#2 彼女の見る夢 導入
惨殺シーン
GM
狩人たちがクロニック・ラヴを斃してから一ヶ月が経ち、年が明け。
GM
赤く回転する警告灯に、あたりの建物は一定の周期で点滅している。
GM
真夜中にもかかわらず、野次馬が垣根を成している。
GM
建物はゲーミング火災。虹色の炎で燃えていた。
GM
小さな二階建ての家屋。
発見は早く、現代の消防車の設備では消えないはずのない出火。
GM
「卯田さん……この前生々しい辛さ。リフォームが終わったばかりで……」
GM
――消防隊の懸命な活動にも関わらず、建物は全焼。
GM
まるで、これまでそこにあったということが、夢であったかのように。
導入:安武陸
敷村 修也
パクチさんが喪失仲間。こっち側になってくれて嬉しい
安武 陸
しかしあまり深く考えずに、標の手を取る。
海野標
「石もなんもねえのに急にすっ転びやがって」
安武 陸
「いや、ん~と、なんだろう……、何でもないっす……」
安武 陸
なんだろう。 なぜか手を取ってしまった。
海野標
振り解かれることはないが、訝しげに顔をしかめている。
安武 陸
「……いやぁ……、なんか、なんでしょうね……?」
安武 陸
もう、そこにこの人はいない気がしてしまう。
海野標
「ちょっとそういうサービスはしてねえなあ」
安武 陸
「さすがにそれは……、それはですよねぇ。 戦いにくいし」
海野標
言いながら、しかし振り解くのも気が咎めるのか、
安武 陸
「なんでお手々つないで歩いてるんですか?」
安武 陸
手をつないだままでいても、損ばかりで得はない。
海野標
あなたの手だけが、標の手を握りしめている。
安武 陸
恋人同士でもないのに男同士で手を繋いで、ただでさえ足手まといなのに余計に足手まといになって。
安武 陸
手を離さない理由なんて、何一つないのに。
海野標
いざとなれば、その手はいつでも解かれるだろう。
海野標
空には星が、不似合いにちかちかと瞬いている。
安武 陸
手を握ったままでいる。
標の手を握っても、別に嬉しい訳ではない。
海野標
「ふうん」と、最終的にあまりにも素っ気なく無関心な声。
海野標
「そうしたくてして、それで多少楽になんなら」
安武 陸
手を離さずにいてくれることが、どうしてこんなに嬉しいのか、わからない。
海野標
「流石にそこまでのカウンセリングは承ってねえぞ!」
安武 陸
手を離さずにいてくれることが、どうしてこんなに悲しいのか、わからない。
安武 陸
「いや、すいません、すいません、大丈夫っす!」
安武 陸
「ええっと……、ちょっと女の子の日でぇ、不安定になっちゃってるっていうか~」
安武 陸
「ずっとあんたに、隠し事なんてしてなかった」
安武 陸
自分より少し小さい手を滑らせるように、手が離れる。
安武 陸
「そのままでいいって、いつもなら言うはずなのに」
安武 陸
立ち止まる。 輝く星の下で。 まだクリスマスの予感の残る町で。
海野標
何か、標が陸に向き直り、その口を開きかけた、
海野標
海野標の全身が、何がしかに貫かれて、血を溢れさせている。
安武 陸
現実ではないから、今、俺はこうなっているのに。
GM
あなたを生かしたもののしるしはもはやどこにもなく、
安武 陸
──ポンパンパポポン♪ ポンパンパポポン♪
安武 陸
目の前には、築年数が30年くらいのリフォーム済み天井が見える。
GM
12月の狩りで海野標があなたの前から消え失せて、
GM
それから急増したモンスターの出現に追われながら年を越して、
安武 陸
未だ呑気に鳴り続けるスマホを手に取って、目覚ましを止めた。
安武 陸
こんな夢を見るのは初めてではない。 似たようで、少しずつ違う夢をずっと見ている。
安武 陸
