エピローグ

ナバリとソーニャは今回妖魔化している。
制御判定に成功するかどうかがエピローグの展開に関わるので、一部功績点会議を先倒しで行い、それぞれ制御判定に成功した。

エピローグ:シーン1

カイジ
それでは古龍との戦いから一夜明け、ヴェネツィアから出立します。
カイジ
船着き場にいる。荷物は少なめ。
カイジ
もちろん傷は負ってるのですが帰れる程度には元気です。忍者なので。
GM
忍者だからふつうふつう。ついでに鞍馬のブラックなので両足動けばOK。
ユヅキ
じゃあそこにそこそこ元気になった学生が、見送りに来ます。
ユヅキ
「──カイジ!」
カイジ
「おう、……大丈夫なのか?」
姿を認め、軽く手を挙げる。
大丈夫なのか、には色々な意。
怪我やら、ここに来ても問題ないのか、とか。
ユヅキ
「え? うん、大丈夫!」
ユヅキ
少年は単純な、体調の心配……しか分かっていないが、大体他も大丈夫だろう。
ユヅキ
「せっかくいっぱいお世話になったから、見送りたくて、来た!」
カイジ
「なら良いんだけどよ」
彼の友人が脳裏に過る。今頃探してやいないだろうか。
カイジ
……まァいいか、と向けられた笑顔を見て、それ以上は言わずに。
カイジ
「まさか本当に来るたァ思わなかった」
肩を竦める。
ユヅキ
「だって、ここで話さなかったら、次いつ会えるかわかんないじゃん」
ユヅキ
「そりゃとーぜん、来るよ」
ユヅキ
「……カイジ、あのさ、本当に、……ありがとう」
ユヅキ
「カイジが居なかったら、俺……ナバリのこと救えなかった」
カイジ
「あァ? 何だ急に畏まって」
ユヅキ
「んーん」
ユヅキ
「ありがとうって思ったから、ありがとうって伝えたかっただけ」
ユヅキ
「俺さあ、カイジとかソーニャみたいに、もっと強くなりたいな」
カイジ
「俺ァ俺の仕事をやっただけだ。
 それに、お前らがいなかったら古龍を封印できてたかは分からん」
カイジ
「……お前、卒業したらどうするつもりなんだ?」
ユヅキ
そうやって言ってくれるとこもかっこい~よな~と笑っていたが。
ユヅキ
「……卒業?」
ユヅキ
「……………………」
ユヅキ
「……あんま考えてなかったけど、でも皆の役に立てることしたいよ、カイジみたいに!」大丈夫かな?
カイジ
「おー……そうかァ」
カイジ
こうも屈託なく言われると、若干の照れ臭さを感じる。
少し考えるような間。
ユヅキ
「だから期待しててくれよな! もっと強くなるから!」
ユヅキ
と元気に答えたが、間についてはどうしたのかなと思ってる。
カイジ
「……あァ、今のままじゃァ足りねェ。
 もっと強くなれよ、ユヅキ。
 大切なもの、一人でもちゃんと護れるように」
今度も俺が居合わせてるたァ限らねェからな、と少しばかり冗談めかして。
カイジ
それから、持っていた鞄に手を突っ込んで、取り出したのは一枚の名刺である。
カイジ
警備会社と、カイジの名前と、諸々の連絡先が載っている。
カイジ
「鞍馬以外にも所属してる忍者は居てな。
 気が向いたら来いよ。しごいてやる」
ユヅキ
足りない、と。憧れているあなたからはっきりと伝えてもらえたことで──より、少年の意欲が湧き上がる。
ユヅキ
そう、足りない。足りないのだ。全然。だから。
ユヅキ
もっと強くなる、──そのために。
ユヅキ
「!」
ユヅキ
嬉しそうに、その名刺を受け取り……その言葉の意味を把握しては、それはもう笑顔で。
ユヅキ
「──おう! ありがとう、カイジ!」
ユヅキ
「もう向いてるから……絶対行く!!!」
カイジ
「はッ、良い返事じゃねェか」
カイジ
不意に、船の出発のアナウンス。
そろそろ時間らしい。
カイジ
「……さっきも言ったけどよ、今回は俺だけじゃ古龍を封印できなかった。倒せたかも怪しい」
カイジ
「確かにまだ実力は足りねェ。
 けど、お前らはやれる精一杯をやった。
 だから嬢ちゃんを救えたんだ」
カイジ
「ありがとな、ユヅキ。
 お前がいてくれて助かった」
ユヅキ
「………………」
ユヅキ
「……へへ、うん」
ユヅキ
「俺も、カイジが居てくれて助かったから──うぃんうぃん、ってこと!」
ユヅキ
「カイジ、絶対また会いに行くよ!」
ユヅキ
