「あなたへの花」導入
GM:ブラッドムーンキャンペーン「あなたへの花」GM:第四話「あなたへの花」、始めていきましょう。
GM:よろしくお願いします!
夜高ミツル:うおお
夜高ミツル:よろしくおねがいします!!!!
糸賀大亮:よろしくお願いします…………
忽亡ゆかり:ぱちぱちぱち
GM:惨殺シーンはありません。
GM:導入を始めていきましょう。
導入:忽亡ゆかり
GM:夜が明ける。GM:プルサティラとの戦いが終わり、かなたと語り尽くして、二人で同じベッドで眠った。
GM:その翌朝。
忽亡かなた:ゆかりが目を覚ますと、目の前にはすやすやと眠る弟の姿。
忽亡ゆかり:「……」弟の髪を撫でる。この幸福が、明日からはずっと。
忽亡ゆかり:「…………かなた……」
忽亡かなた:「んん~……」
忽亡ゆかり:「おはよ」
忽亡かなた:髪を撫でられてむにゃむにゃと瞼を上げた。
忽亡かなた:レンズ越しではなく、直接目が合う。
忽亡ゆかり:弟に食事のひとつでも作ってやりたいが。
忽亡ゆかり:さすがに今日この状況でそんなことをしたら怒られてしまいそうだ。
忽亡かなた:「……お、はよう」
忽亡かなた:一瞬だけ声が強張ったが、
忽亡かなた:それは寝起きで状況を把握できなかったからだろう。
忽亡かなた:すぐに思い出して、ふっと表情を緩める。
忽亡かなた:「よく眠れた?」
忽亡ゆかり:「うん」疲れからか、それとも心の安らぎからか、本当によく眠れた。悪夢にうなされることもなく、陽光は気持ちよく、頭はすっきりと寝起きを受け入れている。
忽亡かなた:輝かんばかりの姉の笑顔、それも至近距離、さらに昨夜はあんなことを言われたばかり。
忽亡かなた:だんだん照れくさくなってきたようだが、それをなるべく押し殺して。
忽亡かなた:「良かった」と、そう笑うと、
忽亡かなた:「……お風呂とか、入る? 入れる?」
忽亡ゆかり:「うーん……」腹をさする。一晩経っても痛みが引くことはない。
忽亡かなた:「てっ」声が上擦る。
忽亡かなた:「手伝ったほうが、よかった、り」
忽亡かなた:「する……?」
忽亡ゆかり:「……うん、入浴はまだちょっときついから……」
忽亡ゆかり:「体をふいて欲しいかなと……」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:言い出しておいて、ちょっと固まった。
忽亡かなた:「……頑張る!!」
忽亡かなた:固まったことを恥じるように強めに叫ぶ。
乾咲フラン:弟ォ…意識してんじゃねえかァ…
夜高ミツル:かわいいね……
忽亡かなた:あんなこといわれちゃったら……
糸賀大亮:かわいいねえ
忽亡ゆかり:背中も……手を伸ばせば届くのだけれど、その動作は地味に体に響く。
忽亡ゆかり:「すまんねえ。ま、けが人の看病ですから、そう気にせずとも」
忽亡かなた:「逆に気にするよ!」
忽亡かなた:ゆかりの身体を気遣いながら、風呂場へと移動する。
忽亡かなた:給湯器のスイッチを入れる。
忽亡ゆかり:「面目なし。ぬるめの水で頼んます」
忽亡かなた:風呂場の窓からは朝日が射し込んで、水滴がそれを反射してきらきらと光っていた。
忽亡かなた:「はーい……ぬるめね、ぬるめ……」
忽亡かなた:ゆかりをバスチェアに座らせ、ぬるめのお湯を風呂桶に注いで。
忽亡かなた:多めに用意したタオルの一枚目を固めに絞っている。
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:逸らすべきか否か、迷った視線が泳いでいる。
忽亡ゆかり:なにしろ大怪我をしたものだから、高熱は出ているし、服は汗で濡れている。
忽亡ゆかり:緊急事態とはいえ、この状態で外出するのは……なんというか、人としてさすがに抵抗があった。
忽亡ゆかり:「……ばんざーい」服を脱がせてほしいと求めるように、自ら両手を挙げて。
忽亡かなた:「……う、ん」
忽亡かなた:その様子に、
忽亡かなた:今更恥じらっている場合でもないと腹を括ったか。
忽亡かなた:なるべくゆかりの身体に障らないように、こわごわとシャツを脱がしていく。
忽亡かなた:ボタンを外して。汗で張り付いた袖を剥がすようにして。
忽亡かなた:「……痛かったら言ってよ」
忽亡かなた:もう一度お湯に浸して絞ったタオルを構える。
忽亡ゆかり:「……いでえけど大丈夫です」
忽亡かなた:「……じゃあ、ええと、大丈夫じゃなくなったら……」
忽亡かなた:それはそれで問題なのだが。
忽亡かなた:「あ、っていうかこれは姉さんに渡した方がいいのか」
忽亡かなた:絞ったタオルをゆかりに差し出して。
忽亡かなた:「背中の方、拭くから、それで、なんかいい感じに、ええと」
忽亡かなた:こんな看病なんてしたことないし。手際が悪い。
忽亡ゆかり:「ん。ありがと……」起きたばかりなので、なんとなく最初に顔を拭いてしまう。
忽亡ゆかり:そのまま首へ、肩へ。
忽亡ゆかり:好意が暖かい。
忽亡ゆかり:偽りの記憶の中ですら、弟には今の仕事を秘匿していた。だから、家で看病されるという経験は、初めてのことだ。
忽亡ゆかり:今まではよく一人でこれをやってこれたものだなあ、と自分でも思う。
忽亡かなた:その間、もくもくと背中を拭いている。
忽亡かなた:首の裏。肩甲骨の筋。
忽亡かなた:背骨を上から下へ、脇腹に近い部分を。
忽亡かなた:下着をこわごわと引っ張って、その内側にもタオルを滑らせて。
忽亡ゆかり:「ふふっ」その初々しい所作がなんとなく面白くて、笑みがこぼれてしまう。
忽亡かなた:ちょっとだけむっとした気配がある。
忽亡かなた:でも、その笑みで沈黙が破られたのが、きっかけになったのか。
忽亡かなた:「……傷」
忽亡かなた:「いっぱい、ある」
忽亡かなた:と、少したどたどしく。
忽亡ゆかり:「…………お恥ずかしい。古傷は痛くないので気にせずゴシゴシやっちゃって下さい」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:言われたとおりに思い切ってごしごしとやりながら、
忽亡かなた:「恥ずかしく、ないよ」
忽亡かなた:「恥ずかしくない……」
忽亡ゆかり:「……誇って、いいのかなあ」
忽亡ゆかり:その傷の多くは、居ない弟を守るために戦線に立ったがゆえに付いた傷なのだけれど。
忽亡かなた:「それは」
忽亡かなた:「姉さんが、そう思うなら、だと思うけど」
忽亡かなた:「……俺は、姉さんを恥ずかしくなんて思うのは絶対やだし、ないし」
忽亡かなた:「……俺としては、俺の方が恥ずかしいくらいで……」
忽亡かなた:ごしごしと擦る手が止まる。
乾咲フラン:これはセックスではないでしょうか…?という気持ちが浮かんでくるよな
忽亡かなた:共同作業はセックスだからな
乾咲フラン:そう
忽亡かなた:片方が半裸でやる共同作業
忽亡かなた:小さくため息をついて、冷めて汚れたお湯をそっと流すと、もう一度風呂桶に湯を注ぐ。
忽亡かなた:「姉さんは俺に傷がいっぱいあったら駄目?」
忽亡かなた:新しいタオルを絞り、ゆかりに差し出しながら問う。
忽亡ゆかり:「それは!そんなはずないけど!」
忽亡かなた:「ふふっ」
忽亡かなた:剣幕に、こちらが笑ってしまう。
忽亡ゆかり:「……でも」
忽亡かなた:「うん」
忽亡ゆかり:それは自分の狂気の証、自分が表の道を外れた証、自分が多くの人々を傷つけた証。
忽亡ゆかり:心配の種で、まして好きな姿に見せたいものでもなくて、なんとなく気まずいのだ。
忽亡ゆかり:「……同じ立場だったら、かなただって見せるのは気まずいでしょ?」
忽亡かなた:「……それは、そうかも」
忽亡かなた:「でも、同じ立場だったら、姉さんだって拒んだり恥ずかしがったりしないだろ」
忽亡ゆかり:「……そうだね」
忽亡かなた:「ね」
忽亡かなた:「……そもそも俺がさ」
忽亡かなた:またゆかりの背中を拭きながら、
忽亡かなた:「そういう風に、なんだかんだ自分に自信を持てるというか」
忽亡かなた:「卑屈にならないでいられるのも」