あのまま標の手を離さなければ、夢の中の標は生きていただろうか。
安武 陸
ぼんやりとした考えに水を差すように、スマホのスヌーズが鳴る。
安武 陸
出かけなければならない。
生きている人間には、やらなければいけないことが多い。
安武 陸
新年のおめでたいムードに包まれた街の、ファミリーレストラン。
安武 陸
そろそろお琴のBGMから通常運行になってきている。
安武 陸
今日は、そこで仲間達と会う約束をしている。
妙に増えたモンスターの対策や情報交換が目的。
GM
参考までに、今回のセッションの狩りは1月18日で
赤木 叶恵
「ようやく休日きたと思ったらこれだよ」
敷村 修也
「あけましてゲーミング火災。年明け早々これですもんね」
敷村 修也
「そりゃあいつらには正月もなにもないでしょうけど……」
迷ノ宮 光葉
不慣れでかわいい。慣れぬドリンクバーのシステムを見様見真似で使って紅茶を飲む。
迷ノ宮 光葉
「わたくしは一応出席は足りるようにでていますね……」
敷村 修也
「同じく卒業できるくらいには出席してます。もうそんなにないですし」
赤木 叶恵
「してないの……!?みんな把握してるの……? どれぐらい休んだらアウトとか……」
迷ノ宮 光葉
「卒業はしたいので……把握しておかないとまずいですからね」
敷村 修也
「えーっと……まぁ……俺は計算とかしなくてもいいくらいには……」
赤木 叶恵
「うわ、優等生。急に休みがちになって目立つんだろうな」
敷村 修也
「受験も終わって入院もしたらそうそう何も言われないですよ」
赤木 叶恵
「あ、受験ってこの季節には終わるんだ?」
敷村 修也
「あー、いやそんなことは……。ほんとうなら今頃こんなところにいないですよ」
敷村 修也
お姉さんは多分家でそういう話をしないのだろう。
赤木 叶恵
「遅くない? 安武。なんであいつが一番遅れてんの」
敷村 修也
「適当なこと言ってない?寝てるんじゃないですか?」
迷ノ宮 光葉
「陸様もいろいろご用事があって遅れているのかもしれません。横断歩道を渡れないご老人を助けたりとか……」
赤木 叶恵
「知らない。こうだ、こう」カチカチとブザーを鳴らす。
敷村 修也
「確かに安武さんならやってそうですけど……なんかそうなるとお礼とかもらって夕方とかになりそうじゃないですか?」
安武 陸
入り口のドアが開いて、客が一人、受付を待たずに店内に進んでゆく。
安武 陸
「や~、お待たせお待たせ。
今そこで横断歩道を渡れないおばあさんがいてさ、遅れちゃった~」
敷村 修也
「そこの歩道押しボタン式じゃなかったでしたっけ」
安武 陸
「あれ、そうだったけ~? ほら、つめてつめて」
GM
ゆるさねえ!!!! パクチ!!!!!!!!!
安武 陸
少し顔色が悪く、髪も寝癖を直した程度。 だが口調はいつもどおりに明るい。
赤木 叶恵
文句のひとつも言おうとして、口が止まる。
敷村 修也
それでも、以前に相談した時よりは幾分マシに見える。
安武 陸
「みんな何注文した~? あ、俺もドリンクバー取ってこよ」
迷ノ宮 光葉
「……陸様、きちんとご飯や睡眠などとれていますか?」
迷ノ宮 光葉
「顔色が、その、あまりよろしくないので……」
安武 陸
「え、そうかな? いや~、最近疲れてるからさ~」
安武 陸
へらへらと笑いながら、肩をすくめて見せる。
安武 陸
「はーい、コーラ一丁頂きました~。 ありがとうございま~す!」
安武 陸
他の面々にもドリンクを聞いて、自分にはリアルゴールドを入れてくる。
安武 陸
「いや~、トレーラー文にある通りめちゃめちゃ増えており、PCたちはその対応に追われている。最近めちゃめちゃモンスター多いからさ、大変だよね」
敷村 修也
「そうですね。……安武さんの疲れもそのせいですか?」
