リサ
べき、べき。
リサ
馬車が軋んで、壊されていく。
リサ
亡者の手が、その向こうの大きな目が見える。
リサ
──そういえば、このあたりは危ないんだった。
リサ
商人のおじさんが止めてくれていたのが、今になって腑に落ちる。
リサ
板切れの隙間から、亡者の手がこちらに伸ばされる。
リサ
怖い。
リサ
あたし、死ぬんだ。
リサ
ひと目見ただけの、名前も知らない人を追いかけて。
リサ
ばかなのかもしれない。
リサ
それでも、ふしぎなほど後悔していないの。
リサ
……お話できていたらとか、名前を聞けていたらとか、お顔を見れたならとか、そういうのはあるけれど。
リサ
でも、だって。
リサ
こんな気持ちははじめてなの。
リサ
ほんの一瞬だったけど、こんなふうに何かを強く思って死ねることなんて、きっと他にないの。
リサ
だから、だから──
リサ
────
リサ
────────。
GM
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