わったら、いっぱい休んでね」
赤木恵夢
「えっと……」
赤木恵夢
ちらりとカレンダーを再確認する。ほんとうにもどってる……
赤木恵夢
「すぐ冬休みだし、GM「クリスマスを前に年下の男に激重感情を向けてる気分はどうだ?」陸PL「パーティーしたいなって思ってます」クリスマスだし」
赤木恵夢
「年越しだし」
赤木恵夢
「ぜんぶ、一緒に過ごそ」
赤木 叶恵
「うん。一緒に過ごそう」
赤木 叶恵
「これが終わったら、前回ほど忙しくはならないはずなんだ」
赤木 叶恵
「ちゃんと時間作って、ちゃんと休んで」
赤木 叶恵
「家でごはん食べて寝る」
赤木恵夢
「よかった」
赤木恵夢
ほっと息をついて。
赤木 叶恵
「全員そろって打ち上げとかもいいな」
赤木恵夢
「ぜんいん……」
赤木 叶恵
「お姉ちゃんは?海野さんと会って話す?」
赤木恵夢
「えっ」
赤木恵夢
小刻みに跳ねた。髪が揺れる。
赤木 叶恵
「会いたかったんでしょ?何話す?」
赤木恵夢
また跳ねてる。そっ
赤木恵夢
「えぇ~…………」
赤木恵夢
「それは…………えーと……」
赤木恵夢
ごにゃごにゃごにょごにょと視線をさまよわせている……
赤木恵夢
合わせた指先が遊んでいる。
赤木恵夢
「こっ」
赤木恵夢
「困るかも、だし」
赤木恵夢
「標くんのほうが……」
赤木恵夢
「話したいこととかっていうか、ほら」
赤木恵夢
「いなかったのが嫌だったっていうか……」
赤木恵夢
「そういう……それで……」
赤木恵夢
ごにょごにょごにゃごにゃ……
安武 陸
俺が無理やりにでも引っ張っていくんで!
迷ノ宮 光葉
おねいちゃんかわいいね
敷村 修也
陰のもの
安武 陸
いなかったのが嫌なの、わかるよ……
赤木 叶恵
「困らせときゃいいんだよ、あんなの」
赤木恵夢
「ええ~……」
赤木 叶恵
「一応、しれっと過去形にしようとする叶恵の妹独占欲発揮発言。ちゃんと好きだったんでしょ?アイドルの追っかけ気分じゃなくてさ」
赤木恵夢
「びえ」
赤木 叶恵
「それとも鑑賞用にしとけば満足?まあ別にそれならそれでもいいけど」
赤木恵夢
「ふええ…………」
赤木恵夢
「か」
赤木恵夢
「かんがえます……」
赤木 叶恵
「よろしくおねがいします」
赤木恵夢
「…………」
赤木恵夢
控えめに頷いた。頷きはした。
赤木 叶恵
「ってことで、海野連れ帰ってくる!」
赤木恵夢
「う、うん」
赤木恵夢
「いってらっしゃい」
赤木恵夢
「…………」
赤木恵夢
ふと叶恵の姿を見回して、
赤木恵夢
手を伸ばす。
赤木恵夢
その身体を捕まえて、ぎゅ、と胸に抱き込んだ。
赤木 叶恵
「わ」
赤木 叶恵
「…………」
赤木 叶恵
されるがまま。
赤木恵夢
「……えへへ」
赤木恵夢
「あったかい」
赤木恵夢
抱きしめた叶恵の髪に頬をそっと擦り寄せる。
赤木 叶恵
「そ、そりゃ……そうでしょ……」
赤木 叶恵
これが最後かもしれない、と思った。口には出さなかった。
赤木恵夢
「ちゃんと」
赤木恵夢
「カナちゃんも戻ってこないと、やだよ」
赤木恵夢
「カナちゃんがいないのが、やだ」
赤木恵夢
「一番いや」
赤木 叶恵
「知ってる」
赤木 叶恵
けど、聞けてよかった。
赤木恵夢
「……だめだけど、困らせるけど、だから言わないけど」
赤木恵夢
「言っちゃうけど……」
赤木恵夢
「ほんとは、行かせたくもないんだからね」
赤木 叶恵
「……うん」
赤木 叶恵
「わかってる」
赤木恵夢
「うん……」
赤木恵夢
「ごめんね、カナちゃん」
赤木恵夢
「ありがとうね」
赤木恵夢
手のひらで撫でさする。その背中を。熱を確かめるように。
赤木 叶恵
狩人の一生は短い。接触者の一生も長くはないとされる。
赤木 叶恵
今だけはバレエ・メカニックによる期間限定バフ。本調子以上に絶好調のこの体も、きっと今日の役目を終われば過労と薬に蝕まれた体へと戻るのだろう。
赤木 叶恵
年末年始は休むとは言ったが、それ以前に自分の意志など関係なく狩りに行ける体かも怪しい。今日を生き延びられるかすらも分からない。
赤木 叶恵
姉妹の通じ合いがある。姉にも、この不安はきっと伝わっている。だけれど、だからこそ口には出さない。
赤木 叶恵
「今日のお昼と夜は要らないや。帰る時間わかったら連絡する」
赤木恵夢
「……うん」
赤木 叶恵
「明日の夜は何かごちそう作って。気合入れて時間かけて品目いっぱい、手間かかる高いやつ」
赤木恵夢
「……うん!」
赤木恵夢
「今日一日、何作るか考えとく!」
赤木恵夢
てをかけるぞ~
赤木恵夢
家の食材もチェックするぞ~
赤木恵夢