忽亡かなた:「姉さんが肯定してくれるって分かってるから」
忽亡かなた:「……なんだと、思う」
忽亡ゆかり:「それこそ、こっちのセリフだよ」
忽亡ゆかり:弟の不在を自覚したころの、卑屈な自分を思い出す。
忽亡ゆかり:「……あー、よかった。この体、いつか見られちゃうの、ずっと怖かったんだ」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「……だから」
忽亡かなた:「うん」
忽亡かなた:「姉さんがそういうこと怖がらないでいられるくらい」
忽亡かなた:「俺も、ちゃんとしないと……なんだよな」
忽亡かなた:ぼそぼそと言っているが、風呂場ではまあまあ響く。
忽亡ゆかり:「かなたは、ちゃんとしてるよ」
忽亡ゆかり:「ちゃんとしてた。私が思ってたより、ずっと」
忽亡かなた:「……そうかな」
忽亡かなた:タオルを握る掌に力が籠もる。
忽亡かなた:「本当に、本当にちゃんとしてたら、さ」
忽亡かなた:「……姉さんが傷つくのだって、…………」
忽亡かなた:黙り込む。唇を舐めてから、
忽亡かなた:「……今晩、って、言ってたよな」
忽亡ゆかり:「今晩、だね」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「それ」
忽亡かなた:「姉さんが行かなきゃ、駄目?」
忽亡ゆかり:「……」
忽亡かなた:「こんな怪我してるのに」
忽亡かなた:「きつそうだし」
忽亡かなた:「……危ない、んだろ」
忽亡かなた:「もっと元気な人とか、代わりの人とかいないの?」
忽亡かなた:必死に言い募る声に切実な色がある。
忽亡かなた:姉を案ずる弟の言い分。
忽亡ゆかり:「……そりゃ、心配するよね」
忽亡かなた:「するよ!」
忽亡ゆかり:「かなたはさ、私がこのまま戦いに行ったら……帰ってこないんじゃないか、って思うよね。それで帰ってきたら一生後悔するんじゃないか、とかも」
忽亡かなた:「…………」
忽亡かなた:「……う、ん」
忽亡かなた:躊躇いののち、うなづく。
忽亡ゆかり:「私もなんだ」
忽亡かなた:「っ……」
忽亡ゆかり:「仲間がいる。私を地獄の淵から救い出してくれた仲間がいて、彼らを見捨てたら、きっと私は後悔する」
忽亡ゆかり:「その人たちのけじめをつける日が今日ってこと。私も、もちろんその一人」
忽亡かなた:唇を引き結びながら、その言葉を聞いている。
忽亡かなた:「…………」
忽亡ゆかり:「死んだ友達とも、約束しちゃったんだよな。ちゃんと今日のことに向き合うって」
忽亡ゆかり:「それに、ほら、私、こう見えても結構強いんだぜ。私ほどの人材の代わりといったら、そうそう見つからない!」
忽亡かなた:「……そんな怪我が、あっても?」
忽亡ゆかり:「そこは大丈夫。うまく言えないけど、たぶん何とかなる」
忽亡かなた:「なんとかって……」
忽亡かなた:不安げな色が消えない。
忽亡ゆかり:「なんとかって言ったらなんとかだ。姉ちゃんを信じなさい!」
忽亡かなた:笑顔で言い切られてしまって、
忽亡かなた:また黙り込む。じっと姉の顔を見つめている。
忽亡かなた:「……姉さん」
忽亡ゆかり:「なあに、かなた」
忽亡かなた:「姉さん、俺は、姉さんが、……」
忽亡かなた:「姉さんが……」
忽亡かなた:うまい言葉が見つからないのか。躊躇っているのか。
忽亡かなた:唇を開いては閉じ、視線を落とす。
忽亡ゆかり:「……」後ろに手を伸ばして、頭を撫でる。ゆっくりと、続く言葉を待つ。
忽亡かなた:大人しくされるがままに撫でられている。
忽亡かなた:次の言葉が出てくるまで、ずいぶん時間がかかった。
忽亡かなた:「……怪我、気をつけて」
忽亡かなた:「なるべく無事に、ちゃんと、自分の身体、大事にして」
忽亡かなた:「姉さんに傷があっても恥ずかしくないけど」
忽亡かなた:「それは、傷ついても平気ってわけじゃ、ないんだから」
忽亡ゆかり:「ん」
忽亡ゆかり:傷口付近を、とんとんとタオルで叩く。タオルがほのかに赤く染まる。
忽亡ゆかり:「大丈夫。今は自分の体が大事だ。痛いのは嫌だし、死ぬのは怖い」
忽亡かなた:「――――」
忽亡かなた:滲む血の色に、唇を噛んだ。
忽亡かなた:「お、れも」
忽亡かなた:「嫌だし、怖いよ――」
忽亡ゆかり:「……ごめん」
忽亡ゆかり:「ごめんね。つらいよね」
忽亡かなた:「……謝ってほしい、わけじゃなくて」
忽亡かなた:「だから」
忽亡かなた:「……だから、俺は、姉さんが大切だから」
忽亡かなた:「それだけ、だよ」
忽亡ゆかり:言ってしまえば、こうなる。それは分かりきっていたことだった。
忽亡かなた:ゆかりの背中からタオルが離れる。
忽亡ゆかり:弟が心配してくれるのはうれしいけれど、それ以上に胸がちくちくと痛い。
忽亡ゆかり:家族に置いていかれた者の気持ちは、とてもよくわかるから。
忽亡ゆかり:「帰ってくるよ」
忽亡かなた:「うん」
忽亡ゆかり:「作りたい料理も、欲しいものも、一緒にしたいことも、山ほどあるんだ」
忽亡かなた:頷く。
忽亡かなた:幸福を噛み締めるって感じだな……と思っている。
糸賀大亮:幸福シーンだなあ……
忽亡ゆかり:ただただ、しにそうだなこいつ、と思っています
夜高ミツル:しなないで
糸賀大亮:いきて
忽亡かなた:こらこら
忽亡かなた:「あ、うん!」
忽亡かなた:腰を上げながら、
忽亡かなた:もう一枚タオルを絞って、ゆかりに差し出す。
忽亡かなた:「一人でやりたいところ、やって」
忽亡かなた:「後片付けはいいから」
忽亡かなた:「朝ごはんは……おかゆとかで大丈夫?」
忽亡ゆかり:「あ、そのまえに」
忽亡かなた:この前しこたま買い込んだのが残っているのだ。
忽亡かなた:「え?」
忽亡ゆかり:「あー、いや、おかゆで大丈夫。なんだけど……」
忽亡かなた:小首を傾げる。
忽亡かなた:小動物めいた仕草。
忽亡ゆかり:「…………下着、取ってきて貰えません?」
忽亡かなた:「えっ」
忽亡かなた:「あっ」
忽亡かなた:「…………は、はい……」
導入:乾咲フラン
GM:そのままフラン邸で良さそうですね。乾咲フラン:碧が死んだ後のフラン邸で。
GM:碧の亡骸は……どうしたでしょうか。狩人によって運ばれましたか?
乾咲フラン:厳重に布に包まれて狩人たちに運ばれて行きました
乾咲フラン:無機質な死体袋になんて入れられねえよな…
GM:では碧の亡骸が運び出され、残ったフランに。
野嶋優香:「……お疲れ様です」
野嶋優香:美メイド姿の優香が紅茶を運んできます。
乾咲フラン:「……ありがとう。」流石に疲れの見える笑顔で振り向いた。
野嶋優香:「昨晩の狩りから、休む間もありませんね」
野嶋優香:こちらも少しぎこちなく笑う。
乾咲フラン:「ああ……今日で、きっと……色々な事が起きて、……」何かが終わるのか、それとも進むのか。色々な言葉が詰まって口が止まる。
野嶋優香:じっとその言葉を聞いている。
野嶋優香:「……今晩も、何かあるんでしょう」
乾咲フラン:朝日を眺めつつ背を預けていた窓際から体を離す。
野嶋優香:「……なんとなく、わかるんですよね」
野嶋優香:「そういう……狩人の、予感というか。予兆というか」
野嶋優香:「ずっと兄さんを見てきたからでしょうか」
乾咲フラン:ソファーにゆっくりと座り、優香に目を向ける。
野嶋優香:「兄さん」
野嶋優香:「兄さん、はそんなに強い狩人じゃありませんでしたけど」
乾咲フラン:「……」
野嶋優香:「でも、私を守ってくれるために精一杯で」
野嶋優香:「私は、ずっと、それを見てきて……」
野嶋優香:遠くを見つめるような目をしている。
野嶋優香:その奥の慟哭は、どれほど精巧なメイクでも隠しきれないだろう。
乾咲フラン:「……今日の戦いはきっと、凄惨な物になる。この家も被害に遭うかもしれない。」
野嶋優香:しずかに息を呑む。
乾咲フラン:「……今日の仕事は皆、無しだ。強制休日とする……後ほど全員に連絡を回す。」
夜高ミツル:ついにフラン邸が燃やされてしまうのか……?