安武 陸
「そうそう。 いや~、元々寝付き悪いから大変で」
赤木 叶恵
「そういえば昨日の火事のこと知ってる?」
GM
モノビーストによるものだということは、叶恵は知っていてもいいかもしれませんね。
GM
その場に居合わせたハンターが対応にあたったりなどしていました。
満月の夜ではないので討伐は叶いませんでしたが、誘導したり頑張ったりして被害の軽減に努めていたとのこと。
敷村 修也
「どこも全焼でしたよね。7件目でしたっけ」
安武 陸
モノビーストやだな……と思うが、別に吸血鬼でも魔女でも違う嫌さがあるので、やだな~と思うに留めた。
赤木 叶恵
「モノビーストやったことある人いる?」
安武 陸
「……修也くん、今、俺が誰にくっついてたかわかる?」
赤木 叶恵
「ええ……。あたしの知ってる人? それ」
迷ノ宮 光葉
「えっと……、陸様はどなたかとご一緒していましたっけ……。わたくしも会いましたか?」
安武 陸
頷いて、ストローの紙袋を破る。 コップに刺して、一口。
安武 陸
「海野標。半吸血鬼。 修也くんと同じクラス。 刀剣使いでキラキラのマントをビルの夜風になびかせたりしていた。アイドルみたいな格好で戦ってた。 弱い俺はずっと師匠に守ってもらっていた」
赤木 叶恵
「その写真って昨年末の……。ん。あれ……?」
迷ノ宮 光葉
「なんだかわたくしも、覚えが曖昧です……」
赤木 叶恵
「あれ? だよね。真ん中に……ん、あ」
赤木 叶恵
「あの! キラキラした服で姉の記憶に残ったハンターの!」
迷ノ宮 光葉
「……今やっと思い出せました。海野様……。確かに、海野様の存在があってわたくしたちは、ここにいる、はずだったのに……。どうしてわすれてしまったのか……」
安武 陸
「皆、師匠の記憶を忘れてる。 というか、話しても思い出してくれない人がほとんどだ」
GM
こうしてその名前を口にできる人間すら、他にはなかった。
安武 陸
「名前を聞き取ってくれることすら、全然なくて……」
安武 陸
「そもそも師匠がいないと知り合えなかった人も、師匠のこと知らないし、写真からもいなくなってるし」
安武 陸
コップの中の黄色い液体が、しゅわしゅわと泡を立てている。
敷村 修也
「赤木さんと光葉さんならきっと大丈夫だとは思ってましたけど……」
敷村 修也
2人が海野のことを思い出してくれたことに安堵しつつも、この写真に写っていた海野標に見覚えがないこと、自分自身の記憶と食い違いがあることも伝える。
敷村 修也
「俺の記憶には確かに海野の記憶はあるんですけど、その記憶とひなちゃん……『灰葉陽の弟』というところがかみ合ってないというか……同じ高校に通ってて同じクラスのはずなのに、ハロウィンのあの日まで気付けなかったというか……」
赤木 叶恵
「今の今まであたしが忘れてたみたいに?」
迷ノ宮 光葉
「……海野様、秘密の多い方でしたから……、修也様の記憶の食い違いなども、色々事情があったのかもしれません」
敷村 修也
「……もしかするとそうかもしれません。クロニック・ラヴが灰葉陽の正しい記憶についてこだわっていたのも、海野に執着していたのも、おそらくは……」
安武 陸
「修也くんに妙なマウントも取りたくなるってもんだよ」
安武 陸
「昔に似たようなことがあったんだとしたら、あの血戒だか魔法だかについての情報が欲しいとこだけど……」
GM
なにせ、海野標のあらゆる痕跡は途絶している。
GM
誰も彼のことを覚えていない。誰も彼のいたことを知らない。
GM
海野標の使っていた机も、ロッカーも、当然出席簿にあったはずの名前さえも。
安武 陸
いじめじゃん!!!!!!!!!!!!!!!
GM
いない人間をいじめることは不可能ではありませんか?