おかあさんをごまかすぞ~
敷村 修也
ふふっ
安武 陸
品目多い料理、考えるのも作るのも時間かかるもんな
赤木 叶恵
叶恵が甘えた!!手を回して、姉を抱き寄せる。力強く体を包んで、放す。
赤木 叶恵
「んじゃ、行ってくらあ!」
赤木恵夢
「……ん!」
赤木恵夢
「カナちゃん、いってらっしゃい!」

導入:敷村修也

GM
冬の街並みを行き、一人で暮らす家に戻る。
GM
ところどころに飾られているイルミネーションの電飾が、季節の巻き戻りを再確認させてくる。
敷村 修也
たった3ヵ月前の光景のはずなのに、どこか懐かしさを覚えてしまう。
敷村 修也
「ただいま」
敷村 修也
家の扉を開け、誰もいない室内に帰宅を告げる。
GM
返答はない。朝の冷えた空気が外から部屋へと流れ込む。
GM
三ヶ月前の部屋の模様。多少増えた家具や物品などもすっかり消え失せている。
敷村 修也
それでも、あの頃よりは自分の家に帰ってきたという気持ちになる。
敷村 修也
3ヵ月の間にすっかり慣れたんだな、と思いながら伏せてある写真立てを手に取る。
灰葉陽
海野標の存在する運命に戻り、写真もここに戻った。灰葉陽の写真があなたを見る。
灰葉陽
振り返るようなアングルで、カメラへと微笑みかける。
灰葉陽
生きていた頃の彼女の姿。
敷村 修也
海野標からもらった、ひなちゃんの写真。
敷村 修也
写真立てから取り出すと、そのまま上着の内ポケットへしまった。
GM
写真をポケットにしまうと同時に、
GM
修也の懐のスマートフォンが鳴る。
GM
着信。
敷村 修也
取り出して相手を確認する。
GM
非通知。
GM
あなたの応答を待つように、無遠慮にスマートフォンは鳴り続ける。
敷村 修也
ああ、なるほど。
そう思いながら通話をタップする。
敷村 修也
「――もしもし?」
GM
『もしもし』
GM
声が重ねる。
GM
若い男の声。知っている。
GM
端末の向こうで、ふっと笑いを漏らすような気配があった。
GM
『おはよう、敷村修也くん』
GM
『数日ぶりだね』
GM
『それとも、久しぶりかな?』
敷村 修也
はぁ、と小さくため息をつく。
敷村 修也
「何の用事ですか」
GM
『灰葉陽にまた会いたいと思わないか』
GM
『今の君はどうなのか』
GM
『”どう”なっているのかと、思ってね』
敷村 修也
「……なんでまたそんなわかり切ったことを」
GM
『つれないなあ』
GM
『見てきたんじゃあないのか』
GM
『俺たちがずっと求めてきた光景をさ』
敷村 修也
「ずっと求めてきた光景を見てきたはずなのに、今ここで電話に出てるっていうのが全てですよ」
GM
『そうか』
GM
『君は、最後までそうなんだな』
GM
声に落胆はない。
GM
ただ、どこか、深い納得のような。
敷村 修也
「3ヵ月経ってもかわりませんよ」
GM
『何も変わっていないなら、その方が問題だとは思うけれど』
GM
『まあいいさ』
GM
『ホライゾンによろしく』
GM
言い残して、通話が切られる。
敷村 修也
静かになった端末をしばし見つめると、ポケットにしまう。
GM
PC3はシナリオ指定幸福が故人だからこうなるんだけど修也くんはつれなくてあんまり会話が発生しない
GM
とげとげしている
安武 陸
修也くんつれない男だもんな
GM
稜介はしょんぼり
安武 陸
ひなちゃんの前ではクソガキ様になるが……
GM
かわいいね
敷村 修也
萩原稜介への言葉に嘘はない。
敷村 修也
だがしかし、ここで萩原稜介からの電話をとっていることは必ずしも道を違えていることにはならない。
敷村 修也
ただ、俺がその道を選ばないということを改めて表明しただけに過ぎない。
敷村 修也
結局どれだけ経っても、きっと心のどこかは囚われたままだ。
敷村 修也
3話で松井が倒れたのも当然巻き戻っている。
修也とは師弟関係を結んだばかりになっているが。
松井さん
も言っていた。頑張りたいことを見つけろって。
敷村 修也
だから。
もう存在しない、誰も知らない約束を果たすために頑張ろうと思う。
敷村 修也
果たされるべき相手のいない約束であり続けるために、頑張ろうと思う。
敷村 修也
そう考えながら支度を整える。
恐らくそうしないうちに連絡が来るだろう。
敷村 修也
服を冬物に替え、必要なものを補充しながらぼんやりと考える。
敷村 修也
標に、どんな顔をして会えばいいのかを考える。
敷村 修也
気が重い。
全てを知らなかったはずが、すべてを知った状態でもう一度顔を会わせて。
敷村 修也
なにを喋ればいい?どう声をかける?