野嶋優香:PCがフラグを立てに来る
糸賀大亮:俺たちの憩いの場が……
夜高ミツル:え~ん
野嶋優香:「それでは、狩りに支障が……」
乾咲フラン:「各々、君も……自分の身を守る事に専念してくれ。」
乾咲フラン:「大丈夫だ。起きる時間は解っている……それまでに準備をするとも。」
乾咲フラン:「私だって今まで何年かやってきたのだから。メイドが休んだぐらいで立ち行かなくなるようでは困るだろ。」
野嶋優香:「でしたら、それまではお手伝いさせてください」
乾咲フラン:「……」しばらく迷って――「君の献身には感謝するよ、だけどね……」
乾咲フラン:「他のメイドたちを守ってやってほしいんだ。君の力で……」
野嶋優香:「フラン様……」
野嶋優香:しばし逡巡のさまを見せていたが、顔を上げると、
野嶋優香:「……はい。私が”そう”なったことが、ここで役に立つのなら……」
野嶋優香:私は、と。
乾咲フラン:「ああ。全てが終わった後に……事後処理にこそ君たちの力がほしい」
乾咲フラン:「だから、皆生きて明日以降の出勤をするように。」
野嶋優香:「はい」
野嶋優香:「その時には、フラン様の指示をくださいね」
乾咲フラン:「ああ。」
野嶋優香:碧のために差し出されたカップなども片付けてしまって、優香は部屋を出る。
乾咲フラン:使い手の居なくなったカップを一瞬目で追い、睫毛が伏せられる。
野嶋優香:その寸前に、
野嶋優香:「フラン様」
野嶋優香:「いつか、忽亡さんと私にしてくださった話を覚えていらっしゃいますか?」
乾咲フラン:「……ああ。」
野嶋優香:「あの時、フラン様は理想とおっしゃいました」
野嶋優香:「……私は今でも、兄さんを蘇らせると言われたら」
野嶋優香:「その魔女の誘惑に、勝てるか分かりません」
野嶋優香:「どうしても、願ってしまいますから」
乾咲フラン:「…‥しょうがないよ。」悲しげに微笑んで。
乾咲フラン:「……理想だって言ったのは、そういう事だ……」
野嶋優香:「……はい」
乾咲フラン:「邪魔されて、それを恨んだっていい……」
野嶋優香:「そうかもしれません」
野嶋優香:「そういうフラン様ですから」
野嶋優香:「昨晩のことも、恥ずべきことだとは、私は思いませんよ」
野嶋優香:言い残して、扉が閉められる。
乾咲フラン:「……」苦笑して、少し冷えた紅茶を一口飲んだ。
乾咲フラン:「人は、どうしようもなく、弱い……」
GM:優香の腕も随分と上がった。冷めてきてはいるが、完璧に近い味だ。
GM:人は弱い。しかし弱さを抱えて戦っていける。
GM:弱さを抱えてこそ、狩人は、モンスターに立ち向かうことができる。
GM:そのことをあなたはよく知っている。
乾咲フラン:そう、弱いからこそ……より強く、美しくなれる。
GM:その美しさを、
フォゲットミーノット:「素敵なメイドさんね」
フォゲットミーノット:恐らく彼女も、知っているのだろう。
フォゲットミーノット:フランの他に人気のなかったはずの客室に、フォゲットミーノットが立っている。
乾咲フラン:「おや。いつからノックをしないで入るようになったのかな……」
フォゲットミーノット:「ちょっとくらいの行儀の悪さも、あなたに教わったのよ」
フォゲットミーノット:微笑みを浮かべて答える声は、ひどく穏やかだった。
乾咲フラン:「そうだったね。」ゆっくりとカップを置く。僅かな波が立つ。
フォゲットミーノット:「実のところ、あなたを誘惑しに来たのだけれど」
フォゲットミーノット:「あんなふうに言える子が相変わらずいるんだから、どうやら無駄みたい」
フォゲットミーノット:「どう?」
フォゲットミーノット:長い髪を翻して、フランに問いかける。
乾咲フラン:「そうだな……私は君を倒して、明日を彼女たちと、この家で迎えなければいけない。そう言ってしまったからね。」
フォゲットミーノット:「こんなにすぐに翻してしまうのは、美しくないものね」
フォゲットミーノット:「だから、あなたにはひとつだけ質問をするね」
乾咲フラン:「……」
フォゲットミーノット:「勿忘草の花言葉って、知ってる?」
乾咲フラン:「……君の、今の名前だね。」
フォゲットミーノット:「ええ」
フォゲットミーノット:「どうかしら」
乾咲フラン:「忘れなかったよ。君の事……」
乾咲フラン:ずっと覚えていた。ずっと想っていた。
フォゲットミーノット:にっこりと笑う。
フォゲットミーノット:碧とは変わり果てた姿で、碧と同じように、吸血鬼が笑う。
フォゲットミーノット:「ありがとう」
フォゲットミーノット:「でも、それだけじゃないの」
乾咲フラン:「『真実の友情』……」
フォゲットミーノット:「ええ」
フォゲットミーノット:「そして、愛」
フォゲットミーノット:「……分かってくれて、ありがとうね」
乾咲フラン:「……」精一杯の微笑みを返す。
フォゲットミーノット:「今晩は、楽しみにしてる」
フォゲットミーノット:「私も――あなたのこと、忘れたりしないのよ?」
乾咲フラン:「そうだね、全てにケリをつけようか。――そうか、嬉しいよ。ありがとう。」
フォゲットミーノット:「私に広い世界を教えてくれた人」
フォゲットミーノット:「だから」
フォゲットミーノット:「世界の最後も、今度はあなたに教わることに、なるのかな――」
フォゲットミーノット:言い残して、
フォゲットミーノット:勿忘草の花が舞う。
フォゲットミーノット:その姿は消えている。
乾咲フラン:部屋に舞う花弁を、物憂げに見つめる――
フォゲットミーノット:舞い上がり、はらはらと落ちていく青い花弁たち。
フォゲットミーノット:それらはいつかと同じように薄れていく。
乾咲フラン:深く息を吸い、吐く。
乾咲フラン:感傷に浸る事も嘆く事も、すべて後で出来る。フランは力強く立ち上がり部屋を出る。
乾咲フラン:メイドに連絡を回す。館を空にするように、大事な物を持ち出すようにと。
乾咲フラン:武装倉庫に入り使えそうな物を手早く取り出す。様々な武装を引っ張り出して見るが――
乾咲フラン:やはり自分には、手と足と、己の美こそが手に馴染む武器なのだと確かめる作業となった。
乾咲フラン:メイク道具boxを手に、館を出る――
導入:糸賀大亮
GM:どうしましょう。どんなシーンにしますか。GM:到着するとこからやるんですか?
糸賀大亮:どう……っいやっ
GM:面白……
糸賀大亮:一夜明けて……でいいんじゃないかなあ…!?
