エピローグ

ストレナエ
セラの、その奥。
ストレナエ
冷たい死体はもう動かない。
ストレナエ
ただ、甘く香るその匂いが、
三月兎たち
うさぎを呼び寄せる。
三月兎たち
三月兎たちは、弔うように、女王の周りに群がり。
三月兎たち
その体を、
三月兎たち
貪り、食べ散らかす。
セラ
「え、わっ」
セシリア
「あ」
セラ
考えてみれば、当然の結果。
イーデン
「…………」
三月兎たち
三月兎の身体が亡者になることはないが。
セシリア
思い出す。白い布に包まれたものを、三月兎たちが食い散らかしていたことを。
セシリア
そして、そのあとに起こる変化も。
イーデン
男が見ている。
三月兎たち
「たのしかったねえ」「アリスおいしいね」「ほねはぼくの!」
イーデン
かつていだいた女王を食い荒らす兎どもの姿を。
イーデン
これが三月兎。
イーデン
これが、堕落の国だ。
三月兎たち
三月兎は女王が死んでも、狂っている。
イーデン
男の瞳に動揺はなく、
イーデン
女の亡骸が遊興に弄ばれるのを見つめている。
セシリア
絶対風評被害だって!!!
セラ
これが三月兎(風評被害)
セシリア
さすがに死体を貪り食うのは風評被害
セラ
この近所の三月兎
イーデン
イーデンはそういうもんだと思っています 絶望ってことですね
セシリア
止めるいとまもなく、また止める言葉も見当たらず。
セシリア
三月兎たちの笑い声が響いている。
GM
それから、足音があなたたちの後方からやってくる。
イーデン
セシリアの腕の中から起き上がろうとしていた。
イーデン
その矢先に足音を聞き、
イーデン
跳ね起きて、振り返る。
GM
「あっ」
セシリア
血に濡れたおのれの体を持ち上げる。
GM
「もしかして、遅かったカナ?」
セシリア
イーデンの前に出る。
セラ
「あなたは……」
イーデン
「…………」
GM
「お前がもたもたしてるからだろ」
イーデン
幼い女児の姿に動揺することも、拍子抜けすることもなく
イーデン
現れた救世主たちを睨んでいる。
GM
「いや、普通に想定内でしょ。街からこれくらいの時間はかかる」
GM
「…………ええっと」
GM
「遅れてすみません」
セラ
あ!!!!
セシリア
かわいいね
セシリア
うれしい
セラ
うれしい~~~~~~~
イーデン
GMからのファンサだ
セシリア
選んだ二人だけ死んだの笑う
セシリア
でもまあこの人たちもこの先死ぬかもしれないしな……
セシリア
この世界に希望はないから……
イーデン
そうだね
イーデン
そもそも選んだ二人が一番ひどい目に遭うのはわかっとったやろがい!!
セシリア
それはそう
セラ
それはそう
セシリア
俺たちが酷い目に遭わせるんだと思ったら違った
イーデン
生贄か敵対者かどっちかを選出しろって言われてたのは流石に理解してたやろがい
イーデン
「…………」
イーデン
「敵意はねえか」
イーデン
「随分と、余裕のある救世主さまがたのようで」
GM
「ないよ! ないない!」
セシリア
「……あなたたちは?」
GM
「ぁたしたちゎ、公爵家のお使ぃ☆」
セラ
「公爵家の?」
イーデン
「…………」
GM
「ウンッ」
セシリア
眉を顰める。
イーデン
イーデンは諸々の計画を知らないが……
イーデン
とはいえこの件に公爵家が絡んでいることは理解している。
セラ
公爵家の使いかぁ~という顔で見ている。
イーデン
その一方で、自分たち救世主が、公爵家の庇護を得てこそ立ち回れるこの世界の理も熟知している。
GM
「……この村、結構前から『麦藁の女王』に支配されてて」
GM
「困ってたんですって」
イーデン
「そうかい」
セシリア
ただ困ったように眉を下げている。