「だからそれまで──絶対、元気で居てくれよな!」
ユヅキ
それだけを力強く告げて、少年はあとはちゃんと、見送りの体勢に入ることだろう。……もちろん、手はぶんぶんと振っているが。
カイジ
「おう。
 そっちこそ、ちゃんと卒業しろよ」
カイジ
そう言って、ひらりと手を振って歩いていく。
きっと、もっと強くなっているであろう少年との再会を、楽しみにしながら。
ソーニャ
昨日のことが嘘のように穏やかなヴェネツィアの昼下がり。
ソーニャ
少年へと別れを告げた男の耳に、
ソーニャ
ばさり、鳥の羽ばたく音。
カイジ
振り向く。
ソーニャ
振り向いたその頭のてっぺんに白い鳩が降り立つ。
カイジ
「……」
乗られる。
ユヅキ
あ、はと。
ソーニャ
しっかりとその頭を掴んで、くるると鳴く。
カイジ
そりゃあ。
死んでるなんて欠片も考えてはいなかったけれど。
カイジ
「けしかける暇があンなら顔見せろや……」
カイジ
全く心配していないと言えば、それは噓なのである。
ソーニャ
カイジの呟きに嘲るようにまた喉を鳴らして、飛び立つ。
カイジ
鳩が飛んで行く。
青い空によく映える、白いシルエット。
ソーニャ
ヴェネツィアの青い空を高く高く、大鐘楼を目指し。
ソーニャ
遠くその屋根に佇む姿がある。
ソーニャ
大変機嫌のよろしい笑顔で、蒼い珠を手に掲げていた。
カイジ
あっ、珠。
ああー、あー……
カイジ
……まあ、悪いようにはならないだろう。
面白くはならなさそうだから。
カイジ
息を吸う。
カイジ
「――ソーニャ!」
人目も憚らずに、叫ぶ。
ソーニャ
遠く大鐘楼の上、鳩を腕に留めてやりながらカイジを見下ろす。
カイジ
「今回は助かった!」
ソーニャ
へらりと笑ってみせて、
ソーニャ
鳩ごとにその姿を消した。
カイジ
「……けど、次こそ俺が勝つ!!」
カイジ
その声が届いたかは分からないが。
強く、そう言って、どこか満足げに男はヴェネツィアを発った。

エピローグ:シーン2

GM
04:ベニス・サンタ・ルチア駅。昔ここで、能力者同士の戦いがあったと聞くが、本当だろうか?
GM
GM
本土から来た観光客から見た"玄関口"はこちら、という場合も多いだろう。
GM
「フェッロヴィア」と呼ばれる広場には水上バス等の乗り場も併設されているが、列車から1歩"踏み出した"感覚も、どんな観光地でも通ずる旅の想い出だ。
GM
もっとも、本日は逆。街での騒動がなかったかのような様相であるこの場所から、外へ、故郷へ向けて1歩踏み出すときだ。
伴 護伴
「ま、非忍者のクラスメイト……特に委員長あたりに見つかったら、それはもう大変なので、ちょっと影寄りで失礼しますが」
ユヅキ
「影寄り」
ナバリ
「影寄り……」ユヅキの言葉を繰り返す。
伴 護伴
「単純に日差しがいまいちかなーって」
ユヅキ
「確かに、影だな」納得した。
ユヅキ
「でも、ほんと……色々どうにかなって、よかったな~」
ナバリ
「みんな…色々…大変、だったみたい。ナバリが、ごめん」半分ぐらい操られてるとはいえ、自分が痛めつけた相手ではある。主に護伴とかにはかなり申し訳無さそうに。
ユヅキ
「全然、大丈夫だって、元に戻ってよかったよ、な、ごはん!」
伴 護伴
「ま、実際に骨が折れたわけでもないですからね」
伴 護伴
「比喩的に骨が折れそうだったのはむしろ……」
Valeria Anselmi
「こっちみんな♪」 かわいらしく言っても効いていないぞ。
ユヅキ
「ヴァレリアも、無事でよかったよな! 最後無茶しようとしてたときはちょっとびっくりしたけど」
伴 護伴
「反省とかそういう単語はこっちの学校"にも"ないんですか??」
Valeria Anselmi
「いやー、テルツァ・メディア受けてもないからわかんないわー」
伴 護伴
「中学中退.......」
ナバリ
なんか見ない内に結構仲良くなってるなあ、と思いながらごはんとヴァレリアの会話を黙って聞いている。
ユヅキ
「てるつぁめでぃあ……」わかってない。
伴 護伴
「中忍試験みたいなもんだ」説明を放棄した。
ユヅキ
わかってないながら、微笑ましく様子を眺めて、ナバリを見つめて……にこってした。
ユヅキ
「あーなるほど!」わかってるかな?