GM:はい。
GM:一夜明けました。
糸賀大亮:時系列が…ほら、時系列がね……時系列とか……
GM:うんうん。
GM:なかなか太陽が高く。
GM:では大亮さんが目覚めますと。
皆川彩花:ベッドで彩花が眠ってます。
皆川彩花:大亮さんの部屋の、大亮さんのベッドで、すやすやと眠っています。
糸賀大亮:足の痛みで目が覚めて、辺りを見回して。
糸賀大亮:自分がなぜ床で寝ているのか、をベッドに目を向けて理解して。
皆川彩花:静かな呼吸に胸が上下している。
皆川彩花:カーテンの隙間から陽光が差し込み、室内で反射して、
皆川彩花:飾られたハーバリウムがきらきらと光っている。
糸賀大亮:これでよかったのか………? と自問せずにいられない自分と、ものすごい安堵をしている自分で引き裂かれています。
皆川彩花:彩花はたいへん健やかに眠っています。
皆川彩花:枕が変わっても全然余裕なタイプ。当たり前なのだが。
糸賀大亮:とりあえず、水とか飲もう……
糸賀大亮:彩花ちゃんが寝てるからカーテンはまだ開けない方がいいだろう。
糸賀大亮:怪我を負った足を庇うようにして立ち、流しに向かう。
糸賀大亮:コップだけ取って、冷蔵庫から水のペットボトル出します。
糸賀大亮:冷蔵庫には、まだゼリーが残っている。
糸賀大亮:グラスに水を注いで、とりあえず飲んで、
糸賀大亮:何度見てもベッドで彩花ちゃんが寝ているな……
皆川彩花:寝ています。
皆川彩花:すよすよ眠っています。
糸賀大亮:千葉の水道水めちゃくちゃ不味いらしいんだよな。
皆川彩花:えっでもおもしろいな
皆川彩花:ミネラルウォーターが冷蔵庫にある大亮概念
皆川彩花:現地人は平気でも外からだとね
糸賀大亮:大亮も飲めない千葉の水
糸賀大亮:大亮も地元民じゃないからね
夜高ミツル:地元民なので水道水を出した
糸賀大亮:それは間違いない。それはもちろん、受け入れているのだが。
糸賀大亮:それはそれとして、家に来るというのは想定してなかったので。
糸賀大亮:若干途方に暮れている。
糸賀大亮:グラスを流しに戻して……
糸賀大亮:とりあえず座って怪我の具合とか改めて確かめてます。
GM:まあなんとか歩き回れはするような。
GM:これで戦うのはけっこう嫌だな、とは思うけど、
GM:こういう傷を抱えたまま戦わされるのもまた狩人の日常。
糸賀大亮:実際この傷で彩花ちゃんを抱えて帰ってきたわけだし……
GM:今回は花に願いを託せるので、それを思うといくぶんか気が楽になるのではないでしょうか。
糸賀大亮:まあ、集合場所に行くには問題ないだろう。
GM:太陽は既に高い。
GM:11時くらいかな。いつかよりは相当マシですね。
糸賀大亮:しっかり朝に起きた……とはとても言えないが、まあ許容の範囲内だ。
GM:午前なだけ御の字。
糸賀大亮:花どこに置いてるんだろう。コップに水張ってつけたりしてるのかな。
GM:大亮さんがしたいようになってると思います。
GM:特別な花なので別に萎れませんよ。
糸賀大亮:じゃあそんな感じで。水に入れるという発想はあったけど、水を変えるという発想はない。
糸賀大亮:傷を確かめて、花の様子を見て、時間を確かめて。
糸賀大亮:また寝ている彩花ちゃんを見る。
皆川彩花:気がつくと彩花が大亮を見ている。
糸賀大亮:いる。
皆川彩花:目が合う。
皆川彩花:ばちっと。
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:目が合って、驚いて思わず黙り込んでしまった。
皆川彩花:相好を崩した。
皆川彩花:「おはようございまーす」
皆川彩花:ご挨拶。
糸賀大亮:「…………おはよう」
皆川彩花:「ベッド、ありがとうね」
皆川彩花:「ゆっくり眠れました!」
糸賀大亮:「いや……」
糸賀大亮:「ああ、よかった」
皆川彩花:よいしょよいしょと起き上がりながら。制服姿のままでも眠れるのは慣れだろう。
皆川彩花:スカートの裾を整えている。
糸賀大亮:「…………」
皆川彩花:「?」
糸賀大亮:いるな……
皆川彩花:髪を梳いています。きょろきょろと部屋を見回す。
糸賀大亮:「……いや、ええと」
皆川彩花:家に迎え入れられ、ハーバリウムを見つけた時、満面の笑顔になったことを大亮は覚えているでしょう。
皆川彩花:それと同じ笑顔を、またハーバリウムに目を留めて浮かべる。
皆川彩花:「なあに? 大亮さん」
皆川彩花:髪を手櫛で梳いたり、掌で押し固めようとしています。
皆川彩花:自分の頭を何度も撫で付けている。
糸賀大亮:彩花ちゃんが使うような櫛、この家にはないな……
皆川彩花:ないでしょうね……
糸賀大亮:「そう、重大な問題があって……」
皆川彩花:「?」
糸賀大亮:さっき冷蔵庫を開いて気が付いたんですが、
糸賀大亮:「今この家には、ゼリーと水しかない」
糸賀大亮:カップ麺とかもない。
皆川彩花:ないんだ。
糸賀大亮:ちょうど切らしてて。
皆川彩花:「ゼリー」
皆川彩花:おうむ返し。
糸賀大亮:「そう、ええと、検査入院の時の見舞いのつもりで買った……」
皆川彩花:「えっ」
糸賀大亮:「結構前の奴だから、……そういえば賞味期限とか確かめてないな」 たぶん大丈夫だと思うけど、そういう問題ではなくて。
皆川彩花:嬉しそうになった。
皆川彩花:「そうだね、そうだった」
皆川彩花:「うん」
皆川彩花:「前の私、すっぽかした!」
糸賀大亮:「……」
糸賀大亮:「君がすっぽかしたおかげで、ゼリーはあるが……」
皆川彩花:「ゼリー、好きだよ」
皆川彩花:なにか問題ある? とでもいった様子。
糸賀大亮:「……それはいいんだが」
糸賀大亮:「ほかにも、たぶん必要なものがあるだろうから」
皆川彩花:「うん」
糸賀大亮:「……ええと、……」
糸賀大亮:「コンビニに行こうと思うんだが」
皆川彩花:「明日以降で良くない?」
皆川彩花:「大丈夫? 今晩、たいへんじゃない?」
皆川彩花:心配している。
糸賀大亮:「花の力は今晩限りなんだろう」
皆川彩花:「うん」
糸賀大亮:「君がここにいるのはいいが、俺がすぐ帰ってこられるとは限らないし」
糸賀大亮:「…………いやまあ、その時は金だけ置いておいて何とかしてくれ、でもいいんだが」
皆川彩花:「むむう……」
皆川彩花:むづかしい顔をしています。
皆川彩花:「臨時ボーナスとか用意すればよかたね……」
皆川彩花:「いや、私じゃないんだけど……」
皆川彩花:「手付金?」違うと思う。
糸賀大亮:「……まあ、あんまり頼りすぎるのも良くない……」
糸賀大亮:ここまで至れり尽くせりというほどのことをしてもらって何だが。
皆川彩花:「まあ、でも――」
皆川彩花:と、彩花が言いかけたところで。
GM:大亮の携帯に着信が入ります。
糸賀大亮:彩花ちゃんにことわって取ります。
GM:例の狩人ですね。
GM:何かとあの……連絡をくれる。いつもの。
糸賀大亮:「……お疲れ様です」
糸賀大亮:いつものクラブの。
GM:『よっ』
GM:『いや、糸賀、あのさあ』
糸賀大亮:「はい」
GM:『夜高ミツル』
GM:『ってお前、けっこう深めに付き合いあったよな?』
糸賀大亮:「はい」 深め……
糸賀大亮:まあ深めか。
GM:他のハンターよりも相当。
糸賀大亮:「夜高が何かありましたか」
GM:『いや、未明にクラブに通報があって』
GM:『刺されて倒れてるってことで、こっちで色々手配してさ』
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:空いた手で頭を抱える。
GM:『病院担ぎ込まれてんだよな。闇の方』
GM:『通報主の身元は良く分かってねえんだけど』
GM:『お前そういえば知り合いだったなってさっき思い出したんだけど、なんか知ってる?』
糸賀大亮:刺したのは真城じゃないか。二人にしたのは迂闊だったか、と思ったあとで。
皆川彩花:彩花は首を傾げています。
糸賀大亮:「……いえ。でも、夜高が刺されて、病院にいるんですね。場所、分かりますか。様子見に行きます」
糸賀大亮:彩花ちゃんにも話が分かるように復唱しつつ、問い返す。
GM:『おー。よろしく頼む』
GM:ミツルが運び込まれた病院を伝えられますね。
GM:1話で運び込まれてたところと同じとこです。
皆川彩花:彩花は大亮の復唱にぱちぱちっとまばたきをして。
糸賀大亮:うん……
糸賀大亮:礼を言って通話を切って。
皆川彩花:「…………」
糸賀大亮:「……通報主の身元は分からないそうだ」
皆川彩花:「……さっくんはさあ……」
皆川彩花:彩花は確信してます。
皆川彩花:たぶん両方確信してる。
糸賀大亮:通報したのも真城なんじゃねえかなと思っています。
皆川彩花:「でもミツルさんも悪いと思う」
皆川彩花:「想像つかない? さっくんがやりそうなこと」
糸賀大亮:「……俺は真城のことはそんなに詳しくないから……」
糸賀大亮:思わずと言った調子で言ってしまった。
糸賀大亮:何で俺が言い訳してるんだ。
夜高ミツル:すみませn……
乾咲フラン:流石に察する大亮さん
皆川彩花:遠隔詰めが発生しちゃった
夜高ミツル:いないところで怒られてる
乾咲フラン:プルプルしてる
皆川彩花:全身で主張した。ジェスチャー込みで。
糸賀大亮:「とにかく、夜高は狩りまでには目を覚ましてもらわなきゃ困る」
糸賀大亮:嘆息する。
皆川彩花:やがてそれにも疲れたか、ふう、とため息をついて。
皆川彩花:「…………」
皆川彩花:「……大亮さん」
糸賀大亮:「ああ、すまないが、このまま病院に行く……」
皆川彩花:「……ん」
皆川彩花:「でも、その前に」
皆川彩花:「大亮さんはさ」
皆川彩花:「さっくんがしたこと、許せますか?」
糸賀大亮:「いいや……」
皆川彩花:「だよね」
糸賀大亮:「憎んでいるとか、怒っているとか」
糸賀大亮:「自分でも不思議なぐらいにそう言うのはないんだ」
皆川彩花:頷いている。
糸賀大亮:「……だが、許すのとは違う」
糸賀大亮:「そのうえで」
糸賀大亮:「夜高が真城を生かそうとする」
糸賀大亮:「それには乗ったんだ」
皆川彩花:「……大亮さん、こういうときは話が早すぎるよね……」
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:早すぎるとは。
皆川彩花:「いや、褒めてますけど」
皆川彩花:「私もね」
皆川彩花:「さっくんが胡桃ちゃんにしたこと、胡桃ちゃん以外にしたこと」
皆川彩花:「本当にひどいとおもってるし……」
皆川彩花:「まあそれって、私がプルサティラの頃、いや私はプルサティラじゃないけど」
糸賀大亮:「……」
皆川彩花:「プルサティラの力によって生まれて、プルサティラの記憶を引き継ぐ者なので」
皆川彩花:「まあ私も責任感というか、今となっては罪悪感とか、まあありますけど、そんなのはちょっと話がズレまして」
糸賀大亮:ズレ
皆川彩花:「……別に」
皆川彩花:「憎んでてもいいんだよっていうようなことを、言おうとしたんですが」
皆川彩花:「大亮さんは話が早すぎた……」
糸賀大亮:「…………すまない」
皆川彩花:「責めてるわけじゃないです~」
皆川彩花:「拗ねてるだけです~」
糸賀大亮:いや、謝るところではない気もするな……
糸賀大亮:「拗ね……」
皆川彩花:「でも、でもね」
皆川彩花:声に切実さが戻る。
皆川彩花:「ゆかりさんは、そうじゃないと思うから」
皆川彩花:「それはね、分かってあげてね」
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:忽亡さんの顔を脳裏に思い浮かべる。弟の顔も。
糸賀大亮:「…………ああ。努力する」
皆川彩花:「それはそれとしてゆかりさんのそういうのを真正面から全力で食らったらさっくん自殺しかねないから気をつけてね」
糸賀大亮:「…………」
皆川彩花:「…………」
糸賀大亮:困った顔になった。
忽亡ゆかり:ゆかりちゃんこわい
皆川彩花:正当だからね
忽亡ゆかり:弟の仇!