セラ
「…………」
GM
「で、アタシ達が派遣されてきたんだけど」
イーデン
「悪いね」
イーデン
「あんたらの仕事を奪っちまったようだ」
GM
「そうだぞ」
セラ
「あ! じゃあ僕たちに謝礼とか出たりしませんか!?」
GM
「あ、出ます。多分超出ます」
イーデン
「…………」
セラ
「やった~!」
セシリア
「あの」
GM
「結構いい感じの寝床とか貸してくれるんじゃないかな」
セラ
「ついでに信頼できる救世主としてお墨付きとかもらえたりしませんか?」
GM
「ちょぉもらえると思うょ☆」
セラ
「やった~~!!」
セシリア
「この三月兎たちは、どうされますか?」
GM
「ぁたしからも、話、通しておくカラ」
GM
結構強めの救世主らしいですね。
セシリア
盛り上がるセラの横で、戸惑うような顔のまま、背後の三月兎たちを振り返る。
GM
脅威度4とか5くらいかも。
セラ
強めの救世主と縁ができたぞ~!!
イーデン
ストレナエを倒すために派遣されてきたくらいだからな。
イーデン
一目にわかる。
GM
「あー、えっと」
イーデン
だからこそ、この場で相手をするのは避けたかった。
GM
「この村、公爵家のものなので」
GM
「普通に公爵家の管理に戻りますね」
イーデン
……自分がかつて裏切られたのも。
セシリア
すべてはストレナエの言う通り。
イーデン
近い流れだったことを思う。
イーデン
必死になって敵対した救世主を倒して、そこに訪れた他の救世主たち。
イーデン
彼らについた味方が、イーデンと女からコインを全て奪い去った。
イーデン
だからこの状況も油断ならない。
イーデン
油断をしてはならない。
イーデン
そのはずなのだ。
セシリア
「ありがとうございます」
セラ
救世主達に自己紹介をして、名前だけでも覚えて帰ってくださいね!などと言っている。
セシリア
イーデンの横に立つ女は、その事情を知ることはない。
イーデン
まだ戦える状態でなければならない。何人にも気を許すべきではない。自分が。自分は万全に動ける状態を保たなければ。頭も、身体も、心の疵も。
GM
ちょぉ覚えています。
イーデン
そう理解しているのに、
イーデン
身体が、頭が、ひどく重い。
イーデン
心の疵の状態は正常。
セシリア
同じ事情を知っているセラが、にこにこと会話をしていることを、戸惑うように見つめながら。
イーデン
どころか良好なほど。
GM
あと公爵家借りられる宿マップみたいなものとかも提示してくれます。
セラ
やったぁ~~~!!!
セラ
福利厚生が!!!!
セシリア
イーデンの前に、庇うように立っている。
イーデン
緩んだ気に回り始めた酩酊が、
イーデン
ゆっくりと男の身体から力を奪い、
イーデン
女の背へとしなだれかかる。
セシリア
「っ」
セシリア
息を呑み、男の体を支える。
GM
「あっ、大変だ」
GM
「とりあえず休んだほうがいい」
GM
「大変だったでしょ」
セシリア
「ありがとうございます」
イーデン
血に汚れた腕が力なく垂れ下がっている。
セラ
「そうですね……、彼は、特に」
セシリア
「もう少し詳しいお話は、かれを休ませてからで」
GM
「公爵家の街まで案内するぜ」
イーデン
交わされる会話にも、もう反応はない。
GM
おそらくあなたたちも聞き覚えがある大きめの街。
イーデン
ただ男を支える女の耳に、
セシリア
ただ抱きとめて、離さないように支えている。
イーデン
ひどくおだやかな呼吸の音が届いていた。
セシリア
聞いたことのない。穏やかな寝息。
セラ
あ~~~~あ~~~~~
イーデン
いやだ・・・・・
セラ
いやだにもなろうというもの
イーデン
いやです
セシリア
