◆エピローグ

GM
血の匂いに満ちた小屋の中で。
GM
救世主たちは目を覚ます。
チバ
目を開いた。いまだに血に塗れている。
困った。俺、どうなったんだ?天国か?それとも
クラレット
これでおしまいかと思っていたが、どうやらまだ裁判をしたあの場にいて生きているようで。
エール
力なくチバの腕を掴んだままに、座り込んでいる。
クラレット
身を起こし、いやに静まり返った辺りを見回す。
メル
荒れ果てた小部屋の入口に、血を吐いて横たわっている。
ラサ
負けて囚われた……って感じじゃないな。
チバ
腕を……剥が……いや、剥がす意味はあるのか?
このままでいいか。一旦。発声練習、脳内で数回。
チバ
「あ、あー……」
ラサ
残りの二人がなんとか勝ったって感じでもない……
メル
胸元を掻き毟り、ひどく苦しんだ形跡がある。
クラレット
「……毒……」
チバ
声に出ている。死んだ兎に目をやった。
飛び退きかけたが動かない。動けなかった。
ジンジャー
頭を潰された兎と。
ブランチ
倒れ臥した兎もそのまま。
クラレット
静まり返っている。村中が。
GM
小屋の外からも声は聞こえず。
GM
今は救世主だけが生きて、
エール
息を、している。
クラレット
あなたがやったの、とエールに言葉を投げかけようとして。
いや、あの三匹の兎のうちの誰かの企みだろうと思い直す。
クラレット
エールは、彼らに案じられていることを知らなかっただろうから。
エール
救世主は、彼らの主であったはずの者は、木偶のようにそこにいる。
エール
俯いている。
ラサ
負けたのか勝ったのかはっきりしない状況だな。シンプルじゃない状況は嫌いだ。
クラレット
「……本当は、勝って否が応でも連れて行くつもりだったけれど」
クラレット
「あの兎はそれよりも確実な手段を取ったようね」
チバ
ああもう、最初から決まってたのかよ。
俺が頑張る必要ってあったのか?とも思ったけど。
チバ
チャンスがあるなら、抵抗はしなくてはならない。
チバ
「あの……エールさん……”どう”……します?」
エール
クラレットの言葉をはかりかねるように、そちらに顔を向けかけて。
エール
名を呼ばわれたことへの反応に、チバを見た。
エール
「"どう"」
チバ
「良い感じになりたいとか……」
チバ
「いい具合にしたいとか……」
チバ
「良きようにしたいとか……」
チバ
クソ、全部同じだろ……三個出して全部同じだ。
クソ、俺ってもしかしてバカなのか?
クラレット
「ここで兎たちの亡骸と共に朽ちるのを待つか」
クラレット
「ここを出ていくか」
クラレット
「出ていくなら、私たちと行くのか、それとも殺していくのか」
チバ
そ、そうそれ……クラレさんが居てくれてよかった。
いや、殺されるのは……困るけど!
クラレット
「現実的な選択肢はこれくらいね」
クラレット
「どうするの」
エール
「……きみたちを」
エール
「殺そうとしたよ」
エール
「ひどいことも……言ったと思う、し」
エール
「したし」
エール
「…………」
エール
緩やかに首を傾ぎ。
エール
「救世主、って」
エール
「そういうもの」
エール
「だったっけ……」
チバ
「殺そうとしたっことは」
チバ
「今は少なくとも殺す気無いんでしょ」
チバ
楽観視だ。ごめんといいよで済むなら、こんなことにはなっていない。
チバ
ただ俺はチャンスに賭ける。
チバ
「俺としては思ったより話通じるな~って思ったし一緒に来て欲しいですけど」
エール
語る顔を見ながら。
少し、視線を落として。
エール
「……わたしは」
エール
「守るものが、欲しい」
エール
「そうでなければ生きていかれない」
クラレット
「…………」
エール
「……り」
エール
「利害は、一致」
エール
「する」
エール
「だろうか……」
エール
消え入るような声で、問う。
クラレット
「まあ、一致するわね」
クラレット
「私たちはあなたに殺されないことでまだ生きられるし、あなたは次に守るものを得られる」
クラレット
癪だけれどね、という言葉を飲み込んだ。
エール
「…………」
チバ
「利害て」
チバ
「もうちょい良い感じにしましょ」
チバ
「昨日の敵は今日の友ってことで……」
チバ
バカ野郎……寒すぎるだろ。
エール
「……その方が」
エール
「信用ならないかと……」
疑われたことを覚えているらしい。
チバ
「……ぐ……もう知りませんエールさんのことなんて」
クラレット
「どちらでもいいわ」
チバ
いや、それじゃ俺が困るんだってば。クソ。どうしよう。
こんな主導権握って良いのか?キツい!ああ!
多淵さん助けての視線を送った。
ラサ
なんだその視線は。ボクに助けを求められても困るんだよな。
チバ
そこをなんとか。なんとか。
エール
チバに釣られるように、沈黙したままのもう一人の少女を見る。
クラレット
みんなの視線が集まっているので釣られて見る。
ラサ
「別にボクもどっちでもいいんだよな……」
ラサ
「信用なるとか、ならないとか、守るとか、守らないとか……」
ラサ
「仲間のことをそんなふうに考えたことないしな」
チバ
「……じゃあ。じゃあですよ」
チバ
「多数決だと……絶対決まんないので……」
チバ
「俺は……今見捨てそうな事言っちゃったな、いや、でも」
チバ
「チバはそう言ったかもしれっ、ないですけど」
エール
聞いている。あなたの顔を見ている。
チバ
「そ、そうだ。今日から名前変えます。
 そしたら俺の言った事一旦無かったことになりませんか?
 よし、よし、よし。前言撤回!!!!」
チバ
んなわけないだろ。いや。でもな
ラサ
どういうことだよ。
クラレット
別にそこまで自分の言ったことに殉じる必要はないと思うが、本人が納得するならまあそれでいいだろう。
エール
ふ、と息を漏らして。
チバ
本名名乗ってると、思いだすんだよな。
エールさんって、なんか、あの時のクラスメイトに似てるから。
エール
「じゃあ」
エール
「なんて名前になるんだい」
エール
「きみは」
チバ
「アオヤマ チバ改め……ショウヤマ センバ……センバです」