糸賀大亮:「面倒くさい……いや、……」
糸賀大亮:「真城のことはよく分からないが」
皆川彩花:「本人、最悪挑発するまであるし……」
皆川彩花:「これで良かったのかな……」
皆川彩花:きゅうに不安になっている。
糸賀大亮:「そういう……自棄になるというか」
糸賀大亮:「罪悪感を感じて責めてもらいたいのに、いざ責められると苦しいというか」
糸賀大亮:「……程度が全く違うだろうが、そういうのは……まあ」
皆川彩花:「…………」
糸賀大亮:「…………分からないが」
皆川彩花:「話が早い……」
皆川彩花:なぜか批難の響きが籠もり始めた。
糸賀大亮:「えっ……」
糸賀大亮:責めているわけではないって言ってたのに、責められている感じがしてきた。
皆川彩花:「引き留めてごめんね」
皆川彩花:「もう大丈夫だから、えっと」
皆川彩花:「ちゃんとミツルさんのこと、起こしてあげてね」
糸賀大亮:「ああ」
糸賀大亮:「……すぐ帰れるかは保証できないが」
糸賀大亮:「帰っては来るから」
皆川彩花:「それなら大丈夫です」
皆川彩花:微笑む。
皆川彩花:「待つのはとっても得意ですから!」
皆川彩花:胸を張る。
糸賀大亮:「……」頷きかねて、沈黙してしまった。
皆川彩花:なぜだか奇妙に誇らしげに、荒れ気味の部屋のベッドに腰掛けてにこにこと笑っている、元女子高生。
糸賀大亮:「……あまり、待たせないように努力はする」
皆川彩花:「ん」
糸賀大亮:言って、自分のぶんの花を拾い上げて、ジャケットを羽織った。
糸賀大亮:「…………」
糸賀大亮:それから、ベッドに座る彩花ちゃんを見て。
皆川彩花:目が合って、笑う。
皆川彩花:「いってらっしゃい!」
糸賀大亮:「………………いってきます」
導入:夜高ミツル
夜高ミツル:──目覚めは、快適とは程遠いものだった。夜高ミツル:腹部に走る痛みが、ミツルを夢から現実へと引き戻す。
GM:見上げた天井はいつも見るものとは違う。
GM:けれど、知らない場所ではなかった。
夜高ミツル:5月の事件のあと、入院していた病院。
GM:ミツルを案ずるように見下ろす顔も、また。
夜高ミツル:寝起きでぼんやりしていた意識が覚醒していき、慌てて身体を起こそうとして。
夜高ミツル:「……っ!」
夜高ミツル:痛みに顔が歪む。
乾咲フラン:美が立っている。「おはよう。」
忽亡ゆかり:「おす」
糸賀大亮:「……」
夜高ミツル:「…………今、何時ですか」
夜高ミツル:掠れた声。
糸賀大亮:「ほぼ18時だ」
糸賀大亮:すぐに答えて、スマートフォンの画面を見せる。
GM:ミツルの腕には点滴が繋がれています。
夜高ミツル:18時。夜まで、もうあまり時間はない。
忽亡ゆかり:「なあ、それ。誰にやられた?」
夜高ミツル:「…………」
夜高ミツル:問いかけられて、少し間を置いて。
夜高ミツル:「……真城、です」
忽亡ゆかり:「……そっか」
GM:他の狩人たちは闇病院の医者からミツルの容態について説明を受けていますね。
GM:腹部を深く刺されている。それから来る出血多量と、意識の混濁。
GM:幸い内臓に大きな損傷はなく、一命は取り留めたが、暫くは安静にしておく必要があるとのこと。
GM:闇病院はばたばたしているので駆けつけた狩人たちにそのあたり説明してそそくさと医者は他のとこいっちゃった。
夜高ミツル:いっちゃったか……。
糸賀大亮:「彩花ちゃんの言葉によると」
糸賀大亮:「『さっくんがやりそうなことぐらい想像つかない?』だそうだ」
忽亡ゆかり:「…………」
夜高ミツル:「……そう、ですね」
忽亡ゆかり:「ま、そう来るよな」
糸賀大亮:「それと、通報者の身元は不明だそうだ」
乾咲フラン:「どうしてそんな痴話喧嘩みたいな刺され方をしたんだい。まったく。」
夜高ミツル:こうなるかもしれないことは、予測できて然るべきだったと思う。
夜高ミツル:「……真城が、フォゲットミーノットの所に行こうとするのを止めようとして」
夜高ミツル:「……すみません。止められなかった」
夜高ミツル:「真城は、フォゲットミーノットの所に」
夜高ミツル:「…………」
夜高ミツル:身元不明の通報者。
夜高ミツル:普通の病院ならともかく、ここに自分がいるということは、その通報者は真城なのだろう。
GM:あ、あとそうですね。
GM:ベッド近くに置かれたチェストの上、投げ返された合鍵が置いてあります。
GM:近くに落ちていたのでもしかしてと、救急隊員が拾ってきたものですね。鍵は。
GM:違ったら警察に届けてくれって言ってた。闇救急隊員なので大味。
夜高ミツル:ありがたいですね。
忽亡ゆかり:「通報者が誰かなんて、どうでもいい」
忽亡ゆかり:「大事なのは、仲間を傷つけたのが誰で、今そいつはどっち側に立ってるかってことだ」
糸賀大亮:「やることは変わらない」
糸賀大亮:と言いながら、問うような目を夜高へ向ける。
糸賀大亮:「方針に変更はあるか」
夜高ミツル:「…………いや」
夜高ミツル:「変わらないです」
忽亡ゆかり:「…………」
夜高ミツル:大亮にそう告げて、それから仲間たちの顔を見回す。
乾咲フラン:「そうか。」
夜高ミツル:頷く。
忽亡ゆかり:腕を組み、目は閉じたまま。
夜高ミツル:「……これで諦めるくらいなら、最初から真城を助けたいなんて言ってないですから」
夜高ミツル:「だから、俺がやることは変わらないです」
夜高ミツル:「心配かけたことは……すみません」
夜高ミツル:狩りの前の貴重な時間に、仲間たちがここに来てくれたことに対しての申し訳無さ。
糸賀大亮:「死んでないならいい」
糸賀大亮:と言って、今度は忽亡さんに目を向ける。
糸賀大亮:「……あんたの方はどうだ、忽亡さん」
忽亡ゆかり:「……何が?」
糸賀大亮:「真城に対してだ」
糸賀大亮:出てくる前に彩花ちゃんが言ってたことを思い返している。
忽亡ゆかり:「………………………………………………」言葉を選ぶような、長い沈黙の後
忽亡ゆかり:「特に、何も」
忽亡ゆかり:とだけ答えた。
糸賀大亮:「……なら、いいんだが」
乾咲フラン:(おお……)ゆかりの空気に思わず少しだけ目をそらした
夜高ミツル:「……あの、もし俺に遠慮してくれてるなら、それは」ゆかりを見て。
糸賀大亮:「これから狩りだ。言うことがあるなら、言っておいた方がいい」
糸賀大亮:言ったものの、あんまり長いこと言いあっている時間もない。と思っている。
忽亡ゆかり:「……」心の中は、決して穏やかではない。それは刺々しい態度からもすでに皆には伝わっているだろうけれど。
GM:窓の外を見れば、既に黄昏時。
GM:薄闇に包まれた街の風景は、狩人には特に馴染みが深い。
GM:戦いの始まる時分だ。
GM:それでも、
GM:戦いの”前”に済ませるべきことは、済ませておかなければならないだろう。
GM:迷いは狩人の刃を鈍らせる。それをこの場にいる誰もが知っている。
忽亡ゆかり:「それより、どう攻略する?」話題をそらすように、本題を提示する。
糸賀大亮:「……」
糸賀大亮:じっと忽亡さんのことを見つめたあとで、目を伏せる。
乾咲フラン:「言っておいたほうがいい。いつ言えなくなるともわからないのだから。」
夜高ミツル:「忽亡さん」
夜高ミツル:「俺は忽亡さんがどう思ってるか、ちゃんと知っておきたいです」
夜高ミツル:自分が選んだ道がゆかりにとってよく思えるものではないだろう、というのは明白で。
夜高ミツル:彼女は真城の被害者なのだから。
夜高ミツル:だからせめて、彼女に不満や思う所があるのなら、それを飲み込まないでほしいと、そう思って。
GM:仲間同士で詰め合う美しい光景だな……
糸賀大亮:美
糸賀大亮:美か?