敷村 修也
全てを知っても、自分の中に灰葉標との記憶は無いと言っていい。
標からすれば、結局のところ他人のようなものだ。
GM
思い悩む修也の懐で再びスマートフォンが鳴る。
今度は着信ではなく、メッセージアプリの通知音。
GM
まずはグループラインへの通知。みんな~陸からのもの。
敷村 修也
ちらりと確認する。思った通りだ。
GM
それから少し遅れて、
GM
海野標からの個人メッセージ。
海野標
『俺が悪い』
海野標
『あんま気にすんな』
GM
あなたの胸中を見透かしたかのような、端的なメッセージ。
敷村 修也
「………」
敷村 修也
すこしの間考えると、たふたふと短い返信を打ち込む。
敷村 修也
クソガキムーブ。うっせぇ
GM
すぐ既読がつく。
敷村 修也
多分きっと、あの頃の自分ならこれくらいのことを言っただろう。
GM
少し間を置いて。
海野標
クソガキレスポンス合戦。うるせ
GM
それだけ。
敷村 修也
は、と笑うように息を漏らすと、端末をしまう。
部屋の電気を消し、扉を開く。
敷村 修也
「……いってきます」
敷村 修也
誰もいない、暗い部屋に振り返って声をかけると
敷村 修也
扉を閉めた。

導入:迷ノ宮光葉

GM
冬の朝の病院はいつもより重苦しく感じられる。
GM
巻き戻った季節に、そのことを改めて実感させられる。
GM
六分儀大附属病院。入院棟の一室。
GM
迷ノ宮御影のネームプレートを前に、あなたは立つ。
迷ノ宮 光葉
火事になっていたはずの花屋は巻き戻ったことで元に戻っていた。そこで今までと同じように花を買って。
迷ノ宮 光葉
少し、悩んでからドアをノックした。
楠瀬新
「あいとるでー」
楠瀬新
軽薄な関西弁の声。
迷ノ宮 光葉
そういえば楠瀬もいるタイミングであったっけ。なんとなく、気後れしながら「失礼します」と部屋へ入った。
楠瀬新
光葉PL「かおがついてる!」修也「この顔がバレメカに殴られてたんやなぁ」どうもー
楠瀬新
ベッドに腰掛けて紫煙を燻らせている。
GM
病室の窓は開け放たれていて、風にカーテンが揺れていた。
GM
迷ノ宮御影の姿はない。
迷ノ宮 光葉
「あの、ここは禁煙……」言いかけて、気を遣うべき相手もいない病室で、何を言っても仕方ないと口を閉ざした。
楠瀬新
「なんや今回はあちらさんえろう早いなぁ」
楠瀬新
光葉の咎めを無視してタバコを咥えている。
楠瀬新
「ま、なんかしら分かるんかもしれんな」
迷ノ宮 光葉
「……巻き戻ったことで、少しずつあの時より何かが変わっていっているのですね」
迷ノ宮 光葉
ベッド脇のテーブルに花を置いて。
楠瀬新
「あっちもこっちも、まんま同じ展開にする気はさらさらないってことやな」
迷ノ宮 光葉
「……同じことを2回もやって、結果も同じであったなら、無駄足になってしまいますからね」
楠瀬新
長い指でタバコを挟む。光葉へと視線を流す。
楠瀬新
「そゆこと」
楠瀬新
ベッドから立ち上がりながら携帯灰皿を取り出し、その火を潰した。
楠瀬新
「やけん光葉さんもやる気満々やろ?」
迷ノ宮 光葉
「……はい」
楠瀬新
「ひゅー」
楠瀬新
「たのもしたのもし。まあええわ」
楠瀬新
「今回はあんたらに乗ってやる」
迷ノ宮 光葉
「よろしいのですか……?」
楠瀬新
「前はなぁ、流石に見込みなさすぎたからどうかと思うたけど」
楠瀬新
「今回はまぁ、目ェあるやろ」
楠瀬新
「腐っても狩人やからなぁ」
楠瀬新
「あんま見過ごしとうないねん、ああいうの」
楠瀬新
へらへらと軽い言葉で語る。
迷ノ宮 光葉
「……そう簡単には負けないと、思います」
迷ノ宮 光葉
「いえ、勝ちます」
楠瀬新
「わあかっこいい」
楠瀬新
「ま、そゆことで」
楠瀬新
「よろしゅうな、光葉さん」
迷ノ宮 光葉
「はい、よろしくお願いします」頭を軽く下げる。
赤木 叶恵
楠瀬、けっこう若いじゃん……!