ヤマはどうしようもない。単に読み替えただけだ。終わりだ。
もっと頭が良ければ良かった。
チバ
「ので……皆さん初めまして~……で、通りませんかね」
ラサ
めんどくさいやつとめんどくさいやつがぶつかった結果脅威の化学反応が生まれたな。
ラサ
「好きにすれば……」
チバ
「よっしゃ」
クラレット
「右に同じね」
エール
「……ん」
エール
「なら、よろしく……します。
 クラレット、ラサ、センバ」
エール
「役に……んんと」
エール
「……がんばる、から」
チバ
「ほどほどに」
クラレット
「やたらに身を削られても困るし、適当にやりましょ」
クラレット
「……行きましょうか。ここにはもう得られるものはない」
エール
「…………」
エール
ちら、と
エール
兎たちの亡骸を見遣り。
エール
「…………」
エール
「……うん」
エール
「うん…………」
エール
繰り返して。雑嚢を掴む。
クラレット
「……別に、弔いがしたいならその間くらいは待つ」
エール
「…………」
エール
「いいや」
エール
「全員は、難しいだろうから」
エール
立ち上がる。
メル
小屋の扉に寄り掛かるような形で倒れている。
エール
それを見ながら、立ち上がりかけ。
エール
チバの――センバの手を掴んだままであったことを思い出し、目をしばたく。
チバ
「ご一緒しますが」
チバ
手、どうしような。どうしよう。このままでいいのか?
チバ
クラレさん、多淵さん……どう思う?視線を向けた。
クラレット
「いってらっしゃい」
ラサ
「いちいち意見を求めるなよ」
クラレット
手伝う気、なし。
エール
「…………」
チバ
「……行きましょう!!」

手を引いた。ああもう。ああ!
エール
「わ」
チバ
ちょっとだけやる気出すとこうなんだから。
やっぱ俺はマジメ系クズでいい。今日が終わったらやる気は下げる。
腕を引いて歩きだす。最低限の弔いくらい、した方が良いんだ。
チバ
今日だけは弔いという非日常を受け入れる。
新しい仲間という非日常も同様に受け入れる。
チバ
それくらい滅茶苦茶でも良いだろ。
俺たちは、同じ救世主なんだから。
GM
 
GM
拝啓、アリス。
GM
愛しいアリス。
GM
同じあなたたちが、
GM
どうか、肩を並べて歩けますように。
GM
 
GM
Dead or AliCe
 「救世主の救世主」
GM
おしまい