安武 陸
「クロニック・ラヴみたいな方法でなんとかできるとしても、俺はやらないよ」
安武 陸
「それは、師匠が望むことでもないはずだし」
安武 陸
「だから……、マジで調べてもどうしようもない」
安武 陸
「調べたいって思ってるくらいは、いいじゃん」
敷村 修也
「俺も気になります。俺自身の記憶に関わることですし」
敷村 修也
「ただ、どうしようもないのも事実なんです。調べようにも記録からも消えてるし、誰も覚えてないどころか認識もしてない。……俺も、安武さんに言われるまで違和感に気付いてもいませんでした」
赤木 叶恵
「納得いかないもんね。知らないところで話が進んで、何もわからないまま終わってさ」
赤木 叶恵
「あーあ。ウィッカーマンで、誰かの兄で、誰かの師匠で、クロニック・ラヴの側についた誰かさん。
現在絶賛昏睡状態。病院で寝てる誰かさんが起きれば、一気に話が進むかもしれないのに」光葉の方を見る。
迷ノ宮 光葉
「…………そうですね、兄ならばあるいはもう少し事情を知っていたかもしれません。わたくしたちと同じように記憶が消えていなければ、ですが……」
安武 陸
「思い出せた人間の共通点は、あの場にいたってことだと思う。だったら、他の奴より可能性はありそうなんだよなぁ」
迷ノ宮 光葉
「とはいえ……兄の目覚める可能性はお医者様でも難しいと仰っていますから……話を聞けるかどうかはわかりません」
GM
逆戻りの昏睡状態。何故目覚めないかも分からない。
敷村 修也
「それでも、赤木さんと光葉さんが思い出せてよかったです」
迷ノ宮 光葉
黙って手を取られ、陸の心境を思う。世界でたった一人だけ覚えていられることの辛さと心細さ。疎外感。それらを思うとだいぶ心労があったことだろうと想像に難くない。
赤木 叶恵
「……ずいぶん参ってるね。顔もひどいけど、髪もパサパサだよ」
安武 陸
「ヒゲは剃ってる分褒めて欲しいな~」
そう笑うが、手は重ねたまま。
赤木 叶恵
「剃ってる分マシだけどさあ。勘弁してよ。一緒に戦うヤツがフラついてたりしたらこっちの命まで危ないんだから」
導入:迷ノ宮光葉
GM
では、いつもどおりに六分儀大附属病院へと向かいます。
GM
あなたがいつも、見舞いの花を見繕っている花屋がある。
GM
最近店のリフォームを済ませたばかりの、小さな花屋が。
GM
家族経営ながらも季節の花を彩り豊かに取り揃えていたその花屋ですが、
GM
それが、建物ごときれいさっぱりなくなっています。
GM
ビニールシートに覆われて、カラーコーンが並んでます。
GM
立ち入り禁止の表示。黄色と黒のバーで仕切られて。
GM
放火の疑い有りとのことで、目撃者を探す旨のものが。
迷ノ宮 光葉
「放火……」昨日聞いたモノビーストの話にも関わりがあるのだろうか、と思いつつ店をテープの外側から眺めます。
GM
新しくなったばかりの看板が、あなたの記憶にも真新しい。
迷ノ宮 光葉
もし警官などが近くに立っていたら、放火の様子、特に七色の火であったかどうかは聞けるでしょうか?
GM
村人A。枯れ葉の掃き掃除をしている近所の人とかがいます。
迷ノ宮 光葉
「すみません、先日までこのお花屋さんで花を買っていたのですが……、放火、ですか? どのような原因か、様子など、ご存知ありませんか?」
GM
「卯田さんとこのお客さんかい? 災難よねえ」
GM
「旦那さんも奥さんも見つかってないって言うけど……」
GM
あんな風に全部焼けちゃったんなら、ね、みたいに、だいぶ言いにくそうに言葉を濁し。
GM
「虹色の炎だとかなんだとか……悪い夢でも見てたんじゃないかと思うけど」
GM
「不謹慎な騒ぎ方するんじゃありませんって叱ったわ」
GM
の割にはよく喋ってくれる。人様の不幸で……そんな……みたいな口ぶり。
迷ノ宮 光葉
「でも奥様たちはご無事で何よりです、ご夫婦も早く見つかるといいですね。お話、ありがとうございました」と頭を下げて失礼しましょう。
GM
何度見ても、毎日のように通ってきた花屋はもう跡形もない。
GM
その存在は、今はもう記憶の中にしか残っていない。
GM
そういう話をやりますってトレーラーにあるだろ!
GM
トレーラーに書いてある話をやってんだよこっちは!