楠瀬新
御影より年下だからね
楠瀬新
24くらいと違います
安武 陸
なんか急にあれだな……楠瀬……お前……御影さんの彼女になりたかったのか……?みたいな気持ちになってきちゃった
GM
なんでだよ
安武 陸
お顔がかわいいから……
迷ノ宮 光葉
顔のいい男なので喜びがあるはずなのに光葉が苦手だったから素直に喜べないのがなにか…楠瀬さん…
敷村 修也
んふふ
迷ノ宮 光葉
楠瀬さんとお兄様が揃ってたら腐ってない女子だって腐るよ
GM
他の狩人たちの協力を得ながら、一つ一つ準備を進めていく。
GM
虐殺結界の発動陣を一つずつ潰す。
GM
関係各所に手回しをして、市民が出歩かないように通達を出させる。
GM
交通機関も止めました。コネと権力とテロ。物理の力で。
GM
12月の日没は早い。
GM
巻き戻った運命で初めて昇った太陽はあっという間に中天を通り越し、
GM
今はその身を半分ほど地平線に沈めている。
GM
やがて夜が来る。
GM
その前に、狩人たちは一堂に会する。
GM
日常を取り戻すために集った者たち。
GM
長い戦いに終止符を打つために、
GM
そして、その続きを得るために戦う者たちが。
GM
ST シーン表(5) > 豪華な調度が揃えられた室内。くつろぎの空間を演出。
GM
お世話になります 迷ノ宮邸(金持ちの家は狩人に使われがちだとわかるね)
GM
というわけで。
海野標
揃います。
赤木 叶恵
「本物の海野さんだ」
安武 陸
「本物だぞ」
海野標
「なんだそりゃ……」
安武 陸
「このようにお返事もできます!」
赤木 叶恵
「すごー」
海野標
「…………」
海野標
陸へ腕を伸ばし。
海野標
晒された額にデコピンをキメた。
安武 陸
「あいたぁ」
赤木 叶恵
「ちゃんと突っ込みもできる」
海野標
「マジで何……?」
迷ノ宮 光葉
粗茶などを出しつつ、皆嬉しいということを表現しているんだなぁと思っている。
赤木 叶恵
「海野さん居ない間この犬荒れて大変だったんだよ」
海野標
「そりゃあ大変ご迷惑をおかけしまして……」
安武 陸
「それはほんと……」
安武 陸
「ご迷惑おかけしました……」
海野標
「反省しろよー」
安武 陸
「反省します……」
海野標
してるのか……? してはいるだろうが……
安武 陸
ご迷惑をおかけしたのは事実です……
安武 陸
申し訳ないと思っています……
敷村 修也
うんうん頷いている。
赤木 叶恵
「で、何でこいつが居るの」
赤木 叶恵
こいつ(楠瀬)を指さす。
楠瀬新
「だめなん?」
迷ノ宮 光葉
「今回ご協力いただくことになりました」
赤木 叶恵
「胡散臭……」
安武 陸
「ご協力して下さるんだ……」
楠瀬新
「虐殺結界の場所を地図アプリに出力したの俺なんやけどなぁ~」
楠瀬新
「便利やったろ~?」
楠瀬新
潰してチェック入れたらそれぞれに共有されるやつ。
安武 陸
「えっ、マジ~? 楠瀬さんスゴ~、有能~」
楠瀬新
20箇所くらいあったからな~
楠瀬新
「せやろせやろ~」
赤木 叶恵
「役に立つのは知ってんだよ。シンプルな罵倒。はげろ
楠瀬新
「褒めながら悪口言われた」
安武 陸
「叶恵ちゃんは器用だなぁ」
楠瀬新
「ま、バックアップに専念するけん安心せぇ」
楠瀬新
「背後から腕折ったりはもうできへんから」
安武 陸
「そんな~、労働力としてもモリモリ働いてくださいよ~」
敷村 修也
「女子高生たきつけたりとかも?」
楠瀬新
「味方増えたら助かるんと違うか~?」
赤木 叶恵
「ホントにぃ?あたしたち、御影さんと対峙しますけど邪魔しない?」
楠瀬新
「したら前回からあっちつくやろ」
安武 陸
「それもそうだ」
赤木 叶恵
「…………そうだね」
海野標