いやだにもなる
セラ
急にうちの男子校部が顔を出して同情しはじめた
イーデン
急に?
セシリア
急に
セラ
急だった
GM
辛いなら肩貸すぜ、とか言いながら。
GM
使いの救世主はあなたたちを街まで案内する。
GM
「スケジュール空いちゃったね、どする?」
GM
「あー」
GM
「うーん」
GM
「あと残ってる依頼が……? ええっと、南西の村の無限わんこそば亡者調査とか」
GM
「あと北の森とか?」
セラ
「むげんわんこそば」
セラ
わんこそばってなんだろう?
セシリア
私も存じませんが……
GM
「なんか主食らしいぜ、うまそうだよな」
イーデン
救世主たちの他愛のない会話にも目を覚まさず。
イーデン
静かな寝息に上下する胸。
セラ
「へぇ! じゃあ無限の食べ物! いいですね!」
GM
「亡者が出したもの食べるの怖くなぃ?」
セシリア
力持ちそうな女性に、ひとまずはイーデンを一緒に支えてもらえるように頼み。
イーデン
閉ざされた瞳が、今だけは絶望を映すことなく。
セシリア
その穏やかな寝息を聞き、その穏やかな寝顔を見つめている。
セラ
「おいしそうならいいかな~」
セシリア
他愛ない会話が耳に届く。
セシリア
無防備に眠るあなたの上を、言葉が通り過ぎていく。
GM
「増殖させたら食糧問題解決するんじゃないの」
イーデン
束の間、ひととき。
セラ
「末裔もごはんをお腹いっぱい食べられますね~」
イーデン
仲間を生かすという機能を成し遂げた男は、
イーデン
その安息のうちに眠っていた。
セシリア
どうかその安息が、少しでも長く続くように。
セシリア
この世界にあるのは絶望。その中で。
セシリア
少しのあいだだけでも、希望を抱くことが許されますように。
セシリア
力の抜けた体の、その重さを感じながら。
セシリア
女はただ祈っている。
イーデン
この世界に希望はない。
イーデン
信頼に価値はなく、あるとすればそれは使い果たされるためだけのもの。
イーデン
この国に堕ちるより前から、自分はそれを知っていた。
イーデン
それが、けれど、今。
イーデン
この地獄の底の吹き溜まりで。
イーデン
共に在る意味のない男へと、手を伸べられたことを。
イーデン
後生大事な尊きものと思うてしまうことより愚かなことはないと、
イーデン
自分は、知っていたはずだった。
セラ
今回の件で、改めてわかったことがある。
堕落の国では、弱くては生きていけない。
セラ
コインを集めなければ。
多くの救世主から信頼されなければ。
公爵家のようなバックボーンを得なければ。
セラ
新たに合流した救世主達と話しながら、思う。
セラ
やらなければならないことはたくさんある。
3人で生きていくために。
セラ
救世主を動かすのは、心の疵の力。
セラ
だから、世界に希望を抱けるかどうかは。
セラ
この心次第!
GM
あなたたちは歩きだす。隣街まで。
GM
その先の30日まで。
GM
犠牲を飲み込んで、この堕落の国で。
GM
 
GM
拝啓、アリス。
GM
愛しいアリス。
GM
猟奇、才覚、愛。全てを押しつぶし、あなたたちはどこへゆく?
GM
こんな正気じゃいられない世界で。
GM
あなたたちは何を見る?
GM
何を信じる?
GM
 
GM
 
GM
それから、先程案内した救世主の協力もあり、あなたたちが公爵家と協定を結んで、安定して依頼を受けられることになり。
GM
……コインが50枚になったその救世主が3人行方不明になり、あなたたちにそれについての調査依頼が出されるのは、もうすこし、後の話。
GM
 
GM
 
GM
Dead or AliCe
「Swallow the sacrifice.」
おしまい。