迷ノ宮 光葉
きっと夫婦も無事であるかどうかは望みが薄い気がする。とても残念だと思うし悔しいとも思う。
迷ノ宮 光葉
きっとまた放火の被害は出るだろうし、なるべく早く、件のモノビーストを見つけなければ。と思いつつ、今日は花を諦めて病院へ急ぎます。
GM
病院に行けば、いつもの通りに兄があなたを迎える。
迷ノ宮御影
彼のあなたに語りかける姿も、今は記憶の中にのみ。
導入:敷村修也
敷村 修也
新しい暮らし、というには全く変わってしまった生活。
1人で過ごす時間は気温以上に寒さを強く感じる。
GM
ジョギングのついで、というには少々遠い場所だった。
GM
その近くには、今は燃え落ちた敷村修也の生家がある。
敷村 修也
すっかりきれいに、というわけにもいかないが焼け跡の片づけが進んでいる。
生活の変化のせいか、懐かしい記憶とただの空き地に戻っていく生家だったものが微妙に結びつかない不思議な感覚がある。
GM
記憶の中の食い違いに、なかなか気付くことができなかったのは。
GM
灰葉家のあるマンションは敷村修也の家からすぐ近く、通りを挟んだ向こう側に建っている。
GM
声をかけてくる灰葉陽の姿と声は、今でも明確に思い出せる。
敷村 修也
ひなちゃんのことはちゃんと覚えている。
ひなちゃんに弟がいることも覚えている。
GM
では、その弟がひなたと同じように玄関から出てくる姿を見たことは?
敷村 修也
ない。はずだ。
なかったはずだ。
覚えている限りは。
敷村 修也
じゃあ、なぜ。なぜ海野のことを弟だと覚えていたのか。
同じ高校に通い、同じクラスにいたにも拘わらずなぜ今年のハロウィンまで、まるで居なかったかのように。
敷村 修也
ちぐはぐな記憶。
どこから何が違っていたのか。
敷村 修也
狩人の世界のことを知ってしまった今、自分の記憶に自信が持てない。
GM
あなたに手渡されたはずの、灰葉陽の写真も消え失せた。
敷村 修也
だからこうして自分の記憶と思い出を確かめるように、ここに来た。
GM
自分の家が燃え落ちたことを除けば、記憶の通りの変わらぬ風景。
敷村 修也
春も夏も秋も冬も、ここで話をしたことを覚えている。
GM
しかし、それはあくまで自己を相手にしたものでしかない。
敷村 修也
何かに記録が残っているわけでもない。その痕跡はすべて灰になった。
敷村 修也
思い出として実感を得られるものは自分の記憶にしかない。
敷村 修也
灰葉陽がいたことも、家がこのマンションだったことも、5年前のあの日に死んでしまったことも調べれば出てくる事実だ。
だけどそれは自分の記憶や思い出とは違うもの。
敷村 修也
それでも、居たことを肯定してくれるものだ。
GM
何もかも痕跡が消え去ってしまったのとは、違う。
敷村 修也
記録も、記憶も、何もかもが消えてしまった海野標とはちがう。
敷村 修也
例え燃え尽きた自分の生家が空き地に戻っても、たとえそこに違う家が建っても、自分の記憶は『自宅がだった場所』になるだけだ。
敷村 修也
海野標のことを覚えている者がいる限り、記録に残っていなくても海野標は『居た』ことになる。
敷村 修也
自分がひなちゃんのことをずっと憶えているように。
GM
それを確かなものとする手段を、あなたたちは知っている。
導入:赤木叶恵
GM
そのように連絡をよこしてきたのは、0話の導入で叶恵に悪態をつかれていた。D7の連絡役。
GM
『そっちでチーム組めるか? ちと手数が足りねえ』
GM
『《庭師》も《ヘカトンケイル》も今晩が大詰めでな』
GM
『上からのコードネームは、……なんだこりゃ』
GM
夕暮れ時。やかましいサイレンの音が街の異常を知らせてくる。
GM
そちらに足を向けながら、あなたはある事実に想いを馳せる。
GM
あの病院は迷ノ宮御影が病院している入院だが、
GM
あなたの姉が殺人事件に巻き込まれ、死に瀕した時に入院した病院だ。
赤木 叶恵
虹の火災は、燃えたものを消してしまうのだという。
赤木 叶恵
ゆえに死者は見つからず、犠牲者の数は定かではないが……
赤木 叶恵
病院が燃えれば、これまでの火災とは規模の違うものとなるだろう。
赤木 叶恵
世話になっている場所だ。燃えて欲しくはない。
GM
今回はちゃんと消防車が動いています。消火作業など行われている。
GM
医療関係者やら消防関係者やら警察やら、色んな人が対応に追われて右往左往している。
GM
そういうところで一旦連絡を取り合って集合してもらいましょうか。入れますよね?