「…………」
安武 陸
「楠瀬さんって、結局何が目的の人なんですか?」
楠瀬新
「俺?」
楠瀬新
「俺はなぁ、まあまあマジメ~なハンターやで」
楠瀬新
「だからクロニック・ラヴの虐殺はあかんと思うし、御影さんがあっちついたんは残念や」
楠瀬新
「まあ、でも、命あっての物種やからな!」
楠瀬新
「前は勝ち目ゼロやったけん素直にトンズラこかせてもらいましたわ~」
安武 陸
「……」
安武 陸
何度か楠瀬からの協力を得たことはある。 共に戦ったこともある。
安武 陸
真面目なハンターだと、思う。
楠瀬新
「今のあんたらになら賭けていいと思った」
楠瀬新
「そんだけの話やねん」
楠瀬新
「だからまあ、気張ってもらわへんと困るなぁ~」
楠瀬新
「標クンもそう思うやろ~?」
楠瀬新
標の肩を叩いて腕を回します。
海野標
回されています。ちょっと傾く。
安武 陸
標を見る。
安武 陸
大人しく腕回されてるな~
安武 陸
こいつ男との距離近くないか? (人のこと言えねぇ~~~)
GM
マジでだよ
敷村 修也
傾いてる~
赤木 叶恵
「こっちは昨日の今日なんだよ……あんな……メカのとき邪魔邪魔邪魔邪魔しやがって……!」
赤木 叶恵
シャーッ!
安武 陸
「まぁまぁ叶恵ちゃん、押さえて押さえて」
安武 陸
どうどう
敷村 修也
「腕折られてますからねぇ、叶恵さん」
楠瀬新
「俺かて腕ズタズタにされたで」
楠瀬新
「死ぬかと思った~」
赤木 叶恵
「ぎ~~っ」
楠瀬新
「いやマジの話やからなアレは」
安武 陸
「楠瀬さんは基本真面目なハンターだよ。 正直胡散臭さはカンストしてるけど」
赤木 叶恵
「騙されるな!あいつは陰湿な変態だ!」
楠瀬新
「そんな~」
安武 陸
「陰湿な変態はあんまり否定する材料ないけど……」
敷村 修也
腕を回して寄っかかられて傾いている標をちら、と見ている。
海野標
「……まあ、御影さん絡むとまあまあ読めないのはあるけど」
海野標
楠瀬の腕を掴む。剥がして押し退ける。
海野標
「ここであっちにつくくらいなら、前回もそうしてたってのは正しいだろ」
楠瀬新
はがされてもうた~
安武 陸
「今回も、色々手伝ってくれてるしね」
楠瀬新
「あんま噛みつかんといてやあ」
赤木 叶恵
「ちっ。まあいい」
迷ノ宮 光葉
お兄様が絡むと、というところに少し不安げにする、が特に何も言わない。
安武 陸
御影さんが絡むと読めないんだな……
安武 陸
絡んでるな……今回……
海野標
「…………」
赤木 叶恵
「そうだ。会ったら聞きたい事あったんだ、海野さん」
海野標
「何?」
赤木 叶恵
「クロラヴに既に殺されてる人って、どうしたらいいの?」
海野標
「ああ……」
海野標
「だいたいはバレエ・メカニックが言っていたのと同じだけど……」
海野標
「お前らが隙を作ってくれれば、俺の方から働きかけられる」
海野標
「運命の浅いところにいるような犠牲に関しては、これで覆せるよ」
海野標
「……白瀬礼子のことだろ」
赤木 叶恵
「うん」
海野標
「それに関してはなんとかなる。協力してもらえれば」
海野標
「…………」
海野標
「……っていうか、だから」
海野標
「そうなんだよな」
海野標
「そもそもが」
赤木 叶恵
「……なに?」
海野標
なにがしかぼそぼそと呟いていたが、
海野標
小さく、息をつく。
安武 陸
ちらと、標を見る。 耳は言葉を拾えない。
海野標
狩人たちへと向き直った。
海野標
そして、深く頭を下げる。
海野標
「そもそもこの件は全部、俺の不始末と力不足が招いたことだ」
海野標
「お前らはそれに巻き込まれたに過ぎない」
海野標
「だから、本当は戦わなきゃならない理由なんてどこにもない」
海野標