GM:美~
忽亡ゆかり:「……事故や戦闘中の勢いを装って、彼を消そうかと考えていた」
糸賀大亮:「…………聞いておいてよかったな」
忽亡ゆかり:「どうせこの有様じゃ、そんな芝居も通用しそうにないからね」
夜高ミツル:「…………忽亡さんがそう考えることについては、俺には否定できないです」
夜高ミツル:「……だから、お願いします。あいつを殺さないでもらえますか」
夜高ミツル:「もう一度、あいつと話をさせてください」
忽亡ゆかり:「それぐらいは自由にしたらいいけど……」
忽亡ゆかり:「君を刺してまで君を拒んだ彼が、今更一言二言を交わした程度で君の元に戻ってくるとは思わない」
夜高ミツル:「それは……」言葉に詰まる。視界の隅に、投げ返された合鍵が映った。
忽亡ゆかり:「ていうか、戦いになるでしょ、あの親子と。これはそういう意思表示じゃん」
乾咲フラン:「今夜が夜高クンの正念場だな。」
糸賀大亮:「吸血鬼の協力者であるということは、真城が一般人を傷つけたり、殺すことも考えられる」
忽亡ゆかり:「そうならないように口先で解決できるなら、そこを妨害しようとまでは思わないけど……」
忽亡ゆかり:「解決できなかったから、そうなったんでしょ?」
夜高ミツル:「…………はい」説得できなかったことも、真城と戦うことになるのも事実で。一般人を傷つける可能性も決して否定できない。
忽亡ゆかり:「彼は最初っから敵として君の前に立ちはだかるだろ。言葉を聞いてすらくれないかもしれない」
忽亡ゆかり:「そうして敵として立ちはだかった彼を、君は殺すなって言うのか?」
忽亡ゆかり:「自分たちよりもはるかに強いだろう相手を二人も敵に回して、力加減の調整をして戦えって?」
夜高ミツル:そうして、真城が仲間を傷つけ──最悪の場合、命を奪う可能性だってありえることで。
GM:こうしてるとプルサティラは優しかったことが分かりますね。
糸賀大亮:わはは
GM:まあ今からでも真城殺す方向にシフトしてもいいんですよ。
乾咲フラン:ヒィン
GM:3話より4話のがそりゃ過酷だよ 選択のあとは解答なんだから
乾咲フラン:そうですね…
GM:プルサティラはミツルくんを信じて力を託したけど、そのプルサティラももういないわけだし……
糸賀大亮:導入フェイズで詰めが発生するわけないだろ! みたいな話を三話のプル詰めの時に言ってた気がするけど
糸賀大亮:導入フェイズで詰めが発生してるな…ってしみじみしちゃった
忽亡ゆかり:おかしいなあ
糸賀大亮:フラグだったんだな
夜高ミツル:「俺はあいつに命をかけるって決めたけど、それは忽亡さんたちにまで強制していいことじゃありませんでした。……すみません」
糸賀大亮:「……」
糸賀大亮:嘆息した。
糸賀大亮:「違うだろう」
糸賀大亮:「俺は前に、お前に懸けると言ったばかりだ」
糸賀大亮:「今のは、忽亡さんの話だ。ほかの狩人のスタンスは、本人にちゃんと聞け」
夜高ミツル:大亮の方を見て、目を瞬いて。
夜高ミツル:「……そう、ですね」
夜高ミツル:「糸賀さんは……どう思いますか?」
糸賀大亮:「フォゲットミーノットを斃す、ということについて、俺たちの目的は共通しているはずだ」
夜高ミツル:頷く。
糸賀大亮:「……問題は、真城というフォゲットミーノットの〈フォロワー〉を殺すか殺さないか」
糸賀大亮:「俺は、お前が真城を助けるという選択には協力する」
糸賀大亮:ちらりと忽亡さんの方を見た。「…………そうした方がいいと思うからだ」
糸賀大亮:「その無茶な力加減って奴も、できる限りはやってみよう」
糸賀大亮:「だが、真城を説得するのはあくまでお前だ」
夜高ミツル:静かに大亮の話を聞いて。
夜高ミツル:「……ありがとうございます」
夜高ミツル:「はい」
糸賀大亮:「忽亡さん、だから……つまり」
糸賀大亮:「仲間割れは避けたい。あんたがそのつもりでなければ」
忽亡ゆかり:「……別に私だって、殺さずに戦いを終えられたなら、とどめを刺そうとまでは言わないよ……」
忽亡ゆかり:「ただ、皆で生きて帰りたいだけだ」
糸賀大亮:「俺も、だから真城に無抵抗に殺されようとは思わない」
乾咲フラン:「そうだね……」
忽亡ゆかり:「……でも」
忽亡ゆかり:「夜高くんが刺されたって聞いたときは、すごくムカついた」
忽亡ゆかり:「そこまで頑なに望むんなら、もう望み通りにしてやろうかって思った」
夜高ミツル:「…………」
忽亡ゆかり:「でもって、次は死ぬかもと来た。私にとっちゃ、夜高くんの心よりは命を守りたいなと思った」
忽亡ゆかり:「……君に恩はあるけどさ。恩返しよりも、死にたくない、死なせたくないって気持ちのほうが、私には大事だったんだよ」
夜高ミツル:心配してくれている。それが少し嬉しくて、それから申し訳なかった。
忽亡ゆかり:「だって……君の原動力だってそうだろ?」
忽亡ゆかり:意思を尊重するよりも、死なせないことを選んだ。
夜高ミツル:自分も、仲間すらも、危険に晒すようなことをしようとしている。頼んでいる。
夜高ミツル:「……はい」
忽亡ゆかり:「……だから君の気持ちは同意できるが半分、同意できないが半分ってとこだ」
夜高ミツル:「……心配してくれて、ありがとうございます」
夜高ミツル:「みんなで生きて帰りたいのは、俺も同じ気持ちです」
夜高ミツル:「命をかけるって言ったけど……だからって、死にに行くつもりはありません」
夜高ミツル:以前だったら、自分は死んでもいいと思っていたかもしれない。
夜高ミツル:それが真城を、誰かを助けることに繋がるならと。
夜高ミツル:だけど、今はそうじゃない。
夜高ミツル:「……死にません、なんて言うだけなら簡単だけど。……少なくとも、真城に殺されてやるつもりはないです」
夜高ミツル:この腹の傷を抱えては、説得力も何もないような気がしなくはないけど。
忽亡ゆかり:「腹を刺されてもそれを言うのか……」
忽亡ゆかり:「覚悟、決まってるなあ。さすがプルサティラちゃんが託しただけある」
夜高ミツル:案の定指摘されてしまった……
糸賀大亮:さっきGMが合鍵のことに触れようとした時、「えっ、入院代また払ったのか?」
糸賀大亮:って一瞬思った 違った
GM:まだでしょ
GM:まだという表現
糸賀大亮:まだかあ
夜高ミツル:でも思っちゃったよ わかる
GM:刺して札束置いてくな
忽亡ゆかり:「私も、できる範囲で協力はするよ。けど、君が殺されそうになるのを黙って見過ごす気はないからな」
夜高ミツル:「……ありがとうございます」
夜高ミツル:礼を告げて、それからフランの方に視線を移し。
夜高ミツル:「……乾咲さんは、どう思いますか?」
乾咲フラン:「私か。私はおおよそ夜高クンと同じ考えだよ……」
乾咲フラン:「戦闘中は……正直、FMNは強敵だ。真城に構う余裕がないかもしれない。」
乾咲フラン:「あとはその……真城なら私達の一撃を食らっても少々は大丈夫じゃないかという信頼がね……」
夜高ミツル:「はは……それは、そうですね」
乾咲フラン:「だが、必要とあらば私は真城を傷つけるぐらいならする。」
夜高ミツル:「……怪我させないで止められるとは、思ってません」
乾咲フラン:「だが殺そうとすることは……ない。そこは安心してほしい。」
夜高ミツル:「……はい」
乾咲フラン:「私は碧の遺志のために真城を生かしたい……そう思っているよ。」
乾咲フラン:(たとえその後に、自分が何を得るわけではなくても……)
糸賀大亮:「……」
糸賀大亮:蘇った吸血鬼。FMN。
糸賀大亮:ハイドレンジアやプルサティラがそうであったように、彼女もまた、フランの知る真城碧〈であったもの〉だ。
糸賀大亮:覚悟が決まっているというなら、フランこそそうだろうな、とぼんやり思う。
夜高ミツル:「……もし余裕があればなんですけど、乾咲さんからも真城と話してみてくれませんか」
乾咲フラン:「あれば、やろう」
夜高ミツル:「あいつは、自分のせいで母親を不幸にしたと思ってる」
夜高ミツル:「……そうじゃないって、思うんですけど。でも、俺は真城の母さんを知ってるわけじゃないから……」
乾咲フラン:「そうだな……まったく親子二代で、手間のかかる。」
夜高ミツル:昨晩の狩りで見た記憶の中で、真城碧は真城朔といて幸せそうに見えた。
夜高ミツル:でも、それだけだ。自分に見えたものは。
夜高ミツル:フランしか知らないこと、フランなら分かることがきっとあるはずだ。
夜高ミツル:「お願いします」頷く。
乾咲フラン:「ああ。」笑顔で頷いて。
夜高ミツル:窓を見やる。黄昏時を過ぎ、街は夜の暗さに沈んでいる。