GM
光葉には主治医から連絡が入ってますね。火事が起きたので、兄を別の病院に移送するとの話が。
GM
正しい教育を受けた狩人であれば知っている。今日こそがその絶好の機会であると。
安武 陸
「《ワンダー・トリップ・ラヴァー》、スゲー名前だなぁ」
迷ノ宮 光葉
連絡をもらって、移送手続きを済ませた後合流します。「叶恵様……」
敷村 修也
一人暮らしなので合流に時間はかからなかった。
赤木 叶恵
まだ月は見えないが、今夜は満月となる。曜日などには疎いが月齢には敏感だ。
赤木 叶恵
“満月に殺せる”という話を最初に聞いたのは、狩人になった最初の日、かつての師から。
迷ノ宮御影
『殺すなら今晩しかない』と、確信を持った声で。
赤木 叶恵
……残念ながら、狩人あるある。大事な情報なのに、あまり周知はされていない話だ。『がむしゃらに向かい、たまたま殺せたのが満月の日だった』などという話は今でも聞く。
安武 陸
標がいた頃であれば、ぐだぐだと文句を言うタイミングだ。
しかし、もう随分と甘える相手がいないことにも慣れた。
GM
病院の前では医師や看護師などが運び出された患者の面倒を見ています。
GM
この季節だからかなり大変ですね。通行人から防寒具を求めたりしています。
敷村 修也
「人目に付きやすそうなのも厄介ですね」
GM
ゆっくりと炙るように、上層から下層に向けて。
GM
ゆらゆらと幻想的に揺れる炎が、鉄筋コンクリートを融かしていく。
GM
その様子を動画に撮る野次馬なんかもいる。罰当たりなことに。
赤木 叶恵
しかたないよ人々 火が近づくか他の誰かが逃げ出すまでお前らは動けない
GM
慌ただしい現場の緊迫感と裏腹の、緊張感のない通行人。
GM
勿論移送を手伝おうとする善良な一般人もおりますが……
安武 陸
少しだけ、写真を撮られまくっていた叶恵の仮装を思い出したりしている。
赤木恵夢
明らかに平常の様子ではない。焦点の合わぬ瞳で病院を見上げて、
赤木恵夢
彼女はふらふらと野次馬の中に消えていく。
GM
人混みをかき分けていただきますが。まあ別に殺す必要とかはないので。
赤木 叶恵
人ごみをかき分けて、姉のいた場所へと走る。
敷村 修也
人ごみをかき分けるように叶恵を追いかける。
迷ノ宮 光葉
叶恵の焦り具合に一人で行かせては危ないと思い、こちらも必死で追いかけます。
赤木恵夢
心ここにあらずといった夢うつつの様子で。
赤木 叶恵
「おっ、お姉ちゃんこそどうしたの、こんな場所で」
安武 陸
叶恵に追いついて、その姉を見る。 応答はできているが、様子がおかしい。
敷村 修也
人をかきわけ追いつくも、叶恵さんと話す赤木さんの様子は明らかにおかしい。
迷ノ宮 光葉
追いついた先の叶恵の姉のどうにもふわふわとした様子に奇妙なものを感じる。
赤木 叶恵
「なに。わかんないよ。どういうこと……!」
赤木恵夢
「放っておくはず、ないもの。街がこんな風になって……」
赤木 叶恵
「わかった……。話は、話は後で聞くから」
赤木 叶恵
「とにかく、帰ろう。夢でもこんなとこウロウロしちゃダメだ」
GM
大きな巨体が、叶恵を押し潰すように落下する様子が。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
それは燃えるような鶏冠を持ち、虹色の炎を纏った大きな鶏だった。
迷ノ宮 光葉
「叶恵様っ……!」危機を感じて叫ぶ。
赤木 叶恵
「!」視界が暗くなって上を見上げて、空には黒いシルエット、それが大きくなるのが見えて、すぐに体は前へと飛び出していた。
赤木 叶恵
姉を庇うように、姉の方へ。狩人たちと視線が切れる。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
姉を庇うよりも先に叶恵の痩身が弾き飛ばされ、
ワンダー・トリップ・ラヴァー
狩人の方へと転がされる。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
その巨体は見上げるほど。数値にして約5メートルか。
赤木 叶恵
向かった方向と逆方向。とっさのことに受け身を取るのに失敗する。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
足元のアスファルトが大きく凹んでいる。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
振るわれた翼はビルに亀裂をいれ、その壁を破壊する。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
巨体に遮られて恵夢の姿はもはや見えない。返答もない。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
「――――ッ!!!」
ワンダー・トリップ・ラヴァー
耳を劈くような雄叫びととともに、狩人たちへと首を伸ばした。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