少し、押し黙った。
海野標
息を吸って続ける。
海野標
「……すまない」
海野標
「でも、頼む」
海野標
「俺は風香を止めたいんだ」
海野標
「……手伝ってくれ」
安武 陸
標の後ろに回り込み、肩を掴んで無理矢理に頭を上げる。
赤木 叶恵
「今更」
海野標
「…………」
海野標
上げさせられる。陸を見る。
安武 陸
そうして、仲間達を向く。
安武 陸
「そもそもこの件は全部、俺のわがままだ」
安武 陸
「お前らはそれに巻き込まれたに過ぎない」
海野標
「……おい」
安武 陸
「そうだよな?」
海野標
「…………」
海野標
言い澱んで唇を噛む。
安武 陸
「だから、本当は戦わなきゃならない理由なんてどこにもない」
安武 陸
「でも、やりたいんだ」
安武 陸
「俺は、頑張りたいよ」
安武 陸
「力を貸して欲しい」
赤木 叶恵
「安武~……」
赤木 叶恵
「色々あるよ、戦う理由は」
赤木 叶恵
「メカ叩いて言うこと聞かせるのに加担してんだ。ここで引くわけないじゃん」
安武 陸
「うん。 ありがとう、叶恵先輩」
敷村 修也
「きっかけがどうであれ理由がどうであれ」
敷村 修也
「結局は、俺がこうすることを選んでますからね」
敷村 修也
「標もそこんとこ勘違いすんなよ」
安武 陸
「修也くん……」
海野標
「…………」
安武 陸
「君には、本当に悪いと思っている」
海野標
押し黙っている。
安武 陸
「でも、ありがとう」
迷ノ宮 光葉
「わたくしたちは、自分でこうすると決めましたし、今更遠慮はしなくていいものと思っていました」
迷ノ宮 光葉
「だから、頭を下げないでくださいませ」
海野標
「……分かった」
海野標
「悪い」
安武 陸
「光葉ちゃんも……、ごめんな」
安武 陸
「ありがとう」
安武 陸
「とまぁ、そういう感じですよ、師匠」
楠瀬新
「俺は~?」
安武 陸
「え~? じゃあ楠瀬さんは~?」
楠瀬新
「勝ち馬に乗りに来ました~」
安武 陸
「イェーイ! 俺達勝ち馬大好き!」
楠瀬新
「イェーイ」
楠瀬新
ハイタッチ。
安武 陸
ハイターッチ。
海野標
なにこれ?
楠瀬新
波長合ってるのやめろ
楠瀬新
なんだこいつら
敷村 修也
ハイタッチする激重男共
楠瀬新
あれと一緒にされたらかないませんわあ!
敷村 修也
鏡!鏡を見てくれ!
安武 陸
俺も海野が絡まなかったらマトモとか言われる可能性あるな……と思っています
安武 陸
「師匠も、手伝ってくれるんですもんね」
海野標
「…………」
海野標
「そういうことにしといてやる」
安武 陸
「やったぁ」
赤木 叶恵
「じゃ、礼子さんたちのことは任せる。タイミングとかは指示お願い」
海野標
「分かった」
安武 陸
「なんとかするって言っても、無茶はしないでくださいよ」
海野標
「わーってるよ」
安武 陸
「師匠がまた無茶したら、光葉PL「自分を人質に取っている……」俺マジでどうなるかわかんないですよ
海野標
「ヤバい脅し方やめろ……」
安武 陸
「マジで」
海野標
「……そういう脅しかけてくるんなら」
海野標
「お前も無茶すんの、ナシだからな」
安武 陸
「ええ……?」
海野標
「なんだその反応……」
敷村 修也
その反応なんだ……。
安武 陸
「困ったな……、無茶ができない……」
海野標
「自分が心配なら俺に無茶すんなって理屈だろ?」
海野標
「俺が無茶する前から心配させてたら成立しねえぞ」
赤木 叶恵
「ちょっと前まで『無茶とか絶対にやだ~』みたいな感じだったのになあ」
安武 陸
「そりゃあ無茶しないに越したことないけどさ~」
安武 陸
「じゃあ……無茶せず頑張ります……」
海野標
「よろしい」
安武 陸
無茶せず倒せる相手なのか……?