ナバリ
ユヅキの視線に気づけば、
ナバリ
にこ、と微笑み返す。
ユヅキ
返ってきた笑みが、うれしい。
ユヅキ
「帰るの、なんかやだよな~」
ユヅキ
「もうちょっと、日程あったらよかったのに」
ナバリ
「………」
ナバリ
「日本、行こうかな」
ユヅキ
「えっ」
伴 護伴
「帰ったらすぐ期末試験っていう見え見えの罠のかかりたいなら止めないぞ」(ユヅキは)
Valeria Anselmi
「えっ、金閣寺に旗立てる?」
ユヅキ
「えっ……………」ナバリ見たり、ごはん見たり、ヴァレリア見たり、忙しい。
伴 護伴
「やめろください、金閣寺は比良坂が黙ってないですよ」
ナバリ
「ナバリ、ヴェネツィアに居続けるの…もしかしたら、あんまり良くない、みたい?」ヴェネツィアに古龍が封印されて居座り続ける以上、影響を受けるナバリはあまり長居しない方が良い。みたいな説明を世界忍者連合から受けた、らしい。
ユヅキ
「ああ……なるほど…………」
Valeria Anselmi
「あー、まあ、そう言ってる人達もいるわね」
ユヅキ
「また、ああいうのなったら、困るもんな」
ナバリ
「でも、行くところあんまり…ないし…思いつかないから」
Valeria Anselmi
「(逆に閉じ込めて見張った方が兆候が見えやすい、って言う人達もいたけど)」目逸らし。
ナバリ
「行こうかな。…日本。ユヅキ、住んでる国」
ユヅキ
「来てくれるんだったら、うれしい!」
ユヅキ
「俺、戻っても……またナバリに会いに来ようと思ってたから」
ユヅキ
「でも、来てくれるなら、向こうで待ってるよ」
ナバリ
「…うん」
ナバリ
今度はユヅキが待つ番。私が、待たせる側。なるべく早く行きたいなぁ。なんて考えながら。
Valeria Anselmi
「(手続きとか知らないだろーなー)」
伴 護伴
「(これクラス委員長に割れるのは確定だな?そもそも海外からの転入って扱いどうなるんだ?)」まがお。
ナバリ
当然知らないので、多分今後ヴァレリアにガン頼りする。
Valeria Anselmi
「……面白がったのがお見送りとか言って国境ぎりぎりまで追いかけてくるわよ、たぶん」
伴 護伴
「平和な国なのでそういう騒動はちょっと、どうにかしといてくれませんか?」
ユヅキ
「なんかよくわかんねえけど、なんか……なんとかなるよ!」ほんとか?