夜高ミツル:そろそろ、決着をつけに向かう時間だ。
夜高ミツル:少し悩んで、勝手に点滴を外す。
夜高ミツル:──真城には、まだ迷いがあるはずだ。
夜高ミツル:そうでなければ、自分がこうして命を繋いでいるわけがない。
夜高ミツル:生かしておけば追いすがると、フォゲットミーノットを殺しに行くと分かっているのだから。
夜高ミツル:それならば、きっと話をする余地はあるはずだと、そう信じる。
GM:合鍵に目をやると、
プルサティラ:いつの間にか、その隣にプルサティラの花が置かれている。
夜高ミツル:ベッドから、それに手を伸ばす。
プルサティラ:魔女の遺した奇跡の残滓が、ミツルの掌の中で淡く光る。
夜高ミツル:いつかの、白い花弁のように。
夜高ミツル:ミツルの傷を癒やしていく。
夜高ミツル:刺された箇所の痛みが徐々に遠ざかり、やがて完全に消える。
プルサティラ:願いを聞き届けた紫の花弁がはらはらと散る。
プルサティラ:ミツルの傷が癒えるのと同時に、散った花弁も消え失せた。
夜高ミツル:「……ありがとう」と、もう届かない相手に感謝を告げて。
夜高ミツル:身体を起こし、ベッドから抜け出す。
夜高ミツル:あまり猶予がないとはいえ流石に着替えはしないとな……と、自分の身体を見下ろすと。
夜高ミツル:……いつの間にか、入院着から昨日の制服姿に戻っていた。
夜高ミツル:「…………マジか」
忽亡ゆかり:「さっすが、プルサティラちゃん」ポケットの中の花束を握る。
忽亡ゆかり:体の痛みが消える。包帯のあった部位をグーでとんとんと叩いた。
乾咲フラン:「魔女の遺物の、力か……」己も花弁を柔らかく手に取ると……負傷した腕が回復していくのを感じた。
プルサティラ:狩人たちの頭の中にプルサティラのどや笑顔が浮かびます。
プルサティラ:ピースピース。いえーい。
夜高ミツル:さすが魔女……。
夜高ミツル:アフターケアばっちり。
糸賀大亮:ドヤ顔を思い出しながら花弁を握ります。
プルサティラ:ふわ、と紫の花弁が浮き上がって、最後の奇跡をなす。
糸賀大亮:治った足を踏みしめて痛みのないのを確かめる。
乾咲フラン:脳裏に浮かぶどや顔に魔女の遺物の副作用を感じました。
夜高ミツル:立ち上がる。傷があったという感覚すら、今はない。
夜高ミツル:もしかして刀も治っているのでは?
プルサティラ:いえーい。
プルサティラ:いえーいではない。
糸賀大亮:イエーイかあ~。
夜高ミツル:……昨日の戦いで折って投げ捨てたはずの刀まで手元に戻ってきている。
夜高ミツル:ありがたく、それを手に取る。
糸賀大亮:「……問題なさそうだな」
忽亡ゆかり:「行きます?」
乾咲フラン:「……行けるな」
夜高ミツル:「……はい」
GM:魔女の残した一晩きりの奇跡を背負い、狩人たちは狩りに出る。
GM:残暑が後を引く九月の夜の、
GM:これが一連の事件の、最後の戦いだった。
遭遇フェイズ
GM:八崎駅前、時計台前広場。GM:人通りは常と変わらず、帰宅ラッシュゆえに会社員や学生が駅から溢れる。
フォゲットミーノット:青い髪を風に靡かせながら、フォゲットミーノットは人々を眺めていた。
フォゲットミーノット:文字通りの異色の花を、通りすがる誰もが気に掛けはしない。
フォゲットミーノット:通りすがる誰もが彼女を不審に思わない。
フォゲットミーノット:日常のままの、穏やかな風景。そこに咲く一輪の花と、
真城朔:隣に一人、少年が佇んでいる。
真城朔:昨晩受けたはずの傷は癒されているように見える。少なくとも、血の汚れは失せていた。
乾咲フラン:人波の一部の動きが悪くなる。人々は通り過ぎながら有る一人に視線を送っていく……そう、乾咲フランだ。
乾咲フラン:駅前の明かりにあってなお輝く男に、一般人はその目を止めざるを得なかった――人が多い。散らすべきか……と思いつつ。
夜高ミツル:フランに気を取られる人々も、フォゲットミーノットの方には目もくれない。
夜高ミツル:だけど、それがどうしてかとか、そんなことは今は重要ではなくて。
夜高ミツル:ミツルにとって重要なのは、フォゲットミーノットの隣に寄り添う相手。
GM:フランは誰もフォゲットミーノットに目を向けないこの状況が、別の意味で異常であることを知っていた。
GM:何故なら。彼が見出し、彼が磨き上げ、彼が咲かせた花が、
GM:誰の目も惹かないなんてことは、絶対に有り得なかったからだ。
GM:それは、こうして通りすがる人々がフランの美しさに戸惑いを見せることからも改めて痛感する。
乾咲フラン:認識が阻害されている――それは美の観点からも明らかであった。
糸賀大亮:文章が強すぎる。
忽亡ゆかり:美の観点から明らかにするな
GM:美の観点、強ェ~
忽亡ゆかり:美の観点を振ったGMが何か言っておるわ
糸賀大亮:「魔女でもあるってのは、本当に伊達じゃないみたいだな」
糸賀大亮:その気になればいくらでも人の集まりからするりと抜け出せる美と違って、衆目に弱い不審者なので、ちょっと離れてます。
夜高ミツル:「……真城」
真城朔:呼び掛けられて、顔を上げる。
真城朔:ミツルを認めて眉を寄せた。一歩、下がる。
真城朔:フォゲットミーノットの立つ側へと、一歩、後退してみせる。
夜高ミツル:……本当に、本当に決めたのなら、下がらないで自分を殺しに来ればいいのに。もちろん、殺されてやるつもりなんかないが。
夜高ミツル:一歩前に行く。とはいえ、今すぐにこの場で戦いが始まっても困るので、一定の距離は保ったままに。
フォゲットミーノット:「朔」
フォゲットミーノット:フォゲットミーノットが呼びかける。
フォゲットミーノット:柔らかい声を、していた。
フォゲットミーノット:「いいの?」
真城朔:「…………」
夜高ミツル:「真城」
夜高ミツル:「……俺の考えは変わってないからな」
夜高ミツル:「お前を殺さないし」
真城朔:ミツルに目を向ける。
夜高ミツル:「これ以上、誰かを殺させることもしない」
真城朔:向けた上で、その視線を切った。
夜高ミツル:改めて、そう告げる。
夜高ミツル:昨日の別れを経てもなお、自分の考えは、やることは変わらないと。
真城朔:「……俺は」
真城朔:「俺は――」
真城朔:「あなたの、ために」
真城朔:視線を切ったまま。
真城朔:ミツルの言葉には答えない。
真城朔:フォゲットミーノットにそう答えて、けれど彼女を振り返るでもなく、
真城朔:ただ、その場に立っている。
乾咲フラン:「……」
フォゲットミーノット:答えを受けて、フォゲットミーノットが前に出る。
フォゲットミーノット:真城をその背に狩人たちへと目を向け、
フォゲットミーノット:微笑みとともに呼び掛けた。
夜高ミツル:視線が真城から、前に出てきたフォゲットミーノットへと移る。
夜高ミツル:両親の、姉の命を奪った吸血鬼。
フォゲットミーノット:「こんばんは」
フォゲットミーノット:「やっぱり、あなたたちも来るのね」
乾咲フラン:「やあ、今朝ぶりだね。」
フォゲットミーノット:フランの言葉にくすりと笑みを深めた。
糸賀大亮:「……」
糸賀大亮:挨拶を返せるわけでなし、立ち尽くして見返している。
忽亡ゆかり:「起きたばっかなのに、すいませんね」
フォゲットミーノット:「構わないわ。実のところ、羽を伸ばしてしまいたいくらいで」
フォゲットミーノット:「でも、相手がいないと、寂しいから」
フォゲットミーノット:ころころと笑うその声は、無邪気さすら感じさせる。
フォゲットミーノット:毒気が抜かれる。そう表現すべきだろう。
フォゲットミーノット:それが、この吸血鬼の誘惑の力なのか。
夜高ミツル:家族を奪われたことへの怒りとか……そういう気持ちよりも。
夜高ミツル:自分が選んだことの結果、真城碧ではなく吸血鬼のフォゲットミーノットとして蘇ってしまったこの人に対して。
夜高ミツル:真城に対して思うのと同様、これ以上誰かの命を奪わせたくないと。
夜高ミツル:そう思っていた。
フォゲットミーノット:「私の願いは知っているでしょう」
フォゲットミーノット:「家族、みんなで暮らすこと」
フォゲットミーノット:「そうして幸せに生きていくこと」
フォゲットミーノット:「だから私は、そのための最後、足りない人を」
フォゲットミーノット:「満さんを、蘇らせようとそう決めた」
フォゲットミーノット:みつるさんを、と、
フォゲットミーノット:彼女の唇は、そう言った。
夜高ミツル:……家族みんなで幸せに。なんて、当たり前の願い。
夜高ミツル:その口が告げた名前に、僅かに目を見開く。……皮肉な偶然もあるものだ。
夜高ミツル:これ最初から名前決まってたんですか?