クチバシが大きく開かれる。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
その体内で、熱が渦巻く気配があった。
安武 陸
体勢を崩した叶恵の小さい体を抱え上げる。
赤木 叶恵
「おねえちゃん! おねえちゃんっ……!」
迷ノ宮 光葉
こんな狭い路地裏で暴れられては逃げ場がない、来た道を引き返す勢いで退避する。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
クチバシから虹色の炎が放たれる。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
路地を埋め尽くすように炎が奔る。
安武 陸
修也と光葉が対応できていることを確認して、駆ける。
安武 陸
師匠に3人頼まれたからめちゃめちゃ怖い めちゃめちゃ怖くなってる
頼むな
ワンダー・トリップ・ラヴァー
あなたたちの背後へと追い縋る炎。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
紙一重にそれを躱した瞬間に、実感する。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
その炎は建物や物体だけではなく、空間そのものを燃やす。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
回避したのにも関わらず身体を焼かれているように錯覚させられる、異様な熱。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
身体のどこにも燃え移っていないことを確認してもなお、それに自信が持てなくなるような。
安武 陸
返事を待たずに、叶恵を抱えたまま駆け出す。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
ビルの壁面をぶち壊し。アスファルトを陥没させ、室外機を蹴り飛ばし、破片を撒き散らしながら走る。
迷ノ宮 光葉
「なるべく人気のない、ほうへ、……っでも何かで足止めしないと……」走りながら追いかけてくる気配に戦慄する。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
路地裏を飛び出せば、そこは野次馬ひしめく病院前。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
彼らは談笑しながらそこに突っ立っている。当然だ。通常の人間にはモノビーストの姿は見えない。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
巨体に押し潰されて血を散らす。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
悲鳴があがる。モノビーストに対してのものではない。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
わけも分からず人が突然に死んだことに対してだ。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
返り血を浴びたモノビーストはけたたましい叫び声をあげながら、逃げ惑う人々を食い散らす。
安武 陸
残酷だが冷静な判断。人間の体が、モノビーストの足を僅かばかり止めるだろう。 空間が開けていないので、叶恵がバランスを崩して倒れこむおそれもない。
赤木 叶恵
こちらを追ってくるならば、姉のことは一旦後回し。というよりも……この状況を切り抜けなければ、姉に会うことは二度と出来ないと分かる。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
幸いにして、あなたがたへの注意は逸れている。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
モノビーストはそれ以上ハンターを追うことはない。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
街には悲鳴が響いていた。
ワンダー・トリップ・ラヴァー
こんな感じでいったんしめちゃうか。
GM
遭遇フェイズまで一気にやった。今回はさらっと導入。
◆モノビースト:ワンダー・トリップ・ラヴァー
体型:クロウラー
耐久力16 余裕16 血量16
初期テンション16 激情1
◆支配力
・▓▓▓《自信》強度5
街の至る所が燃えている。病院 学校 マンション 公園 駅。
・赤木恵夢《退路》強度3
どういうわけか接点がある。
◆フォロワー
・『ともだちの』卯田千奈美
・『兄として』卯田清史
・『覚めぬ恋の』三崎華蓮
GM
フォロワーの感じをあんまり出せなかったので、アナウンスします。
GM
『ともだちの』卯田千奈美は中学生くらいの女の子、兄として』卯田清史は大学生です。
GM
『覚めぬ恋の』三崎華蓮も大学生だな。まあそんな感じです。
安武 陸
あっ、そうだ光葉ちゃんに関係性伸ばしていい? いいんだよね?