Valeria Anselmi
「むりー、私いつも乗ってる側だから説得力ないしぃ」ナバリの後ろに隠れる。
伴 護伴
「くそ、なんでカイジさんは先に帰ってるんだ!?僕ひとりでどうにかしろと???」
ユヅキ
「あとでカイジにラインしとく?」
伴 護伴
「あぁ……まあ……そうだな……」ずつうがいたい。
ユヅキ
「でも、ほら、今回のもなんとかなったし……ナバリが日本に来るのも、なんとかなると俺は思う」
ユヅキ
「帰ったらちゃんと調べて手伝うよ、一緒に」
ナバリ
「うん。…がんばる。」
ナバリ
「…ユヅキ、」
ユヅキ
「ん、なあに」
ナバリ
「…ありがとう。」
ナバリ
「色々…、頑張ったって、聞いた、いろんな人から。ナバリなんかと、ヴェネツィアのために」
ナバリ
「だから、ありがとう」今の今まで、ちゃんと言えてなかったお礼。この街の平和も、今の自分があるのも、ユヅキを始めとした、色々な人のお陰なのだから。
ユヅキ
「……へへ」
ユヅキ
「だって、当然じゃん。
 俺にとっては、ナバリ“なんか”じゃないし」
ユヅキ
「俺は、ナバリのこと、……──好き、だし」
ユヅキ
「好きな子のために頑張るのって、男として当然だろ」
ユヅキ
「だから、ナバリ」
ユヅキ
「俺こそ、ありがとう」
ユヅキ
「────生きて、帰ってきてくれて」
ユヅキ
「ずっと、それだけが、本当に……うれしいんだ」
ユヅキ
そう言って少年は、ぎゅうと。許されるなら、あなたの手を掴むことだろう。
ユヅキ
大切な人を、物言わぬ骸にすることのなかった、護ることができた、その事実を噛み締めるように。
ナバリ
「……うん」ぎゅ、と掴まれた手に、もう片方の手を重ねてやんわりと掴み返す。
ナバリ
「……あたたかい」水の中では、きっと得られなかったもの。
ユヅキ
「……うん、あったかい」
ユヅキ
「…………待ってるよ、ナバリ、向こうで」
ユヅキ
「ナバリが来てくれたら、今までたくさん……待たせちゃった分」
ユヅキ
「……俺と、いろんな時間、一緒に過ごそう?」
ナバリ
「……うん!」これまで過ごした中で一番の笑顔と、大きな頷きで返す。
ユヅキ
「へへ、……嬉しい!」
ユヅキ
そうして、……その手を、離しがたくはあったのだけれど。
ユヅキ
列車にも、発車時刻というものは、決まっている。
ユヅキ
そろそろだと──いつものように、友人に止められることだろうか。
伴 護伴
「別に気を利かせて置いていってもいいんだが、そうすると飛行機の搭乗に間に合わないから……」
伴 護伴
「とんでもなく格好悪いことになるな?」
ユヅキ
「………………かっこわるいのは、いやだ」
ユヅキ
嫌だった。す……っと手を離した。
Valeria Anselmi
「ご飯うちで食べてく?みたいなことになるわね。でも私もちょっと気まずいから格好良く帰ってほしいわね」いけしゃあしゃあ。/
ナバリ
「……あ、」手を離された拍子に、思い出した。ポケットから何かを取り出す仕草。
ユヅキ
「? どした、ナバリ」なんだろな、の顔。
ナバリ
大事に握り込んだ何か――ユヅキに見せるように、手のひらをひらく。
ユヅキ
そうっと覗き込む。
ナバリ
それほど大きくはない手の上で、首飾りが光っていた。宝石は雫型を象っていて、海の色のようにも見える。――「心の雫」だ。
ユヅキ
「…………あ、これ」
ユヅキ
かつて、少年があなたに渡したもの。
ユヅキ
とはいえ、その記憶もまだ、曖昧ではあるものの。
ユヅキ
「……お返し、ってこと?」
ナバリ
「…うん。もともとユヅキの、だから」
ナバリ
「返すね」そもそも、これを返すためにずっと待っていたのだから。
ナバリ
心の雫を、大きな彼の手のひらの上へそっと乗せる。
ユヅキ
「気にしなくてもよかったのに」
ユヅキ
「でも……ありがと」
ユヅキ
乗せられた、心の雫をしっかりと握りしめて。
ユヅキ
勝手に、あなたが日本に来るまでは……これで寂しさを紛らわせようかな、なんて、そんなことも考えて。
ユヅキ
……まあ、もちろん、内緒だけれど。
ユヅキ
「……じゃ、そろそろ行くな、ナバリ、ヴァレリア」
ナバリ
「…うん」
ナバリ
「……またね!」
ユヅキ
「────うん!」
ユヅキ
「またな!」
ユヅキ
ひらり、少年は手を振り。
ユヅキ
行動するとなると早いので、たったかと、列車へと向かっていく。
ユヅキ
……格好悪さを指摘してくれた、友人を置いて。
伴 護伴
はぁーーー。
伴 護伴
「ま、いいけどさ」/
ナバリ
列車へ向かう彼に、よく見えるように手を伸ばして大きく振る。
ユヅキ
ふと、途中で手を振ってくれていることに気が付いたのなら──こちらも、負けずと大きく両腕を振って。
ユヅキ
それから、そこでようやく友人を置いていっていることに気が付けば、「ごはん、ごめん!」なんていつものように謝って。
ユヅキ
少年にとっては、騒がしくて、楽しくて──一生忘れられない宝物の修学旅行が、幕を閉じていった。