海野標
自分が言い出したことだろ……
安武 陸
俺が無茶するのはいいけど……
海野標
「まあ実際かなり魔力総量が落ちてるからな」
海野標
「前みたいに何十回も生き返してやるようなことはできねえんだわ」
海野標
「……だから、全員」
海野標
「できる限り無事でいろよ」
安武 陸
「そりゃあ、もちろん」
赤木 叶恵
「ん」
安武 陸
「死にたくはないですからね」
迷ノ宮 光葉
「はい」
敷村 修也
頷いて応える。
楠瀬新
「がんば~」
GM
話す今も日が落ちる。
GM
イルミネーションの光も褪せた冬の六分儀市に、
GM
再び、運命の夜が訪れる。

遭遇フェイズ

GM
駅前広場。
クロニック・ラヴ
吸血鬼の少女がそこに佇む。
『さいごまで』高地結凪
傍らには少女が一人、
『ひなたを想う』萩原稜介
少年が一人、
『送り火』迷ノ宮御影
そして、炎をまとう男が一人。
安武 陸
アイコンがついてる
敷村 修也
わぁ~
安武 陸
アイコンがついてる!
迷ノ宮 光葉
アイコンがついている…!
GM
たいへんだった
赤木 叶恵
顔~~~!!!!
敷村 修也
わぁ……
安武 陸
楠瀬さん顔がついてたからなんだぁ?と思ったらだよ
迷ノ宮 光葉
すごい…
安武 陸
でもめちゃめちゃうれしいな うれしい うれし~~~
安武 陸
顔があると顔がある
GM
楠瀬はぶっちゃけおまけだからね
安武 陸
楠瀬さんだけ顔が付く理由ないもんな
GM
交通機関が止められ、外出自粛令も出され、人もまばらな六分儀駅前の広場で、
GM
狩人とモンスターが相対する。
クロニック・ラヴ
「……来ましたか」
クロニック・ラヴ
冬の冷たい風に銀髪を靡かせながら、少女の凛とした声。
クロニック・ラヴ
赤い瞳で狩人たちを睥睨する。
安武 陸
「どーもどーも」
安武 陸
「来ましたよ」
クロニック・ラヴ
「…………」
クロニック・ラヴ
陸を認めて目を眇める。
クロニック・ラヴ
「価値のない運命だったのでしょうね」
クロニック・ラヴ
「あなたたちにとっては」
安武 陸
「誰かが願った運命を、価値がないなんて言わない」
安武 陸
「でも、俺の欲しい運命は別のものだった」
安武 陸
「それだけだろ」
クロニック・ラヴ
「あなたは?」
クロニック・ラヴ
修也を見る。
クロニック・ラヴ
「恋い焦がれたあなた」
クロニック・ラヴ
「求める心を未だ捨てられずにいるあなた」
クロニック・ラヴ
「あなたもそうと言えるのですか?」
敷村 修也
「………」
『ひなたを想う』萩原稜介
稜介も修也を見ている。
敷村 修也
「……あれは結局、俺の願った運命じゃない」
クロニック・ラヴ
「では、今度は私に願いますか?」
クロニック・ラヴ
「あなたも」
クロニック・ラヴ
叶恵を見る。
クロニック・ラヴ
「あなたも」
クロニック・ラヴ
光葉を見る。
クロニック・ラヴ
「バレエ・メカニックへの願いを捨てて、私」
クロニック・ラヴ
「『クロニック・ラヴ』に、願いをかけてみせますか?」
敷村 修也
「いいや。願わない」
敷村 修也
「俺にとっては運命を願うより、約束を守る方が大事なんだ」
クロニック・ラヴ
「…………」
迷ノ宮 光葉
「わたくしも、願うことは最早なにもありません」
迷ノ宮 光葉
「強い」「もう光葉ちゃんがお兄様を抱きそう」ただ自らの力で勝ち取るのみです
『送り火』迷ノ宮御影
「……そうか」
『送り火』迷ノ宮御影
夜闇にウィッカーマンの炎が火の粉を爆ぜる。
『送り火』迷ノ宮御影
その熱を感じる気配も見せないままに、迷ノ宮御影が息を吐く。
『送り火』迷ノ宮御影
「ならば、その力を見せてみろ」
『送り火』迷ノ宮御影
「それが狩人の流儀だろう」
迷ノ宮 光葉
「はい、お兄様」
『送り火』迷ノ宮御影
「……それは、お前にも教えたことだったな」
『送り火』迷ノ宮御影
「叶恵」
赤木 叶恵
「そうですね」
赤木 叶恵
「知ってたけど、やっぱりそっちに立ちますか」
『送り火』迷ノ宮御影
「期待していたとは言わせんぞ」
『送り火』迷ノ宮御影
「俺は――とうに『こちら側』だ」
赤木 叶恵
「言いませんよ」
赤木 叶恵
「師匠は、いつか超えられるもんです」
赤木 叶恵
