◆エピローグ

“赤い靴”
踊りは終わった。
“赤い靴”
あたりには救世主の残骸が4体。
“赤い靴”
センバ。クラレット。エール。ラサ。
“赤い靴”
彼らもまた、特別な救世主ではなかった。
“赤い靴”
「これもまた夢の中……」
“赤い靴”
「赤い赤い、夢の中」
“赤い靴”
踊りは終わったが、まだやらなければならないことが残っている。
“赤い靴”
ラサと呼ばれた救世主の残骸が、ある一人に近づく。
GM
もっとも残酷な罰が待っている。
GM
GM
お前は目を覚ます。
GM
お前だよ。
GM
そう。お前さ。
GM
クラレット。
クラレット
「――……」
GM
お前は、女王の薔薇の庭園の中に倒れ伏していた。
GM
自分は死んだはずだって?
GM
そうだ、お前は死んだ。
GM
だが、もう胸からは血が流れてはいない。
GM
あたりを見渡すのか?
GM
そこには、三人分の救世主の残骸が転がっている。
GM
エール。
GM
センバ。
GM
それから、──あと一人。
GM
それが誰だかを理解するのは難しい。
GM
朽ち果てて粉々になっているから。
クラレット
エール。センバ。自分。そして。
クラレット
足りないのはあと一人。
クラレット
みし。みしみしみし。
クラレット
朽ち果てる音を聞いたのを思い出す。
クラレット
ラサ、だったもの。
クラレット
木屑のようにすら見えるそれに手を伸ばす。
GM
そこにはなにもない。
GM
なんの命のぬくもりも残り香もない。
クラレット
でも。
クラレット
ラサだったものだ。
クラレット
そこになにもなくても。
クラレット
人は影を見る。
クラレット
ありもしない幻影を。残滓を。
クラレット
身体はまだ動く?
クラレット
頭はまだ働く?
クラレット
確かめるように、身体を動かそうと。
GM
体の動きは鈍い。が、言うことを聞くような気がする。
GM
靴が、土を擦る、なにか違和感のある音。
GM
お前は足元を見下ろす。
GM
そこには、それはそれは美しい赤い靴が履かれていた。
クラレット
真っ赤な靴。
クラレット
自分達を死に至らしめた、その靴。
クラレット
ラサの足から奪ってしまえば、代わりに自分が履いてしまえば、彼女が戻ってくると思っていた。
クラレット
現実は全く違って、自分たちは死んで、ラサはとうの昔に粉々になっていて、自分はこの靴を“履かされて”いる。
クラレット
御すことなどできない。
クラレット
自分は、赤い靴の奴隷だ。
GM
お前が少し賢いなら、全てを失ったことに気づくだろう。
GM
お前が更にもう少し賢いなら──
GM
これから時間をかけて、全てを失っていくことに気づくだろう。
GM
靴を脱ぎ捨てようと思うだろうか?
クラレット
せめて、自分の足から離れれば、乗っ取られることもないのではないか、と。
クラレット
考える。そのように動こうと、する。
GM
しかし、靴は脱げない。吸い付いたように、おまえの脚を離れない。
GM
立ち上がり、右へ行こうとすると、靴は左へと。
GM
身体の自由も少しずつ効かなくなる。
GM
“いつまでも、お前は踊らなくてはならぬ。”
クラレット
これが罰。
クラレット
欲をかいた罰。
クラレット
淫らな行いをした罰。
GM
そして──
GM
お前は、力が湧き上がってくるのを感じる。
GM
全てを粉々にするだけの猟奇の力がそこにあると確信する。
GM
ゆっくりとゆっくりと、思考が赤く塗りつぶされていく。
GM
“赤いくつをはいて、踊っておれ。お前が青じろくなって冷たくなるまで、お前のからだがしなびきって、骸骨になってしまうまで踊っておれ。”
クラレット
待って。
クラレット
塗りつぶされていく思考の片隅で叫ぶ。
クラレット
もうすぐ奪われる自由があるうちに。
クラレット
朽ち果てて粉々になって、今にも庭園の土に混ざってしまいそうなそれをひとつかみ。
クラレット
口の中に押し込んで、無理やり飲み下す。
クラレット
酷い味だ。
クラレット
土と何ら変わらない味だ。
クラレット
でも。
クラレット
幻影だとしても。
クラレット
墓標になれるのは、あたしだけだから。
GM
センバ。
GM
エール。
GM
……ラサ。
GM
おまえはやがて、そんな名前の持つ意味すらも忘れる。
GM
おまえはただ、踊りつづけなければならない。
GM
より大きな力に、あるいは力ではないなにかに、叩き潰されるまで。
GM
無力への憎しみ。
GM
力への渇望。
GM
愛への憎悪。
GM
怒り。
GM
赤。赤。赤。怒り。怒り怒り怒り。
GM
踊らなければならない。
GM
踊らなければならない!
GM
それが、お前は自分自身の意思だと気づく。
GM
どれだけ柄杓で掬って捨てても湧き上がる真っ赤な感情に、お前は飲み込まれる。
クラレット
フェッテ。アンシェヌマン。
ピルエット。アラベスク。
グラン・ジュテ。
クラレット
怒りの中で、憎悪の中で、踊る、踊る。
クラレット
靴がうつくしくそれを導いていく。
クラレット
止まれない。もう戻れない。
クラレット
踊り続ける。真っ赤な思考の中で。
GM
おまえの心が燃え尽きる、そのほんの一瞬。
GM
ようやく、“クラレット”は赤い靴の心に触れたような気持ちになれたかもしれない。
GM
けれども──
GM
それも忘却の彼方に消えていく。
GM
さあ、踊ろう!
GM
お前を求める新たな救世主たちが、もうすぐそこまで来ている!
クラレット
ああ、新たな救世主たち。
クラレット
彼らを殺して、責務を果たさなきゃ?
クラレット
いいえ、そんなの建前。
クラレット
だって、あたし、
クラレット
ただ踊りたいだけだもの!
クラレット
この力を振るう先を求めているだけ!
クラレット
踊らなきゃ。
クラレット
踊らなきゃ……。
クラレット
粉々になるその日まで。
クラレット
うつくしい踊りを、続けよう。
“赤い靴”
よく味わって。
“赤い靴”
石を噛むみたいに。
“赤い靴”
そして叫んで。
“赤い靴”
讃美歌をうたうみたいに。
GM
*おまえたちは全滅した。
GM
Dead or AliCe
パラサイト・ロンド
寄生輪舞
GM
おわり