フォゲットミーノット:うん。
夜高ミツル:マジで…………
夜高ミツル:ウケる
乾咲フラン:うける
糸賀大亮:んふふ
乾咲フラン:「だから真城に血戒を託したのか?真城の体がそうなると……解っていたのか?」
フォゲットミーノット:「…………」
フォゲットミーノット:困ったような笑みを浮かべた。
真城朔:「――それは」
フォゲットミーノット:「ええ」
フォゲットミーノット:「違う、ね」
乾咲フラン:「生きてほしかった……それだけなのか。」
フォゲットミーノット:頷く。
フォゲットミーノット:「あのときはただ、託すばっかりで必死だった」
フォゲットミーノット:「でも――こんな風に、犠牲ばっかり、生まれてしまったのは――」
乾咲フラン:「そう……」遣り切れない気持ちで目を伏せる。
フォゲットミーノット:途中で口を閉じて、首を振った。
フォゲットミーノット:「その犠牲に、私は報いることができない」
フォゲットミーノット:「私はただ、満さんを蘇らせるだけで精一杯で」
フォゲットミーノット:「何もかもを蘇らせて、人々の傷を癒すことはかなわない」
フォゲットミーノット:「だから――」
フォゲットミーノット:す、と掌を天に掲げる。
フォゲットミーノット:白い掌。指先に光る、空色のネイル。
フォゲットミーノット:空に輝く満月を指し示して、青い吸血鬼はどこまでに穏やかに笑う。
フォゲットミーノット:「だからせめて、常磐の夢を」
フォゲットミーノット:青い勿忘草の花が、舞い上がった。
乾咲フラン:碧が気に入ったあの爪の色、教えなければよかったという僅かな後悔を疼かせる、他人の物になった指先を目で追って――
夜高ミツル:何か仕掛けるつもりか、と警戒し。
フォゲットミーノット:フォゲットミーノットの身体が青い花弁に包まれ、
フォゲットミーノット:次の瞬間には、彼女のまとう衣装が変わっていた。
フォゲットミーノット:指先を覆い腕を包む長い手袋。花を散りばめた、白いウェディングドレス。
フォゲットミーノット:その裾を閃かせると、
フォゲットミーノット:街全体の至るところに、青い勿忘草の花が咲く。
糸賀大亮:うわっ
夜高ミツル:うわ~~~
夜高ミツル:美しい
忽亡ゆかり:か~わ~い~い~
糸賀大亮:花嫁だ~~~
乾咲フラン:インナーフラン死亡確認
糸賀大亮:アアッ
夜高ミツル:南無……
糸賀大亮:これは……しょうがないな……きれいだもんな……
フォゲットミーノット:「ありがとう」
フォゲットミーノット:「あなたのおかげよ、フラン」
乾咲フラン:(何がだよ……)ただの嫉妬の言葉を胸の中に押し込める。
フォゲットミーノット:行き交う人々は、その花に気付かない。
フォゲットミーノット:或いは、気付いていても、それを異常と認識しない。
フォゲットミーノット:その花の中
フォゲットミーノット:咲き誇る花の中で、変わらぬ日常に、楽しげに隣人と言葉をかわしている。
フォゲットミーノット:「……せめて、夢を見てもらうの」
フォゲットミーノット:「大切な人と過ごす夢」
フォゲットミーノット:「忘れられない人が生きている、そんな、当たり前の幸せの」
フォゲットミーノット:「永遠に醒めない夢を」
乾咲フラン:「よせ……!」
フォゲットミーノット:「私たちばかり、大切な人を蘇らせて幸せになるのは――不公平だけれども」
フォゲットミーノット:「でも、私には」
フォゲットミーノット:「どうしてもそれが、大切なことだから」
真城朔:真城朔が前に出る。
真城朔:腰から杭を抜きながら、フォゲットミーノットの前に出て、
真城朔:狩人たちの前に出る。
真城朔:無表情のままに、
真城朔:「だから」
真城朔:「それを止めるなら、殺さないとな」
真城朔:「俺たちを」
真城朔:その声にも色はなく。
乾咲フラン:「……マシロ!!」
夜高ミツル:「……真城」
夜高ミツル:「……ああ。止めるよ、お前たちを」
夜高ミツル:「……いくら幸せでも、ずっと醒めない夢なんて、そんなのは」
夜高ミツル:……そんなものは、死ぬのと変わりない。
夜高ミツル:「真城。お前の願いも……フォゲットミーノットの願いも、俺は叶えさせるわけにはいかない」
真城朔:「…………」
夜高ミツル:真城はきっと、この狩りの中で殺されることを期待しているのだろう。
夜高ミツル:真城には悪いが、それを叶えてやるつもりはない。
夜高ミツル:「……止めるよ」
夜高ミツル:杭を構える真城を見据えて、そう言い放つ。
糸賀大亮:……失われたものについて、これまでの狩りで何度も考えてきた。
糸賀大亮:失われていくばかりであることを受け入れて、狩りを続けていくと思っていた。
糸賀大亮:それが、揺らいだのはほんの前のこと。戻ってきたものを手の中で見て、正直まだどうすればいいか分からないでいる。
糸賀大亮:だけれども、…だからこそ、終わらない夢を、幸せな夢をと言われた時。
糸賀大亮:背筋に寒気の走ったとしたことにほっとしている。
糸賀大亮:無表情に、自分たちの前に立ちはだかる真城を見る。
糸賀大亮:たぶんああして、ぐらぐらなまま立ててしまう奴なのだろう。
糸賀大亮:真城のことはまだ取り返せる。取り返せるものは、掴んで離さないでほしい。
糸賀大亮:プルサティラにも…彩花ちゃんにも託されたのだ。夜高には、ここから頑張ってもらわねばならない。
糸賀大亮:もちろん、俺も。
忽亡ゆかり:強大な存在。ぞわりと背筋が震える。
忽亡ゆかり:恐怖に抗いながら心を鎮めて、どう戦うかを考える。
忽亡ゆかり:生きて弟と再会するために。粛々と狩りを行うために。仲間を守り抜くために。
忽亡ゆかり:そして、できることなら、無二の友と、恩人へと報いるために。
忽亡ゆかり:「まあ、お母さんには恨みはないんですけども」ナイフを取り、
忽亡ゆかり:「そういうことされるとね、結構困るんで。どうしてもこうなっちゃうんだな」
忽亡ゆかり:構える。
忽亡ゆかり:「短い時間ですけど、お相手願いますよ」
フォゲットミーノット:「――ええ」
フォゲットミーノット:「夢を乗り越えられるというのなら」
フォゲットミーノット:「どうか、それだけの真実を――私に見せてちょうだいね」
◆吸血鬼:フォゲットミーノット
耐久力17 余裕17 血量17
初期テンション22 激情2
◆支配力
・真城朔《自信》強度5
何があっても守りたかった、大切な、ただ一人の。
・家族との暮らし《日常》強度3
与えてやりたかったもの。かつては与えてやれなかったもの。失わせてしまったもの。
・魔法血戒:フォゲットミーノット《退路》強度3
忘れられぬ者たちへ、忘れられぬがゆえの救いを。
◆フォロワー
・『トクさん』小春德光
・『泡沫の銀弾』野嶋浩樹
・『在りし日の』真城碧
・真城朔
GM:よろしくお願いします。
夜高ミツル:フォロワー!?
忽亡ゆかり:フォロワー。
糸賀大亮:うわーーーっトクさん!
乾咲フラン:急に殴られる糸賀さん
GM:フォロワーは夢です。
GM:夢というか、幻というか、そういう感じで見せられるものとして覚悟してね。
乾咲フラン:ヒヒヒ
夜高ミツル:なるほどね~
糸賀大亮:真城は特殊フォロワーだけどトクさんは亡霊か
糸賀大亮:ていうかこれ野嶋上位犯罪者じゃない?
乾咲フラン:ヤっちまうしかねえよ