「わからせてやります」
『送り火』迷ノ宮御影
ふっと笑う。
クロニック・ラヴ
「…………」
クロニック・ラヴ
「海野標」
海野標
「…………」
クロニック・ラヴ
「あなたには何も言いません」
クロニック・ラヴ
「今、こうしてここに立っていることが全てでしょう」
クロニック・ラヴ
「あなたは運命を手放した」
クロニック・ラヴ
「手放された運命と可能性は本来の持ち主」
クロニック・ラヴ
「私の手に戻り、収束する」
クロニック・ラヴ
きらきら。
クロニック・ラヴ
きらきらと。
クロニック・ラヴ
星の光がクロニック・ラヴを取り巻いて、言葉の通りに収束し始める。
クロニック・ラヴ
「叶えられなかった全ての願い」
クロニック・ラヴ
「手放された全ての運命を背負い」
クロニック・ラヴ
「私は今、ここに再誕する」
クロニック・ラヴ
光が弾けた。
Re:クロニック・ラヴ
星の光を全身にまとい、運命の窓を背に負うて。
Re:クロニック・ラヴ
魔女クロニック・ラヴはここに生まれ落ちる。
Re:クロニック・ラヴ
指をさした。
Re:クロニック・ラヴ
陸へと向けて。
Re:クロニック・ラヴ
光の針がそちらへと放たれる。
Re:クロニック・ラヴ
まっすぐに、心臓をめがけて。
安武 陸
心臓に向かって降り注ぐ針。 何度も経験した死。
安武 陸
指を刺された刹那にそれを見上げて。
安武 陸
心臓を射抜く直前に身を躱す。
Re:クロニック・ラヴ
「そう」
Re:クロニック・ラヴ
「躱せるくらいになりましたか」
Re:クロニック・ラヴ
二の矢三の矢は標へと放たれる。
海野標
飛び上がってそれを躱し、刀でもって打ち払う。
安武 陸
「お陰様で、ザコでもガキでもなくなりました」
Re:クロニック・ラヴ
「……調子に乗るのは」
Re:クロニック・ラヴ
「早いのではないですか」
『送り火』迷ノ宮御影
炎が膨れ上がる。
『送り火』迷ノ宮御影
狩人たちへと向けて、青いそれが放たれる。
敷村 修也
虚をつかれたわけでも、ましてや初めて見るわけでもない。
敷村 修也
警戒したまま青い炎の射程外へと逃れる。
敷村 修也
あの時とは違う、冷静に判断できる。

福とともに飛び退る。大丈夫、躱せる範囲だ。
赤木 叶恵
「ちっ」
赤木 叶恵
当たりはしないが、迂闊には飛び込めない。牽制として機能するだけで、フォロワーの仕事としては十二分以上。
『送り火』迷ノ宮御影
狩人が何に苛立つのかをよく知っている。
安武 陸
以前とは違う。 皆動揺していない。
安武 陸
必死に助ける必要も、必死に逃げ惑う必要もない。
『ひなたを想う』萩原稜介
「さて、踏ん張りどころだ」
『ひなたを想う』萩原稜介
「頑張ろうか」
『ひなたを想う』萩原稜介
拳銃を抜きながら、狩人たちへと視線を向ける。
『さいごまで』高地結凪
「……うん」
『さいごまで』高地結凪
「最後まで」
『さいごまで』高地結凪
こちらも武器を構えながら、視線はしかし空を向いていた。
安武 陸
前回と同じことは多い。 前回と違うことも多い。
安武 陸
一つだけ言える。
安武 陸
やれることは、増えている。
Re:クロニック・ラヴ
空で弾ける星の光を、今はただ見上げるばかりではない。
安武 陸
「お互い、頑張ろうぜ」
GM
とりあえずデータを出しますか。
◆魔女:Re:クロニック・ラヴ
相:傲慢
耐久力17 余裕17 血量17
初期テンション17 激情1
◆支配力
・クロニック・ラヴ《日常》強度3
運命変転血戒のリソースである空色の結晶。
七つ存在するうちの三つ。その原動力は郷愁と憧憬にある。
・無敵《自信》強度3
或いはそのように誓ったもの。故にどんな地獄さえ歩いてきた。
・犠牲《地位》強度5
積み上げてきた屍の山。葬ってきた無数の命。流してきたおびただしい量の血液。
運命を変転する以外に破壊する方法はない。

◆フォロワー
・『送り火』迷ノ宮御影
・『ひなたを想う』荻原稜介
・『さいごまで』高地結凪
GM
このうち、『送り火』迷ノ宮御影は前哨戦の対象に取れません。
GM
そういう感じで。よろしくお願いします。
敷村 修也
はぁい
GM
メインフェイズ第一サイクル始めていきましょうか。